2015年2月度 高齢者住宅研究会 高野先生ご講演議事録

【高齢者住宅研究会
高野先生ご講演議事録】
【日時】平成 27 年 2 月 6 日 【場所】東京本社【文責】川崎(船井総合研究所)
2015 年度介護保険制度改正と地域包括ケアシステムのゆくえ
~高齢者の「住まい」の位置づけと課題~
・ 今回の介護保険改正は、今までの制度改正とは比べ物にならないぐらいの改正である。
・ 介護保険そもそもの枠組みを壊す大改正となっている。
・ 改正の背景には 2025 年問題が背景となっており、大変厳しい報酬改定となっている。
・ 本日 2 月 6 日の午前中に制度改正の大枠より詳しいものが出てきた。
・ サービス付き高齢者向け住宅にどのような影響があるのかも交えて、お話します。
・ 介護保険改正を知るためには、地域包括ケアシステムを理解していなければならない。
~介護保険制度の方向性~
 給付費増、要介護認定者増、後期高齢者増、人口減、税収の不透明さといった要因から、「給費の
効率化(抑制)」が強調される
 地域包括ケアシステムの流れのなか、「自助」「互助」が強調され、保険給付以外のサービス商品が
求められる(しかし、限定的)
 人口構造や財政力などの地域格差により、「市町村ごとの体制整備」が強調される
 医療保険の財政問題から、「川上(医療)から川下(介護)へ」の流れが強調され、在宅サービスや
居住系サービスでの重度者および認知症対応が求められる
0.はじめに
<地域包括ケアシステムとは>
1.
高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続
することができるような包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すもの
2.
地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律
(1) 第 2 条第 1 項
① この法律において「地域包括ケアシステム」とは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り住み
慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予
防(要介護状態もしくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要介護支援状態の軽
減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制
1
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<介護保険制度の改正案の主な内容>
1.
地域包括ケアシステムの構築
(1) サービスの充実
① 在宅医療・介護連携推進事業(2018 年 4 月 1 日までに各市町村で実施)
② 認知症総合支援事業(2018 年 4 月 1 日までに各市町村で実施)
③ 地域ケア会議の推進(2015 年 4 月 1 日より)
④ 生活支援サービスの充実・強化
(2) 重点化・効率化
① 全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行し、多様化
(2017 年度までに段階的に移行)
② 特養の新規入居者を、原則、要介護 3 以上に限定(既入所者は除く)(2015 年 4 月 1 日より)
2.
費用負担の公平化
(1) 低所得者の保険料軽減を拡充(2015 年 4 月 1 日より)
① 低所得者の保険料の軽減割合を拡大
1)
給付費の 5 割の公費に加えて別枠で公費を投入し、低所得者の保険料の軽減割合を拡大
(ア) 保険料見通し:現在 5,000 円程度→2025 年度 8,200 円程度
(イ) 軽減例:年金収入 80 万以下 5 割軽減→7 割軽減に拡大
(ウ) 軽減対象:市町村民税非課税世帯(65 歳以上の約 3 割)
(2) 重点化・効率化
① 一定以上の所得のある利用者の自己負担を 2 割に引き上げ(2015 年 8 月 1 日より)
1)
2 割負担とする所得水準を、65 歳以上の高齢者の所得上位 20%の場合、合計所得金額 160
万円(年金収入で、単身 280 万円以上、夫婦 359 万円以上)
② 低所得者の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加
(2015 年 8 月 1 日より)
3.
1)
預貯金などが単身 1,000 万円超、夫婦 2,000 万円超の場合は対象外となる
2)
世帯分離した場合でも、配偶者が課税されている場合は対象外
3)
給付額の決定に当たり、非課税年金(遺族年金、障害年金)を収入として勘案
4)
特養、老健などに入所する人で、10 万円/月 増える可能性もあり。
その他
(1) 2025 年を見据えた介護保険事業計画の策定(第 6 期介護計画より)
① 第6期計画以後の計画は、2025 年に向け、第5期で開始した地域包括ケア実現のための方向性を
承継しつつ、在宅医療介護連携等の取組を本格化していく
② 2025 年問題に向けて目標を定めるため
1)
第一次ベビーブームに生まれた時代の人が 2025 年に後期高齢者になるため
(2) サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用(2015 年度に実施予定)
① 住所地特例とは
1)
介護保険においては、住所地の市町村が保険者となるのが原則だが、介護保険施設等の所在
2
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する市町村の財政に配慮するため、特例として、入所者は入所前の市町村の被保険者となる
仕組み(住所地特例)を設けている
② 変更点
1)
現在、サービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームに該当しても特例の対象外だが、所在
市町村の負担を考慮し、その他の有料老人ホームとの均衡を踏まえ、有料老人ホームに該当
するサービス付き高齢者向け住宅についても、住所地特例の対象とする
(3) 居宅介護支援事業所の指定権限の市町村への移譲(2018 年 4 月 1 日)
小規模通所介護の地域密着サービスへの移行(2016 年 4 月 1 日より)
① 一日あたりの利用定員 18 名以下
1)
地域密着型サービスに移行(市町村が指定)
2)
今回の改正で、小規模通所介護の報酬改定が-10%~-11%
(ア) 通常規模の通所介護は-6%
② ここ数年で一番介護給付費が増えているのが通所介護
1)
増えすぎたので厚生労働省が叩きにかかった
2)
特に都市部で増えている
③ 増加する小規模の通所介護の事業所について
1)
地域との連携や運営の透明性を確保するため市町村が指定・監督する地域密着型サービスへ
移行
2)
経営の安定性の確保、サービスの質の向上のため、通所介護(大規模型・通常規模型)や小規
模多機能型居宅介護のサテライト事業所へ移行
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I.
地域包括ケアシステムについて
1.
地域包括ケアシステムとは
(1) 可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制
の構築を目指すもの
2.
登場した背景
(1) 「住まい」が少ないというサービスが不十分であった
(2) 入れ物が無く、すぐに特養へという流れになっていたため
(3) 介護給付費の増加
① 介護保険制度ができてから、高齢者は「共助」と「公助」ばかりを使おうとしている
② あまりにも支出が増えたため、国は「自助」「互助」を推し進めている
③ 「共助」「公助」を抑えたい
(4) 要介護者などの増加
① 介護保険を利用する人の増加
(5) 国の財源逼迫
(6) 人工動態・人口構造の変化
(7) 高齢者住宅の問題と特養ホーム待機者問題
① 待機者が多く、実際足りていない状況
② 高齢者の住まい不足
(8) 多死社会の到来
① 死亡者数は右肩上がり
② 2030 年代の推計では年間 170 万人
3.
専門的なサービスを受ける前提の土台
(1) 介護・医療・予防という専門的なサービスの土台として、「住まい」・「生活支援・福祉サービス」が相
互に連携し、在宅の生活を支えよう(このシステムで高齢者を育てる)という考え
4.
介護保険法の改正
(1) 19 の法律を一気に改正
① 介護保険法
② 医療法
③ 保健師助産師看護師法
など
(2) 第 2 条(この法律の中で重要であり、まとめられた法律)
① 今回の改正により、初めて「地域包括ケアシステム」という文言が出てきた
(3) 法文による「地域包括ケアシステム」とは
① ニーズに応じた住宅が提供されること
1)
買い物が近い、地域の人と交流できる、医療機関が近い=ニーズに応じた環境
② 医療、介護、福祉サービスが身近な場で受けられること
4
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1)
そのために、4つの助けが必要となる
③ 4 つの助けを組み合わせたもの
5.
1)
自助・・・自らの健康管理(自分の出来ることは自分でやる)
2)
互助・・・ボランティア活動、住民組織の活動
3)
共助・・・介護保険に代表される社会保険制度
4)
公助・・・一般財源による高齢者福祉事業
生活支援サービス
(1) 1 人で生きていくことは難しく、色々なサービスを自然と使っている
(2) 介護保険適用外のサービス
① 互助による支援=地域のボランティア、NPO など
② 市場サービス=自払のサービス(ワタミの宅食サービス、家事代行サービス)
II.
介護保険制度改正について

