黒田ゼミナール卒業論文 (日本の長時間労働)

黒田ゼミナール卒業論文
(日本の長時間労働)
学籍番号:1710110190
4 年 16 組 3 番
石川 成臣
目次
はじめに
第1章
日本で規定されている労働時間
第2章
残業について
第3章
日本人の労働時間
第4章
長時間労働がもたらす弊害
第5章
残業に対する意識と取り組み
まとめ
あとがき
はじめに
「日本は働き過ぎていて、プライベートの時間をほとんど確保していないじゃないか」そ
んな小さな疑問を抱いたことが私がこの黒田ゼミナールに入ろうと思うきっかけでした。
私自身の考えとしてはプライベートを充実させる事こそ人生の醍醐味であると考えていま
す。仕事とはそのためにある言わばプライベートを支える存在だと今でも考えています。
そんな仕事(長時間労働)によってプライベートの時間が削られている日本の現状に大きな
疑問を持ったため、ゼミでの集大成となるこの卒業論文で答えをそして解決策を見つけた
いと思いこのテーマに決めました。
またこんな働く日本であるにもかかわらず、GDP があまり高くない現状にも矛盾を感じ
ているので同時にこの矛盾についても解決していきたいと考えています。
第 1 章 日本で規定されている労働時間
第 1 章ではこの卒業論文で論じる「残業」をより深く理解するためにまず、日本で規定
されている労働基準法について各種の資料を参考にしながら説明していきたいと思います。
労働時間、休日について労働基準法では次のように規定されています。
「労働基準法第 32 条・・・使用者は、原則として、1 日に 8 時間、1 週間に 40 時間を超え
て労働させてはならない」
「労働基準法第 34 条・・・使用者は、労働時間が 6 時間を超える場合は 45 分以上、そし
て 8 時間を超える場合は 1 時間以上の休憩を与えなければならない」
「労働基準法第 35 条・・・使用者は、少なくとも毎週 1 日の休日を与えなければならない」
時間外労働協定(36 協定)
また労働基準法第 36 条には次のように書かれています。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはそ
の労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を
代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第 32 条
から第 32 条の 5 まで若しくは第 40 条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわら
ず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることがで
きる。
ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長
は、1 日について 2 時間を超えてはならない。
つまり、労働者を法定労働時間(1 日 8 時間 1 週 40 時間)を超えて労働させる場合や、
休日に(1 週 1 回または 4 週を通じて 4 回を下回って)労働させる場合には、あらかじめ労
働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならないという事です。ではこの時間
外労働協定(36 協定)は何のために存在するのでしょうか。
本来は法定労働時間(1 日 8 時間 1 週 40 時間)を超えて労働させたり、休日に(1 週 1
回または 4 週を通じて 4 回を下回って)労働させること自体が労働基準法違反となるので
すが、時間外労働協定(36 協定)を締結して労働基準監督署に届出することによって労働
基準法違反にならなくなるのです。
なお、この労働基準法第 36 条自体に係る罰則は定められていませんが、36 協定を締結し
ない、あるいは、締結した協定の範囲を超えて労働させた場合には、同第 32 条から第 32
条の 5 まで若しくは第 40 条の労働時間又は前条の休日に関する規定に違反することになり
ますので、同第 119 条に則り、
「6 ヵ月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金」に処されます。
つまり、時間外労働協定(36 協定)を締結して労働基準監督署に届出することによって、
免罰されるということです。ただしこの時間外労働協定は何でも許される協定というわけ
ではありません。使用者の勝手な都合で限度なく何時間でも何日でも締結して良いという
ものではありません。また、時間外労働協定を締結したからといって、時間外労働手当が
免除されるわけではありません。あくまでも労働時間を延長しても良いというものであり
時間外労働手当は支給されなければなりません。1
上述のようなことを基本としながらも、例外として①変形労働時間制②フレックスタイ
ム制③みなし労働制などが認められています。
第一に変形労働時間制とは日々の労働時間を変えていくものです。変形労働時間制は、
労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たり
の労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日または週に法定労働時
間を超えて労働させることができます。
「変形労働時間制」には、①1 ヶ月単位、②1 年単
位、③1 週間単位のものがあります。
第二にフレックスタイム制とは、1 か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間
をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定
し働く制度で、労働者がその生活と業務の調和を図りながら、効率的に働くことができ、
労働時間を短縮しようとするものです。フレックスタイム制は、1 日の労働時間帯を、必ず
勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社しても
よい時間帯(フレキシブルタイム)とに分け、出社、退社の時刻を労働者の決定に委ねる
ものです。なお、コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんから、全部
をフレキシブルタイムとすることもできます。また、これとは逆に、コアタイムがほとん
どでフレキシブルタイムが極端に短い場合などには、基本的に始業及び終業の時刻を労働
