連載第10回 山口県萩市 長屋牧場

高 久 ア ド バ イ ザ ー の
和牛農家を訪ねて
第 10 回
“無角和種のから黒毛和種の繁殖経営に転換し、仕事
の役割り分担を家族で分け合い、粗飼料の自給を図
りつつ、増頭を続けている和牛繁殖経営について"
今回は山口県山口市の北西部、日本海に面し、遥か
んが担当していたそうです(ご主人は今から9年前に
に北長門海岸国定公園を望む、風光明美で気候も温暖
亡くなられました)。昭和60年、無角和種の飼養中止
な、JA萩市管内の長屋静枝さん(57才)方の和牛繁殖
に伴って、黒毛和種の繁殖牛を導入し、以降常時4∼5
経営を取材しましたので、ご紹介いたします。
頭の飼養を続けていたそうです。やがて平成9年、県
1.長屋牧場を取りまく、JA萩市管内の
和牛繁殖経営と長屋牧場について
やJAが中心となって畜産基盤再編総合整備事業が開始
されたのを契機にこの事業への参加と繁殖牛の増頭を
考え、従来からの自宅の牛舎での牛の飼養とともに、
この地域は、昭和50年頃迄は、山口無角和種の供給
この事業で農協が設置した萩木間団地でのJA繁殖牛舎
基地として、盛んに経営が進められていましたが、無
(繁殖雌牛30頭規模・リース)に入植し、繁殖牛50頭
角和種子牛価格の低迷により、無角和種経営が衰退し、
飼養を目標に積極的に増頭。これに対応するため平成
現在ではほとんど無くなり、山口県全域でも200頭程
13年4月、会社勤務をしていた長男の利幸さん(現在
度の頭数となりました。かわって黒毛和種の繁殖経営
35才)が脱サラし、牛の飼養に従事することになりま
となり、現在では、80頭の繁殖雌牛が萩地区で飼養さ
した。このような経営態勢に持っていくため家庭内で
れ、平成15年度の山口中央子牛市場への出荷成立頭数
仕事の役割分担を決め、経営者の静枝さんが子牛の哺
は、雌・去勢込の54頭となっています。なお、山口市
育・育成を、長男の利幸さんが成牛・育成牛の飼養管
場の平成15年度の販売成立頭数は2,775頭で、従って54
理と人工授精を、次男の裕治さんが工場勤務の傍ら繁
頭はその2%です。(ただし、平成14年度までは1%で
殖牛への交配計画・繁殖雌牛の導入を担当。また、サ
あり、最近出荷頭数は増加傾向です)。
ラリーマンと結婚し近くに家庭を持つ長女の恵子さん
長屋牧場は、昭和50年代、義父の直光さんと静枝さ
が長屋牧場の経営管理を担当し簿記の記帳を行うと、
んとで、無角和種繁殖牛25頭を飼養し、繁殖経営を進
まさに家族ぐるみの作業の実施。他に、飼養の補助と
めていましたが、直光さんが亡くなられてから、飼養
して若いアルバイトさんが1名いる状況となっていま
頭数を減らし、静枝さんが飼養を続けていました。な
す。
お、80haの山林を所有している関係から、ご主人は主
平成14年3月からは肉用牛と水稲の複合経営者とし
として山林の管理に従事し、牛の飼養は奥様の静枝さ
て萩市の認定農業者になるなど、積極的な繁殖牛経営
の推進を計ってきたそうです。それを更に推進するた
め、平成15年3月には自宅内に20頭規模の繁殖牛舎を
増設し(県単事業)、平成16年3月には団地での繁殖牛
舎に差し掛けを増設して機能の増加を図り、更に、子
牛生産頭数の増加に伴い、平成16年7月には自己資金
により20頭規模の子牛育成牛舎を団地内に増設し、い
よいよ本格的な経営推進が計られる態勢が整いまし
た。
●長屋さんと一緒に
17
舎で飼養されています。今回団地内の牛舎を見せてい
ただきましたが、真中に通路、両側に牛房があり、牛
房は繁殖牛房を主に分娩房、子牛育成房があり、明る
く、通風も良く、きれいにオガが敷かれ、よい環境と
なっています。他に20頭建の育成牛舎もあり、成雌・
育成牛舎を含めて約60頭が飼養されていますが、牛は
いずれもゆったりと飼われています。成牛の削蹄につ
いては、1年に1回、20万円程度の費用をかけて手入れ
をしているそうで、何れもしっかりした蹄をしていま
●整備された子牛育成牛舎
した。また、自宅には繁殖・育成の多目的牛舎(繁殖
牛用には、10頭用連動スタンチヨン牛房と一部に群飼
(1)増頭及び繁殖成績の推移
用育成房がある)があり、およそ15頭の牛が飼われて
施設の整備に伴い急速な増頭が進められ、成雌牛で
います。自宅と団地牛舎とは、自動車で10分以内の距
13年度には29頭、14年度には30頭、15年度には38頭、
離で作業に支障はなく、計画どおり畜舎も整備され、
平成16年8月現在で成雌牛44頭、育成雌牛9頭、子牛
着々と頭数目標に近づきつつあります。
23頭の計76頭の規模にまでなりました。このような状
子牛下痢予防等の目的で平成13年10月から超早期離
況の中で、生産子牛頭数は13年度に19頭(雌11頭、去
乳の試験的な取組みと併せて技術の研修・視察を行
