(1月8日)「消費者被害の実態とその救済」

2015 年 1 月 8 日 ロイヤリング講義
講師:弁護士 吉岡康博先生
議事録作成者:伊豆倉瑛司
消費者被害の実態とその救済
0、はじめに
皆さんこんにちは、弁護士の吉岡と申します。
本日のロイヤリングは「消費者被害の実態とその救済」というタイトルでお話ししていきたいと思い
ます。本日お話しすることは大きく分けて 2 つ、クーリングオフに関する話とクレジットカードに関す
る話です。
1、クーリングオフに関する話
(1)クーリングオフの根拠
クーリングオフというと皆さん大体の方は聞いたことがあると思います。中学・高校の社会科や家庭
科で勉強した方も多いでしょう。クーリングオフというのは、簡単に言えば契約したものを解除できる
というものですが、クーリングオフの根拠となる法律をご存知でしょうか。「特定商取引に関する法律」
です。訪問販売や、通信販売、あるいは電話勧誘販売といったものから消費者を守るためのことを規定
している法律です。今日その全体をお話しすることは出来ないのですけれども、こんなこともあるのか、
という意識で話を聞いていただければと思っております。
特定商取引法の目次を見ていただくと、先ほどお話しした訪問販売、通信販売、電話勧誘販売につい
てまず規定されています。目次の第 3 章を見ていただくと、
「連鎖販売取引」というのが書かれています。
これは所謂マルチ商法のことです。第 4 章には「特定継続的役務提供」というのが書かれています。こ
れは例えば英会話スクールやエステティックサロンといった、継続して役務の提供を受ける契約につい
て規定しています。英会話スクールでお金を前払いで 20 万円払ってしまったが、どうも自分の思ってい
た感じと違う、前払いで払っているからもうお金は戻ってこない、というのでは困りますので、中途解
約した場合にきちんとお金を返すように規定しているものです。その他にも色々なことが規定されてい
ますが、少々ややこしいので、今回は省略します。
(2)クーリングオフに関わる事例
今からお話しするのは訪問販売についてです。2 つほど事例を挙げますので、皆さんも考えてみてくだ
さい。
1 つめは、皆さんの実家の母親から電話がかかってきて、実家で同居しているおばあさんが高額な健康
食品を買わされた。色々聞いてみるとおばあさんが 1 人で家にいるときに、訪問販売の業者から勧めら
れて買ってしまったらしい。代金 10 万円はもう支払ってしまっている。どうすればよいのか、と相談さ
れた事例。
2 つめは、皆さんが街を歩いていたらキャッチセールスに引っかかり、事務所について行ったら実は英
会話の勧誘で、逃げにくくて言われるがままに 15 万円の英会話教材購入の契約をしてしまった、という
事例。
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この 2 つの事例についてお話ししていきます。
(3)クーリングオフを使ったトラブルの解決方法
まずは 1 つめの事例の解決方法についてです。これは単純で、クーリングオフをすればよいことにな
ります。
そもそもクーリングオフは何故認められているのでしょうか。民法を勉強していると、契約は守らな
ければならないのが原則ですが、例外として訪問販売の時は一定の場合にクーリングオフ出来ると規定
されています。「クーリングオフ」というのは、「頭を冷やす」という意味です。訪問販売や電話販売と
いうのは、自分が買おうと思っていないところに、相手から突然声をかけられます。不意打ち制がある
ため正当な判断が出来ないままに購入してしまうことがある販売類型なので、頭を冷やして冷静に考え
る期間を設け、その期間中に不要なものだと思ったら契約を解除できる、としたのがクーリングオフの
趣旨です。クーリングオフの対象となる商法は詐欺的なものが多いので、
「詐欺がないとクーリングオフ
出来ない。
」と思っている方も多いのですが、そうではなく、詐欺でなくても訪問販売というのはクーリ
ングオフが認められています。
事例に戻りまして、クーリングオフは具体的にどう行使すればよいのか、という話です。手段として
は、ハガキでも結構です。
「○月○日付の契約を解除します」という内容の文面を書いて相手の会社に送
れば OK です。ただ普通のハガキだと、郵便事故等で届かない可能性もありますし、届いたとしても相
手から「届いていない。
」とシラを切られる可能性もあります。
これを防ぐ一番手軽な方法が内容証明郵便です。内容証明郵便というのは、差出人の出した郵便の内
容を郵便局が証明してくれるというものです。内容証明郵便のサンプルを資料として添付しております
