第 48 回日本水環境学会年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞して 東北大学大学院工学研究科土木工学専攻 この度は, 日本水環境学会年会優秀発表賞(クリタ賞) という名誉ある賞を授与していただきまして,大変嬉し く思っております。審査をしていただいた学会関係者の 皆様,公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団の皆様, そして全国各地からご来場くださいました皆様に厚くお 礼申しあげます。 私は,浄水場にて生成される汚泥である浄水発生土か らのセシウム除去について研究を行っております。浄水 発生土は原子力安全保安院の通知により,放射性物質量 が 100 Bq・kg-1 以上のものは浄水場内で保管しなければ ならず,現在も発生し,蓄積し続けているクリアラン スレベル以上の浄水発生土の処理が喫緊の課題となっ ています。私は,浄水発生土に含まれる土壌成分の中 でも多量のセシウムが強く吸着している 1:1 構造粘土鉱 物,2:1 構造粘土鉱物の2種類の粘土鉱物に着目し,そ の吸着特性について検討を重ねてまいりました。粘土鉱 物のセシウム吸着サイトについては,福島第一原発事故 以降急速に研究が進められていますが,吸着サイト間 でのセシウムの吸着優先性や移行性などについて多くは 分かっておりません。私は,このような吸着特性を明ら かにすることによって,浄水発生土からセシウムを除去 するための技術を構築することができると考えており ます。本研究では,セシウムを吸着させた粘土鉱物に 1 時間の攪拌を行うことによっ 1 mol・L-1 の硝酸を加え, て粘土鉱物からのセシウム脱着を行っております。これ は,粘土鉱物が持つ表面負電荷を中和させ,表面吸着し 齋 藤 太一朗 ているセシウムを脱着させるためであり,その結果表面 のみに吸着サイトを持つ 1:1 構造粘土鉱物では,ほぼす べてのセシウムを脱着することができました。しかし, 表面と構造内部に吸着サイトを持つ 2:1 構造粘土鉱物で は,粘土鉱物量が増加するにつれてセシウム脱着量が減 少するという結果が見られました。これは,2:1 構造粘 土鉱物の鉱物量が増加すると,セシウムが強吸着される 内部の吸着サイト量が増加し,セシウムが内部に選択的 に吸着したためであると考えられます。今後はこの強 吸着に着目し,時間経過に対するセシウムの吸着サイト の移行や,より強吸着されるフレイドエッジサイトへの セシウム吸着に関しても検討を重ねていきたいと思って おります。そのためには,今回のポスター発表の中でい ただいた先生方の貴重なご意見を参考にさせていただく とともに,同じようにセシウムの除去をテーマに研究を 行っている研究者の方々をはじめ,多方面で活躍されて いる研究者の方々とも情報交換を行い,私自身もこれか らの学生として残された期間,より一層精進し,さらな る報告ができるよう全霊を注いでいきたい所存です。 最後に,本研究を遂行するにあたり懇切丁寧にご指導 をいただきました東北大学工学研究科・西村修教授,株 式会社水機テクノス・近藤泰正社長,ならびに共同研究 者として支えてくださいました村上将也さん,そして研 究のみならず多くの支援をいただいた本研究室の皆様, 家族に対し心より感謝申しあげます。
© Copyright 2024 ExpyDoc