者の決定に委ねたことにはならず、フレックスタイム制とはみなされませんので注意しな
ければなりません。2
残業代バンク http://zangyou.org/information/36kyoutei/(2015/1/2 アクセス)
HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzika
n/index.html(2015/1/2 アクセス)
1
2厚生労働省
出 典 : フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 と は
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/980908time01.htm(2015/1/2 ア
クセス)
第三にみなし労働時間制ですがそれには、
「事業場外みなし労働時間制」、
「専門業務型裁
量労働制」
、
「企画業務型裁量労働制」の 3 つがあります。
事業場外みなし労働時間制は、事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合
に、原則として所定労働時間労働したものとみなす制度です。
専門業務型裁量労働制は、デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時
間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない 19 の業務について、実際の労働時間数
とはかかわりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。
企画業務型裁量労働制は、事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務
遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の
労働時間数とはかかわりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度
です。
このみなし労働時間制にはメリットそしてデメリットが存在します。
たとえば所定労働時間が 8 時間、事業場外のみなし労働時間を 5 時間と定めた場合、午
前中 3 時間は社内で事務処理し、午後から 6 時間外勤をしたとしても社内で勤務した時間
を含めて所定労働時間の 8 時間を労働したこととされます。対して 1 日の所定労働時間は 8
時間、事業場外のみなし労働時間も 8 時間と定めた場合に、朝から外勤で6時間勤務をし、
その後会社へ戻り、社内で事務処理を 2 時間したとしても、社内での事務処理分は時間外
労働となりこの時間外労働ついて割増賃金の支払いが必要になります。休日・深夜労働に
ついても同様です。この制度を上手に活用すれば「労働時間管理がしやすい」「残業代を抑
える」などの効果が得られるでしょう。しかし一方で、実際の労働時間とあまりにもかけ
離れたみなし労働時間を設定することは、労働者に不満を募らせる要因となりますので注
意が必要となります。また上記のように事業場外労働と社内勤務が混在する場合には、社
内勤務分の労働時間はみなし労働とすることはできず、場合によっては時間外手当の支払
いが発生する事となるため、みなし労働時間の設定をどうするかよく検討した上で、休日・
深夜勤務を含めた労働時間の把握が求められます。3
労働時間について最後に年次有給休暇について述べておきます。使用者は、労働者が①6
ヶ月間継続勤務し、②その 6 ヶ月間の全労働日の 8 割以上を出勤した場合は、10 日(継続
または分割)の有給休暇を与えなければなりません。
6 ヶ月の継続勤務以降は、継続勤務 1 年ごとに 1 日づつ、継続勤務 3 年 6 ヶ月以降は 2
日づつを増加した日数(最高 20 日)を与えなければなりません。
以上が労働時間、休日に関する主な制度である。4
HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzika
n/index.html(2015/1/2 アクセス)
4 同上。
3厚生労働省
第 2 章 残業について
第 2 章ではこの卒業論文で取り上げる長時間労働の中心にある「残業」についてみてみ
ます。具体的にどんなことが残業なのか、どんな規定、どんな種類の残業が存在するかな
ど詳しく具体的な例を交えながら説明していこうと思います。
残業
労働基準法は、1 週間に 40 時間、1 日 8 時間を超えて労働させてはならないと規定してい
ます。これが法律で定める労働時間で、
「法定労働時間」といいます。この法定労働時間を
超えて働いた場合が時間外労働、すなわち法律上の「残業」になります。
会社はそれとは別に、労働契約書や就業規則に「昼食休憩の 12 時 00 分~13 時 00 分を
除く 9 時 00 分~17 時 00 分までを勤務時間とする」などと、通常の労働時間を定めてある
のが普通です。これを「所定労働時間」といいます。
所定労働時間を超えて働く場合も社内的には残業ですが、1 日 8 時間、週 40 時間内の部
分は法律上の時間外労働ではないため、割増しとなる残業代を支払う義務はありません。
もちろん、会社が「所定労働時間を超えて勤務した場合は残業代を支払う」旨を就業規
則などで決めてあれば、法定内労働時間であっても社内的には残業代を請求することがで
きます。5
ただし、法定内労働時間の部分は労働基準法で定める割増賃金の対象にはなりませんし
(会社が割増しを払うと決めてあるのなら有効)
、のちに労働審判などによって請求する場
合には和解などで対象から除外される場合もあります。
法定労働時間の 1 日 8 時間、週 40 時間には、時間帯や曜日の規定はありません。たとえば、
1 時間の昼休みを除く 9 時~17 時までを勤務時間とする会社の社員が、上司の命令によっ
て早朝 7 時に出勤し、17 時まで勤務した場合に 1 日の労働時間は 9 時間となりますから、
1 時間分は法定外労働時間、すなわち法律上の「残業」に当たります。
「私は朝型だから」や「通勤ラッシュを避けたい」という個人的な理由で自発的に朝早く
出勤して仕事をしている場合は別となります。上司がそれを知っているとしても、命じた
わけではないのでこれは残業には当たりません。
では、月曜日から金曜日の 9 時~18 時まで(昼休みを除く)を勤務時間とする会社の社
員が、上司の指示により土曜日に 5 時間働いたとしたらどうでしょう?