が、この程度のことを記入します。内容証明郵便は 26 行×20 文字という形式上の制限があり、その形
式で同じ文面を 3 通作って郵便局に持っていきます。1 通は相手方に出し、1 通は郵便局が保管、もう 1
通は差出人に返却されます。相手方が「こんな文書を受け取っていない。
」と言ってトラブルになった場
合は、郵便局がその郵便の内容を証明してくれます。相手方にきちんと届いたか、ということも、郵便
局が郵便物等配達証明書という形で証明してくれます。
ですので、おばあさんが高額の商品を買ってしまったというケースに対する第 1 の解答は、皆さんが
このようなクーリングオフの文書を作成してそれをメールや FAX で母親に送り、おばあさんの名前で郵
便局に出す、というものです。内容証明まで出せない、という場合は、普通のハガキでも結構です。た
だ、受け取った・受け取っていないでトラブルになることもありますので、そのハガキの表裏をコピー
しておくことをお勧めします。宅配便を使うのも有効です。
母親がメールや FAX を使えない、という場合はどうすればよいでしょうか。そういう場合は皆さんが
おばあさんの同意を得ておばあさんの名前でこの通知書を出してしまえば良いです。これを民法上「使
者」と言います。
次の問題点として、クーリングオフの期間制限があります。クーリングオフは、契約書を貰った日か
ら 8 日以内にしなければなりません。それでは,おばあさんが契約書を受け取ったのが 7 日前で、母親
から電話を受けたのがその日の夜 11 時、とても内容証明郵便を作る時間もないし、宅配便の窓口も閉ま
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っている、というような場合、どうすればよいでしょうか。コンビニに行って宅急便を出せばよいです
ね。コンビニで今日の受付印を押してくれますから、配送は後になりますが、その文章を今日出したと
いうことを、コンビニの店員さんが証明してくれます。
さて、皆さんが母親から電話を貰ったのが、契約書を貰ってから 8 日を経過した後だった場合、どう
すればよいのでしょうか。諦める?ではいけなくて、まずは契約書を穴があくほどよく見て下さい。資
料を参照していただきたいのですが、特定商取引法やその施行令・省令では、契約書に必ず書かなけれ
ばならない事柄が割と細かく規定されています。例えば①契約の当事者に関する事項(事業者の氏名・
名称、住所・電話番号、法人代表者名、契約申込・締結をした者の氏名)
、これを書いておかないと誰に
クーリングオフを主張したらよいのかが分らなくなります。②契約の目的物に関する事項(商品名及び
商品の商標又は製造者名、商品の形式・種類、権利・役務の種類、商品の数量)
、これを書いておかない
と何を買ったのかが分らなくなります。③契約の代金に関する事項、④契約の履行に関する事項、⑤契
約の解除に関する事項、⑥契約の日付に関する事項、を契約書に書かなければなりません。逆に言えば、
こういう事項を書き落とした書面を交付してしまうと、法律で要求された書面を交付していないという
ことになってしまいます。先ほどの話ではクーリングオフが出来るのは「契約書を受け取ってから」8 日
以内でしたが、不完全な契約書ではその契約書を受領したことになりませんので、いつまで経っても 8
日間の起算日がスタートしないということになります。
具体的に実際の事件であった書面を資料に付けました。おばあさんの家に訪問販売で悪徳業者が乗り
込んでいって省エネをうたう電気機器を取り付け、807,000 円の契約を結ばせたというものです。販売店
名や住所、電話番号は契約書に書かれています。ところが、申込日・契約日がいずれも空欄になってい
ます。恐らく、担当者は契約を結ばせるために焦って記入し、契約日なんて後で記入させればよい、と
考えて契約日空欄のままおばあさんに交付してしまったのだと思います。しかし、契約日を書いていな
いだけで、法律上求められた書面を交付していないことになり、クーリングオフの始期はスタートしな
い、ということになります。また、商品名として「省エネシステム一式」と書いてありますが、これで
は何のことか分りません。これも法律上求められた商品名等が書かれていないので、書面不備というこ
とになります。他にも、例えば担当者の氏名や商品等引渡時期が空欄になっていたとしても書面不備で
す。
書面の不備が多い例をあえて紹介しましたが、このように、法令と実際の契約書をじっくり見比べて
