Poster Note: PN-01 HMDB Library Metabolomics (日本語)

Poster Note PN-01
新規作成した高分解能ヒト代謝物 MS/MS
スペクトルライブラリーを用いた迅速かつ
高精度なヒト体液中代謝物の同定
概要
• Human metabolite Database (HMDB) に登録された代謝
物の高品質、 高分解能の MS/MS スペクトルライブラリーを
構築した
• 800 種の化合物を測定し、 イオン化効率や手作業によるフラ
グメント構造の帰属等の情報を付加した
• 実例サンプルとして血清、 尿、 唾液の RP-UHPLC-MS/MS
測定を行いライブラリーと照合した
Authors
Zhendong Li; Mingguo Xu; Yiman Wu; Chiao-Li Tseng;
Tao Huan; Wei Han; Jaspaul Tatlay; Tran Tran; Liang Li
University of Alberta, Edmonton, Canada
Aiko Barsch, Carsten Baessmann
Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany
イントロダクション
ヒト体液中に数多く含まれる化合物のメタボローム解析は個人の
健康状態のスナップショット的情報を提供すると言われています。
しかし、 尿や血清などの複雑なヒト体液の代謝物プロファイリン
グ研究において、 こういった複雑なサンプル中の代謝物の同定
が大きな分析的課題として残っています。
なぜなら、 分子構造が多岐に渡り、 代謝物の多くは同定に役立つ
ような想定通りのフラグメントパターンを示さないためです。
よって、 プロティオミクスの分野で既に行われているようなデータ
ベース検索の手法が使えません。
その代り、実測 MS/MS スペクトルを既存の MS/MS ライブラリー
に照合する手法が早い同定作業を可能にします。
Keywords
Instrumentation and Software
Bruker HMDB Metabolite
Library
impact HD
Metabolomics
QTOF
compound identification
Bruker HMDB Metabolite Library
Metabolomics spectral
library
DataAnalysis
OMICS
LibraryEditor
そこで今回、 高性能な四重極 - 飛行時間型 (Q-TOF) 質量分析
装置を用い、 800 のヒト代謝物について、 一つ一つ精選した高
品質、 高分解能マススペクトルライブラリを構築しました。
このライブラリーはメタボロミクス研究における迅速かつ高精度
な代謝物同定の基礎となるものであり、 実例として血清、 尿、
唾液サンプルの結果を示します。
UHPLC-MS/MS ワークフロー
血 清、 唾 液 : 100ul の サ ンプル に 冷 却
アセトニトリル 300ul を加え常温で 5 分
1. サンプルの
前処理
間 置 いた 後、 遠 心分 離 (4 ℃ /10,000g/
10min) した。
上 層 を 除 き 200ul の 水 を 加 え た 尿 :
100ul のサンプルを 200ul の水で希釈し、
メソッド
0.22um PDVF フィルターを用いて濾過し
ライブラリーの構築
た。
HMDB から尿と血液に含まれる 800 種の標準化合物を
1
選択した
2
代 謝 物 は 0.1% の ギ 酸 を 添 加 し た ア セ ト ニ ト リル : 水
=1:1(v/v) にに溶解し、 濃度と溶解度情報をライブラリー
に加えた
UHPLC: Dionex UltiMate™ 3 0 0 0
UHPLC
2.LC 分離 120 C18, 2.2 µm 120 Å 2.1x100 mm
at 30 °C
デ ー タ 取 得 は 高 分 解 能 Q-TOF 型 質 量 分 析 機 で あ
3
る inpact HD ( ブルカ ー ダルトニクス社 製 ) を用 いて フ
ロー インジェクションにより行った MS/MS パラメー タ :
Collision energies(CE); 10, 20, 30, 40, 20-50 eV、
isolation window; 6 または 1 Da, 各代謝物は内部標準
を用いて校正しプリカーサーイオンのエラーは 2ppm 以下
であった
4
5 種の異なる CE により得られた全てのスペクトルは 2 種類
の isolation window のデータを比較、精査しコンタミネー
ションピークを除いた。 こうして得られたスペクトルをライブ
ラリーに追加した
Column: Thermo AcclaimTM RSLC
Injection: 5 µL
Gradient: 60 分グラディエント
移動相 A:1% ギ酸水溶液
移動相 B:1% ギ酸アセトニトリル溶液
Flowrate: 0.4 mL/min
Instrument: Bruker impac t HD
Q-TOF ス キ ャ ン 速 度 12Hz、 autoMS/
3.MS 検出
MS モード
Ionization : ESI
Polarity : ポジティブ
Resolution: > 400 m/z で 30,000 以
上
5
CE 20-50eV で測定したスペクトルから、 各サンプルにつき
2 フラグメントの構造を帰属した
Lockmass : Dansyl amide(251 Da)
MS/MS : 20-50 eV
6
各化合物に以下のメタ情報を付加した。 InChi、 SMILE、
C A S I D、 別 名、 H M D B、 K EGG、 P ub C h e m、
ChemSpider、 ChEBI、 BioCyc、 等のデータベース ID と
ハイパーリンク (Fig-1)。
各サーベイスキャンあたり 3 プリカーサー
イオンを選択
測定終了後、 . 生データが DataAnalysis
4.2 で自動的に開き、 AutoMS(n) アルゴ
4. データ処理
リズムによってスペクトルのデコンボルー
ションやプリカーサーピークと MS/MS ス
ペクトル の 紐 付け、 クロマト グ ラム中の
未知代謝物がリスト化される。
LibraryEditor を用いて各代謝物の MS/
LibraryEditor
5.