週 45 時間労働になりますから、法定労働時間を超えた 5 時間部分は残業に当たります。
5
ダイヤモンド社 書籍オンラインを参照。http://diamond.jp/articles/-/14216(2015/1/2 ア
クセス)
同時に割増賃金の対象にもなります。6
ただし、月曜日から金曜日の間に祝日があると、普通に休んだとしたら週 40 時間を超え
ないので残業には当たりません。
労働基準法には休日の規定もあり、
「毎週少なくとも 1 回の休日」、もしくは「4 週間に 4
日以上の休日」が義務づけられています。
休みが週 1 日、つまり週 6 日制の会社の社員が、週 1 回の休日に出勤した場合は、
「休日
出勤」になります。休日出勤は、時間外労働(残業)の割増率(25%以上の割増。1 カ月
60 時間を超えると、大企業の場合は 50%以上割増)よりも高い 35%の割増賃金を払わな
ければなりません。
週休 2 日制の会社がその 1 日分、たとえば土曜日に出勤させたとしても、休日労働には
当たりませんが、週 40 時間を超えた部分は時間外労働の割増賃金を払うことになります。
なお、午後 10 時~午前 5 時まで(地域や期間によっては午後 11 時~午後 6 時までの場
合も)の時間帯に働いた場合は「深夜労働」となり、会社は 25%以上の割増賃金を支払わ
なければなりません。
残業が深夜労働の時間帯に及んだときは、その部分は「時間外割増 25%以上+深夜労働
割増 25%以上」で 50%以上の割増賃金を払わなければなりません。
従業員に法定労働時間を超えて働いてもらうためには、事前に労働基準監督署に書面を
届け出ておかなければなりません。書面には、従業員の過半数で組織する労働組合か、も
しくは従業員の過半数を代表する者の署名が必要となります。管理監督職にある者は代表
にはなれません。
これが俗に言う「36 協定」
(サブロク協定)です。なぜ「サブロク」なのかというと、労
働基準法の 36 条にこのことが定められているからです。
36 協定に明記する時間外労働には制限があります。1 週間 15 時間、2 週間 27 時間、1
カ月 45 時間……といった具合です。36 協定を結ばず、協定書を労働基準監督署に届け出て
いない場合の残業命令は違法ですから、従業員は拒否することができます。
では、
「36 協定を結んでいないから残業代は払わない」という会社側の「へ理屈」は成り
立つでしょうか。
もちろん、成り立ちません。実際に上司の指示で法定労働時間を超えて残業した事実が
あるなら、会社はその分の残業代を支払わなければなりません。
ただ、36 協定書も提出しないで残業させているぐらいですから、争いになると「命令で
はなく、本人の仕事が遅いから勝手にやっていただけ。上司は知らなかった」などと言い
張るかもしれません。もちろん、これも通りません。
時間外に働いたことの証明ができれば、未払いの割増賃金を取り戻せます。会社は、36
6
ダイヤモンド社 書籍オンラインを参照。http://diamond.jp/articles/-/14216(2015/1/2 ア
クセス)
協定なしに残業させたことについて罰せられてしまいます。7
サービス残業
労働基準法で定められている労働時間は「1 日の労働時間を 8 時間以内にする」、
「1 週間
の労働時間を 40 時間以内にする」となっています。この上記の労働時間を超えた場合を残
業と呼ぶわけですが、残業をしているにもかかわらずその残業代を受け取っていないこと
をサービス残業と呼びます。
7
ダイヤモンド社 書籍オンラインを参照。http://diamond.jp/articles/-/14216(2015/1/2 ア
クセス)
第 3 章 日本人の労働時間
第 3 章では実際に私たち日本人はどれくらい働いているのか、そのうち残業が占める割
合はどの程度なのか説明をしていきます。同時にこの第 3 章で日本人がなぜ現在の労働時
間に至っているのかそして、世界と比べ日本の労働時間はどうなのか説明していきます。
まず下のグラフをご覧ください。
表 1:年間休日数
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2014/ch6.htm
このグラフを見ると働き過ぎの国日本と言われているものの、世界と同じような休日を取
得しているのではないかとまず私は思いました。ではまた次のグラフをご覧ください。
表 2:一人当たり平均年間総実労働時間
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2014/ch6.htm
このグラフを見ると同じ休日をもらっているにもかかわらず、他の国に比べ圧倒的に労
働時間が多くなっています。これは同時に日本の時間外労働の多さを示しているのではな
いでしょうか。
表 3:年間総実労働時間の推移
これは厚生労働省が発表した年間の労働時間の推移のグラフです。一見、労働時間は減
ってきているように思えますが本当にそうなのでしょうか。労働時間の規制緩和を提言す
る政府は、日本の労働時間が 1800 時間を切って 1700 時間台になった発表しています。年
間 1800 時間というと、
「週 40 時間、残業無し、完全週休2日、年次有給休暇完全取得」と
いう働き方です。日本の実態は全く異なるでしょう。特に正社員を中心にして長時間労働
