「成人病と生活習慣病」 特集:女性の脳卒中と心筋梗塞 1.女性の脳梗塞 杏林大学医学部 脳卒中医学 教授 平野照之(ひらの てるゆき) 連絡先 〒181-8611 三鷹市新川 6-20-2 杏林大学医学部脳卒中医学教室 平野照之 T 0422-47-5511; F 0422-76-0258; E [email protected] ポイント(要旨) 女性の脳梗塞は,①高齢で発症する,②心原性脳塞栓症の割合が高い,③ 重度の神経症候を呈する,④転帰不良例が多い,といった特徴がある。 脳梗塞は一般に男性に多いが,近年,発症頻度の男女比は縮まっており, 女性における心原性脳塞栓症割合が,年々高くなっている。 高血圧や糖尿病は,更年期を過ぎてからの関与が大きい。喫煙は閉経を早 め女性にとっての大きなリスクとなる。 心房細動からの脳梗塞発症リスクは,女性が男性より高く,とくに 75 歳以 上の心房細動患者への的確な抗凝固療法が重要である。 女性特有の危険因子である経口避妊薬,ホルモン補充療法などへの配慮が 必要である。 rt-PA 静注療法の効果に,男女差はない。 妊娠中の脳梗塞は稀である。発症した場合,rt-PA 投与は可能である。 女性は男性より入院期間が長く,リハビリテーションにおいても家庭内や 社会的な役割を考慮したゴール設定が求められる。 はじめに 超高齢化社会を迎え脳卒中患者,なかでも脳梗塞患者が増加の一途をたどっ ている。脳梗塞は寝たきり・介護の最大要因であり,その対策は喫緊の課題で ある。脳梗塞を gender difference の面から考察すると,一般に患者数は男性に多 いが,女性には妊娠や経口避妊薬の使用,ホルモン補充療法といった特有の危 険因子が存在する。また近年,女性の社会進出に伴ってライフスタイルの差異 も小さくなっている。本稿では,女性の脳梗塞について,その特徴や留意点を 述べる。 1.発症頻度における性差 他の心血管病と同じく,脳梗塞は男性に多く,女性に少ない。しかし女性の 脳梗塞患者は男性に比べ,高齢発症で,発症時の重症度が高く,予後不良とな りやすいことが知られている 1)。久山町研究によると,1961 年から 1993 年まで の 32 年間の追跡期間において,脳梗塞全体の発症率は男性 6.4(対 1,000 人/年) に対して女性 3.4 であり,女性は有意に低率であった 2)。しかし,年齢階級別に 検討すると脳梗塞発症の男女比は,50 歳代,60 歳代,70 歳代,80 歳代でそれ ぞれ 2.1,2.3,1.5,1.4 であり,加齢に伴い性差が減少する傾向が認められた。 閉経までは女性ホルモンの影響で血管病変が生じにくいが,閉経後は加齢変化 が顕著になるためと考察されている。また,時代推移の影響を半世紀にわたる 久山町5集団で比較すると,次第に男女差が縮まっており 1990 年代の男女比は ついに逆転していた(図1)3)。 2.臨床病型別頻度にみる性差 発症機序や責任血管の大きさからラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心 原性脳塞栓症の3大病型に分類すると,女性の脳梗塞の特徴がみえてくる。杏 林大学脳卒中センターに入院した脳梗塞 3,019 例における男女別病型分布をみ ると,心原性脳塞栓症が男性で 28.1%であるのに対し,女性では 35.7%と明らか に多かった(図2)。この傾向は脳卒中データバンク 2009 4) や福岡脳卒中データ ベース研究(Fukuoka Stroke Registry: FSR)5) でも指摘されている。 FSR データを年齢,病型別に男女比を検討した報告 5)によると,65 歳未満, 65〜75 歳の年齢層では,病型に関わらず男性の割合が高いが,75 歳以上になる と女性割合が増加している。とくに心原性脳塞栓症での男女比は逆転していた。 女性は男性より約 6 歳長寿(平成 25 年簡易生命表による平均余命:女 86.61 歳, 男 80.21 歳)であり,心原性脳塞栓症の主因である心房細動が,加齢とともに著 増すること 6) と深く関係していると考えられる。前述の久山町研究 7) において も,女性における心原性脳塞栓症の割合は徐々に増加している(図3)。 