Rリサーチ(評価・実態把握)スタート! 掲示している前の月のレーダーチャートを見ながら 1か月の学級の様子を振り返らせる。 評価の基になる材料が与えられることで,1か月の学級の状態を振り返りやすくなります。 アンケートを配付して記入させる。 Q A 子どもがアンケート項目に対し て具体的なイメージをもてるよう にするには,どうしたらいいです か? Q 気を付けることはありますか? A ① 自分一人や特定の誰かを対象 にするのではなく,学級全体の こととして評価させます。 ② 教師の評価は伝えません。 教師からアンケート項目を 具体 的な例で説明します。 例えば… 「『助け合い,教え合う』は,困 っている友達に声を掛けたり,教え たりすることがお互いにできること です。 もっと具体的に言えば,大きな荷 物を運んでいるときに手伝ったり, 休み時間が終わるときに,教室に戻 ろうと声を掛けたり,授業で分から ないときに教えたりすることです」 と子どもに話します。 アンケートでは,なぜその評価にしたのか理由も書かせる。 自分なりの根拠をもって評価させるためです。 次のP(計画を立てる)の話合いにも活かすためです。 Q 子どもには,どのように言ったら よいですか? Q A A 低学年であれば,1項目ずつ教師 が読み上げ,全員が評価し,評価の 理由を書き終えたら次に進みます。 中学年以上であれば,自分のペース で進めさせます。 例えば… 読み上げて評価させた後,「どうし てその評価にしたのかな。1か月を 振り返って,こんなことがあったか らと,具体的な場面を思い出して書 いてね」と指示します。 - 1 - 評価基準はありますか? ありません。 評価基準を学級でつくると,逆 効果になる場合があります。評価 の正確性に目が向くからです。 一人一人の子どもから見た学級 の状態を表出させることが大切で す。 前の月に記入したアンケート用 紙を本人に渡し,そのときの評価 と今月の学級の状態を比較して評 価させる方法もあります。 Q A 評価の根拠を書かせると,「生活 のきまりを守る」「学習の約束を守 る」しか書かない子どもがいます。 どうしたらよいですか? Q 「生活のきまりを守る」「学習の 約束を守る」は,<廊下を走ってい た>など,子どもにとって,具体的 な場面を思い浮かべやすい項目だか らです。逆に言うと,他の項目につ いては,具体的な場面を思い浮かべ にくいのでしょう。普段の生活の中 で,繰り返し子どものよい姿を価値 付けることが大切です。 例えば… 失敗した友達に対して「どんまい, 次はがんばろう」と声を掛けている 子どもがいたとき,「相手を受け入 れる力が発揮された姿ですね」など と学級全体の前で価値付けます。 低学年の子どもには,8項目の言 葉が難しいため,なかなかイメージ することができません。どうしたら よいですか? A 親しみやすい言葉に替えます。 例えば… 「努力する」→「がんばりパワー」 「相手を受け入れる」 →「なかよしパワー」 「新たな考えをつくる」 →「考えいっぱいパワー」 親しみやすい言葉を使うことで, 低学年の子どもは,学級力の項目を 意識しやすくなります。 スマイルミーティング スマイルミーティング 附属新潟小学校では,月に一度,各学級でのR(評価・実態把握) が終わった後に学年部の職員で集まり,レーダーチャートを基にそれ ぞれの学級の状況について話し合っています。この会を スマイルミ ーティング と呼んでいます。自分の学級の現状や課題,不安や悩み を打ち明けることはもちろん,今月どのような活動をしたらよいか, 具体的なアドバイスをし合ったり,有効な取組を共有したりします。 各担任が,8つの「共通指標」で,学級を分析・評価しています。 ですから,共通の視点でアドバイスし合うことができるのです。 この場面で大切なのは,レーダーチャートの大きさや形で比べない ということです。学級に対する子どもの見方が鋭くなれば,必然的に レーダーチャートは小さくなります。 全校体制で8項目の指標と仕組みを共有し,学級経営を行っている からこそ具体的に話し合うことができます。そして何より,他の学級 のことが分かり,刺激を受けることができます。担任自身が,学級に 対する問題意識や目的意識を醸成することができるのです。 - 2 - Pプラン(計画)スタート! レーダーチャートを見ながら, 大きく上がったところや下がったところの理由を問う。 学級の状態について,具体的な場面を出し合うことで, 学級のよさや問題点を共有することができるようになります。 Q 子どもには,どのように言った らよいですか? Q A 「大きく上がったり下がったり したところはどこですか。