配布資料 - delight

シンポジウム開催にあたって
SIP/ 革新的設計生産技術
「 革新的デライトデザインプラットフォーム技術
の研究開発 」
プロジェクトリーダー
東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 教授
鈴木 宏正
● 製品開発の課題
性的・感情的な要素が多いのです。
製造業の基本は、買い手である顧客が求める特性を
このような商品をデライト製品と呼んでいますが、
できるだけ沢山もつような製品を作ることといえま
Apple 社や Dyson の製品は、魅力品質によってデラ
す。この顧客の求める特性と、実際に製品のもつ特性
イト製品を実現し、上述のような価格競争とは一線を
との合致度は、「品質」という概念で捉えることがで
画していると言えます。日本製品は一般に、この部分
きます。
どのような品質を実現して商品力を高めるか、
が弱点と言えるでしょう。もちろん、このような問題
そこに企業の経営戦略があるといえるでしょう。
は認識されており、企業では魅力品質への転換の努力
これまでの日本が強い とされてきた自動車、電気・
が盛んに行われています。
電子等の製造業の戦略は、短い商品サイクルで、新し
い技術を満載し、さらに豊富な製品バリエーションを
● 構想設計の重要性
もつ製品を市場に送り出すことにありました。しかし
魅力品質を実現することの難しさは、それが製品の
近年、日本の主要な産業の一つである電機産業では、
基本的なコンセプトや構造を変えなければ実現できな
主力商品のシェアを大きく失い、その屋台骨となって
いという点にあります。車で言えば、燃費などの性能
きた事業からの撤退を余儀なくされるケースが珍しく
品質や衝突安全性などの当り前品質は、先行品を継承
ありません。コモディティ化の中で過当な価格競争に
し改良することによって連続的に改善することができ
陥り、様々な対応の努力のかいもなく体力を消耗させ
ますが、魅力品質は、そのようなやり方では実現でき
ました。最近の円安で、製造業の経営環境は一息つい
ず、より設計の上流における構想設計を徹底的に行う
ているところですが、
この問題が解決したわけでなく、
ことが重要です。Apple 社や Dyson 社の商品開発の
例えば TV やパソコンに代わって主力となり、コモ
様子については、書籍や新聞・雑誌等でも報じられて
ディティ化を回避できるような商品は何か?という課
いますが、その多くはカリスマ的・天才的なデザイナ
題に対する明確な回答はまだ見えないようです。
を称えるものになっています。しかし、見逃してなら
ない点は、彼らが構想設計というものを非常に重視し
● 魅力品質
ている点です。その背景には、魅力の源泉の一つになっ
一方、このような商品カテゴリーでも、たくましく
ている、商品のオリジナリティやユニークさ、つまり
成功した商品があります。その典型は、Apple 社の製
他の商品にはない品質を実現するためには、それがど
品や Dyson 社の製品です。これらの商品は、魅力品
ういうものであるかを顧客に聞いても分からない、つ
質と呼ばれるものをもっています。魅力品質とは、そ
まり、従来のマーケティングがうまく機能しないの
の品質がなくても顧客は不満になることはないが、も
で、まさに製品のもつ魅力とは何かというところに立
しあれば満足を得られるというものです。例えば、欧
ち返って、構想設計からスタートして生み出したデザ
州の高級外車はワクワクする喜びを与えてくれます
インを、マーケットにプッシュしているということだ
が、理性的に考えれば、同じ性能品質であれば、価格
と思います。今後、このような製品開発の必要性がま
の高い高級外車を買う必要はないのです。購買におい
すます高まると思われます。
て魅力品質の要因は大きく、さらに、この品質には感
1
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
● CAD と魅力品質
だけで閉じることなく、下流の基本設計や詳細設計に、
一方、日本の設計開発の状況はどうでしょうか。上
設計データがシームレスに流れていくような仕組みが
で述べたように、これまでは「短い商品サイクルで、
必要です。本プロジェクトでは、このようなデライト
新しい技術を満載し、さらに豊富な製品バリエーショ
設計を、上流から下流までを統合的にサポートできる、
ンをもつ製品」を開発することで市場競争に打ち勝っ
設計手法やデータベース、あるいは、CAD システムを、
て来ました。設計開発を支援するためのツールとい
プラットフォームとして提供することを目的としてい
う観点から見ると、3D CAD システムや CAE などの
ます。
いわゆるデジタルエンジニアリング技術が、設計の合
理化の道具として、このような製品開発のプロセスを
支えて来ました。さらには上記のような価格競争の中
で、更なる設計開発期間の短期化やコスト低減が求め
られ、それらを克服するための必須のツールとなって
