2015年度 事業計画 - 公益財団法人 ソニー教育財団

2015 年度事業計画および 2014 年度事業経過概要
2015 年度事業計画
Ⅰ
2015 年度は、ソニー(株)からの寄付金が無くなるという更に厳しい環境の中、ソニー
教育財団が目指してきた主題である「科学する心」に絞って焦点をあてた活動を展開する。
全事業の内容を見直し、講演テーマ、講師、プログラム構成から配布資料に至るまですべ
てにおいて「科学する心」を訴求、浸透させることに重点を置く。また、2014 年度に整備
され大幅に見やすくなった情報発信手段を活用し「科学する心」の更なる理解と普及を図
る。
「科学する心」に全事業で焦点を当てることは、この数年の最優秀を受賞した小中学校
の多くが「科学する心」で研究活動を見直し、幼児教育実践事例集を参考にしていること
から、全国の小中学校が同様の取り組みをすることで、子ども科学教育プログラムの質向
上が期待できる。
1.幼児教育への支援について
「科学する心を育てる」が当事業の主題であるが、2015 年度に発行する実践事例集から、
最優秀園実践提案研究会に至るまで、あらゆる場面で主題の訴求を更に徹底する。
(1)ソニー幼児教育支援プログラムの実践論文募集
2015 年度は 100 園以上の応募を目標とする。
募集にあたっては、入賞園や教育委員会、
SSTA の協力による普及活動を全国で展開する。
(2)最優秀園実践発表会と優秀園実践提案研究会
① 実践発表会: 2014 年度の最優秀園に選ばれた函館美原保育園で 7 月 4 日に、仙台
市めるへんの森幼稚園で 6 月 27 日に開催されることが決まった。函館美原保育園
では、かねてより「科学する心」に共鳴し、多くの園に論文応募を呼び掛けていた
だいている玉川大学の大豆生田教授を、めるへんの森幼稚園では、これまで多数の
実践提案研究会講師の実績があり、同幼稚園に論文応募を勧めた青山学院女子短期
大学の岸井慶子教授をそれぞれ講師として招聘する。
② 実践提案研究会: 優秀園が自主的に開催する、討議を中心とした研究会に対して
の助成を継続する。保育者だけでなく保護者も参加して熱心な意見交換を期待する。
この研究会でも「科学する心」の訴求を重視する。現時点ですでに 7 園から開催の
申し出がある。
③ 論文説明会と地域研究会:現時点で青森・福島・埼玉・東京・愛知・奈良・大阪・
兵庫・島根・福岡・鹿児島の 11 カ所で予定されている。特にこれまで論文応募が
少なかった青森、兵庫での開催は今後の応募増への期待がかかる。
(3)実践事例の紹介
応募論文より、優れた実践事例を取上げてホームページに掲載するとともに実践事例
集として配布している。今年度も昨年同様、監修をいただいている審査委員のご協力
により 4 月までに印刷し、各地の研究会などで幅広い活用を狙う。今年度の事例集は
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「科学する心を育む」プロセスをわかりやすく体系的にまとめ、保育者の取り組みを
容易にすることを目指した。近年、多くの保育関係の専門家がこの実践事例集を高く
評価していることから、申込みが大幅に増加しているため、今年度は 5,000 部を用意
する。
(4)
「科学する心を見つけよう」フォトコンテスト
保護者を対象に「科学する心を見つけよう」フォトコンテスト(第 8 回)の作品募集
を行っている。入選作品はホームページに掲載すると同時に、全国各地の科学館と連
携して展示するなど「科学する心を育てる」ことの大切さをアピールし普及を図る。
2015 年度は全国 6 カ所の科学館での写真展開催がすでに決まっている。
(5)2013 年度に始めた、井深ファウンダーの子育てに関する提言を再編集した「心をは
ぐくむ」冊子は、すでに 14,000 部以上を保育園、幼稚園や教育委員会を通じて配布し
た。今年度も継続して、各方面への配布を予定している。
2.子ども科学教育への支援について
「科学が好きな子どもを育てる」教育実践と次年度計画の論文を募集し、優れた取り組み
の学校に対して助成を行うのが「ソニー子ども科学教育プログラム」である。最優秀校
において、受賞の翌年に子ども科学教育研究全国大会を開催する。
(1) ソニー子ども科学教育プログラムの教育実践論文募集
2015 年度は、200 校の応募数確保を目標とする。募集にあたっては、教育委員会を通
しての募集、全国中学校理科教育研究会、全国小学校理科教育研究協議会、日本初等理
科教育研究会などとの連携、SSTA 支部での論文説明会開催などの普及活動を行う。各
地で開催される論文説明会では「科学する心」を教育に取り入れることの有用性を軸に
訴求をおこなう。
(2) 子ども科学教育研究全国大会
開催校周辺の学校やソニー科学教育研究会の教員をはじめとする全国の理科の教員が
参加して、教育に関わる情報交換や交流を行う。2014 年度最優秀校の東広島市立河内小