いただければ、意外と穴はあります。ですので、先ほどの問題で、契約書交付後 2 週間経って母親から
電話がかかってきたような場合は、母親から契約書をメールや郵便で送ってもらって、穴が開くほどこ
の契約書を見ていくということになります。そして、不備があればクーリングオフ出来ることになりま
す。以上が、8 日を過ぎていてもクーリングオフ出来る場合があるというお話です。
ところで、最初の段階でおばあさんはもう業者にお金を支払済でした。大手の業者ならともかく、こ
んな強引な売りつけ方をする業者ですので、クーリングオフするという書面を送っても、本当にお金を
返してくれるのか、裁判を起こして差押えをしなければならないのではないか、という疑問が起こると
思います。ところが、クーリングオフというのは強力な手段で、クーリングオフすると民事上の返還義
務が生じますが、これを守らなければ業者には行政処分や、場合によっては刑事罰が科せられます。厳
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しい行政処分や罰則が特定商取引法にありますから、クーリングオフすると大抵の業者は返金に応ずる
ことになります。
次に 2 つめの事例です。キャッチセールスにつかまって言われるがままに英会話教材を購入してしま
ったというもの。この場合もクーリングオフしたいのですが、これは店舗に自分で行って契約していま
すから、訪問販売ではないように思えます。しかし、呼込まれて事務所に連れて行かれて契約をしたよ
うな不意打ち性のある場合、たとえ店舗で契約を締結したとしても「特定顧客」として訪問販売として
扱うという規定があります。ですから、先ほどと同じようにクーリングオフ出来ることになります。
2、クレジットカードに関する話
(1)クレジットカードに関わる事例
こちらも、まず 2 つ事例を挙げたいと思います。
1 つめは、先ほどのように皆さんがキャッチセールスにつかまってしまい、英会話教材を購入してしま
いました。皆さんはたまたまクレジットカードを持っていて、一括で払えるような金額ではなかったの
で分割やリボで決済をしてしまった、という事例です。放っておけば翌月から引落しが始まります。
2 つめは、皆さんが海外旅行に行き、ピザ屋さんで 20 ドルのピザを食べ、自分のクレジットカードで
決済をした。ところが日本に帰ってみると 20 ドルの請求が 2 口、合計 40 ドルの請求が来ていた、とい
うような事例です。
(2)クレジットカードの法的な仕組み
まず、クレジットカードがどういう仕組みになって
いるのか、法律関係についてお話ししたいと思います。
例えば、消費者が家電量販店(売主)でクレジットカ
ードを使って商品を買ったとき、消費者と売主の間に
は売買契約が成立します。消費者とクレジットカード
会社(信販会社)との間には会員契約が結ばれており、
売主と信販会社の間には加盟店契約が結ばれていま
す。皆さんが売買契約を結ぶと、まず商品は売主から引渡されます。一方、代金支払いについては、ク
レジットカードで決済したときにレシートのようなものにサインをしますが、その控えが信販会社に送
られ、毎月決まった日に、信販会社から売主にお金が一括で振り込まれます。消費者には、翌月以降信
販会社から請求が来ます。一括のときもあれば分割のときもあります。信販会社は手数料を引いた金額
を売主に渡しますので、この手数料の額が、信販会社の儲けということになります。
通常この三者契約になることは少ないです。例えば皆
さんが信販会社①と契約を結んでいるとします。ところ
が売主が信販会社①と契約を結んでいるとは限りません。
信販会社②と契約を結んでいるとします。そのような場
合、信販会社①と信販会社②でお金のやり取りをし、図
のように大きく回って請求されることになります。
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先ほどの 2 つめの事例に関しての話です。皆さんは信
販会社①と契約をしていますが、アメリカのピザ屋はア
メリカの信販会社②と加盟店契約をしている。アメリカ
でカードを使った場合でも結局は同じ関係になります
から、国際間でもカードを使った取引が出来るようにな
ります(実際は,信販会社①と信販会社②との間に更に
決済機関が介在します。
)
。
(3)クレジットカードに関するトラブルの解決方法
(ⅰ)抗弁の対抗
それでは、1 つめのキャッチセールスの事例の
解決方法です。この場合、先ほどお話しした訪問
販売と同じと考えられますから、クーリングオフ
をすることが出来ます。右の図で言うと売買契約
