公共 図書 館の 障害 者サー ビスと視 覚障 害職 員の 仕事 21 【2014 京都自治研集会第 2 分科会「京都自治研賞」受賞レポート】 公共図書館の障害者サービスと 視覚障害職員の仕事 京都府立図書館のサービスを例にして 自治労京都府職員労働組合 仁科豪士 (2) 図書館利用の障害 図書館の障害者サービスとは ア 物理的障害 心身障害のほか入院、施設入所などの理由 (1) 図書館の障害者サービス で来館できない。 来館できても書架の間を自由に移動できな 図書館利用に障害のある人々へのサービ い、高いところにある資料をとることができ スの一般的な呼び方として使われている用 語。 すなわち、図書館利用の権利を有するす ない イ (読字障害)などにより、そのままでは図書 のものを持っていないことにともなうサー ある。利用対象者としては、(1)心身障害 者、(2)入院患者、(3)在住外国人、(4) 非識字者、(5)刑務所等への入所者などが 挙げられ、 (中略) 図書館サービスにおける「障害者サービ ス」の「障害」は、決して医学的な意味で の「障害」ではなく、すべての人への図書 館サービスを行う際に、そこから疎外され る人々、不利益を被る人が存在していると いう意味でとらえていかなければならな い。 資料をそのままでは利用できない障害 視覚・聴覚・上下肢障害やディスレクシア べての人に対して図書館が対応できるだけ ビスの不均衡を克服するためのサービスで 等。 館の資料を利用できない ウ 等。 コミュニケーション障害 図書館職員とのコミュニケーションが困難 等。 京都府立図書館の障害者サービス (1) 沿革 2001 年 5 月 新館オープン、対面朗読室 2 室 を設置。 2002 年 6 月 視覚障害がある職員を配置(担 当業務:障害者サービス)。 2002 年 11 月 対面朗読の利用促進などを図る ため、利用制限の緩和など制度を見直 「障害」は人の側にあるのではなく、図書 館の側にあるのである。 (以下略) 図書館用語辞典編集委員会/編「最新図書館用語大 辞典」柏書房、2004.4、より。 し(「視覚障害者サービス規定」の制 定)。 点字版・拡大文字版の利用案内作成。 2003 年 4 月 近畿郵政局長から「盲人用録音 物等発受施設」(現在は「特定録音物 22 等発受施設」)の指定を受け、視覚障 よる文字拡大、音声読上げ、表示色変更、ふ 害者に対する郵送での音声資料の貸出 りがなつきページの掲載等)。 し開始(郵送料無料)。 2004 年 市販の DAISY(※ 1)資料の購入、貸 出開始。 2007 年 図書館ホームページに所蔵 DAISY 資 料一覧の掲載開始。 2009 年 3 月 DAISY 版、墨字版の「所蔵音声 ク、誘導鈴、多目的トイレ、車椅子用閲覧席 等の設置)。 ・車椅子の貸出。 ・貸出冊数、期間の配慮(身障手帳等所持者は 10 冊、1 ヶ月間)。 資料目録」作成。府内の市町村図書 ・対面朗読。 館・読書施設、府立盲学校、視覚障害 ・点字資料の提供。 者施設等に配付。 ・音声資料(DAISY、カセットテープ、CD)の 2009 年 4 月 府立盲学校への連絡協力車の運 行開始。 2011 年 10 月 音声資料貸出対象者の拡大につ いて検討開始。 2014 年 3 月 「所蔵音声資料目録」(DAISY 版、 墨字版)の更新、配布。 2014 年 4 月 「視覚障害者サービス規定」の 貸出(対象は視覚障害等のため活字による読 書が困難な人。通常の図書館カードの交付に 加え、サービスの利用登録が必要)。 ・大活字本の貸出(障害の有無に関わらず誰で も利用可)。 ・国立国会図書館学術文献録音サービス申込み 受け付け(対象は音声資料貸出と同じ)。 改正、音声資料の貸出対象を「視覚障 ・拡大読書機、音声読書機の設置。 害等のため活字による読書が困難な ・音声化ソフト対応インターネット閲覧端末の 人」(以下「視覚障害者等」)(※ 2)に 拡大。 ※1 ・施設・設備の整備(視覚障害者用誘導ブロッ DAISY:Digital Accessible Information System 設置。 ・ファックスによる調査相談の受付。 私の担当業務等について (アクセシブルな情報システム)の略称。デジタル 録音図書製作のための国際標準規格。CD1 枚に最大 50 時間程度の録音資料の収録が可能、聞きたい箇 所への移動やしおり付けが容易。 ※ 2 どのような人が「視覚障害者等」にあたるかに ついては、日本図書館協会障害者サービス委員会ホ ームページに掲載の「図書館の障害者サービスにお ける著作権法第 37 条第 3 項に基づく著作物の複製 等に関するガイドライン」参照。 http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/index.html (1) 担当業務 ・対面朗読に関する業務(音訳者の選定、日程 調整、資料の準備、実施起案、実績報告等)。 ・DAISY 資料の購入、整理に関する業務(選書、 購入起案、目録への登録、装備等)。 ・ホームページに掲載の DAISY 資料一覧の更新。 ・音声資料の貸出業務(相互貸借による貸出を 含む)。 (2) 現在実施している障害者サービス 詳細は図書館ホームページの「障害のある方 ・音声資料目録(DAISY 版、墨字版)の作成、 提供に関する業務。 へのサービス」参照。 http://www.library.pref.kyoto.jp/syougai_1.html (2) 業務遂行に必要な配慮等 ・図書館ホームページのユニバーサルデザイン ・業務用パソコンへの画面音声化ソフト、点訳 化(ウェブ・アクセシビリティ支援ツールに ソフトなど視覚障害者用ソフトのインストー 公共 図書 館の 障害 者サー ビスと視 覚障 害職 員の 仕事 23 ル。 ・点字ディスプレー、点字プリンターの設置。 公共図書館で働く視覚障害職員の会 ・職場介助者(ヒューマン・アシスタント)の (通称:「なごや会」)について 配置。 発足:1989 年 9 月、公立図書館で働く視覚障 他館で行われている 障害者サービスの事例 害者を中心に結成。 活動内容:障害当事者としてまた専門職員とし て、公共図書館の障害者サービスの発展・ ・点字、録音資料の製作。 向上をめざす取り組みを行うとともに、公 ・点字絵本、触る絵本、布の絵本の製作。 共図書館への視覚障害者の雇用促進を求め ・拡大写本の製作。 る活動を展開。 ・障害者用冊子小包を利用した墨字資料の郵送 貸出。 ・自宅配本(宅配)サービス。 ・視覚障害者を対象としたデイジー再生機、パ ソコン等読書支援機器の利用講習。 ・盲聾者(視覚と聴覚の障害を併せ持っている 人)を対象としたパソコン講習。 ・聴 覚障 害者 用字 幕付 きビ デオ (DVD) の 製 作・貸出。 ・視覚障害者等を対象とした DAISY 資料の配信 サービス。 会員数(2014 年 1 月末現在):47 名(うち 24 名が 17 自治体の公立図書館で勤務)。 会の詳細は、以下を参照。 ・なごや会ホームページ http://homepage2.nifty.com/at-htri/nag-index. htm ・公共図書館で働く視覚障害職員の会/編著 『見えない・見えにくい人も「読める」図 書館』読書工房、2009.11。ISBN:978-4-90 2666-22-9
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