心原性脳塞栓症は,脳主幹動脈が突然閉塞するため側副血行が働きにくく, 重症例が多く,3大病型の中で最も死亡率が高い。また,動脈硬化に起因する ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞が,血管病の最終章として脳梗塞を発症 するのに対し,心原性脳塞栓症の発症は再発の序章にすぎない。急性期から再 発を繰り返しやすいことも転帰不良の要因である。女性の脳梗塞患者が,男性 よりも重症で予後不良であるのは,こういった理由によるところが大きい。 3.危険因子にみる女性の特徴 1) 高血圧 高血圧は脳梗塞の最大の危険因子であり,約 90%の脳梗塞患者が高血圧症を 有している。加齢に伴い血圧は上昇するが,いずれの年代でも平均血圧は男性 の方が高く,血漿レニン活性やアルドステロン濃度も年齢・人種を問わず男性 は女性より高値を示す。女性は 40 歳代まで高血圧有病率は低いが,更年期以降 になると高まり,70 歳代で男性とほぼ同程度になる。これにはレニン−アンギオ テンシン系を介したエストロゲンの関与が指摘されている。 他の要因として食生活・食習慣の違いがある。なかでも食塩摂取率は,2012 年の国民健康・栄養調査をみても男性 11.3g に対し,女性は 9.6g と少ない。家 事の主役を担うことの多い女性は, (少なくともこれまでは)健康教育が浸透し やすく疾患予防のコンプライアンスが高かったのであろう。今後、女性のライ フスタイルが変化すれば,高血圧の有病率も変るかもしれない。 2)糖尿病 糖尿病は脳梗塞の独立した危険因子で,発症リスクを 2〜3 倍上昇させる。久 山町 14 年間の追跡調査によると,耐糖能異常は男女とも脳梗塞の有意な危険因 子であり,その相対危険度は男性 2.5,女性 2.0 であった 8)。 3)脂質異常症 脂質代謝は男女差や年齢差がきわめて大きい。女性の血清脂質レベルは閉経 後に上昇し始めることが多く,エストロゲン低下による脂質代謝異常が原因と 考えられている。閉経後は内臓脂肪の増加によって,メタボリックシンドロー ムも発症しやすく,動脈硬化性疾患の発症リスクが高まる。 4)喫煙 非喫煙者と比べた脳梗塞発症リスクは,男性 1.3 倍に対し,女性では 2 倍とさ れる 9)。若年者および喫煙量が多いほど発症リスクが高い。また,喫煙者は非喫 煙者に比較して約 2 年閉経が早まることや,喫煙量の増加に伴い閉経の早期発 来が増加すると報告される。 5)心房細動 心房細動は心原性脳塞栓症の最も重要な危険因子であり,心原性脳塞栓症の 約 70%に合併する。心房細動の頻度は男性で女性の約 3 倍と高いが,続発する 心原性脳塞栓症は女性に多い。女性そのものが脳梗塞のリスク(相対危険度(RR) 1.6)である 10,11)という指摘が多かったが,近年,そうではないという意見 12) も ある。いずれにせよ 75 歳以上の高齢女性では,的確な抗凝固療法実施が極めて 重要である。 4.女性特有の危険因子 1)妊娠 妊 娠 中 の 脳 梗 塞 発 症 は 一 般 的 に 稀 で あ る 。 近 年 の 多 数 例 を 対 象 と し た population based study を解析すると、妊娠・出産 100,000 件につき脳梗塞は 4〜 11 件と推定される 13)。一般人口(年齢調整)に対する RR 0.7(95%信頼区間(CI), 0.3〜1.6)と報告されている 14)。一方,出産後は発症リスクが高まり,産後 5 週 間の RR は 5.4(95%CI, 2.9〜10.0)である。妊娠期間中では第 1 期と第 3 期に多 く,妊娠高血圧性症候群に関連して発症するものが多い 15) 。出産後は静脈性梗 塞が多くなる。 2)経口避妊薬 経口避妊薬に関しては,高用量で脳梗塞の危険度が上昇し、低用量では非服 用者と差がないとされる。また,喫煙者が経口避妊薬を使用すると心血管病の 発症率が著増するため,禁煙指導の徹底は必須である。 3)ホルモン補充療法 エストロゲンには抗動脈硬化作用があり,閉経後に動脈硬化に起因する脳梗 塞(ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞)が発症しやすくなる。