附中研究紀要57_p.138

第4章 カリキュラム評価
第1節
学校評価および生徒質問紙調査によるカリキュラム評価
馬淵 哲
本論の趣旨
本校の教育課程について,保護者および生徒は実際にどのような感想を持っているのか。平成 年 月に実施し
た全校生徒・保護者質問紙調査に基づく学校評価において,カリキュラムに関する項目を考察した結果,必修教科と
総合的な学習の時間によっても学力が高まっていると実感している生徒が多いことがわかった。
また,本校のカリキュラム全般についてさらに詳しく検証するため,平成 年 月に 年生徒を対象に実施した全
国学力・学習状況調査の結果を考察した結果,課題を立てて話し合ったり,発表したりする学習活動は,生徒の学習
課題に対する能動性を高め,それが必修教科の基礎・基本や論理的思考力を効果的に高めているということが言える。
キーワード 学校評価,質問紙調査,生徒,保護者,カリキュラム
1.学校評価
触れないように別に茶封筒を配付し,一週間以上の回答
学校評価について
期間を設けるようにした。
学校評価は,教員のみが行う従来の評価ではなく,保
③集計処理
護者および生徒による質問紙の回答を教員が分析し,そ
集計は,富士通のシートフィードスキャナ(6FDQVQDS)
の資料を学校評議員会,37$ 総会に提示し,助言を得て,
とコンピュータで行った。質問紙はシートフィードスキ
今後の学校運営や教育を充実させることに資するもので
ャナできちんと読み取ることができる上質紙を使用した。
ある。また,集計結果を保護者,生徒に,学校通信等で
自動集計ソフトによって,少人数で集計処理を行うこと
公表する。以上のような学校評価を平成 年度から 年
ができた。
間継続し,毎年 月に実施している。
④質問紙の内容
質問紙の の質問項目のうち,研究部に関連した学習
質問紙の内容と実施方法
活動に関する 項目を次表に示す。
①質問紙の内容
質問紙は,生徒,保護者を対象に,「強くそう思う」
調査方法,回答人数
「そう思う」「あまり思わない」「思わない」の 段階
無記名の質問形式とした。回答のあった保護者は の質問項目のほか,自由記述欄を設けている。項目は,
人および,欠席・無効をのぞく生徒 人であった。
以下の つのコンセプトで設計した。
ア.保護者質問紙と生徒質問紙の関連性を持たせる
集計結果とグラフ
保護者が回答する内容と生徒が回答する内容に,関連
校内向けには,年次変化,年度変化,学年別に帯グラ
性を持たせ,保護者の思いと生徒の思いを一緒に考察で
フで示して考察するが,本報告では,研究部に関連した
きるようにした。
学習活動に関する質問項目~のみグラフ に示す。
イ.教員組織と関連させる
本校教員は,教務部,研究部,生活指導部のグループ
分析結果
(企画部)のいずれかに属する。加えて,副校長と主幹
質問紙の結果では,質問項目~ともに保護者の本
教諭で評価,研修などを行う校務部を成している。
校学習活動への大きな期待が明らかになった。一方,生
目標と成果,課題と対策について,企画部ごとに話し
徒の質問紙からは,必修教科と情報の学習によっても学
合うため,学校評価と従来の教員のみが行う教師評価の
力が高まっていると実感していることが明らかになっ
質問項目を企画部ごとにまとめるようにした。
た。
ウ.単年度の評価にしない
年次ごとの変容を調査することができるように,数年
2.全国学力・学習状況調査
間,おもな質問項目は同じ内容にした。
[生徒質問紙]
②実施方法
質問紙の内容
保護者質問紙,生徒質問紙ともに,$ 版の再生紙に,
質問紙の の質問項目のうち,学習活動に関する 項
質問と回答が連続するように の質問項目をマークシー
目のみグラフ に示す。
トで印刷している。保護者質問紙は,回答が生徒の目に
— 138 —
難を感じていない生徒が多いことがうかがえる。
回答人数
また,総合的な学習の時間は,「普段の生活や社会に
欠席をのぞく 年生徒 人であった。
出たときに役に立つ」,「自分で課題を立てて情報を集め
集計結果とグラフ
整理して,調べたことを発表するなどの学習活動に取り組ん
本報告では学習活動に関連する質問項目を本校と全国
でいる」と答えた生徒の割合が高く,学習に意義を感じて
データを比較して示す。
主体的に取り組んでいることがうかがえる。
