市民による女川原発の安全性を問うシンポジウム

2015年11月23日
被災原発を再稼動させて大丈夫!?
市民による女川原発の安全性を問うシンポジウム
パネリスト・小倉志郎(元・原発技術者)
1.自己紹介;
*1941(昭和16)年5月、東京生まれ。
(池上本門寺の門前町)
*1945年5月空襲を体験。8月敗戦を迎え、衣食住すべて不足から記憶が始まる。
*学生時代、原子力は日本のエネルギー資源不足の「救世主」であることを信じた。
*1967年 4 月、日本原子力事業(株)=原子力専業、後に東芝が吸収合併=に就職。
*1979年、TMI 事故(炉心メルトダウン)で原発の安全設計に疑問を感じ始めた。
*1983年、原発の汚染現場が職場となり、被ばく防護の困難さが身に沁みる。
*1986年、チェルノブイリ事故の被害の深刻さに驚く。
(事故後5年、ソ連崩壊)
*2002年3月、定年退職。35年間の原発関連業務を終える。
*2002年5月から軍隊を捨てた国コスタリカについて学び始める。
*2007年5月、友人から奨められ「原発を並べて自衛戦争はできない」を執筆。
*2009年1月、
「内部被ばく」の脅威を知り、脱原発に確信を持つ。
*2011年3月 5 日、放射線の健康への影響が子どもにもわかる紙芝居「ちいさな
せかいのおはなし」を創作・上演。その6日後に福島原発事故が起きた。
*2012年前半、国会事故調の協力調査員に雇われる。ワーキング Gr1に所属。
*2013年4月、原子力市民委員会の発足直後に同会に参加。規制部会に所属。
*2014年7月、
「元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ」(彩流社)を刊行。
*2015年9月、絵本「放射能ってなんだろう」(彩流社)を刊行。
2.原発の危険性と安全性
*危険性の核心は「放射能」。他の産業との決定的な違い。その上、原発はシステムが
複雑すぎて一人の技術者が全貌を隅々まで把握することが不可能。
*安全性とは?立場によって「安全」の意味・内容が異なる。(政府、電力会社、住民)
*新しい規制基準(2013 年施行)には「安全」の定義が書かれていない!
*原子力規制委員会は原発が規制基準を満たしても「安全」を保証しないと公言。
*事故を起していない原発からも低レベル放射能が環境に継続的に放出されている。
*女川原発の被災状況の全貌を把握することは不可能。特に、塑性ひずみ、残留応力、
クラックなど、さまざまな部位の隠れた劣化。
3.再稼動の可否
*誰が、何を基準に、その判断をするのか? 住民が判断に参加しなくて良いか?
事故が起きる確率? 事故によって放出される放射能の量? 避難できるか否か?
再び故郷に戻れるか? 始末できない使用済核燃料が増えることを許すか否か?
事故がなくても放出される継続的な低レベル放射能の影響をどう考えるか?
-以上-
リベラル21
lib21.blog96.fc2.com/
私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてインターネット上に市民のメディア、リベラル21を創った。
2013.03.01 「原発の安全」とは?-普通の市民の感覚で-
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2291.html
小倉志郎 (元・原発技術者)
今、日本中を、原発の安全性についての色々な意見が飛び交っている。
安全だというもの、危険だというもの、わからないというもの。この現象は日本国内にとどまら
ず、世界中にも言えることだ。
2011 年 3 月 11 日の東京電力福島原発事故(以下、3・11原発事故)の発生を見て、原子力
政策を変えた国もあれば、変えなかった国もある。当の日本においては、2030 年代に原発ゼ
ロを目指すとした民主党政権が昨年末の衆院選で大敗し、後に生まれた自民党政権は逆に
原発の推進を掲げている。日本の原子力政策も混乱状態にあると言わざるを得ない。その自
民党政権ですら、原発の再稼動には「安全性が確認されること」を条件にせざるを得ない状
態、即ち、現状の原発をそのまま「安全だ」とは言えないのだ。
いったい本当のところはどうなのだろうか。
「原発の安全」をどう考えたらよいのか?日本の原子力政策はこれからどうしたらよいのか?