勢8頭)、14年度には前年からの繰越しを含め31頭
い、平成14年4月からは全面的に子牛の育成を人工哺
(雌17頭、去勢14頭)、15年度には32頭と良好な成績を
育に切換えました。
あげるよういなってきました。これを成雌牛頭数に対
まず繁殖牛の飼養ですが、分娩して3日目に子牛を
する比率で見ると84%、その分娩間隔については、13
離し、人工哺育をしています。妊娠牛には、分娩予定
年度が438.7日と長くなっていますが、14年度は391.3
2ヶ月前から濃厚飼料を1日4回2握り程度を給与し、粗
日、15年度は380.4日と短縮され、多頭飼養での繁殖成
飼料は青草・稲ワラ・乾草等を十分に与え、分娩後1
績としては良好な成績になって来ています。
週間程して母牛が落着くのを待って、成雌グループの
ここで長屋牧場での雌牛について生産地別に状況を
中にもどします。なお、分娩後1ヶ月程度は濃厚飼料
見ますと、山口中央市場を中心として、鹿児島県、熊
をやりますが、以降は濃厚飼料は中止するそうです。
本県、宮崎県からの導入と、自家保留牛となっていま
また、1ヶ月程度で初回の発情が出ますが、あえて交
す。種雄牛別でみると、44頭の成雌牛中13頭が平茂勝
配せず、次の発情で交配をし、それでだめなら、その
の娘牛、他に美津福が5頭、神高福が3頭、北国の7の
次の発情を待ち交配します。これでおよその牛は受胎
8・藤桜・谷茂・義久各2頭、安福165-9を含めて10数
するそうです。なお、人工授精は利幸さんが行います
種類の雄牛の子が各1頭となっています。これを増体
が、受胎率もかなり良好との事でした。人工授精師の
の良い体積系と肉質が期待できる資質系に分けて見る
資格は静枝さんも、次男の裕治さんも持っておられる
と、体積系が少々多い57%程度になっています。
との事です。なお、ここで長屋牧場の更なる特徴を申
次にこれ等に交配する種雄牛ですが、県有牛や平茂
勝等とともに、この地域が家畜改良事業団の平準化事
業に参加している事もあり、美津福等の事業団繋養の
種雄牛となっています。なお、その交配の方式として
は、基本的には体積系の雌に対しては資質系の雄を、
資質系の雌に対しては体積系の雄を交配するようにし
ているそうです。
(2)繁殖牛の飼養と子牛の育成について
長屋牧場の牛舎については、前述のとおり、自宅内
の牛舎と団地内の牛舎とがあり、主として団地内の牛
●青草・稲ワラ・乾草を十分に与えられています。
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令で人工哺乳を中止し、他の子牛群の中に入れます
(ここ迄は手製のカウハッチで飼います。なお、人工
乳は不断給餌で飽食させます)。ところで超早期離乳
の目的の一つとして授精卵移植の考えもあり、現に北
国7の8・平茂勝・神高福の受精卵を保存しているそう
です。このような哺育・育成をしていますが、これに
伴う子牛の発育目標値は持たず、実際にも子牛の発育
調査等については行っていません。
(3)子牛の販売成績について
萩市農協管内の子牛は、山口中央市場に出荷されて
●アドバイスに聞き入る長屋さん
います。山口中央市場は、現在は1月から始まり11月
し上げると、徹底した粗飼料の自給を行っている事で
迄の隔月6回の開催で、年間販売成立頭数は、平成14
す。16年の実績として秋冬作として飼料園からイタリ
年には2,756頭、平成15年には2,775頭、平成16年に
アンライグラスを1.5ha、夏作では自己転作田から6ha
2,692頭で、近い将来に年間8回開催を予定しているそ
と採取しました(水稲作付1.4ha、その他堆肥交換等に
うです。平成16年の長屋牧場の子牛販売成績をみると、
よる)。これによって、殆んどの粗飼料を自給します
出荷頭数は26頭(雌11頭、去勢16頭)で、その販売金
が、更に一部乾草を購入しています。このような事か
額は税込みで1,054万円となっています。その内訳を見
ら、粗飼料の飽食が十分に可能であると考えています
ますと、1頭当りの平均価格は405千円で、雌が352千
し、濃厚飼料については超早期離乳の方式を取ってい
円、去勢444千円となっています。
るので給与量は少なくてもよいとの事でした。
その日令は、平均して248日、うち雌が257日、去勢
次に子牛の哺育ですが、分娩後3日目から人工の哺
が239日で、体重は雌が228kg、去勢が257kg、これ等
乳をしています。当然これは人工乳によって行われま
の成績を山口中央市場及び全国主要市場平均等と比較
すが、生後3日目の離乳第1日目から3日目が代用乳を1
してみると、表1のとおりなりました。要約すると、
日100g(7倍の湯に溶かす)、次の日には125g、次の2
中央市場平均値に対して出荷体重、平均体重、売上高
日間が150g、下痢の状況を観察して、下痢が無ければ