グラフ の本校解答率分布の比較から,ここ3年間は
分析結果
低位層が少なく,基礎・基本や活用力を継続して育成で
グラフ の質問紙の結果では,「1,2年生のときに受け
きていることが読み取れる。
た授業では,本やインターネットを使って,グループで調べ
グラフ のB問題解答率において,本校平均は全体的
る活動をよく行っている」,「1,2年生のときに受けた授業
に高く,また無解答率が低い傾向にある。本校生徒につ
では,生徒の間で話し合う活動をよく行っている」,「生徒
いては,情報を読み取り,解釈し,説明することがおお
の間で話し合う活動を通じて,自分の考えを深めたり,広げ
よそできており,また解答に対する積極性がうかがえる。
たりすることができている」と答えた生徒の割合が高く,
「学
これらの結果から,課題を立てて話し合ったり,発表
校の授業などで,自分の考えを他の人に説明したり,文
したりする学習活動は,生徒の学習課題に対する能動性
章を書いたりすることは難しい」と答えた生徒の割合が
を高め,それが必修教科の基礎・基本や論理的思考力を
本校については比較的少なく,そういった学習活動に困
効果的に高めていると考えられる。
[保護者]
[生徒]
教科の指導の充実を図り,
確かな力を身につけさせたい。
教科の学習によって,確かな力が身についている。
情報の学習を通して,視野が広がり,情報モラルとマナ
ーが身についた。
情報の学習を通して,インターネットなどの情報モラル
とマナーを身につけさせたい。
総合学習(BT,CT,情報)を通して,問題解決能力が身に
ついた。
総合学習(BT,CT,情報)を通して,問題解決能力を身に
つけさせたい。
総合学習(BT,CT,情報)を通して,郷土や身の回りの環
境を大切に思うようになった。
総合学習(BT,CT,情報)を通して,郷土や身の回りの環
境を大切にする心を育ませたい。
総合学習(BT,CT,情報)や進路学習を通して,社会や自
身の将来の生き方に関心を持った。
総合学習(BT,CT,情報)や進路学習を通して,社会や将
来の生き方に関心を持たせたい。
海外の学校との交流や国際理解学習を通し,国際的な視
野を広げさせたい。
グラフ 学校評価[生徒・保護者質問紙]
— 139 —
カリキュラム
評 価
野を広げたい。
海外の学校との交流や国際理解学習により,国際的な視
「総合的な学習の時間」の授業で学習したことは,普段の生活や社会に出たときに役に立つと思いますか㻌
んでいますか㻌
1,2年生の時に受けた授業では,自分の考えを発表する機会が与えられていたと思いますか。
1,2年生のときに受けた授業では,生徒の間で話し合う活動をよく行っていたと思いますか㻌
1,2年生のときに受けた授業のはじめに,目標(めあて・ねらい)が示されていたと思いますか㻌
学校の授業などで,自分の考えを他の人に説明したり,文章に書いたりすることは難しいと思いますか㻌
㻌
1,2年生のときに受けた授業では,本やインターネットを使って,グループで調べる活動をよく行っていたと思いますか㻌

「総合的な学習の時間」では,自分で課題を立てて情報を集め整理して,調べたことを発表するなどの学習活動に取り組
生徒の間で話し合う活動を通じて,自分の考えを深めたり,広げたりすることができていると思いますか㻌
㻌
グラフ 全国学力・学習状況調査[生徒質問紙]
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㻌
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平成24年度㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 平成25年度㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 平成26年度㻌
㻌 グラフ 全国学力・学習状況調査本校解答率分布>$・% 各比較@㻌 㻌 㻌 ○‥本校平均㻌 㻌 ◎‥全国平均㻌
㻌
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カリキュラム
評 価
グラフ 全国学力・学習状況調査B問題抜粋 解答・無解答率>本校・全国平均比較@㻌 㻌 㻌 㻌