乳癌多臓器多発転移合併神経 線維腫症1型の化学療法例 仲田 洋美1),2),, 石井 耕士3), 津村 貢太朗4) 1:香川大学医学系研究科がんプロ養成腫瘍内科コース 2:兵庫医科大学病院臨床遺伝部 3:社会医療法人財団石心会 川崎幸病院 整形外科 4: 社会医療法人財団石心会 脳神経外科 【 症例 】 • 40代前半女性。母・妹にカフェ・オレ斑あり。 201〇年×月両側乳房腫瘤を自覚したが,右 乳腺腫瘤の生検にて悪性所見なしとの結果. 定期的検診を勧められるも放置(医師は勧め たと言っているが本人は記憶にないとのこと)。 • 201〇+2年△月,生検と反対側の左乳腺腫 瘤の増大を自覚し,再度受診したところ,乳 がんと多発肺転移,多発肝転移,骨転移を指 摘されて紹介受診となった。 【 経過 】 • 当該症例は2年前より両側に腫瘤を自覚して おり,MMGでも読影所見で両側の異常を指 摘されているのに,右のみ生検して異常なし との病理結果を得て,フォロー・アップを怠っ たものである. • 患者は,乳癌リスクが約5倍になると2年前に 知らされていたら,定期的検診を受けたと証 言している。 【 問題点 】 • 当該症例は2年前より両側に腫瘤を自覚しており,MMGで も読影所見で両側の異常を指摘されているのに,右のみ 生検して異常なしとの病理結果を得て,フォロー・アップを 怠った.「患者に説明したが来なかった」という言い訳は, 裁判になると通用しない.その間,電話などして受診を勧 め,断られたという事実がないと,医療機関側の落度とな る可能性が高い. • 患者は,乳癌リスクが約5倍になると2年前に知らされてい たら,定期的検診を受けたと証言している。 ⇒当該疾患は,見た目に明らかな疾患であり,医師国家 試験で出題もあるため,専門家でないと診断できないとい う言い訳も通用しにくい. 【 NF1概論 】 • 神経線維腫症は,2500人に一人と見積もられる,最も 高頻度の単一遺伝子変異を原因とする遺伝性疾患の 一つである。 • 多発性のカフェ・オレ斑,多発性・散在性の皮膚神経線 維腫などにより特徴づけられる。 • NF1の診断は通常臨床所見に基づく. • 原因遺伝子であるNF1 遺伝子の遺伝子産物である neurofibromin は,Ras-GAP(GTPase activating protein) 抑制機能を持つ腫瘍抑制遺伝子である. • NF1に伴う最頻の悪性腫瘍は悪性末梢神経鞘腫瘍で, 罹患者の約10%に発生する. • NF1では消化管間質腫瘍など様々な腫瘍がみられる. • NF1に罹患した女性は,50歳以前で5倍,生涯で3.5倍乳 がんのリスクが高い. 【 NIH診断基準 】 以下の所見の2つ以上を有する場合にNF1と診断される. • 思春期以前では最大径5 mm以上,思春期以降では最 大径15 mm以上のカフェ・オレ斑が6個以上 • いずれかのタイプの神経線維腫が2個以上か,蔓状神 経線維腫が1個 • 腋下や鼠径部の雀卵斑様色素斑 • 視神経膠腫 • 2個以上のLisch結節(虹彩過誤腫) • 蝶形骨異形成や脛骨の偽関節形成などの特徴的骨病 変 • 一度近親者(両親,同胞,子)に上記の診断基準を満た すNF1罹患者がいる. 【 結語 】 • 遺伝性疾患に対するリテラシーが,腫瘍を診 療する医師には必要である。 発表者・研究責任者の利益相反開示事項 研究費の財源 □受託 ■寄付 □科学研究費 □その他( 発表者氏 名 ) 所属/身 分 該当なし 企業の職員・法人の代表 ■ 企業等の顧問職 ■ 株式など ■ 講演料など ■ 原稿料など ■ 寄付金 ■ 委受託研究(治験等) ■ 専門的助言・証言 ■ その他 ■ 該当有りの場合:企業名等 試験責任者氏 名 所属/身分 該当なし 企業の職員・法人の代表 ■ 企業等の顧問職 ■ 株式など ■ 講演料など ■ 原稿料など ■ 寄付金 ■ 委受託研究(治験等) ■ 専門的助言・証言 ■ その他 ■ 該当有りの場合:企業名等 財源の供給 元
© Copyright 2024 ExpyDoc