は変わっていません。1800 時間はパート労働者を含めた平均労働時間であり、正社員の労
働時間の実態を示してはいないのです。
厚労省の労働経済白書では「月間労働時間」を発表しています。これを 12 倍すれば年間
労働時間となります。下の表は厚労省「毎月勤労統計調査」に基づくものです。注意しな
ければならないのは、これは厚労省が事業者に問い合わせて回答された労働時間の統計で
すから、サービス残業はカウントされていません。
表 4:毎月勤労統計調査による年間労働時間
出典:BLOGOS
http://blogos.com/article/85696/
これと別に、総務省統計局の「労働力調査」では、全国で約4万世帯の約 10 万人に聞き
取りをして、平均週間就業時間を発表しています。これは、月末1週間の労働時間を調査
員が直接聞き取るものです。1年が 52.14 週ですから、大ざっぱに 52 倍すると年間労働時
間となります。
表 5:労働力調査による年間労働時間
出典:BLOGOS
http://blogos.com/article/85696/
まとめると、男性(正社員と非正規社員)は平均して年間 2300 時間を超えて働いています。
正社員は、これ以上に働いているでしょう8。これが日本の労働時間の実態と言えます。日
本人はこれだけ働いているのですから、当然 GDP も世界に比べ高くなっているのではない
かと期待をする人もいるのではないでしょうか。では次世界と比べた日本の GDP を見てみ
ましょう。
表 6:主な国の労働時間あたり GDP
単位:ドル、出所:経済協力開発機構(OECD)
、2011 年
出典:ダイヤモンドオンライン http://diamond.jp/articles/-/38206
2011 年の日本人 1 人あたりの総実労働時間は平均 1728 時間(政府により発表されている労
働時間)、英国(1625 時間)
、フランス(1476 時間)、ドイツ(1413 時間)
、などに比べる
と長時間労働が依然続いています。オランダ(1379 時間)に比べると、実に 349 時間もの
大きな差となっています。一方、2011 年の日本の労働時間 1 時間あたりの生産性は 41.6
ドル。米国(60.2 ドル)
、フランス(57.7 ドル)やドイツ(55.8 ドル)に比べて、日本は
8
BLOGOS
http://blogos.com/article/85696/
生産性が著しく低いという結果になっています。
表 7:生活時間(正規雇用者・非正規雇用者)
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構 データブック国際労働比較 2013
3 ヵ国の男性で比較すると、自宅を出る時刻や出社時刻にはほとんど差がない。ところが、
帰宅時刻になると 2 時間近い差が生じてしまっています。
(法定労働時間は日本・アメリカ
は週 40 時間、フランスは 35 時間)
。一番大きい差は残業時間であり、日本はアメリカやフ
ランスの 3 倍近い残業を行っていることがわかります。
年間休日数はあまり差がないので、
日本の長時間労働の主たる原因は残業にあると言っていいでしょう。
残業が多くなる理由
では、具体的になぜ日本はこんなにも残業が多い国となってしまっているのでしょうか。
この答えを知るため働く労働者に自らアンケート調査を行いました。結果が次のグラフで
す。
表 8:残業の原因
10%
仕事量
30%
60%
職場の雰囲気
弱い退社指導
自ら行ったアンケート調査によって
作成
グラフを見ての通り、①仕事量②職場の雰囲気③弱い退社指導の順になっています。
まず第一に仕事量です。
「仕事が終わらなければ当然帰ることなどできない」という答え
が最も多い結果となりました。「上に立つ人間が適切な仕事量を考えてほしい」「仕事量に
対しての人員をもっと増やすべき」などという労働者の声がありました。
第二に職場の雰囲気です。
「上司が帰らず、自分だけ帰ることが心苦しい」という答えが
最も多い結果となりました。
「帰りやすい雰囲気をまず会社が作らなくてはならない」など
という労働者の声がありました。
最後に弱い退社指導です。
「残業するのが当たり前というルールが会社にできてしまって
いる」という答えが最も多い結果となりました。
「ノ―残業デーを徹底するなど会社の規定
そのものを変えてほしい」という労働者の声がありました。
以上 3 つが残業が増える主な理由となります。いずれも労働者一人ひとりではなかなか
解決することができない問題であり、「残業」が会社いや、日本全体にとって大きな課題で
あることが伺えます。
第 4 章 長時間労働がもたらす弊害
今までは日本の残業についての実態を詳しく説明してきました。第 4 章ではこの残業が
労働者にもたらす弊害について説明していこうと思います。
第 1 節:長時間労働による生産性の低下
第一に長時間労働により時間当たりの生産性が低下してしまいます。
日本の労働者は他国よりも長時間働いている半面、1時間あたりの生産量は非常に少な
い。先進諸国と日本の労働実態を比較すると、働く現場での非効率性が浮かび上がってい
ます。
経済協力開発機構(OECD)の調べによると、日本では1人あたりの総実労働時間は 2011
年で平均 1728 時間。統計をとり始めた 1970 年の 2243 時間がピークで、高度経済成長期
に比べてサービス残業の見直しなどで減少傾向が続くものの、英国(1625 時間)やドイツ
