JAPAN NEWS CLUB グローバル社会で活躍する子どもに育てるために ~「サマーキャンプ in ぎふ」の取り組み 米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人 地元の子どもたちとの楽しい交流 参加する子どもたちの年齢層や在住国・ 地域はグローバル グローバル化が進む国際社会におい て、複数の言語を使いこなし、異文化を 理解することが、とても重要になってい ます。日本に生まれながら米国など諸外 国に暮らす子どもや日本人の血を引き ながら米国など諸外国で生まれ育って いる子どもの数も増加しています。この ような子どもたちが日本と米国など諸 外国の双方の言語と文化を理解する ための教育的な活動を実践するため に 、 2006年 に 米 日 教 育 交 流 協 議 会 (US-Japan Educational Exchange Council 略称:UJEEC) を設立しました。 当協議会の活動の一つである「サマー キャンプ in ぎふ」は、日本で実施する 海外に暮らす子ども専用の日本語・日 本文化体験学習プログラムです。当協 議会設立の2006年から9年間にわた り、7月上旬から8月初旬に年1~2回実 施してきました。これまで実施した16回 にのべ176人が参加しました。1年目の 参加者数は、第1期が2人、第2期が3人 というような寂しいスタートでしたが、2年 目以降は徐々に増加し、9年目の昨年 は第1期が22人、第2期が10人と過去 最多となりました。(2011年と2013年 は1回のみ実施) 参加者構成は年度や実施期間によっ て異なりますが、平均すると女子が約55 %と男子を上回り、小学生が約40%、 中学生が約50%、高校生が10%です。 参加対象は小学4年生から高校生であ り、幅広い年齢層の子どもが一緒に活 動することが特長です。また、米国在住 者のみならず、カナダ、メキシコ、英国、 アイルランド、トルコ、韓国、中国、香 港、台湾、タイに暮らす子ども、そして日 本に暮らしインターナショナルスクール やア メ リ カ ン ス ク ー ル に通学している 子ども参加しました。米国在住者では、 カリフォルニア州やワシントン州、ニュ ーヨーク州、ニュージャージー州などが 多いですが、全米各地に散らばってい ます。このように幅広い国や地域に暮ら す子どもたちが出会うことができる場に もなっています。 このように幅広い年齢層や在住国・地 域の子どもたちと交流することは、グロ ーバル社会で活躍するための資質を培 うことにつながっています。 日本語が好きになっても嫌いにならない 工夫 「サマーキャンプ in ぎふ」には、このよ うに幅広い年齢層や多数の国や地域の 子どもが参加しますが、子どもたちの日 本語力もさまざまです。日本語のボキャ ブラリーが少なく、日常生活をするため の必要最低限の会話しかできない子ど ももいれば、日本の学年相応の読み書 きの力がある子どももいます。しかし、 ほとんどの子どもにとって、日本語は第 二言語か第三言語で、大多数の子ども の共通言語は英語です。このような状況 を考慮し、当キャンプでは日本語を使う 機会をできるだけ増やす一方で、無理 強いして嫌いにならないように、以下の ような工夫をしています。 一つ目は、日本語で活動することです。 交流する地元の子どもたちはもちろん、 スタッフや講師、ホストファミリーも日本 語で話し、通訳はいません。日本語を聞 いたり話したりする機会がたくさんあるの で、日本語力が自然に向上します。また、 日本の人々とたくさん話をするために、 日本語をもっと上手になりたいという気 持ちも芽生えます。 二つ目は、自由時間や食事中には参 加者の間では英語で会話することを認 めているということです。これは子どもた ちがフラストレーションを貯めないための 配慮です。また、活動の効果を高め、安 全を確保するため、日本語力の乏しい 子どもには、指導者の重要な指示を伝 える際に英語を使うこともあります。 多彩なプログラムで楽しみながら日本 文化を理解する 「サマーキャンプ in ぎふ」では、楽しみ ながら日本文化を理解するための多彩 な体験学習プログラムを組んでいます。 特に日本の自然を活かした食文化や昔 から継承されている伝統文化に触れるこ と、日本で生活したり、日本人と接したり する際に必要なマナーを修得することに 主眼を置いています。ここで今年実施予 定の主なプログラムをご紹介します。 ◆学校体験:地元の公立中学校・高等 学校で、日本の学校の授業や掃除や給 食などの学校生活を体験します。