代謝物質の同定
MS スペクトルをライブラリーに照合し代謝
物の同定結果と関連する統計値 (Purity、
Fit、 RFit、 etc) を算出する。
Fig-1: 構造情報とメタデータを含む
ライブラリーインターフェース 結果と考察
HMDB から選択した 800 種の代謝物について MS/MS スぺク
トルライブラリを構築しました。 厳格な標準プロトコールの実行と
手作業でのスペクトルの検証により高品質なスぺクトルのみがラ
イブラリーに登録されました。 別名や異なるデータベースの ID
等の同定に役立つ情報を追加しました。
ヒト血清、尿、唾液サンプルを使用し、記述のワークフローに沿っ
て新しいライブラリのテストを行った (Table-1)。 異なる 3 種の
ヒト体液について、 プリカーサーイオンの精密質量のマッチング
と MS/MS スペクトルのスコアリングを考慮した結果、 18-49 の
代謝物を正確に同定することができました。 プリカーサーイオンを考慮しないライブラリーサーチにおいても、
未知化合物の推定的な帰属が可能であった (Table-1, Fig-2)。
このワークフローでは実測 MS/MS スペクトルとライブラリース
ペクトルを比較しましたが、 プリカーサーイオンのマッチングは
行いませんでした。 この方法により未知化合物を硫化ステロイド
と推定することができました。
ライブラリ作成に使用されたカナダの impact HD とドイツの
impact II のデータを用いてラボ間での比較実験を行い、 異な
る装置 ) のデータに対してもライブラリが適用可能なことが確認
されました。
Fig-3 に示した例では、 バリニン酸を添加したヒト尿サンプルを
autoMS/MS 測定し、 今回構築した HMDB MS/MS ライブラ
リーによって正確に同定しています。
Table 1: ライブラリーの初期評価においてヒト血清、 尿、 唾液中から見つ
かった代謝物数を示した。 2 列目にはプリカーサーの精密質量とフラグメ
ントの両方から同定された代謝物数を、 3 列目にはプリカーサーイオンは
ライブラリーにマッチせずフラグメントのみで同定した代謝物数を示しまし
た。 この手法は類似した基本構造を持つ未知化合物の同定に役立ちます。
(Fig-2)
Compounds found in human plasma, saliva and urine
Biofluid
Compounds
Identified
Compounds with
similar Fragments
Plasma
45
151
Saliva
18
101
Urine
49
163
Compound Identification
MS
MS/MS
Library
MS/MS
Figure 2: プリカーサーイオンの質量を用いず検索することで MS/MS ラ
イブラリーに含まれない未知化合物を推定することが可能です。 今回の例
ではヒト血清中の化合物 (369 Da) がライブラリー中のデヒドロエピアンド
ロステロン (289 Da) にマッチし、 80 Da の質量差はステロイドが硫化して
いる可能性を示唆します。
この新たなライブラリー検索法はデヒドロエピアンドロステロンサルフェート
のように MS/MS ライブラリーに含まれない代謝物であっても推定すること
を可能にしました。
Proof of concept study
Spiked urine sample:
Survey view of LC-MS/MS
run
MS
MS/MS
Library
MS/MS
The target mass 169.0495 m/z of the vanillic acid precursor was
fragmented successfully during a „one-shot“ acquisition.
謝辞
今後の展開
本 研 究 は Genome Canada と Genome Alberta の メ タ ボ
ロミクスイノベーションセンター (TMIC) プロジェクトと NSERC、
CIHR、カナダリサーチチェアーズプログラム支援を受けています。
UHPLC をベースとしたサンプル分離の標準手法を確立し、 最適
条件下でのリテンションタイム情報をライブラリに加える予定です。
• 手 動 で 精 査 す る こ と で、 高 品 質 ・ 精 密 質 量 の HMDB
Q-TOF MS/MS ライブラリーを構築しました。 ライブラリーは
数種の CE にて測定されたデーターを保有しています。
• ライブラリーはデータ取得からプロセッシングまでを含む標準
化された UHPLC-MS/MS ワークフローと組み合わされてい
ます。
• 幾つかの体液サンプルを用いて、 正確で迅速な化合物同定
を行う事が示され、、 異なるラボで行われた実験からも本ワー
クフローの有用性を実証できました。
References
[1] Wishart, D. S. et al. Nucleic Acids Res. 2013, 41, D801–7.
[2] Horai, H. et al. J. Mass Spectrom. 2010, 45, 703–714.
[3] Tautenhahn, R. et al. Nat. Biotechnol. 2012, 30, 826–828.
本製品は研究用です。 診断用ではありません。
ブルカー・ダルトニクス株式会社
本社 営業部
〒221-0022
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結論
to change specifications without notice. © Bruker Daltonics 06-2015, PN-01, 1833934
Figure 3: ヒト尿に添加されライブラリ作成に使用された装置 (impact HD) とは異なる装置 (impact II) で測定されたバニリン酸を同定することができま
した。 このことから今回構築したライブラリが、 異なるラボ、 装置においても、 また複雑な代謝物サンプル中であっても目的化合物の同定に有用であるこ
とが証明されました。