新たな基金の創設と医療・介護の連携強化

地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)

地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)

その他


1.
看護師の特定行為の明確化(看護師が医者の指示が無くとも、医療行為が可能)
今回の改訂はイレギュラー

5 年おきだったが、今回は 3 年間での改正

大変逼迫しているということが読み取れる
課題
(1) 増え続ける給付費
① 給付費を使いたい高齢者
② 給付費を使いたい事業者
(2) 抑えたい財源
① 給付費を抑えたい財務省・財界
2.
改正の落しどころ
(1) お金を使うなら「効果」を
(2) お金を使うなら「根拠」を
3.
改正に向けての根拠
(1) 介護保険法の条文
① 保険給付は、要介護状態又は要支援状態の軽減又は悪化の防止に資すること
② つまり・・・予防給付や介護給付は要介護度をできたら良くするサービス。そうでないサービスは
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給付に値しない
1)
デイサービスでただ預かっているだけ、漫然と高齢者にサービスをしているだけの施設は今
回の改訂で減算となっている
2)
医療と連携・サポートを提供している施設は基本報酬減算したが、加算が付き、現状維持
③ 居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことが出来るように配慮されな
ければならない
4.
介護保険制度の改正の要点
(1) 効率化・・・つまり、費用抑制
(2) 重点化・・・つまり、軽度の人には使わせない
(3) 自己負担増・・・払える人は払え
(4) 医療・住宅政策との連動性
(5) 保険者(市町村)の自律性
① ここがややこしい改正点
② 各市町村の力量が問われる
③ 実施時期が違う
④ 要介護認定状態の改善(認知症を含む)
⑤ 医療との連携・多職種連携
5.
介護報酬改定の概要・・・「-2.27%」?!実際はー4.48%?!
(1) 介護職員の処遇改善加算・・・+1.65%
(2) 中・重度者の対応強化などの加算・・・+0.56%
(3) 収支状況を反映した適正化・・・-4.48%
(4) 全体として、「―2.27%」
(5) しかし、実態は「―4.48%」と考えた方が良い
(6) 特養・特定施設・・・-6%
(7) 老健・・・-3%
(8) サ高住などでの訪問・通所・・・-10%
以上
※今回の議事録は、テキストと高野先生のお話のポイントをまとめました。
※テキストの厚生労働省などの資料は、概要などまとめられているので、テキストをご覧ください。
議事録に関する、ご指摘・ご質問は
船井総研 川崎
TEL:090-6652-0591
まで
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