います。
その一方で、CAD システムの弊害も指摘されてい
ます。CAD システムは,
特に先行品に関する設計デー
タや設計知識の効率的な再利用、すなわち流用設計
を可能にしますが、製品の本質的な品質や機能に立ち
返って設計を行うことができる設計者が減っていると
指摘されています。曰く
「CAD は設計者を馬鹿にする」
ということです。これはデライト製品の設計に必要な
構想設計をしっかりと行える設計者が減少してしまっ
ていることを意味しています。また、構想設計を支援
する手法は存在しますが、それらは一般の CAD シス
テムのように設計者が容易に使えるものとしては提供
されておらず、通常業務の一環として使われることは
ありません。さらに、小規模な設計チームによる製品
開発や、中小企業の製品開発などの場では、リソース
● シンポジウムに向けて
本シンポジウムでは、上記のような本プロジェクト
の基本的な問題意識をご説明し、また、これから取り
組む課題や開発目標についてご紹介いたします。それ
によって、広く企業関係者等から意見をいただき、技
術的な討論を行いたいと思います。
また、このシンポジウムの基調講演を、ミシガン大
学教授菊池昇先生にお願いしました。菊池先生は、構
造設計、構造最適化、特に機械設計に有用なトポロ
ジー最適化の第一人者であり、製造業における設計開
発についても深い経験と広い知見もお持ちです。
長年、
このような分野でご活躍になっている菊池先生に、今
後のものづくりの進むべき方向性についてお話いただ
き、また、本プロジェクトの方向性についてもご指導
をいただきたいと考えております。
末筆ですが、設計技術と言う分野に研究開発事業を
立ち上げ、本プロジェクトの実施の機会をいただいた、
プログラムディレクター佐々木直哉氏をはじめとする
内閣府関係者各位に心から御礼を申し上げます。
の制限から、これらはほとんど使われず、その結果、
改良設計に甘んじることになってしまいます。
● デライトデザインを支援する
プラットフォーム
以上をまとめると、ユーザーの琴線に触れるような
製品、すなわちデライト製品の開発が、日本のこれか
らのものづくりの進むべき方向であることは明白であ
るにも関わらず、デライト製品の設計に必要な上流の
構想設計が疎かになっているという由々しき現状があ
ります。現在広く設計者に使われている CAD システ
ムは、詳細設計では非常に有用なツールですが、この
ような構想設計をサポートすることはできません。し
たがって、デライト製品開発のためには新しい構想設
計の支援手法やシステムの開発が急務です。また、そ
のようなシステムが広く普及するためには、構想設計
このシンポジウムは、独立行政法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の一
部として、東京大学工学系研究科精密工学専攻・
鈴木研究室が主催して行うものです。
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
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プログラム
14:00
受付開始
14:30 - 14:35
開会挨拶
◆ 鈴木宏正 プロジェクトリーダー/
東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 教授
14:35 - 15:35
基調講演
「デライトデザインへの期待とものづくりについての一考察」
◆ 菊池 昇 (株)豊田中央研究所 代表取締役所長/ミシガン大学教授
15:35 - 15:50
プロジェクト1「感性データベース」
◆ 柳澤秀吉 東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 准教授
15:50 - 16:05
プロジェクト2「1D CAE による感性モデリング」
◆ 大富浩一 東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 特任研究員
16:05 - 16:20
プロジェクト3「機械設計と感性モデリング」
◆ 鳥谷浩志 ラティス・テクノロジー (株) 代表取締役社長
16:20 - 16:35
プロジェクト4「回路設計と感性モデリング」
◆ 中村 諭 (株)図研 EDA 事業部 EE 開発部 パートナー
3
16:35 - 16:45
まとめ
16:45 - 17:15
休憩
17:15 - 18:30
懇談会 第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
基調講演
14:35 - 15:35
デライトデザインへの期待とものづくりについての一考察
(株)豊田中央研究所 代表取締役所長/ミシガン大学教授
菊池 昇
● デライトデザインに期待すること
内閣府からの戦略的イノベーション創造プログラム