で多少低い数字になっています。
200g、250gとふやし、2ヶ月令以降は200gとし、75日
チャンピオン獲得!! 雌! 524kg
去る11月29日に開催された、第2回宮城県家畜商協同組合枝肉共
進会で、今年度、注目度NO1の安重福が、枝肉重量524kg、ロース
芯面積63cmと素晴らしい成績でチャンピオンに輝きました。
第2回宮城県家畜商協同組合枝肉共進会
<雌の部チャンピオン>
父
母の父 祖母の父 性別 月齢 枝肉重量 ロース バラ BMS 格付
安重福 雷電
19
糸晴波
雌
29
524
63
9
10
A-5
単価
枝肉価格
3,504 1,834,344
表1 山口中央市場販売成績(平成16年)との比較
市 場
総 販 売 頭 数(頭)
出 荷 体 重(kg)
開催月日
計
雌
去
全平均
雌
去
中央1.6∼7
461
202
259
254
240
265
428,807 395,540 454,110 1,688 1,648 1,714
(長屋牧場)
4
2
2
227
202
251
395,325 354,900 435,750 1,747 1,757 1,736 210 241
11,002 13,685
272
261
281
441,611 400,286 474,833 1,624 1,534 1,690
全国33市場
24,687
販 売 価 格(円)
全 平 均
雌
去
kg 当 単 価
全平均
雌
去
日 令
雌
去
中央3.4∼5
486
203
283
253
244
260
393,681 361,827 416,483 1,556 1,483 1,602
(長屋牧場)
4
- 4
255
-
255
430,238 -
全国33市場
26,428
11,865 14,563
276
265
286
434,824 397,243 465,442 1,575 1,499 1,627
中央5.10∼11
538
236
263
249
274
408,048 367,060 440,078 1,551 1,472 1,601
(長屋牧場)
9
4
244
244
245
393,987 345,713 442,260 16,147 1,417 1,805 252 233
全国33市場
26,477
281
269
291
442,656 403,261 475,301 1,575 1,499 1,633
中央7.6∼7
437
245
261
246
273
410,444 372,705 440,019 1,573 1,515 1,612
302
5
11,998 14,479
192
430,238 -
-
1,687
234
(長屋牧場)
2
1
1
258
235
281
380,100 321,300 438,900 1,473 1,367 1,562 276 225
全国33市場
16,756
7,502
9,254
278
264
289
474,925 428,841 512,284 1,708 1,624 1,773
371
151
220
261
244
273
460,936 417,650 489,858 1,766 1,712 1,794
(長屋牧場)
5
2
3
250
243
255
420,525 367,500 473,550 1,682 1,512 1,857 296 260
全国33市場
18,730
8,222 10,508
276
264
286
472,498 430,626 505,261 1,712 1,631 1,717
中央9.14
中央11.5
399
191
208
251
238
264
404,079 400,039 484,519 1,769 1,681 1,835
2
2
- 216
216
-
371,700 371,700 -
16,254
7,261
8,993
中央
計・平均
2,692
1,175
1,517
(長屋牧場)
計・平均
26
11
15
全国33市場
計・平均
129,332 57,850 71,482
276
262
287
467,717 423,463 503,447 1,695 1,616 1,754
257
243
267
424,334 385,804 454,178 1,651 1,588 1,701
245
228
257
405,252 352,222 444,140 1,654 1,545 1,728 257 239
276
264
287
451,691 413,953 489,428 1,637 1,668 1,705 295 281
(長屋牧場)
全国33市場
-
1,721 -
251 -
つためには、現在やっている飼養の方法を、しっかり
と数字でつかんでおく必要がありますので注意して下
2.