同年代 の日本の子どもたちとの交流によって、 生きた日本語に触れることができます。 ◆地域交流体験:地元で行われている イベントや諸活動に一緒に参加します。 これらの活動を通じて、生きた日本語に 触れることができます。第1期では「和太 鼓」の練習に参加して交流し、第2期で は地元の子どもたちとともに「いかだ」を 作り、川下りを体験します。 ◆地域生活体験:地元民家でのホーム ステイはそこに暮らす人々の心のあたた かさを感じる場であるとともに、日本の家 庭の日常生活を経験する絶好の機会と なります。また、日本語でたくさん話をす ることもできるでしょう。第2期のホームス テイ先は、川下り体験で交流する子ども たちの家庭です。 ◆古民家生活体験:所有者の方が手入 れし大切にされている築100年の古民 家「とっさの家」で田舎暮らしを体験しま す。薪割りをしてかまどを使ってご飯を 炊いたり、五右衛門風呂に入ったり、古 民家に隣接する山や川で遊んだりしま す。源流に近いため、川の水は美しく、 夏でも冷たく感じられるほどです。 ◆伝統文化体験:日本の伝統工芸(わ ら細工、竹細工、和紙工芸、草木染め、 機織り、木工など)の製作や食づくりを 通してものをつくる喜びを味わいます。 自然の素材を利用した手作りの製品や 食事のあたたかさときめ細かさを肌で感 じることによって、日本人が古来より代 々伝えてきた伝統文化のすばらしさと奥 深さを理解することができます。そして、 命や物を大切にする心を育みます。 ◆農業体験:里山で栽培されている作 物の収穫やその準備作業に携わること によって、昔から受け継がれている日本 人の生活を感じます。また、作業を教え てくれる地元に暮らす人々と触れ合うこ とによって日本人の温かさも感じることが できます。 ◆自然体験:緑豊かな山道を散策する ハイキング、さわやかな清流で楽しむ川 遊びなどを通じて、日本の自然を味わ います。ハイキングでは、新鮮な空気を 満喫しながらバードウォッチングや植物・ 昆虫採集なども楽しめます。川遊びで は、美しい川での水遊びやBBQも楽し めます。 ◆寺院体験:地元の人々の生活に密着 している禅宗の寺院で読経、座禅などを 体験します。自分自身を静かに見つめ る時間は、今後の人生にとって貴重な 体験になるでしょう。 また、ここでの生活 を通じて、様々な礼儀や作法を学ぶこと ができます。 ◆史跡・地場産業見学:岐阜県下に多 数ある史跡・名所を訪れます。訪問の候 補地は、山県市内の史跡の他、岐阜城 とその城下町などです。また、地元の工 業施設など、現代のものつくりの現場を 見学し、伝統産業や地元の資源との関 係なども学びます。 「サマーキャンプ in ぎふ 2015」は、参 加者の申し込みを受け付けています。 詳細は、米日教育交流協議会のウェブ サイト www.ujeec.org をご覧ください。 手作りいかだで川下りを体験 地元のおばあちゃんとお茶摘み 禅寺での座禅体験 執筆者のプロフィール: 河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収 集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス 担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、現役高校生や保護者対象の進学講演も 多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際的企画も担当。 1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日 教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマ ー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。さらに、河合塾海外帰国生コース北 米事務所アドバイザーとして帰国生大学入試情報提供と進学相談も担当し、北米各地での 進学講演も行っている。また、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザ ー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会 補習授業校講師も務めている。 ◆米日教育交流協議会(UJEEC) Website:www.ujeec.org
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