(SIP)の一つとして、デライトなものづくり:超上
流デライト設計手法と革新的生産技術の一つの研究開
発プログラムが創設され、東京大学を中心とした革新
的デライトデザインプラットフォーム技術が動き出し
ました。日本のものづくりを大きく変えていく方策と
して日本の産学官が一体となった取組みです。デライ
トデザインに関連する CAE やデジタルエンジニアリ
ングを長年アメリカで研究活動をしてきた経験を踏ま
<きくち・のぼる>
昭和 26 年生まれ。テキサス大学航空工学
科博士課程を終了後、ミシガン大学機械工学
科教授に就任。現在は Roger L.MaCarthy
え、日本とアメリカの違いに視点を置き、このような
取組みに関し一研究者としてエールを送り、二三の考
察を紹介します。
Professor の称号を持つ。平成 11 年に非常
勤の客員研究員として ( 株 ) 豊田中央研究所
に入所。平成 15 年に同社常勤の取締役に就
任、平成 26 年に代表取締役所長に就任~現
在に至る。平成 20 年からはトヨタ自動車の
北米先端研究所所長も兼任。
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
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DDP プロジェクトの概要
SIP( 戦略的イノベーション創造プログラム )/ 革新的設計生産技術
「 革新的デライトデザインプラットフォーム技術の研究開発 」
Delight Design Platform ( DDP) Project
研究開発の主旨
日本のものづくりは、
「きちんと作る」
「安く早く作
れた新たな日本のものづくりのスタイルを確立するこ
る」といったあたりまえ品質や性能品質がこれまで重
とが急務であります。
視されてきました。しかし、グローバル化が進む中、
私 た ち が 取 り 組 む「 デ ラ イ ト デ ザ イ ン プ ラ ッ ト
低価格の海外製品には対抗できなくなっています。
フォーム」(DDP)とは、魅力品質をものづくりに作
これからのものづくりを考える時、
「その品質がな
りこむ環境です。心地よい、ワクワクするといった魅
くても不満(不便)を感じないが、もしあればより満
力品質を構想設計に取り込み、詳細設計まで一気通貫
足が得られる」という感性的、感情的な要素を鍵とす
で行うことを目指す DDP は世界初の取り組みであり、
る魅力品質が求められるようになっています。言いか
既存の国産システムの上に開発し、魅力品質による新
えれば、買いたくなる製品を開発する力をつけること
しいものづくりの価値創造を実現します。
が競争力を高めるうえで必要であり、高付加価値化さ
■ DDP を実現する背景となる技術
① MBD (Model Based Design)
• 製品の全体構造を俯瞰。
• 製品の機能や構造を抽象的に表現。
• メカ、エレキ、ソフトを統合的に表現。
• モデルを使ったシミュレーション。
② 感性設計技術
• ユーザーの感性に関する分析や、それに基づく設計技術。
• 製品の持つ色や形などの特徴パラメタと感性パラメタの関係を解析し、感性設計を行う上での指標を導出。
• 個別的、独立的に行われており、一般の設計者が使えないのが課題。
③ 3D CAD, 回路設計 CAD
• 機械部品や組立品の 3 次元モデルを構築したり、電気回路や基盤の設計を支援するシステム。
• 現在の設計では必須のものとなっているが、構想設計など上流の設計プロセスの支援が不十分。
• 改良設計や繰り返し設計では有効であるが、設計者がシステム任せで設計をしがちになり、原点に帰った
設計を阻害する。
④ リバースエンジニアリング
• 既存製品をデジタル化し、その特徴量を抽出すると共に、デジタルデータを用いて設計や解析に利用する
技術。
• 特に製品を丸ごとスキャンできる産業用 X 線 CT 装置を活用して、リバースを効率良く行う技術が不足。
• 音やその他の特性の計測データも統合することによって、感性に関わる製品挙動や属性をリバースするこ
とが課題。
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第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
研究課題
1.感性データベース構築技術・
感性モデリング技術
4.出口戦略
感性モデルによる革新的な設計ソフトウェアの実用
感性設計技術を用いて感性を定量化・モデル化し、
化を出口として、すでに実績ある既存システムの拡
MBD のモデリング要素として感性系ライブラリを
張モジュールとして開発していきます。(図2)
実現し、
デライトデザインの上流段階を構成します。
MBD は従来の機械要素や電気要素に感性要素が加
わることになり、ユーザーが手軽に感性設計を行え
5.イノベーションスタイルの実践
るようになります。これを設計者にツールとして提