(1413 時間)
、オランダ(1379 時間)など欧州諸国に比べると、長時間労働が依然続いて
います。
一方、同じく OECD による労働生産性の国際比較(11 年)を見ると、日本の労働時間1
時間あたりの生産性は 41.6 ドル。米国(60.2 ドル)やフランス(57.7 ドル)、ドイツ(55.8
ドル)に比べて日本は生産性が著しく低いことがわかります。9
表 9:主な国の労働時間あたり GDP
出
典
:
日
本
経
済
新
聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG1800X_Q3A620C1SHA000/
第 2 節:健康への弊害
長時間労働がどのように健康に影響をおよぼしているのかについての下のモデルに示し
9日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG1800X_Q3A620C1SHA000/
ました。長時間労働は、労働の負荷時間を長くするだけでなく、睡眠・休養時間の不足、
家庭生活・余暇時間の不足を引き起こして、心身の疲労回復を阻害します。一方、長時間
労働の背景には高い仕事の成果要求が存在することが多く、この存在は精神的負担、仕事
密度の増加をもたらす可能性が高くなります。高い仕事の成果要求に伴う精神的負担とし
ては、時間的プレッシャー、質的に高度な課題に伴う心理的負荷などがあります。量的に
過度な成果要求があれば、労働時間の延長のみならず、仕事密度の増加も生ずる場合が多
いです。このように、長時間労働は量・質の両面で労働負荷を増加させ、同時に心身の疲
労回復を阻害する可能性を持っています。長時間労働がこのように多面的に作用した場合
に健康に強い影響力をおよぼすことは容易に想像できます。
表 10:長時間労働による健康被害
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
長時間労働は、睡眠・休養時間、家庭生活・余暇時間の不足をもたらすと推測されるが、
実態はどのようになっているでしょうか。2001(平成 13)年社会生活基本調査報告(総務
省)を基にして実態を検討してみました。男性雇用者について、週労働時間別の一日の生
活時間(週全体平均)を下の図に示しました。生活時間は週全体平均で表しているので、
平日と土日の値を平均した値になっています。週労働 40〜48 時間と週労働 60 時間以上と
を比較すると、仕事時間が一日あたり 2 時間 30 分増えている代わりに、睡眠が 30 分、休
養・くつろぎが 15 分、テレビ・新聞が 50 分、趣味・娯楽が 15 分、その他の行動が合計
40 分、減っています。睡眠時間が慢性的に 30 分減少すれば、健康に与える影響は大きいで
しょう。生活行動の中で時間の減少の最も大きい項目は、テレビ・新聞です。テレビ・新
聞の時間は、広い視野での情報収集、娯楽、家族の団欒、テレビを見ながらの睡眠・休養
などの時間として有意義なものであり、その減少は、健康の維持・疲労回復にも影響を与
えていることでしょう。睡眠時間については、長時間労働により短時間睡眠者がどれくら
い増加するかということも重要になります。短時間睡眠が健康へ悪い影響を及ぼすことは
多くの研究により示唆されています。次の図には 2002(平成 14)年労働者健康状況調査(厚
生労働省)の結果を示しました。勤務日の平均睡眠時間 5 時間未満の労働者の割合は、1 日
の所定外労働 0 時間では 4%、同 2〜2.9 時間では 9%、同 5 時間以上では 11%と大きく増
加しています。
表 11:週労働時間と生活時間
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
表 12:所定外労働時間と勤務日の睡眠時間
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
長時間労働は、疲労や心身の不調を招きます。下の図には平成 14 年労働者健康状況調査
の結果が示されています。
「仕事で身体がとても疲れる」労働者の割合は、1 日の所定外労
働 0 時間では 8%、同 2〜2.9 時間では 19%、同 5 時間では 23%と大きく増加しています。
心身の不調を訴える労働者の割合についても、ほぼ同様の結果が得られています。疲労・
心身の不調は、仕事能率の低下や事故の背景要因となるばかりでなく、重篤な疾患発生の
背景要因となっている可能性があります。2002 年米国総合的社会調査(General Social
Survey)のデータを用いた解析(下図)においても、仕事のストレス、疲労困憊、家庭生
活の阻害が週労働時間とともに増加するという結果が出ています。週労働時間 50 時間ぐら
い(所定外労働時間 1 日 2 時間に相当)から、健康への影響が明確になってくるという点
でも、日本の調査結果と類似しています。図の指標三項目の中で週労働時間と関連が最も
強いのは、家庭生活の阻害です。2005 年欧州労働条件調査でも、長時間労働(週労働 48
時間以上)の負の影響の最も大きい項目は、家庭生活・社会参加の阻害になっています。
このように家庭生活は長時間労働の影響を受けやすく、その影響は、長期的に考えると健
康への影響にもつながっていくと考えられるのです。
表 13:所定外労働時間と心身の疲労・心身の不調
