基礎マクロ経済学(2015年前期) 5.開放経済 担当:小塚匡文 5.1 はじめに( はじめに(記号の 記号の説明) 説明) Y:産出,C:消費,I:投資,G:政府支出, IM:輸入,X:輸出 • 右上にdがあるもの:国内の財に対するもの • 右上にfがあるもの:外国の財に対するもの • 右上に記号のないもの:消費、投資、政府支出 の総計 2 5.2 財や資本の 資本の流れ 外国の存在・貿易の存在を許容すると? d d d Y = C + I +G + X here, d d f d f C = C −C ,I = I − I , G = G −G f 輸入(IM) f f f Y = C + I + G + X − (C + I + G ) 3 • 輸出(X):自国で作り、外国で使われるもの • 輸入(IM):外国で作り、自国で使われるもの →この差が、純輸出(NX) Y = C + I + G + ( X − IM ) = C + I + G + X ここで貯蓄をSとすると、以下の恒等式が成立 Y − C − G = I + X = S S − I = X 貯蓄の余剰分は純輸出=外国への投資(貸出) ※純輸出は貿易収支であり、純資本流出と等しい NX=0:貿易均衡、NX>0:貿易黒字、NX<0:貿易赤字 5.3 小国開放経済 小国の仮定:世界利子率r*に影響しない国 • 政策と貿易収支の関係を見るための仮定 • 資本移動が完全 →この小国の人は世界市場にアクセス可能 • 利子率rは世界利子率r*と等しい <モデル> Y = Y = F ( K , L ), C = C = C (Y − T ) I = I (r ), X = S − I ∗ ⇒ X = S − I (r ) この式をもとに、(ⅰ)閉鎖経済時より高い金利 (ⅱ)NX=0のときに政府支出増加(または減税)、 (ⅲ)投資需要が増える(右シフト) ・・・といった変化があったときの影響を見る (ⅰ)閉鎖経済時より高い金利 ①金利r*(世界利子率)が高いと投資は減少 ②貯蓄は変わらず ③NX>0となる→貿易黒字 S(一定) r NX>0 r* 閉鎖時のr I=I(r*) S,I (ⅱ)NX=0のときに政府支出増加(または減税) ①政府支出(G)増 ②貯蓄(S)は減少 ③貯蓄はS1からS2へ ④金利は同じ(r*) (小国だ から)なので、投資は変わらず ⑤足りない分は外国から→NX減少・貿易赤字 S2 S1 r r* I=I(r*) NX<0 I S,I (ⅲ)投資需要が増える(右シフト) ①投資関数が I1 から I2 にシフト ②貯蓄・金利は変わらず ③NX<0となる→貿易赤字 r S(一定) r* NX<0 I2=I2(r*) I1=I1(r*) S,I 政策の評価 • これらの評価規範的なものでない→政策の 良し悪しを判断できない! • 貿易赤字が何による(貯蓄?外資?)ものか、 という視点が重要である 10 練習問題4 【空所補充】 ※もし外国政府(大国)の政府支出が増えた ら・・・? ①外国の貯蓄 ②世界利子率r*が ③自国投資が減少 ④貯蓄は不変(自国の政策は不変) ⑤NX=S-I 0 →貿易 練習問題4 答え ※もし外国政府(大国)の政府支出が増えた ら・・・? ①外国の貯蓄減少 ②世界利子率r*が上昇 ③自国投資が減少 ④貯蓄は不変(自国の政策は不変) ⑤NX=S-I>0 →貿易黒字 5.4 為替レート 為替レート <2つの つの為替 つの為替レート 為替レート> レート> • 名目為替レート:1ドル=x円 • 実質為替レート:外国財1単位は自国財何単 位と交換できるか?すなわち 実質為替レート =(名目為替レート)×外国財の価格 ÷(自国財の価格) ※この逆数を交易条件という 13 ①実質為替レートεが上昇(自国通貨安) ②外国財価格上昇 ③自国財需要増加 ④NXが上昇(貿易黒字に) これをグラフにすると、 ε NX(ε) NX <為替レートの決定要因> • 純輸出と関係 • 純輸出=総資本流出=貯蓄と投資の差 →投資関数と世界利子率 <諸政策と実質為替レート> ①自国の財政拡張(Gの増加) 貯蓄減少→NX減少→それに見合うεは低下 →自国財割高 ②外国の財政拡張 世界利子率上昇→投資減少→NX増加・ε上昇 15 ③投資需要右シフト 投資増、NX減少・貿易赤字・ε低下 (自国財割高に) ④貿易保護政策(輸入量削減政策) NXを強制的に右シフト(貿易黒字に) →貯蓄と投資は変わっていない →ε低下(自国通貨を増価)させることで調整 →自国財割高となり、輸出も減少する 16 <名目為替レートの 名目為替レートの決定 レートの決定> 決定> 名目為替レートeは、自国の価格をP、外国の価 格をP*とすると P e=ε× ∗ P →この式より、対数をとって、変化分をとると ∗ ∆ ln e = ∆ ln ε + (π − π ) ∆e ∆ε = + (π − π ∗) e ε ※ π:インフレ率 17 →金融政策でインフレ率に差が出ると、為替 レートも変わる <購買力平価説> 名目為替レートeは、自国の価格をP、外国の価 格をP*とすると P e=ε× ∗ P 18 この式が厳密に成立するとき一物一価の法則 が成立しており、これを(絶対的)購買力平価 説とよぶ ※このεが動いても、NXが動くことで結局上記の 式が成立するように調整される。ただし現実 には、常に成り立つわけでなない 19
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