現場における性能品質中心から、魅力品質重視への
供することを目指します。
革新が求められています。
日本のものづくりのイノベーションは、言いかえれ
2.感性統合化技術(機械系・電気系)
ば、現場の設計者が新技術の有用性を認め、自らの
意志で革新していくことです。そのためには、ユー
MBD でデザインしたものを詳細設計に繋げるため
ザーとの真剣勝負の検証プロジェクトにより、実績
に、MBD と機械系 CAD や電気系 CAD を統合す
を積み上げていきます。家電から建機まで、様々な
る技術を開発します。それにより、上流の構想設計
分野を対象とする予定です。
から下流の詳細設計まで、シームレスな設計環境を
実現します。
これを、「デライトデザインプラットフォーム」と
呼びます。
(図1)
3.感性リバース技術
上記の流れとは別に、現物を起点とした感性モデリ
ングも有益です。製品の 3D CAD モデル、または
製品の現物から、感性モデルを作成する作業を支援
する技術を開発します。
▲ 図1
▲ 図2
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
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プロジェクト1
15:35 - 15:50
感性データベース
東京大学大学院 工学系研究科機械工学専攻 准教授
柳澤 秀吉
として蓄積します。DDP では、この物理と感性との
では、感性設計技術を応用してデライトに至る人の感
間において、物理量、感性指標、魅力指標の三つの階
性をモデル化し、感性データベースとして構築する技
層を想定します。ここで、魅力指標とは、音の心地よ
術を開発します。
構築した感性データベースを用いて、
さなどのデライトの要因となる感性の指標を指しま
計算機上の設計代替案に対する感性評価を予測し、設
す。また、感性指標は、魅力指標に影響を与える感性
計者にフィードバックできる仕組みの構築を目指しま
の特徴量です。音の例では、人が感じる音の大きさ、
す。これにより、設計者は、自身の設計案に対する感
甲高さ、粗さ、変動感などの特徴が心理音響学の分野
性の予測を計算機上で逐次確認しながら、設計の改善
で一般的に定式化されており、これらを感性指標とし
や新規な設計案を発想することが可能となります。具
て用いることができます。一方、魅力指標は、対象と
体的には、感性データベースを用いて、モデルベース
する製品、ユーザー、使用文脈などのコンテクストに
デザイン(MDB)上の要素として、感性評価の予測
よって異なります。そのため、感性設計技術(下図)
を可能とする感性系ライブラリの実現を目指します。
を応用して対象とするコンテクストごとに予測モデル
感性データベースとは、物理量で表される感覚刺激
を構築し、感性データベースに蓄積します。感性設計
とデライトをもたらす感性との間の因果モデルと、そ
技術では、未だ定式化されていない感性、定式化が難
のモデル化に必要なデータを蓄積したデータベースで
しい感性について、感性と物理量とを繋ぐ統計的モデ
す。たとえば、製品が発する音(製品音)を心地良く
ルを構築する方法が研究、開発されています。
することによりデライトデザインを実現した事例で
本プロジェクトでは、ケーススタディを通して、感
は、空気振動の波形や音圧レベルなどの物理量とそれ
性データベースの構成、構築方法、設計での利用方法
を聞いて人々が抱く感性との関係を感性データベース
を具体化します。
▲
デライトデザインプラットフォーム(以下、DDP)
7
魅力指標の導出プロセス
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
プロジェクト2
15:50 - 16:05
1DCAE による感性モデリング
東京大学大学院 工学系研究科精密工学専攻 特任研究員
大富 浩一
1DCAE とは『シンプルなモデルをベースに、全体
ます。ドライヤーでは温風、音、触感が感性に関係す
を俯瞰した全体設計を具現化する考え方。上流段階か
ると考えられます。例えば、音に関しては物理モデル
ら適用可能な設計支援の考え方、手法、ツール』と定
で得られた音情報をもとに、耳位置での音の情報(聴
義しています。ここに、1D は特に一次元であること
覚)を算出、音質指標(感性指標の一つ)でユーザー
を意味しているわけではなく、
“物事の本質を的確に
の感じ方を指標化、最終的に魅力指標を算出します。
捉え、見通しの良い形式でシンプルに表現”すること
実際には、ユーザーは複数の感性を感じていますので、
を意味します。3 つの設計(Must 設計、Better 設計、
複数の感性が複合した形で魅力指標は定義されます。
Delight 設計)の内、Must 設計と Better 設計に関し
設計者は感性を取り込んだ 1D ツール(下図)を用
てはすでに設計現場で 1DCAE の適用が行われてい
いて、デライトデザインを行います。種々のアイデア