どうし て上(下)がったと思いますか」 と問います。 子どもは,変化の大きかった項 目に関心をもちます。変化の大き な項目の理由を問うことで,学級 の状態について,具体的な場面が 出やすくなります。 A 「 自分の評価と比べて納得のい かない人はいますか」と問います。 納得のいかない理由を挙げること で,学級の様子について,具体的 な場面が出やすくなります。 例えば… 司会 「自分の評価とレーダーチ ャートの結果を見て,納得が いかない人は手を挙げてくだ さい。納得がいかない理由を 教えてください」 C 「レーダーチャートだと, 『助け合う・教え合う』が低 くなっているけど,ぼくは, 先月より高くなったと思いま す。わけは,長縄をやったと き,みんながぼくに跳び方を 教えてくれたし,習字の墨が 流れたとき,床を拭いてくれ た人がたくさんいたから…」 Q 発言はあっても,友達の発言と のつながりが見られません。 Q A Q 司会は誰がするんですか? 子どもが自分の学級をよりよく していく話合いですから,子ども が司会をすることが望ましいで す。 しかし,発達段階や経験によっ て違います。教師が司会をすると ころから始め,徐々に子どもの力 でできることを増やしていきま す。 A 他の進め方はありますか? 学級のよさや問題点が共有され るためには,付け足しの意見や反 対の意見など,お互いの思いが交 流されなければなりません。子ど もが司会をしていたとしても,必 要に応じて教師が入り,友達の意 見とかかわらせて考えられるよう にします。 例えば… 「○○さんの意見についてどう思 いますか?」「○○さんは言ってい たことと似た場面を見た人はいま すか?」「同じように思ったことが ある人はいますか?」などと問い ます。 こうして,友達の意見が「他人 ごと」ではなく自分にも関係する ことだと感じ,問題点が共有され るようになります。 なかなか意見が出ないときは,ど うしたらいいですか? A アンケートに記入するときに,評 価の理由を書かせていますから,具 体例を挙げている子どもを指名し, 発言させることができます。 班などの小グループで話し合わせ てから全体で話し合う方法もありま す。 - 3 - Q 教師が注目してほしい項目と子ど もが注目している項目にズレがある ときはどうしたらよいですか? Q 何について話し合っているのか分 からなくなり話合いに参加できない 子どもがいます。どうしたらよいで すか? A 教師が話合いを整理することが大 切です。 レーダーチャートに子どもの意見 を書き込む際に,色分けして書くと よいです。話合いの後,掲示して見 るときにも分かりやすくなります。 例えば… 赤→よい点 青→問題点 緑→改善点 などです。 Q 8項目全部を話し合う必要はあり ますか? A 多くの子どもが問題意識をもって いる項目に絞って話し合うことも可 能です。 A 教師が話し合ってほしい項目につ いて問います。 学級経営の主体は担任です。意図 的に取り上げることも必要です。し かし,話合いを止めて強引に子ども の意識を変えるのではなく,子ども の気持ちに沿うことが大切です。教 師が問うても子どもの意識が変わら なければ,それ以上は問いません。 例えば… 「『生活のきまりを守る』という項 目についてたくさん出ているけど, 先生は,最近, 『相手を受け入れる」 という項目が気になっています。こ んなことがあったよと,話してくれ る人はいませんか」と問います。 Q 他の学級に比べて結果が低いので 子どもが自信をなくしそうです。ど うしたらよいですか? A アンケートの結果が低い=悪い学 級ではありません。あくまでも,子 どもが今の学級をどう見ているかを 表したものです。学級をもっとよく したいと取り組んでいる学級は,学 級をみる目が鋭くなり,評価も低く なりがちです。この点を子どもに説 明します。また,普段から,学級が よくなっている点を教師が認め,励 ますことが大切です。 今月の目標を問う。 学級に対する願いを出し合い, これから学級で高めたい力や目標,計画を共有します。 Q A 子どもには,どのように言ったら よいですか? 「今月,学級のみんなで特にが んばっていきたい力はどれですか。 その理由も話してください」と聞き ます。 それまでの話合いの中で,学級の よさや問題点が共有されていれば, 「今月はこの力を高めたい」という 子どもの願いも共有され,目標を立 てることができます。 - 4 - Q 8項目すべてをがんばらせるの は大変です。どうしたらよいです か? A 8項目すべてをがんばる対象に することもできますが,1項目か 2項目に絞る方が,子どもが目標 を意識しやすくなります。 