この点を踏 まえ,脳梗塞発症予防に対するホルモン補充療法(hormone replacement therapy: HRT)の有用性がいくつか検討されている。しかし,観察研究では効果が示唆 されたものの,前向き研究である HERS(Heart and Estrogen/progestin Replacement Study)16) で二次予防の,WHI(women’s health initiative)17) では一次予防の効 果が否定された。とくに HERS では再発作が増加しており,現時点で HRT は発 症危険因子としての側面が大きいと考えられる。 4)片頭痛 女性に多い片頭痛であるが、慢性頭痛の診療ガイドライン 2013 には「45 歳未 満の若年女性における前兆のある片頭痛では脳梗塞のリスクが若干増加する可 能性があるが,この年齢層における虚血性脳卒中の年間発症率はきわめて低い。 ただし,喫煙,経口避妊薬によりリスクが増加する。前兆のない片頭痛ではリ スクは増加しない」と記載されている。 しかし、若年性脳梗塞の女性において片頭痛の既往を有する患者は少なくな い。このような症例では脳梗塞と片頭痛の共通病因として右左シャントが関与 している可能性を考え,卵円孔開存や心房中隔欠損症などに伴う奇異性塞栓症 のスクリーニングが重要である。 5)抗リン脂質抗体症候群 原因不明(潜因性)の若年性脳梗塞の原因となる後天性血液凝固異常症であ る。女性に多く,脳梗塞以外に静脈血栓症,習慣性流産などが診断契機となり, 血液検査によって抗カルジオリピン抗体(IgG, IgM),ループスアンチコアグラ ント,抗β2 glycoprotein I 抗体のいずれかを証明する。治療にはヘパリンとアス ピリンを併用する。 6)PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome) PRES は子癇との関わりが強い可逆性後頭葉白質脳症である。以前は PRLS (reversible posterior leukoencephalopathy syndrome)と呼ばれていたが,その病変 部は後頭葉に限局せず,視床や脳幹部(図4)などに及ぶ例もあり,PRES と呼 ばれるようになった。また,病変部の可逆性は担保されておらず脳梗塞に陥る ことも少なくないため PLES(posterior leukoencephalopathy syndrome)とすべき との意見もある。 脳の細動脈には,血圧変動に関わらず脳血流を一定に保つ機能(自動調節能) が存在するが,過度な血圧上昇によってこの機能が限界に達すると血管が破綻 し,大脳実質に血管性浮腫を生じる。この病態が PRES であり,頭痛,嘔吐,意 識障害,痙攣などを呈する。血管性浮腫が高度になると,細胞性浮腫を生じ不 可逆性変化となる。通常,著明な高血圧を伴うため,カルシウム拮抗薬を中心 とした血圧管理が重要である。 5.治療上の特殊性・共通性 1)受療行動の違い 脳卒中データバンク 2009 18) によると,男性が活動時の発症が多いのに対し, 女性では安静時に発症した割合が多い。入院時の重症度は女性が有意に高く (NIHSS 男性 6.94 vs. 女性 9.09),救急車の利用率は女性が高い。 2)rt-PA 静脈注療法 女性は男性に比し治療開始時間が遅く,血栓溶解療法の実施率が低いとされ る。一方,女性は男性より体格が小さいため,脳血管は相対的に細く,血栓サ イズも小さい。このため t-PA 後の再開通率は女性で高いという指摘もある。rt-PA 血栓溶解療法の転帰を 12,620 例(うち女性 5,221 例)で検討したシステマティ ックレビューによると男女で転帰に差を認めていない 19) 。女性は男性に比し死 亡率が高かったが,重症度が高く,高齢で高血圧や心房細動の合併率が高かっ た。可能性のある交絡因子を補正すると,その差は消失していた。 3)妊婦に対する急性期血行再建 女性特有の問題として,妊婦に急性期血行再建が行えるか?という点がある。 そもそも妊娠中の脳梗塞は稀であるが,発症した場合,母体のみならず胎児へ の影響を考慮した判断が求められる。渉猟し得た過去の文献をまとめると,妊 娠中の血行再建例が 16 例(年齢 31.7±5.4 歳;妊娠第 1 期 8 例、第 2 期 4 例、 第 3 期 4 例)報告され,うち 3 例が日本からの報告であった(表)。