学校で 10 月 2 日、国立大学法人山梨大学人間教育学部附属中学校で 11 月 27 日に「子
ども科学教育研究全国大会」(公開授業と研究発表、入選校によるポスターセッション
など)を開催する。今年度の受賞校も、開催地の県・市の理科教育団体の協力を得て開
催される。河内小学校の講師には財団評議員、日本体育大学 角屋重樹教授を招聘し「科
学する心」の訴求を図る。
3.教員に対する支援
1963 年、ソニー理科教育振興資金の受賞校がメンバーとなって理科教育振興資金受賞校
連盟が結成された。ソニー教育財団(当時、ソニー教育振興財団)は、同連盟の研修活
動等を長年にわたり支援してきたが、2002 年に同連盟が改組されソニー科学教育研究会
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(SSTA)が発足した後も、更に充実した支援を継続している。日本初等理科教育研究会、
全国小学校理科教育研究協議会等の、志を同じくする団体に対して、各団体の独立性を
尊重しつつ連携支援を行う。
(1)SSTA への支援
SSTA は「科学が好きな子どもを育てる」教育を推進する教員の自主的な集まりで、全
国に 49 支部があり、会員数は 2,040 名である。各支部、いくつかの支部をまとめたブ
ロック(東日本・中日本・西日本・九州)、全国レベルでの研究・研修などの活動を行
っており、当財団はこのような活動を支援している。
① SSTA の活性化
SSTA 各支部の活動状況は地域の環境(専科制などの制度面、教員の年齢構成など)
により多様である。支部訪問を通してその状況を把握し、SSTA 事務局と協働して適
切な支援を行うとともに、研修会の開催支援を通して、新規会員の獲得や小規模支
部の活性化などの効果が現れている。2015 年度もこの活動を継続し、さらに、SSTA
全体の活性化を行うことで会員数の増加及び研修会の質の向上を支援する。
② SSTA 全国特別研修会
科学教育の中核として、若手を指導するリーダー教員を養成するための 1 期 2 年間
の研修会である。2015 年度は第 7 期 2 年次となる。新学習指導要領をも視野に入れ
た発展的な内容を目指す。7 月 24 日~27 日に開催する。今年度より、高い利便性と
低コストを追求すべく、丸紅多摩研修センターに会場を移し、総勢 60 名を超える講
師・教員が参加する。昨年に続き、早稲田大学
露木和男教授と京都光華女子大学
菅井啓之教授による「科学する心」に焦点をあてた実践の啓発をおこなう。更に、
特別講師として「幼児期に育まれる科学する心」の著者である東京大学
秋田喜代
美教授を招聘する。
③ SSTA ブロック特別研修会
本研修会は支部の中堅会員養成を目的とした研修会である。ブロック内の各支部が
互いに協力することでブロック全体および各支部の活性化を図ることができる。
2015 年度は、栃木・愛知・和歌山・福岡の 4 カ所で行われる。
④ 若手教員研修会
若手教員研修会には SSTA 会員以外の参加も多く、SSTA の活動をより多くの教員
に知っていただく良い機会である。本研修会は参加する若手だけでなく、指導する
立場の開催支部中堅会員の能力向上と支部活性化にも有効であり、積極的に開催を
希望する支部が年々増えている。
2015 年度は山形・茨城・石川・広島・鹿児島の 5 カ所で開催される。
⑤ 「SEF サイエンスセミナー」「理科みらい塾」の開催とダイレクトメール活用
小・中学校の学習内容を「科学の原理・原則」でとらえ直し、研修会での科学的な
基礎知識として提供する「SEF サイエンスセミナー」を開催する。今年は昨年度の
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トライアルの成果をふまえたゼミ形式の研修として ①第 1 期の参加者がファシリテ
ーターとなり所属する支部での研修を支援 ②新規研修員の学びと第 1 期生を指導者
として養成するためのゼミ開催を軸として活動を展開する。
あわせて、やる気のある 10~15 名程度の教員を選抜し、最先端技術に触れたり、
「科
学する心」の深い理念を探究したりする場として「理科みらい塾」を開催し、中核
教員育成を目指す。
更に、新たな施策として、SSTA 会員へのダイレクトメールを開始する。
「科学する
心」の理解を深める情報や教育関係者の理科教育への趣意、研修会や身近な会員の
活動紹介など SSTA 会員に直接送付する(年 2 回の予定)
。
(2)海外教育団体との交流活動
2010 年度より、オーストラリアの ASTA(※)との交流を開始した。2014 年度に一時
休止したオーストラリア派遣は今年度再開する。限られた訪問期間を有効に活用すべく
プログラムの充実を図る。オーストラリアから日本への訪問は 5 回目となるが、現地で
非常に注目されているプログラムで、多くの参加希望者から選抜しているとのことであ
る。