を解除したことを信販会社①に内容証明郵便等で
通知すればいいのです。このことは、売買契約が
解除されたということを信販会社に対抗すること
になりますから、
「抗弁権の接続」と言います。これは割賦販売法上の規定で、消費者・売主間の契約に
瑕疵があれば、抗弁として信販会社に対抗できるというものです。クレジットカードを切ってトラブル
に巻き込まれてしまった、というような場合、まず信販会社に連絡を入れると、とりあえずは請求を止
めてくれます。同時にクーリングオフをして、交渉を進めることになります。逆に、消費者が全額信販
会社に払った後にこの抗弁を主張しても、信販会社はお金を返還してくれません。既払金の返還は、最
高裁判例で否定されていますので、消費者は売主と交渉してお金を返してもらうしかない、ということ
になります。
(ⅱ)チャージバックの利用
2 つめの事例、アメリカでピザを食べたら二重請求されたという事例ではどうなるか。まさかアメリカ
のピザ屋さんに内容証明郵便を出すわけにはいきませんし、電話やメールをするにしても全部英語なの
で大変な作業になります。この場合、先ほどと
同様にまずは信販会社に連絡をし、請求を止め
てもらいます。食べたピザは 20 ドルぐらいな
のに、何故こんなに多額の請求が来ているのか、
ということを信販会社①に連絡すると、信販会
社①はアメリカの信販会社②に事実確認するこ
とになります。ピザ屋の手違いと確認できれば、
ピザ屋は余分に受け取ったお金を返すことにな
ります。アメリカの信販会社②から信販会社①に対してこのことが報告された後、信販会社①から消費
者ところに連絡があり、正当な 20 ドル分だけ引き落とされることになります。
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このような解決方法はチャージバックと呼ばれます。チャージバックというのは元々売主側とのトラ
ブルがあったときに信販会社同士で解決できるように作ったルールではありますが、消費者は上手く利
用することにより事実確認を確認したり、請求を取り下げさせたりできます。
(ⅲ)信販会社の監督責任
次にまた国内の話に移ります。売主が、自治体の消費生活センターに苦情がたくさん来るような悪質
な会社だった。信販会社はそれを知らずに立替払いをやっていた、というような場合を想定します。こ
の場合、消費者がその信販会社に、売主に問題があることを報告すれば、信販会社は調査をすることに
なります。悪質な商法だと信販会社が把握すれば、信販会社はそういう会社とは加盟店契約を維持した
がりません。信販会社が悪質業者と一体と見られて、信販会社が責任を負う可能性があるからです。そ
のような場合は、業者が信販会社の求めに応じて返金をしたり請求を取り下げたりすることもあります。
(4)決済代行業者が関わる場合
出会い系サイトが問題となっているのはご存知かと思いますが、出会い系サイトのシステムとしては
まずクレジットカードでポイントを買い、そのポイントを使って女性とメールのやり取りをします。気
に入った女性がいればメールのやり取りをしたうえで直接会ったりすることも出来るとうたっておきな
がら、なかなか会えない。女性をかたって実際には男性がメールを打っているような実態も報道されて
います。これは民法上の詐欺に当たりますが、なかなかその立証は難しく、そもそも事務所がどこにあ
るのかすら分らない。このケースについて少しお話をしたいと思います。
私もこの相談を受けて困ったのは、消費者と出会い系サイトはインターネット上のやり取りなのでメ
ールアドレスは分るにしても事務所がどこにあるか分らないということです。カード決済していたので
信販会社からの請求書を見たのですけれども、請求書にはその出会い系サイトの会社は載っておらず、
代わりに決済代行業者の名前が載っていました。
決済代行業者に関して補足しておきます。売主がある程度信用力があれば信販会社と直接契約を結べ
るのですけれども、それほど信用力がない場合や
小さい会社の場合はなかなか信販会社も契約を
してくれません。こんなときに便利なのが決済代
行業者です。この場合売主は決済代行業者と契約
し、その決済代行業者が信販会社と契約をします。
あとは同じような流れになります。信販会社は立
替金を決済代行業者に払います。決済代行業者は
自分の手数料を抜いた金額を売主に払うということになります。売主としても、クレジットカードで決
済してくれる客が増えて、手数料が発生するけれども確実に収入が得られることになりますので、非常
に便利なツールです。
ところが、出会い系サイトのような悪徳業者がこの決済代行業者に目をつけて契約を結びます。消費