Q A 具体的にはどんな目標を立てたら よいですか? 「相手を受け入れる力を伸ばそう」 「つながり発言の力をもっと伸ば そう」など,8項目から高めたい 力を選び,そのまま目標としても 構いません。子どもにはその方が 分かりやすいです。 どんな活動をすればよいのか, なぜその活動が目標達成につながるのかを問う。 目標にあった活動を計画することが大切です。 Q どんな活動をしたらよいですか? A 目標をもった活動であれば,どん な活動でもよいです。 鬼ごっこや長縄跳びなども立派な 活動です。ただし,遊びと大きく異 なるところは,目標達成のための活 動であることです。そのために,計 画の段階でしっかりと活動する理由 を明確にしておくことが大切です。 Q 子どもが活動のアイデアが出ませ ん。どうしたらよいですか? A 教師から提案します。 子どもは自分が経験したことから し か活 動を 考える こと がで きま せ ん。ですから,経験の少ない子ども には,教師から活動を提案します。 上の学年の人にインタビューして 情報を集めさせ,その中から活動を 選ぶこともできます。 Q 学校にはCCTがありません。ど うしたらよいですか? A 日常の生活や学習でできることに 取り組むことが有効です。 例えば… 「友達のよいところをたくさん 見付よう」という活動に取り組む 場合,休み時間や学習の様子から, 友達のよさを見付けます。そして, カードに書いて掲示したり,帰り の会で紹介し合ったりすることが できます。 例えば… 「相手の話をよく聞いてつなが り発言をしよう」という活動に取 り組む場合,「なるほど」「たしか に」「○○さんが言いたいのはこ ういうことですね」などの子ども の声を拾い,「言葉の宝箱」とし て集めていく(掲示していく)こ とも考えられます。 自己評価カードを作って取り組 むこともできます。 学級活動と連動した活動を組むこ ともできます。 例えば… 「係で新たな考えを出し合って 新しい活動を始めよう」と,係の 再 編 成 や 仕 事 内 容 の 見 直し を 図 り,係ごとに活動することもでき ます。 - 5 - Dドゥ(計画の実行)スタート! 活動が始まる前に,目標を確認する。 どういう行動をすれば目標を達成することができるのかを問う。 常に目標を意識して活動できるようにすることが大切です。 Q A 何のために活動しているのかを忘 れて,ただ楽しんでいるだけの子ど も がい ます。 どう した らよい です か? プランを立てるときには「相手を 受け入れるために○○をする」と決 めていても,すぐに忘れてしまいま す。そこで,活動の前に目標や,具 体的な行動を問います。 例えば… T「これから班ごとにダンスを創り ます。どんな目標を達成させるた めにダンスを創るのでしたか」 C「新たな考えを出す」と「相手を 受け入れる」をアップさせること です。 T「この2つの力をアップさせるた めには,どんなことをしたらよい ですか?」 C「どんな振り付けでも,恥ずかし がらない」 C「友達の考えた振り付けを,嫌だ と言ったり,バカにしたりしない ようにする」 T「全部を絶対に受け入れるってこ とですか?」 C「その振り付けもいいけど,私が 考えたこんな振りはどう?」など 相手のいいところを認めてから, 自分の意見を言うようにすると, どっちの力もアップできると思い ます」 - 6 - Q 達成感をもたせるためにはどう したらよいですか? A お互いによかった点を褒め合っ たり,目標に迫る行動をしていた 友達を全体の前で紹介したりしま す。 教師がこれを行うことも大変有 効です。子どもは,活動の達成感 を得るだけでなく,よりよい行動 を知りことで,次の活動がさらに 充実するようになります。 Q 活動に対する意欲が持続しませ ん。どうしたらよいですか? A 活動直後に振り返りを行います。 今日の活動で,目標の達成に向か っていたかどうか,具体的にはど んなことがよかったのか,具体的 にどんなことが問題だったのかを 問います。 場合によっては,目標が達成で きるように,活動の内容や方法を 修正します。 Cチェック (評価・改善) スタート! 目標について前の月より上がっているか下がっているか, またその理由を問う。 D(活動)を繰り返しても,目標達成に向かわないことがあります。 また,1か月継続しているとマンネリ化し,意欲の低下が起こることもあります。 C(評価・改善)によって,「学級力」を高めようとする気持ちを 再び高めることができます。 C(評価・改善)を行うのは,主に次の3つの場面が考えられます。 Q 目標達成に 向かっている時 目標達成に 向かっていない時 達成感・満足感が共有で きるようにします。 