ます。一方、“琴線に触れる製品”を開発するための
を 1D ツール上に反映、魅力指標を算出することによ
Delight 設計(デライトデザイン)については研究段
り、デライトデザインの達成度合いを確認することが
階です。ここではデライトデザインを実現するための
できます。このようにして得られたデライトデザイン
“1DCAE による感性モデリング”を紹介します。
の結果は機械設計、回路設計に送られ、実体設計を行
感 性 を 1DCAE に 取 り 込 む 技 術 を 感 性 モ デ リ ン
います。
グ、得られたモデルを感性モデルと呼んでいます。
以上述べたように“1DCAE による感性モデリング”
1DCAE では通常、いわゆる 1D ツールを使用します。
は感性データベースを入力に、デライトデザインを行
下図はドライヤーへの適用イメージで、この左半分は
う環境を提供、結果を機械設計、回路設計に引き渡す
物理モデルです。物理モデルを起点とし、感性データ
役割を担っています。
ベースと連携することにより、感性モデルが構築され
▲
感性を取り込んだ
1D モデル
(ドライヤーへの適用
イメージ)
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
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プロジェクト3
16:05 ー 16:20
機械系設計と感性モデリング
ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長
鳥谷 浩志
ラティス・テクノロジー株式会社は、1997 年の創
ラットフォーム技術の研究開発」において、当社は
業以来、世界最高水準の軽量化 3D 技術“XVL”を軸
魅力品質を持った製品の設計を支援する 3D ソリュー
として 製造業や建設業のための 3D データ全社活用
ションを、XVL 技術をベースに開発します。
ソリューションを提供して参りました。3D CAD の
「感性統合化」では、企業が開発しようとしている
普及に伴い、設計者が作成した 3D データを活用し、
製品をユーザーの感性でどのようにとらえられるかを
設計品質や組立工程のレビューをしたり、サービス用
1DCAE の形式で定義した感性モデルを 3D で評価す
のパーツカタログを 3D データから作成するといった
る事が可能になり、魅力品質の高い製品コンセプトを
ことが一般的になっています。当社が提唱した「3D
提案することができます。同時に、開発する製品の各
データを企業内外で徹底的に活用することで、3D 設
構成部品のどの特性値が感性評価に影響を及ぼしてい
計の価値を最大化する」という XVL パイプラインの
るかを把握することを可能にします。この新しいコン
考え方が定着しつつあります。最近では、製造業のグ
セプトの 1DCAE モデルを、3D 化することで、実際
ローバル化とタブレットの普及に伴い作業指示書の
の 3D の製品設計への連携を可能にします。
ビジュアル化でコミュニケーションの精度を上げた
また、
「感性リバース」では、既存の製品を 3D スキャ
い、3 次元測定技術の進歩に伴う計測データと CAD
ンした点群データから、部品構成や特徴量を抽出し、
データを統合して検証可能にすることで、現地現物と
感性の評価を行う 1DCAE モデルの作成を支援しま
CAD モデルを組み合わせて検証したいといった新し
す。モデル作成の作業自体を簡易化することで、容易
いニーズに対応し、お客様に最適なソリューションを
に実際の製品設計に生かすことが可能になります。
「感
提案しております。
性リバース」のソリューションでは、一般の設計者で
SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/
も利用しやすいツールを提供することを目標としてい
革新的設計生産技術 の「革新的デライトデザインプ
ます。
▲ 機械系 CAD と感性モデル
9
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
プロジェクト4
16:20 ー 16:35
回路設計と感性モデリング
(株)図研EDA事業部 EE開発部 パートナー
中村 諭
弊社は創業 39 年目を迎える電気系 CAD / PLM、
さらに、近年では電気/メカに作業が分担される前
またはこれらに関連するさまざまなエンジニアリング
に製品設計の全体を俯瞰しながら最適な構成/構造を
サービスをご提供している「株式会社 図研」と申し
見極める「構想設計」の重要性が非常に増してきてお
ます。本社を神奈川県横浜市に構え、日本全国だけで
ります。製品リリースのサイクルが短くなったことや、
なくグローバルに販売/サポート/ツール開発等を
細分化が進む顧客の要求に応えるためのバリエーショ
行っております。
ン化などが進み、設計現場で多品種のものを、より効