まとめ
さい。次に、生産子牛の育成です。最も重要な事は、
どのような子牛を造っていくのかの目標を持つという
以上長屋牧場についてお聞きした事を述べてきまし
事です。このためには、何日令で出荷をするか(隔月
たが、改めて、これらの諸項目について分析させてい
市場開催ではなかなか出荷予定、日令の目安が立たな
ただきます。
い面もあります)。その時の発育値を、雌・去勢別に
体高・胸囲をどの程度にするかの目標を持つ事が必要
(1)繁殖牛及び育成牛の飼養について
豊富な自給飼料を利用して繁殖牛を飼養する結果、
です。そして、それを確認するため、毎月1回牛の日
をつくり、子牛の全頭というわけにもいきませんが、
濃厚飼料の給与量については、やや不足かとも考えら
5頭とか10頭の規模で生時から出荷まで測尺をして頂
れる量ですが、給与の実態が、量は計らず、2にぎり
く事です。その理由は、子牛は毎日発育を続けていま
とか4にぎりという給与方法については、時に量を計
す。その発育値を通じて、子牛は、飼い主に対して現
ってみる事が必要と考えます。なお、分娩後の発情再
在の飼い方で良いとか、悪いとかという事を知らせて
帰は1月目と早く、次の発情で種もつくという事なの
いるのです。そこでその発育値を計り、知る事により、
で、濃厚飼料の給与量はこれでも良いかとも思われま
牛がなんといっているか、この飼い方で良いのかを判
す。しかし、今後の受胎率の向上と、成績の維持を保
断する事が出来るのです。私は、これを子牛と話しを
20
しながら育成するといっています。誰に聞くよりも牛
入れ、調教等があると考えます。まずここで、血統に
に聞く事が最も確実です。母牛の系統やら、父牛の血
ついて考えてみましょう。良い子牛というものは、時
統によって子牛の発育はいろいろと変わるものです
代によって変わっていくものです。例えば、バブルの
が、せめて、およその発育…その発育目標値をつくり、
頃は肉質の良い牛肉が高く売れました。従って子牛も、
実際の測定値と比較しながら、子牛育成飼養を進めて
将来肉質のよくなる資質系、兵庫の系統の子牛が高く
いく事が大切です。
売れました。バブルがはじけると、高い牛肉が売れな
子牛の発育目標値はそれぞれの地域でつくる必要が
くなり、肥育牛の売り上げ高が下がりました。そこで
あります。具体的には、まず、子牛が生まれた時の体
肥育農家はお金を上げるために枝肉が沢山とれる大き
重の目標から始まります。例えば子牛の生時体重は雌
くなる素質を持つ体積系の子牛を希望する時代へと変
で25kg、去勢で30kgとか、生時体高は雌68cm、去勢
化してきたのです。長屋牧場で盛んに導入した平茂勝
70cm、平均して70cm、とか、体高は6月令までは、毎
などはその例です。しかし単に大きくなるだけではい
月雌で5cm、去勢で6cm伸ばすとか、6月令を過ぎれば、
けません。肉質もある水準以上の肥育牛でなければな
1月当りの増加目標を3cmにするとかという事です。そ
かなか売上げは伸びません。となると、父牛が体を大
うすると、去勢牛なら6月令で6cm×6月=36cmの増加、
きくする系統ならそれを交配する雌牛は肉質を良くす
それに生時体高70cm分を加え106cm以降10月令出荷と
る系統でなければならず、また、その逆もあるという
なれば3cm×4月=12cmを加えて118cmとなります。わ
事です。更に知名度の問題があります。その雄牛の子
が家の子牛はどのように発育しているかを逐時確認す
牛が沢山生産されていて、各地で成績を上げている、
ることにより現在の飼養方式の改善に役立つ事になる
肥育農家に、それも全国的によく知られている雄牛の
のではないでしょうか。
子。又は、若い雄牛でも、後代検定の成績等から、こ
の雄牛の子はその時代に合ったよい肥育牛になると考
えられるなどの各種の条件を満たすものではなければ
(2)子牛の販売について
子牛の販売状況については、表1に示しましたが、
高くは売れません。その点、全国に精液を配布してい
る事業団の雄牛は知名度も高く、わが家の雌牛に合っ
今までは、畜舎の関係から早くに出荷せざるを得ない
た血統のものも沢山あると思います。山口県内の種雄