具体的な事実を基に話し 合うことで,問題点はどこ かを共有できるようにしま す。 全部の項目について振り返る必要 はありますか? A Pで立てた目標について振り返る だけで十分です。 ただし,目標に向かって活動した ことで,相乗効果により,他の項目 も高まっていることがよくあります。 そのようなときは,他の項目につい ても振り返るとよいです。 C(評価・改善)に時間を掛けす ぎると,子どもが疲れてしまい,逆 に意欲を失ってしまう場合がありま す。 毎月無理なくRPDCAサイ クルを進めていくためにも,短時間 で行う方がよいです。 Q それでも8項目全部について調査 をしたいときは,どうしたらよいで すか? A 8項目それぞれについて,「月の初 めよりもよくなっかどうかを○か× かで評価させ,人数をレーダーチャ ートに書き込む方法もあります。 - 7 - 継続してきた活動が 一区切りした後や 大きな行事が終了した後 具体的な場面から振り返 ることができるので,達成 感や満足感,問題点の共有 が容易です。 Q どのように振り返らせたらよい ですか? A P(計画)で設定した目標は達 成しているか,(高めたい力は高 まっているのか)を問います。 そして,自分たちの生活の様子を 根拠に発言させます。 例えば… T「今月は, 『相手を受け入れる』 を高めるために,みんなで○○ ○に取り組んできたよね。(掲 示されている先月終わりのレー ダーチャートを示し)先月に比 べて,『相手を受け入れる』の 力は高くなったかな」 C「私は高まったと思います。そ う思うわけは,休み時間にみん なが誘い合って遊ぶようになっ て,一人の人がいなくなったか らです」 C「私は,まだだめだと思います。 この前も,言われたくないあだ 名を言う人がいたからです」 Q Q A A がんばっても評価が低くなって達 成感が得られません。どうしたらよ いですか? 学級をもっとよくしようとがんば っている子どもは,学級をみる目が 鋭くなり,評価が低くなることはP (計画)に書いた通りです。 普段からよい姿を紹介し合ったり 教師が褒めて認めたりしておくこと が大切です。 他にC(評価・改善)の方法は ありませんか? ① 学級で特にがんばることに決め た項目だけは,R(実態把握)の ときのように,4段階で評価する 方法もあります。平均値を出すこ とで,先月末の結果と比較するこ とができます。 ② 月末のアンケート用紙を子ども に返却し,その評価と比較して評 価させることもできます。 目標や活動計画の修正が必要か問う。 目標や活動計画と学級の状態とを比較し,修正します。 目標達成に 向かっている時 目標達成に 向かっていない時 継続してきた活動が 一区切りした後や 大きな行事が終了した後 そのまま活動を継続しま す。よりよくするために, 目標を高くしたり,活動に 修正を加えることもありま す。 目標を再確認し,目標達 成のために,活動を修正し ます。必要に応じて,目標 を再設定することもありま す。 目標達成に向かっている時の修正 とは,どんなことですか? Q 目標を高くしたり,新たな目標に 変えたりします。 例えば… 「『ほかほか言葉を広げよう』と いう目標は十分達成できた。だか ら今度は,「言葉だけじゃなくて, ほかほか動作もしよう」に目標を 変えよう。当番の仕事を手伝った り,落ちているゴミを拾ったりで きそうだね」 例えば… 「『生活のきまりを守る』という 目標は十分達成できた。だから生 活のきまりだけじゃなくて,『学習 の約束を守る』もがんばろう」 A Q A 新たな活動を設定したり 修正を加えたりします。 目標達成に向かっていない時の 修正とは,どんなことですか? がんばれば達成できる目標にし たり,具体的な目標に変えたりしま す。 例えば… 「『ほかほか言葉を広げよう』 という目標はあるけど,なかなか 広がらなかった。だから一人1日 3回はほかほか言葉を使うという 目標に変えよう。そうしたら,も っと意識してほかほか言葉を使う ようになると思う」 例えば… 「助けおにをしているだけでは 助け合う力は高くならなかった。 だから,他の活動も考えよう」 「班 のみんなで何かを作るのはどうか な。助け合う場面が増えそうだ」 - 8 - Aアクション(修正した計画の実行) スタート! 活動が始まる前に,目標を確認する。 どういう行動をすれば目標を達成することができるのかを問う。 Dドゥ(計画の実行)のときと同じように, 常に目標を意識して活動できるようにすることが大切です。 再び Rリサーチ(実態把握)へ - 9 -
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