はじめに弊社の簡単なご紹介をした上で、電気設計
率的に、より品質が高いものを設計することが要求さ
とはどういったものなのかを簡単にご紹介し、その電
れています。そのため、設計現場では、過去の慣例に
気設計に対して、どのような取り組みを行ってきたか
従い、過去製品の流用設計が主流となってしまい、新
をご説明いたします。電気設計においても、設計/製
たな製品価値を生み出すことが難しくなってきていま
造上の問題点をできるだけ早い段階から検討/解決し
す。
ておこうという取り組みが盛んに行われており、図研
図 研 で は、 こ れ に 対 す る ソ リ ュ ー シ ョ ン とし て
からもいろいろな視点のソリューションをご提供して
「System Planner」をご提案しております。論理設計
います。
から基板や 3 次元構造といった物理構成、その評価を
詳細設計より前に行える環境で、構想設計段階での全
体見極めが可能になっています。簡単なツールの概要
説明とデモムービーを交えながらご紹介いたします。
さ ら に 今 回 の プ ロ ジ ェ ク ト で は、 こ の「System
Planner」に「感性モデリング」との連携を組み込む
ことで、構成/構造だけでなく「感性を見極めた」構
想設計が行える手法とその実現方法の研究開発を行っ
ています。
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
10
DDPプロジェクトのメンバー
プロジェクトリーダー(研究代表者)
鈴木 宏正
東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 教授
メンバー
東京大学大学院 工学系研究科
大富 浩一
精密工学専攻 特任研究員
浅間 一
精密工学専攻 教授
村上 存
機械工学専攻 教授
青山 和浩
システム創成学専攻 教授
梅田 靖
精密工学専攻 教授
大竹 豊
精密工学専攻 准教授
柳澤 秀吉
機械工学専攻 准教授
長井 超慧
精密工学専攻 助教
片山 寛之
精密工学専攻 学術支援専門職員
大泉 和也
システム創成学専攻 特任研究員
岩崎 拓也
精密工学専攻 客員研究員
稲垣 祐一郎
精密工学専攻 客員研究員
東京大学 人工物工学研究センター
太田 順
人工物と人との相互作用研究部門 教授
黄 之峰
人工物と人との相互作用研究部門 特任研究員
原 辰徳
人工物と人との相互作用研究部門 准教授
緒方大樹
人工物と人との相互作用研究部門 助教
ラティス・テクノロジー 株式会社
株式会社 図研
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第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」
( SIP)とは
「戦略的イノベーション創造プログラム」
(SIP)と
に、日本の経済・産業力にとって重要な 10 の課題に
は、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令
ついて、基礎研究から実用化・事業化、そして出口ま
塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超え
でを見据えた一気通貫な研究開発を推進し、科学技術
たマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じ、
イノベーションの実現を目指します。
科学技術イノベーションを実現するための国家プロ
本テーマは、下記 10 の課題に含まれる 24 テーマの
ジェクトです。
内の一つです。
国民にとって真に重要な課題の解決を図るととも
対象課題
*( )内はプログラムディレクター
1.革新的燃焼技術
(杉山雅則 トヨタ自動車 エンジン技術領域 領域長)
2.次世代パワーエレクトロニクス
(大森達夫 三菱電機 開発本部 役員技監)
3.革新的構造材料
(岸 輝雄 東京大学名誉教授/物質・材料研究機構 顧問)
4.エネルギーキャリア
(村木 茂 東京ガス 取締役副会長)
5.次世代海洋資源調査技術
(浦辺徹郎 東京大学名誉教授/国際資源開発研修センター 顧問)
6.自動走行システム
(渡邉浩之 トヨタ自動車 顧問)
7.インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
(藤野陽三 横浜国立大学 先端科学高等研究院 上席特別教授)
8.レジリエントな防災・減災機能の強化
(中島正愛 京都大学 防災研究所 教授)
9.次世代農林水産業創造技術
( 西尾 健 法政大学 生命科学部 教授 )
10. 革新的設計生産技術
(佐々木直哉 日立製作所 研究開発グループ 技師長)
第 1 回デライトデザインシンポジウム , Feb 20, 2015
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