これはとても大きなテーマであり、今すぐ一つの結論を出せるものではないが、以下に私が記
すことが、世間を洪水のように流れる原子力関連の情報に触れ、その情報を解釈する上で何
らかの参考になれば幸いである。
3・11原発事故によって「安全神話」がウソであることがバレてしまったと世間ではもっぱらの
評判である。正確には「『原発は安全だ』というこれまでの電力会社や政府の言っていたこと
は事実ではなく『安全神話』であることがわかった」と言うべきであろう。そして、現在も原発に
ついての「安全神話」はまだ死んでおらず生き残っているが、3・11原発事故後、その神話を
信じる人びとが激減したということである。しかも、原発の再稼動を急ぐ電力会社や政府は
様々な方法を駆使して、「安全神話」を信じる人々を再び増やそうと事故の直後から最大限の
努力を続けている。
2011 年の夏に、菅直人首相の主導で突然始まった「ストレステスト(以下、ST)」と称する手続
きは、反原発派の井野博満・東大名誉教授や後藤政志・元原発設計者などを意見聴取会の
委員に含めるなど、手の込んだ演出までして公平性が印象づけられた。各電力会社からはS
Tの手続きに従って、自社の原発が設計条件の何倍の地震まで耐えるかなどという評価報告
書が原子力安全保安院(以下、保安院)に提出された。井野、後藤両氏の電力会社の報告へ
の技術的な追求により、保安院による審理は遅れて、ダブルチェックをすると言われる原子
力安全委員会への保安院からの報告も遅れ、とうとう 2012 年の 5 月には運転中の原発がゼ
ロという日本の原発導入後初めてという事態が生まれた。しかしながら、菅首相の後を継い
だ野田佳彦首相は、翌 6 月 8 日の記者会見で「国民生活を守るために」と称して、関西電力
大飯原発 3 号機と 4 号機の再稼動を決定を表明し、運転中の原発ゼロ状態は短期で終わっ
てしまった。
一方、2012 年の 1 月からは国会事故調という憲政史上初めてという国会内に設けられた調
査委員会の調査活動が始まり、10 人の正規委員の下での協力調査員という名目で私も調査
に参加させてもらった。この国会事故調による公開ヒアリングの場において、原子力安全委
員会の斑目春樹委員長は、3・11原発事故までの原子力安全規制のための基準もそれを運
用する官僚たちの能力も事故を未然に防ぐにはまったく不十分であり、今後はそれらの抜本
的改善が必要であることを実に正直に認めた。そういう事実が、昨年秋以降、新しい原子力
規制委員会が原発を推進してきた経済産業省の下ではなく環境省の下にでき、且つ、新しい
原子力安全基準の策定が行われるきっかけになっている。現在、新しい規制委員会の下で
新安全基準の骨子案がつくられ、それに対するパブリックコメントの募集の真っ最中である。
即ち、現在運転中の大飯原発 3 号機と4号機は、新たな安全基準が策定されるのを待たずに
再稼動し、運転を続けており、3・11原発事故と同じような事態がいつ起きても不思議ではな
い状況にある。これが大問題として大手マスメディアで報道し続けられないこと自体が、日本
の大問題だと私は感じている。
本来、これまで世間に「安全神話」を長期に亘って醸成をしてきた電力会社、経済界、政府、
御用学者、大手マスメディア、大手広告代理店など「原子力ムラ」の関係者が自覚し、反省を
しなければならないところだが、あろうことか、彼らは「安全神話」の復活に向けて相変わらず
連携をしているのが実情である。彼らの責任がたとえようもなく重大であるにしても、騙された
私たち国民にも責任の一端がないわけではない。では私たちはいったいどうすればよいの
か?「原子力ムラ」が流す情報やニュースを鵜呑みにしないこと」などと言っても抽象的すぎて
具体的にどうしたらよいか困る。そこで、それらの情報に騙されないためのヒントを一つだけ、
原発技術者として過ごした 35 年間の体験を基に紹介したい。
40 年ほど前、私がまだ 30 代の現役社員で原発メーカーの設計・技術部門に在籍していた頃、
原発の安全系のシステム設計に、「確率論的安全解析」という手法が導入された。即ち、シス
テムを構成する機器やその部品が故障・破損する「確率」から、システム全体の故障・事故の
発生確率を求め、ひいては、原発の安全性をどの位の確率で確保することができるかを評価
し、システム設計に反映するということだ。そのような手法で設計内容を解析すると原子炉の
炉心が損傷する確率は 10 のマイナス 6 乗(百万分の一)未満になっているから安全だという
のである。そのように設計に「確率」という考え方を取り入れるという考え方に、当時はとても
新鮮な印象を持ったことを覚えている。
それから間もなく、こんどは「リスク評価」という考え方を教えられた。即ち
、[リスク(R)]=[事故・故障の確率(P)]×[事故・故障による被害・損害の大きさ (D)]
ということだ。この考え方が、具体的に設計に反映されたという記憶はないが、これによって、
事故や故障を単に「確率」だけに注目して評価するのでは不十分だということだけは、はっき
りと教えられた。つまり、「リスク」をあるレベルに抑えようとするなら、「被害・損害の大きな事
故・故障」は「被害・損害の小さな事故・故障」よりも起きる「確率」をより小さく抑えねばならな
いと。
上記の「R=P×D」というのは簡単な数式のように見えるが、現実には、確率Pも被害Dもそう
簡単に数値では表せない。原発に組み込まれる機械や装置は、長い歴史のある一般産業用
の機械や装置と違って特殊なものが多く、確率Pを算定できるほどデータがないし、被害Dに
いたっては、3・11原発事故を見てもわかるように、何年後に再開できるか予想もつかない農
業・漁業・酪農業・林業など一次産業の被害、放射性物質による内部被曝の将来の疾病の可
能性、故郷に戻れない人々の精神的喪失感、地域の伝統文化・芸能の継承の断絶、市場経
済には乗っていないが地域住民の生活の糧になっていた海の幸・山の幸の喪失、などなどと
ても数値で表せないからだ。だから、この式は、計算のためというよりは、思考のための参考
になる概念と言ってよい。(もちろん、ある特殊な設計対象においては、数値を入れて「リスク」
を数値化できる場合もないわけではない。)
さて、上のようなリスクの概念を基にして、「原発のリスク」を評価したら、どのような結果が出
るだろうか?「原発のリスク」を自分が許容できる範囲にしようとしたら、皆さんはいったいど
のような結論を出すだろうか?この場合、一つの正解があるわけではなく、一人ひとりで結論
は違ってよいので、皆さん、一人ひとりで一度考えて自分の結論を出してみることをぜひお奨
めしたい。世間で「専門家」と言われている人々よりも、むしろ、普通の感覚を持った市民の方
がより正しい結論が出せるだろうと私は信じている。
小倉志郎(おぐら・しろう)氏略歴
1941年東京生。慶大工学部卒、同大学院機械工学修士。
日本原子力事業(後に東芝が吸収合併)に入社。35年間、原発の開発・建設・運転の全過程
に従う。退職後、匿名論文「原発を並べて自衛戦争はできない」
http://chikyuza.net/n/archives/8887 執筆を機に、平和・反原発運動へのコミットを深める。
「3.11」以後は、講演会などに多忙な日々を送る。「軍隊を捨てた国コスタリカに学び平和を
つくる会」世話人。
Category (社会)
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