福島県白河地域、 鎌房山火砕流堆積物の地質学的および岩石学的研究

福島県白河地域、
鎌房山火砕流堆積物の地質学的および岩石学的研究
09s5031n 松浦奈央(指導教員 長谷川健)
鎌房山火砕流堆積物で形成されている鎌房山は
東北日本孤火山フロント沿いの、福島県と栃木県の県境付近に位置する
鎌房山および鎌房山火砕流の東側には白河火砕流が分布、西側には那須火山群が連なる
1.はじめに
白河火砕流
隈戸火砕流堆積物
Ma
芦野火砕流堆積物
0.03
西郷火砕流堆積物
二岐山
天栄火砕流堆積物
鎌房山火砕流堆積物
甲子旭岳
那須火山群
鎌房山
0.36
鎌房山
白河地域
那須地域
茶臼岳
南
月山 朝日岳
那須火山群
玄武岩~
安山岩質
三本槍岳
0.43
三本槍岳
羽鳥カルデラ
1
朝日岳
0.42
茶臼岳
南月山
0.54
鎌房山火砕流の
分布、年代、組成
は那須火山群と
白河火砕流群の
中間的位置を示す
鎌房山火砕流
鎌房山
火砕流
甲子
旭岳
安山岩~
デイサイト質
0.59
1.06
天栄火砕流
N
西郷火砕流
参考:吉田・高橋(1991)
2.結果:地質学的特徴
火砕流堆積物
弱溶結部
降下火砕堆積物
火砕サージ
堆積物
二次堆積物
強溶結部
炭質物層
石質岩片密集
灰色
軽石
礫種の量比 軽石の内訳
白色軽石
石質岩片
スコリア
軽石
二回目の噴火
2-10
1クーリング
ユニット
+
6フロー
ユニット
+
3フォール
ユニット
20露頭の総合柱状図
を作成(左図).
炭質物層を境界に
2回の噴火に区別し、
それぞれ3ユニットと
10ユニットに細分.
鎌房山火砕流堆積物を
地質学・岩石学的の
両面から検討し、
層序区分を行ったうえで
当火砕流の噴火推移と
マグマ組成の変遷を考察する
2
目的
鎌房山火砕流は
両地域の
噴火活動の推移や
組成変化の過程を
解明するにあたり
重要な火砕流
鎌房山火砕流と
その発生前後の
火山活動の特徴を
比較、検討する
3.結果:岩石学的特徴
岩石記載・モード測定
鎌房山
N
1km
ユニット区分法
軽石
集積
1クー
石質 リング
岩片 ユニット
集積
斑晶のみ
鉱物組み
あわせ
弱溶結
強溶結
非~弱
溶結
構成物量比を作成(左図).ユニット2-7から
スコリアが増加し、その後も割合は高い.石
質岩片は2-5,2-9,2-10の石質岩片密集層
で割合が高い.2-10上部では軽石が灰色
軽石のみになる.
2-8
2-7
2-6
2-5
2-4
2-3
2-2
2m
隈戸火砕流
調査地域:
1フロー
ユニット
2-9
デイサイト~
流紋岩質
芦野火砕流
1.31
非溶結部
白河火砕流
目的
斜長石
斜方輝石
単斜輝石
不透明鉱物
石英
全ての軽石と
一部のスコリ
アのみ
TH
CA
全岩主化学
組成
カルクアルカリ
系列に分類.
スコリアはlow-K,
軽石はMedium-K
にプロットされる.
斑晶量
20~
30%
上部のユニ
ットほど
石英の割合
が多い
斑晶量
10~
20%
ユニット
2-11の石
英の割合
が高い
火山ガラス
組成
全てのハーカー図で
連続的,一部のハー
カー図で
直線的トレンド
軽石の火山ガラス 組成拡大
どのハーカー図
でも直線的トレンド.
2-130cm
一回目の噴火
←炭質物層
1-3
1-2
SiO2量は
56~65wt
%で安山岩
~デイサイ
ト質.
3フロー
ユニット
1-1
0
100 0
100
多くのユニットで縞状軽石
および縞状スコリアが確認できる.
4.考察:噴火推移とマグマ変遷
軽石の組成において
ユニットの上部と下部
でCaO値とFeO*値、
Na2O値で違いが
見られた
4.考察:鎌房山火砕流の位置付け
鎌房山火砕流の噴火は今回は2回の噴火に区別した.
1回目の噴火 軽石またはスコリアを主体とする小規模な火砕流が交互に発生した.
鎌房山火砕流とその発生前後の活動の全岩主化学組成と
鉱物組み合わせを比較
2回目の噴火 プリニー式噴火から開始し、小規模な火砕流、降下火砕物、火砕サージ
が交互に発生し、最終的に大規模な火砕流が発生した.
全岩主化学組成と
縞状軽石など肉眼的に
+
火山ガラス組成が直線的トレンド 不均質な本質物質の噴出
組成の異なる2つ
のマグマが関与
+混合した可能性
TiO2
甲子旭岳
鎌房山火砕流
白河火砕流
ユニット
上部
ユニット
下部
ユニット下部→FeO*値高い,Na2O値とCaO値低い
ユニット上部→FeO*値低い,Na2O値とCaO値高い
珪長質マグマの
メルト部分は
Na2O,CaO,
FeOの値の違いで
2層になっている.
吉田・高橋
(2010)からは
白河火砕流、
佐藤(1987MS)
からは甲子旭岳、
三本槍岳、
朝日岳、
伴・ほか(1987)
からは甲子旭岳、
三本槍岳、
南月山、
伴(1987)及び
Ban Yamamoto
(2002)からは
茶臼岳の
データを
それぞれ使用
マグマ変遷のモデル図
1
メルト部分
高CaO,Na2O
低FeO*
低CaO,Na2O
高FeO*
多く石英含有
2
珪長質マグマ
の上部が噴出
斑晶量の少ない
苦鉄質マグマ
の注入
3
珪長質マグマ
の下部と
苦鉄質マグマ
の噴出
伴・高岡(1995)藤田(1988)NEDO(1990)吉田・高橋(1991)
白河火砕流とも年代が近い
甲子旭岳前期の噴出物とも
他の那須火山群とも
トレンドおよびプロット位置、
鉱物組み合わせが異なる
これらの
マグマとは
区別できる
年代が近く、鉱物
組み合わせも類似して
いる甲子旭岳後期
噴出物のデータは不明
今後、それとの
比較、検討が
必要