台湾から“学ぶ” 呉

奨励賞
台湾から“学ぶ”
くれ
ち
ゆ
か
呉地 佑香 青山学院大学 3年
凛としている、というのが私の印象だった。そんな地域に住む現地の女性から衝撃的な言
葉をかけられた。
特別賞
「羨ましい。」
大学生3年目の夏、そこで過ごした出来事を私は一生忘れることはない。それだけ衝撃的
で思い出深い時間を過ごすことが出来たのは「台湾」だからであったのだろう。これから述べ
ることは私の実体験に基づく「台湾」という場所の考察であり、そこから私から見た台湾とは
どのような場所かを伝えていきたい。
学生でいられるのもあと2年、そのうちに何か新しいことに挑戦してみたかった私は授業で
学んだ中国語を武器に台湾に留学することを決意した。しかし台湾がどういう場所かどういう
人がいるのかなど何も知識がなく、怖さ半分で飛行機に乗り台湾に向かった。着いて景色を
見渡したとき、正直呆気にとられた。ゴミも少なく綺麗な街並みで日本とあまり風景は変わら
ず、言語も似ているため外国にいるという実感が沸かなかったくらいだ。しかし台湾の淡江大
学で一ヶ月間過ごし、徐々に台湾という地域を知り、様々なことを理解することができた。
例えば食べ物・飲み物が甘いこと。台湾でお茶を買うと基本加糖してあり、甘い。台湾人
は感覚的に甘いものが好きなのか、気候的に暑く糖分を多く取る事が習慣的にあったから
か、いくつか説があり実際なぜかははっきりとは言えないが甘いものがとにかく多い。
また、犬が放浪していること。道端を歩いているとリードをつけていない犬が自由に歩き
回っていて、お店の前で寝ている犬もいた。留学生の中には狂犬病の可能性を喚起する人も
いて私達は極力近づかないようにしていたのに対し、台湾人は気にする素振りもなく通り過
ぎるだけであったのが印象的であった。
そして台湾人が凄く優しいこと。それは日本人のみならず、誰に対しても親しみを持って接
してくれる。本プログラムに参加した海外留学生は日本人のみならずアメリカ人、中国人、韓
国人など様々な人種の人がいて、少なくとも私達留学生には本当に親切にしてくれた。大学の
近くにあるレストランの店主は私の拙い中国語に付き合ってくれ、いつもにこやかに迎えてく
れた。MRT(電車)に乗っている最中、かつては兵隊さんであったと言う老人が日本語でニ
コニコと声をかけてくれた。龍山寺では私達がひいたおみくじの内容を老人が日本語で丁寧
に解説してくれた。ボランティアの淡江大学の学生は九份や中正記念堂、真理大學など様々
な観光スポットへ連れて行ってくれた。授業をしてくれた先生は文化を学ばせたいと、台湾名
産品のパイナップルケーキ作りをするために140年以上の歴史を誇る台湾菓子の老舗「郭元
益」へ連れて行ってくれた。このように、親切心に囲まれ過ごした一ケ月であった。
そんな中、私は冒頭の言葉に出くわす。
「日本の女の子はいつも綺麗で羨ましい。服も可愛
くていつもオシャレ。」
台湾では日本の雑誌が多く売られていて、女性ファッション誌『RAY』は月13万部、
『ViVi』は月11万部売り上げをあげるなど人気がある。このように日本のお洒落を参考にして
いる人が多いが、現状は厳しく台湾のアルバイト時給は日本円に換算すると300円程度で、台
湾で売られている日本の服は現地の服より2〜3倍高く現地の人にとってなかなか手が出しにく
い高級品となっている。実際彼女たちの多くが身につけているのは1000円〜2000円で買える
品質があまり良くない服であり、日本のファッションを真似するにはお金がかかるのだ。
しかし台湾人には日本人にない良さがある。それは夢に向かってまっすぐ進み、皆がそれ
ぞれの形で自らが住む土地を思っていることだ。
それを実感したのは私達留学生の台湾での生活をサポートしてくれた台湾人女性に中正
記念堂に連れて行ってもらった時だ。彼女は私達に対して台湾の歴史を語ってくれ、そこで
彼女から台湾人としての誇りを感じた。そんな誇り高き台湾人の暮らす地域ではつい最近変
動が起きた。投票率67.59%の選挙で国民党が歴史的大敗をした。これを機に台湾は違った
方向へ進もうとしていて、それは国民が長らく夢見た姿でもあるのだ。
それはかつて、日本人があった姿ではないだろうか。常に前を向き、この国を良くしようと
人々の多くが立ち上がった。向かう方向性は違えど皆志を持って生きていた。それが今では
全く異なる国になってしまったように思える。前回の衆議院議員総選挙の投票率は過去最低
の52.66%。政治に関心を持たない日本人が多いと言われる現状。変化を望む人はいても、具
体的な行動には移さない。国は向かうべき、あるべき方向性を見失いつつある。
しかし変化を望むならそれに等しく努力をしなければならない。そしてその努力の方向性
を示す人が現れるのを待つのではなく、私達国民がどうありたいかを再度考え、国の方向性
について考えていかなければいけない。そう、台湾から学んだ気がする。そしてそれが私から
観た台湾なのである。