等の理由があったそうです。畜舎その他の態勢もとと
牛とともに、それ等の雄牛も、積極的に使ってみる事
のった現在、今後の経営に当たっては、最も重要な事
が必要と考えます。
として、子牛の販売対策について考える必要があると
次に、発育状況についてです。全国の成績で見ると、
思います。まず表に見られるとおりの結果から、わが
1日当り増体量は、雌牛で0.8kg、去勢牛では0.9kgとな
家の販売価格目標を中央市場の平均価格に置くとか、
っています。例えば、雌で生時体重を25kgとすれば、
或いは全国平均価格並に、更にそれ以上の販売価格を
280日間飼うと280日×0.8kgで224kgの増体となり、生
ねらい設定するという事です。
時体重25kgを加えれば、249kg以上となります。
子牛の価格を決定する要素については、まず血統で
もし、全国平均の264kgまで持っていくとすれば
あり、次には子牛の発育状況があり、更には子牛の手
25kgを引いて239kg増体させねばならず、1日当増体量
を0.8kgとすれば、これで割って298日齢まで飼うとな
るわけです。長屋牧場の場合、ここまで飼う必要もな
いでしょうが、現在の飼養日数ではやや、早すぎると
考えられます。これについては中央市場で高く売れて
いる日令、体重はどのようになっているかをよく調べ、
その結果から決めていけば良いと思います。最後に手
入れ、調教の問題がありますが、これはいうまでの事
もありません。なお、注意を要する事は、市場価格で
お気づきのとおり7産を越えると、一般的に子牛は安
くなります。従って、仮に子牛を6産取るときめたと
●さっそく体高を測りました
21
すれば、毎年子牛を生ませる事は困難なので、期間は
7年かかるとして、成牛となって7年間で6産させると
を導入する等、ますます、精度の高い記録・記帳を行
いう目標になります。50頭の成雌牛経営とした場合は、
い、分析し、将来の経営改善のための重要な基礎資料
7で割って7頭、これが1年間に更新すべき頭数となる
としてご活用下さい。
わけです。これは大変な事ですが、これを怠ると、途
なお、将来に備えて、恵子さんの名前で農協に預金
端に老牛がふえ、受胎率が低下するとともに、子牛価
口座をつくり、子牛を市場で1頭売る毎に農協が3万円
格も安くなるので注意して下さい。肥育農家の皆さん
を天引きし、この口座に振り込み、妹さんのやり甲斐
は、いまの時代に合った良い子牛を目標に購買してい
にするとともに、何かの時の非常用対策の貯金にした
くものです。子牛価格を高めるためには、以上のよう
らとお話したところ、経営者の静枝さん、利幸さん、
な沢山の条件が必要となります。長屋牧場の態勢で進
勿論恵子さんも喜んで、それをやっていこうとの話に
むならば勿論、子牛価格を高める事は十分に可能です。
なりました。
よく考えて進みましょう。
長屋牧場がますます発展されますように、心からお
最後に、多頭飼養になりますと、経営管理が極めて
祈りいたしますとともに、今回の取材にあたりまして、
重要な事になります。各種のデータの収集に記録及び
資料の提供やいろいろなお世話を頂きました山口県畜
整理、これが非常に重要な部門になってきます。長屋
産振興協会改良増殖部の野島技術主任さんに厚く御礼
牧場の場合は、結婚して近くに住む恵子さんが経営管
を申し上げ、筆を置かして頂きます。
理を担当し、簿記の記帳を行っていますが、パソコン
実力発揮!! 松福美
昨年、12月13日に行なわれた、近江牛枝肉共励会(35頭出品)で、なんと松福美が
6頭出品されました。さらに4頭が格付け“A−5”と素晴らしい成績でした。
種雄名
母の父
性 別
枝肉重量
格 付
単 価
枝肉金額
松福美
糸北富士
雌
410
A-5
3,862
1,583,420
松福美
竜雲
雌
423
A-5
3,412
1,443,276
松福美
糸晴波
雌
380
A-5
3,207
1,218,660
松福美
北国7-8
雌
409
A-4
3,002
1,227,818
松福美
第22平茂
去
518
A-3
2,002
1,037,036
松福美
安福花
去
529
A-5
1,852
979,708
22