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
表 13:週労働時間と健康
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
長時間労働による深刻な健康障害の一つは脳・心臓疾患です。長時間労働等の過重な労
働に起因する脳・心臓疾患は過労死と呼ばれ、その研究の歴史は 30 年以上に及びます。1978
年には日本産業衛生学会で初めて「過労死」という言葉を使った研究報告が発表されてい
ます。労働時間と脳・心臓疾患発症に関する代表的な調査結果を下の表に示しました。調
査結果によれば、長時間労働による脳・心臓疾患発症の相対リスクは 2〜3 倍です。また、
脳・心臓疾患発症リスクを増加させる長時間労働とは、一日 10〜11 時間以上あるいは週 60
時間以上の労働でした。このように日本で実施された長時間労働と脳・心臓疾患発症に関
する 3 つの疫学研究は、ほぼ一致した結果を示しています。これらの結果は、現行の脳・
心臓疾患の労災認定基準の医学的根拠となっています。2006(平成 18)年度の過労死等(脳・
心臓疾患、死亡と非死亡の和)の労災請求件 938 件、労災認定件数は 355 件でした。長時
間労働が精神障害の発症・増悪や自殺にどの程度関与しているかは、大きな社会的関心を
集めています。睡眠・休養時間及び家庭生活・余暇時間の不足、精神的負担の増加など、
長時間労働とメンタルヘルス悪化とを結びつける要因は複数あります。長時間労働がメン
タルヘルスを悪化させる可能性があると考えるのは、合理的です。しかしながら、長時間
労働と精神疾患発症に関する疫学調査によるエビデンスはまだ十分に得られていないよう
です。藤野らは最近の文献レビューにおいて、「体系的レビューの結果、労働時間と精神的
負担に関して検討した原著論文が 17 編確認されました。それらの論文のレビューの結果、
労働時間と精神的負担との関連に一致した結果は認められませんでした。しかしながら、
複数の研究において関連性を認める報告がなされていた」と報告しています。精神障害等
(精神障害と自殺の和)の労災補償では、請求件数(2001 年度 265 件から 2006 年度 819
件へ)
、認定件数(2001 年度 70 件から 2006 年度 205 件へ)ともに著しく増加しています。
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表 14:労働時間と脳・心臓疾患発症に関する調査結果
出典:Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
Business Labor Trend 2007.7
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf(2015/1/2 アクセス)
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第 5 章 残業に対する意識と取り組み
第 5 章では実際に働いている労働者が抱く残業への意識を自ら行ったアンケート調査
(2014 年 12 月ネットを用いて働く労働者 70 人を対象)を基にまとめていきたいと思います。
また同時に残業の低減に積極的な企業の取り組みについてもまとめていきたいと思います。
第 1 節:残業に対する意識についてのアンケート結果
私が今回行ったアンケート調査では働く男女 70 人(年齢は問わず、学生を除く)に意見を
聞きました。男女の割合は5:5となっています。
① 日本の労働時間をどう思っていますか?という質問に対して「長い」61%、「ちょうど
良い」39%、
「短い」0%という結果になりました。短いと感じる人が 0 人と半数以上の
人が長いと感じていることから「働きすぎの国 日本」と言われる所以を感じる結果と
なりました。
② あなたは残業をしても良いですか?という質問に対しては「はい」69%、
「いいえ」31%
と残業をしても良いという人が多数見受けられました。この結果を男性と女性で分けて
みると男性:
「はい」70%、
「いいえ」30%、女性:「はい」68%、「いいえ」32%とな
っており男女の変化はあまり見られませんでした。私自身、家事育児の観点から残業を
望む女性の割合は低くなると予想していたのですが、変化がないため経済面での女性の
活躍を垣間見ることができました。
次に「はい」と答えた人に対し、なぜ残業をしても良いのですか?と質問をしたところ
「お金のため」60%、「仕事が好き」15%、「評価のため」7.5%という結果となり大多
数の人がお金のために残業をしていることがわかりました。
また同時に「いいえ」と答えた人に対し、なぜ残業をしたくないですか?と質問したとこ
ろ「プライベートを優先させたい」
「残業するなら効率よく働き、時間内に終わらせる」な
どという意見が多い中「残業代が出ない」などという驚くべき答えも存在しました。自分
の身近な人の中にも残業代が支払われずにサービス残業を強いられている人が大勢いると
知り、驚きを隠せませんでした。
③ 残業をする場合、どのくらいの時間であれば許容範囲内ですか?という質問に対して
「~2 時間」37%、
「~1 時間」35%、「~3 時間」17%という結果になりました。この
結果から残業をしても良いという人は多数いるけれどもやはり、長時間の残業を拒む人