※ ASTA: Australian Science Teachers Association
4.科学の泉-子ども夢教室
「科学の泉」は、『自然に学ぶ』を主テーマに、白川塾長を中心に、全国から公募した指
導員の先生方の協力を得て開催している。2005年以降、これまでに10回開催した。塾生
には異学年のグループ活動を通じ、自然の中で協力して探究活動を行い、学校の授業で
はできないような体験をしてもらうことを目指す。
2015年度は8月2日~7日(5泊6日)に、長野県青木村で開催する。塾生に関しては、3月
1日~4月16日まで公募を行う。開催にあたっては青木村など関係各方面の協力を得て、
恵まれた環境の中で活動の充実を図る。すでに青木村からは施設やバスの無償提供、村
役場職員によるスタッフなど手厚い支援の申し出をいただいている。
恒例となった交流会は 3 月 22 日に第 1 回から 10 回までの塾生を集めてソニー本社にて
開催される。現時点、これまでで最高となる 130 名以上の塾生から参加申し込みがある。
5.ソニーものづくり教室
ソニーエンジニアが講師・指導スタッフとして、小学校高学年~中学校の生徒を対象に、
ものづくりを通して科学教育を行う。
2015 年度も、これまでのように事業所や研究所、SSTA の協力を得て活動を展開する。
6.対外広報活動
2014 年度にリニューアルを行ったホームページや Facebook など、デジタルコンテンツ
の更なる活用と、教育関係者を中心に「科学する心」の理解を深めるための情報を発信
する。同時にソニー㈱広報センターとも連携し、活動内容をプレスリリースなどで地方
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紙や教育関連媒体を中心としたメディアに広く発信するなど、限られた予算を有効に活
用した広報活動をおこなう。
2015 年度はこれまで以上に事業間のつながりを重視し、ゼロ歳児から中学生まで「科学
する心」を育むことを軸に活動を展開する。ひとつの例だが、0 歳から 6 歳以下を対象と
したフォトコンテストの「科学する心」をとらえる考え方は、幼・初等教育での子ども
の姿のみとりに通ずるものがある。論文応募で、子どもの姿のとらえが優れた写真が紹
介されている論文は、実践内容そのものが優れていることが多い。
2014 年度事業経過概要( 報告事項 )
Ⅱ
当財団の活動の柱は実践論文募集を主体とする2つの教育助成、
「ソニー子ども科学教育
プログラム」
(小・中学校が対象)と「ソニー幼児教育支援プログラム」
(幼稚園・保育所・
認定こども園が対象)である。それぞれ「科学が好きな子どもを育てる」、
「科学する心を
育てる」を主題として実践論文を募集し、特色のある優れた教育を行う学校・園への助成
を行っている。
当年度は子ども科学教育プログラムで 184 件、幼児教育支援プログラムで 94 件の論文応
募があった。
実践論文募集と並んで、教員への支援は長い歴史がある。現在、ソニー科学教育研究会
(SSTA)の活動を中心に助成を行っている。SSTA の主要な研修会は支部(都道府県)を
越えて各地から教員が参加する宿泊研修であり、様々な地域の教員が密度の濃い議論と質
の高い研究・研修を共に行う場となっていることが他団体の研修にはない特徴である。当
年度は延べ約 5,000 名の教員が参加した。教員の科学的理解向上の支援プログラムとして、
「科学の原理・法則」を理解するゼミ形式の研修会を 5 回にわたり実施した。トライアル
としては十分な手ごたえがあり、話を聞きつけた教員からの参加希望や地方開催を希望す
る支部からの問い合わせが相次いでいる。
海外教育団体との交流は、2006 年度より米国の科学教員の団体と当財団および SSTA と
の交流を行ってきた。2010 年度からは、オーストラリアの科学教員団体との交流を開始し
た。2014 年度は、オーストラリアの教員 6 名が 9 月に日本を訪問、埼玉・千葉・東京の小
中学校と埼玉の SSH(スーパーサイエンスハイスクール)にて理科授業および交流活動が
行われた。
「科学の泉」は、白川英樹理事を塾長として、
「自然に学ぶ」をテーマに自然とのふれあ
いを通して科学を学ぶ活動である。第 10 回は新潟県十日町市で 2014 年 8 月 3 日(日)~
8 日(金)に開催され、28 名の塾生と 11 名の指導員が参加した。
2007 年度より実施している、小・中学生を対象としたソニーものづくり教室は、各地の
ソニー事業所のエンジニアが地元の子どもたちを指導し、好評を博している。2014 年度は、
新たにソニーストレージメディア・アンド・ディバイス、VAIO 株式会社、SSTA 長野支部
の新規参入があり、より多くの地域の子ども達にものづくりの楽しみを体験してもらうこ
とができた。
以上
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