者はポイントを買ってクレジットカードで決済し続ける。お金は右の図のような流れで出会い系サイト
のところに行ってしまいます。我々の方が消費者の代理人として決済代行業者に連絡をすると、大半の
業者が出会い系サイトの運営会社の連絡先を教えてくれます。あとは直接その業者に連絡してお金を返
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してもらう、というのが本来のやり方になります。
ただ、先ほどのチャージバックのような信販会社を介したやり方は、ここでも使えなくもなく、まず
とりあえずは自分の信販会社に連絡を入れる方法もあります。悪質業者は返金に応じませんが、信販会
社に主張することで調査が行われます。信販会社は直接売主に交渉はしてくれませんが、決済代行業者
に取引業者の確認をしてくれることもあります。決済代行業者にとっては売主が悪質業者であると知ら
ずに取引をする場合も、知っていながらあえて見逃して取引をする場合もあるでしょうが、いずれにし
ても悪質業者と取引をしていると、信販会社から加盟店契約を解除される可能性があり、決済代行会社
が損害を被る可能性があります。この場合、決済代行業者が売主に消費者とのトラブルを解決するよう
求めることもあります。売主は、決済代行業者との契約を解除されたくないのでそれに応じる場合があ
るのです。
3、最後に
私は今年で弁護士 15 年目でして、ロイヤリングもだいぶ前からさせてもらっていて、昔は皆さんより
も少し先輩ぐらいの話をしていたのですが、いつの間にかかなり年を取ってしまった、という印象です。
最後にお話ししたいことが 2 つあります。1 つめは、和歌山カレー事件の事についてです。平成 10 年
に和歌山市内にある町内会の夏祭りで振舞われたカレーの中にヒ素が混入していて死者が出た、という
ものです。平成 10 年というとちょうど私は司法修習を始めたころでして、私の司法修習先がたまたま和
歌山だったので、この事件を傍聴する機会が度々ありました。そこで被告人の弁護人をされていた大阪
の先生の事務所を訪問する機会があり、その際私は無礼にも、何故あの人の弁護人をしようと思ったの
か、先生のイメージが悪くなってしまうのではないか、ということを尋ねました。するとその先生は、
自分はたまたまこのカレー事件が起きた時に大阪弁護士会の刑事弁護委員会で委員長をやっていた。誰
も引受け手がないからとりあえず自分がやらなくてはならないといって自分が引受けた。この被告人に
は適正な裁判を受ける権利がある、その権利の実現のために自分が一生懸命動かなければならない。や
ることになった以上は、全力で弁護しなければならない、ということをおっしゃっていて、私は非常に
感銘を受けたことがあります。皆さんも、これから先、何故自分がやらなければならないのか、と愚痴
りたくなるようなことがあると思います。何故私が、と思ってもマイナス思考になるだけで何も出来な
くなるので,そうではなく自分がやらなければならない以上、使命感を持って取り組んでいただきたい
と思います。
もう 1 つは、学生時代の過ごし方についてです。私の学生時代は勉強も全然せず、適当にバイトをし
て適当に旅行に行って、友達と遊んで終ってしまっており、振り返るとちょっと後悔しています。皆さ
んにはまだまだ時間がありますので、今できることを精一杯やってほしいと思います。勿論思い切り遊
んでほしいと思いますが、勉強もしっかりとしていただければと思います。今日はクレジットカードや
クーリングオフの話でしたが、皆さんが被害に遭わなかったとしても周りの人が被害に遭う可能性があ
ります。そういうときに阪大法学部を出た人間として、相談されることがあると思います。ですので、
クーリングオフ等に限らず法律についてはやはりしっかり勉強していただければと思います。法曹を目
指さない人にとっても、法律のものの考え方は必ず役に立ちます。
あと皆さんにお勧めしたいのは、何か外国語をやっておくことです。やっている方も多いかもしれま
せんが、英語や中国語をやっておくと有利です。私の回りでも、中国語を勉強しておけばよかった、と
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いう人が多くいます。それから商業簿記も必ず役に立ちます。機会があれば本を買って勉強していただ
ければと思います。
以上で本日の講義を終ります。ありがとうございました。
以
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