が多いように見受けられます。
④ 仕事とプライベートならどちらを優先させますか?という質問に対しては「プライベー
ト」60%、
「仕事」40%という結果となりやはりプライベートを充実させたいと考える
人が多いようです。
⑤ 残業が多くなってしまう一番の原因はなんですか?という質問に対しては「仕事量」
61%、「
(上司、同僚が帰らない等)職場の雰囲気」28%、「弱い退社指導」11%、「残
業代を得るため」0%という結果になりました。仕事量が多いため残業になってしまう
人が多いことから仕事量を変えていくことが残業を減らすためのポイントであると認
識することができました。また②でお金のために残業をすると答えた人が多数いたにも
かかわらず、今回「残業代を得るため」と答えた人が一人もいなかったことから、少な
くとも自発的に残業をしている人はきわめて少ないのではないかという仮説が私の中
で立ちました。自分が予想していた結果と全く異なっていたので非常に驚きました。
⑥ 最後に残業を減らすためにあなたはどのようにすれば良いと思いますか?という質問
に対し実に多様な意見が出されました。いくつかを紹介します。
「適切な仕事量を考え、
上に立つ人が状況を把握し的確な指示を出す」「人員を増やしつつ、みんなで仕事をカ
バーし合う」
「朝の勤務を増やす」
「現時点で残業による収入は生活にとってなくてはな
らない部分となっているので自分は残業に反対ではありません。少なくとも自分の勤め
る会社では上記の考え方をもっている人は少なくないです。それでも残業を悪とし、無
くさなければいけないとすれば、今の残業ありきで仕事量が決められる体制(考え方)を
労働組合を通し会社側と議論しなければならないと思います。労働者側の要望は『残業
はしたくない。だけど、ちゃんと今までの給料は確保したい。』ということになります
が、それを認めるほどお金に余裕がある企業が今の世の中にあるとも思えないです。よ
って議論は平行線になると思います。『給料は関係なく、残業をしたくない』というの
であれば受け入れられる会社もあるかもしれませんが、生活への金銭的圧迫になるだけ
なのでそんな要望はできないと思います。何より日本は他国に比べて生活にかかる費用
が多すぎるのではと思います。(税金等)」などさまざまな解決策を答えていただきまし
た。
第 2 節:残業に対する取り組み
① ャノン株式会社
キヤノンの従業員数(2010 年末日時点)は単独で約 2 万 6,000 人で、男女比は男性が 8
割、女性が 2 割です。また、職種別では、生産部門も含め、技術職が全体の約 7 割を占め
る技術系の会社です。キヤノンでは、2008 年 7 月以降、長時間労働削減に向けた取り組み
を積極的に行っています。
キャノンでは、効率よく仕事をすることによって、ホワイトカラーの生産性をいかに向
上させるかが重点だと考えています。それ抜きで永続的な成長はありません。生産性向上
によって、過度な長時間労働がなくなることで、社員の人生も豊かで充実したものになっ
ていくのではないかと考えています。
キャノンは古くから労働時間削減の取り組みを行ってきています。今から半世紀以上前
の 1959 年には、勤務時間中は効率的に働き、終業時間になったらすぐ帰宅するよう奨励し
た「GHQ(Go Home Quickly) 運動」をすでに行っていました。それが今でも「短時間で効
率よく働く風土」として受け継がれてきています。
その後も、1967 年の完全週休 2 日制の導入、リフレッシュ休暇制度(1988 年)、フリー
バカンス制度(2000 年)など休日・休暇制度を充実させてきています。同時に時短の推進
にも取り組んでおり、1996 年には年間所定労働時間 1,800 時間となりました。時間外労働
の削減もあり、2010 年の総実労働時間は 1,798.7 時間となっています。
時短の促進とともに重視してきたのが、有給休暇の取得促進です。先ほど出てきたフリ
ーバカンス制度は年末年始や夏期の長期連休とは別に、連続した5日間の年次慰労休暇を
取得できる制度です。中には「とりづらい」と言う声もあるため、人事本部が主導となり、
しっかり取得するよう指導しています。
制度を充実させるとともに大切なのが、
「働き方を見直すことで、できる限り効率的に働
き、期待される成果を出しながら、長時間労働をなくしていく」という意識をどうやって
社員に持ってもらうかということです。2008 年の7月には厚生労働省が実施する「仕事と
生活の調和推進モデル事業」に参画しており、社員に意識づけを行ういい機会になったと
考えています。
「ノー残業デー」
の徹底も行っています。
実はこの制度は 90 年代から存在していましたが、
徹底されていない状況でした。
「水曜日は完全実施するノー残業デーで、金曜日はできれば
実施するノー残業デー」という運用がされていた程です。
そこで「まずは、決められたノー残業デーを徹底しましょう」ということで、2008 年か
ら取り組みを開始しました。ポスターを会社のあらゆる所、職場だけでなく、お客様が見
えるところにまで掲示しました。さらに社内広報誌による啓発活動や、ノー残業デー実施
日の定時後の消灯と空調停止の徹底も行いました。こうした取り組みの結果、ノー残業デ
ーは、かなり徹底されています。
こうした取り組みと同時に労働組合とも協議し、ワーク・ライフ・バランス推進委員会
を設置しました。労働組合とも連携して取り組みを進めていることにより取り組みが定着