治療成績が 不良であった場合は論文化されにくいこと(出版バイアス)もあるが,母体, 胎児とも直接的合併症はなかった。報告された出血合併症にも致死的なものは なく,頻度も非妊娠例と差はなかった。rt-PA には胎盤通過性や催奇形性はない とされており(少なくとも)器官形成期以降の rt-PA 投与は安全と考えられる 13)。 4)入院期間とリハビリテーション 入院日数は女性で有意に長い(男性 29.1 日 vs. 女性 32.55 日)と,脳卒中デ ータバンク 2009 18) に示されている。また,退院時転帰も悪く modified Rankin Scale 3〜6 の重症例は年齢を調整しても,女性が男性の約 1.39 倍多かった(図 5)。女性の脳梗塞が重症であることに加え,発症年齢が高いこと 20) も大きく 影響していよう。 また在宅復帰を考えると,家事の主役であった女性には,どうしても女性に は高い ADL 獲得が求められる。こういった社会的不利,介護負担の性差はリハ ビリテーションを実施する際にも考慮が必要であろう。わが国では健常高齢者 においても活動性に男女差があり,在宅での機能維持に関しても女性はセルフ ケアの自立度が高い。日常生活において介護に頼りがちな男性との大きな違い である。リハビリテーションのゴール設定に,家庭内での役割,社会的役割を 考慮したプログラムが求められ,これが入院日数の長期化にも間接的に関連し ていよう。 おわりに 女性の脳梗塞に関する疫学,病態や危険因子プロファイルからその特徴につ いて概説した。時代を経るにつれ男女差は縮まっているものの,女性特有の留 意点は依然として多い。女性に多いとされる,静脈性梗塞,膠原病関連疾患, もやもや病,線維筋性異形成症などは,疾患紙面の都合で割愛した。治療選択 に重要な抗血栓薬の効果に関する性差は,他章に詳説されているので参照され たい。 参考文献 1. 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Stroke 34: 1581-1585, 2003 図の説明 図1:脳梗塞発症率の時代的推移(久山町5集団,40 歳以上,追跡各 7 年,年 齢調整) 男女別の脳梗塞発症率を比較。1980 年代まで男性の発症率が高いが,次第に その差が縮まっており,1990 年代には一時的に逆転している。*p<0.05 vs. 1960 年代。 図2:臨床病型頻度の男女差(杏林大学脳卒中センター 2006〜2014) 2006 年 4 月から 2014 年 8 月までの脳梗塞入院患者の臨床病型を示す。女性で は心原性脳塞栓症の割合が高く(35.7% vs. 28.1%),その分,アテローム血栓性 脳梗塞は少ない(17.9% vs. 24.7%)。円グラフの大きさに患者数を反映した。 ESUS: Embolic stroke of undetermined source(塞栓源不明の脳塞栓症) 図3:男女別脳梗塞の病型別頻度(久山町3集団,40 歳以上,追跡各 12 年) 男女別の脳梗塞臨床病型を比較。男性ではラクナ梗塞の割合が時代とともに 減少し,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症の割合が増加した。女性で は明らかな時代的変化はなかったが,心原性脳塞栓症の割合は増加していた。 図4:脳幹型 PRES を呈した可逆性脳血管攣縮症候群 53 歳女性,高血圧の既往あり。視力障害を発症し,第 30 病日に紹介入院とな った。MRI 画像(FLAIR)にて橋,小脳半球,基底核に高信号病変を認め,頭 部 MRA で血管攣縮の所見を認めた(上段)。第 50 病日には FLAIR,MRA とも 異常所見は消失した(下段)。 [症例提供:熊本市立市民病院神経内科 山本文夫 先生,橋本洋一郎先生] 図5:脳卒中データバンク 2009 における退院時 mRS の性差 年齢調整の結果,女性の退院時転帰は男性に比べ不良例が多い。ロジスティ ック回帰分析:オッズ比 1.388(95%信頼区間 1.324〜1.456, p<0.001)。
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