してきています。11
残業に対する取り組み
②リコー
リコーでは 15 時半を過ぎると帰宅し始める社員がいると言います。そんな光景が見られ
るようになったのは 2014 年 4 月からです。
「エフェクティブ・ワーキングタイム制度」と
名付けた新しい形のフレックスタイム制を導入したことにより、15 時半退社が可能となり
ました。9 時から 15 時半のコアタイムは全社員が勤務することになっていますが、その前
後は各自が仕事の進み具合などに応じて調整することができます。稼働日数 20 日の場合、
11
独立行政法人 労働政策研究・研修機構を参照。
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20110302/houkoku/03_kanou.htm(2015/1/2 アクセ
ス)
月 150 時間の規定時間さえ満たせば、プロジェクトが一区切りして余裕ができたときなど
15 時半に帰ることができるのです。
もともとリコーではフレックスタイム制を導入していたが、2009 年にいったん休止。そ
れを復活させたのは、それぞれが自分の能力を最大限発揮できる職場環境を構築したいと
いう考えがあったからです。今後、企業として躍進を遂げるには、社員の創造性をいかに
引き出すかが大きなテーマとなります。そういう意味で、時間で縛るのはふさわしいとは
いえないのではないでしょうか。それぞれが自分のリズムでメリハリをもって働いたほう
がより創造性の高い仕事ができると考えました。また、自分自身で効率的な働き方を模索
することで、主体性を育んでほしいという思いもあります。
この制度には一般のフレックスタイム制とは決定的に異なる点が 1 つあります。朝は 8
時前、夜は 20 時以降の残業を原則禁じています。コアタイムの前後は自由に時間を選べる
といっても 8 時から 20 時までと定められているのです。その狙いは、かつてフレックスタ
イム制を採用していたときも、部署によっては長時間残業が常態化していました。しかし、
長く働けば成果が出るかというと、必ずしもそうとは限りません。むしろワークタイムと
ライフタイムを効果的にコントロールしてこそ創造性を発揮できるものです。そこで単な
るフレックスタイム制ではなく、時間外労働を制限しました。
まだ導入して半年ということもあり、今はまだ徹底されているわけではありません。し
かし、20 時以降の残業は前年の 3 分の 1 に減少したといいます。将来的にはさらに残業を
削減できればと考えていますが、それを実現するには新たな取り組みが必要でしょう。今
後も業務効率も高めつつ、社員の創造性を最大限引き出せる施策を打ち出していく方針で
す。12
12
http://www.forum-m.jp/mail/semicon1411.pdf を参照
まとめ
はじめこの「残業」というテーマで卒業論文を書く際に、正直法律で罰を与えれば一気
に解決する簡単な問題だと思っていました。しかし調べれば調べるほど残業は非常に難し
い問題であり、簡単には解決することができない問題でした。アンケート調査によっても
自分の身近にも残業代の払われないサービス残業が多く存在することに驚きを隠せません
でした。
しかしながら、企業とは「人」がいるからこそ成り立つものです。その「人」が楽しく
働くことが企業にとってもっとも優先すべきことではないでしょうか。
私はやはり長時間労働には反対です。
この長時間労働を改善する一番の方法は労働者一人ひとりが長時間労働を無
くそうという気持ちを自発的に持つことだと考えます。
何でも自発的に行動しなくては仕事に対するモチベーションも下がる一方です。なので、
長時間労働は宿命だ。自分の会社では避けられない。などと諦めるのではなく各自が自覚
を持って長時間労働を改善していかなくてはならないと考えます。
あとがき
最近話題となっている残業であるのだからある程度理解しているだろうという気持ちを
持ちながら始めた卒業論文。しかし実際に調べてみると知らなかったことだらけでした。
この卒業論文で学んだ知識を知識だけで終わらせるのではなく、実際に社会人となるとき
に活用していこうと思います。
参考文献一覧
・残業代バンク http://zangyou.org/information/36kyoutei/
・厚生労働省 HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzika
n/index.html
・ダイヤモンド社 書籍オンライン http://diamond.jp/articles/-/14216
・独立行政法人 労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2014/ch6.htm
・BLOGOS
http://blogos.com/article/85696/
・日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG1800X_Q3A620C1SHA000/
・Business Labor Trend 2007.7 http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/bn/2007-07/P6-9.pdf
・http://www.forum-m.jp/mail/semicon1411.pdf