資料 5 養介護施設における 高齢者虐待防止について 平成28年3月24日 長崎市高齢者すこやか支援課 ◆法で定められていること(抜粋) ◆定義(第2条) ◆国民の責務(第4条) ◆早期発見(第5条) ◆養介護施設の設置者・養介護事業者の責 務(第20条) ◆通報・届出(第21条) ◆通報を受けた場合の措置(第24条) 2 ◆養介護施設・事業所の責務 ①養護施設従事者等へ研修を実施する ②利用者や家族からの苦情処理体制を整備する ③その他の養介護施設従事者等による高齢者虐待の防 止のための措置を講じる 【虐待防止法 20条】 高齢者虐待の防止・発見・対応の責任 は、従事者個々人の問題だけではなく、 施設・事業所そのものにもある! ◆早期発見の責務と通報の義務 ・虐待を受けたと「思われる」高齢者を発見 ⇒ 市町村へ通報すること 一般・・身体に重大な危険⇒通報義務 それ以外の場合⇒通報努力義務 養介護施設従事者等・・自分で働く施設等で発見し た場合は、重大な危険の有無に関わらず、通報義務 等が生じる。 【虐待防止法 21条】 通報義務は守秘義務に妨げられない! 通報したことによる不利益な扱いは禁止されて いる! 高齢者虐待の実態 『高齢者虐待の要因分析等に関する調査研究事業」報告(認知症介護研究・研修 仙台センターより要旨抜粋) 養護者による高齢者虐待 相談・通報件数(全国) 相談・通報件数 虐待判断件数 30000 25000 20000 18390 19971 15000 10000 12569 13273 21692 23404 14889 15615 25315 25636 16668 16599 23843 25310 25791 15202 15731 15739 5000 0 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度H26年度 養介護施設従事者等による 高齢者虐待相談・通報件数 相談・通報件数 (全国) 虐待判断件数 1200 962 1000 687 800 600 400 200 0 273 54 379 62 451 70 1120 736 506 408 76 96 151 150 221 300 相談・通報者(26年度) 都道府県 2.7% 国民健康保健団体連 合会 0.3% 本人 2.1% 警察 1.1% 匿名 5.7% その他 9.9% 社会福祉協議会職員 0.5% 家族・親族 18.9% 地域包括支援センター 3.4% 介護相談員 1% 介護支援専門員 6% 医療機関従事者 4% 当該施設職員 31% 当該施設管理者等 15% 当該施設元職員 15% n=1,308人 虐待の種別 80 n=613人(287件) 71.9 70 60 48.6 50 40 30 16.9 20 9.6 10 2.9 0 身体的虐待 介護等放棄 心理的虐待 性的虐待 経済的虐待 施設において多数の高齢者(79人)の預かり金詐取で一人当たりの被 害額が軽微な事案(1件)について便宜的に1人と見なした場合 施設等:種別 介護保険三施設 44.4% 特養 老健 GH/小規模多機能 16.6% 療養型 グループ ホーム 小規模多機 能 件数 95 35 3 40 10 割合 31.7% 11.7% 1.0% 13.3% 3.3% その他入所系 有料 軽費 29.0% 養護 ショートスティ 67 2 4 14 22.3% 0.7% 1.3% 4.7% 居宅系 7.4% 訪問介護等 通所介護等 居宅介護 支援等 9 11 2 3.0% 3.7% 0.7% その他 合計 8 300 2.7% 100% 虐待に該当する身体拘束の有無 身体拘束 なし 61% 身体拘束 あり 39% n=613人(287件) 被虐待高齢者の性別 不明 0.2% 男性 30.2% 女性 69.7% 不明等の1人は、高齢者(79人)の預かり金詐取で、一人当たりの被 害額が軽微な事業について、高齢者の属性及び虐待の態様が不明で あるため、これを便宜的に1人と見なした事案 被虐待高齢者の年齢 不明 50 100歳以上 8 42 95~99歳 96 90~94歳 134 85~89歳 114 80~84歳 75~79歳 85 70~74歳 43 65~69歳 22 65歳未満障害者 n=613人 19 0 50 100 150 被虐待高齢者の要介護状態区分 「要介護5」:29.2% 「要介護4」:29.0% 「要介護3」:22.3% 「要介護3以上」:80.6%と8割を占めた。 認知症日常生活自立度 「自立度Ⅱ以上」:77.3% もっとも多いのは「自立度Ⅲ」30.0% 虐待者:性別と年齢 本調査での虐待者 男 介護従事者 女 0% ~29歳 男 女 50% 30~39歳 40~49歳 50~59歳 34.4 本調査での虐待者 介護従事者 19.6 本調査での虐待者 17.3 介護従事者 100% 8.7 31.8 41.3 12.5 20.7 33.7 29.1 60歳以上 17.8 22.4 21.2 29.1 12.1 3.8 11.2 5.5 15.4 12.4 虐待者の職種 「介護職」:82.6% 「施設長」:3.4% 「管理職」:5.8% 「看護職」:3.0% 虐待者の性別 「男性」が59.3%、「女性」が40.7%であった。 虐待の発生要因 その他 1.0% 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙 さ 5.1% 虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の 悪さ 5.8% 倫理感や理念の欠如 6.8% 虐待を行った職員の性格や資質の問題 職員のストレスや感情コントロールの問題 教育・知識・介護技術等に関する問題 複数回答 n=294件 9.9% 20.4% 62.6% 長崎市高齢者虐待相談状況 養護者による高齢者虐待 相談・通報件数(長崎市) 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 918 延べ相談件数 実人数(虐待と判断された事例) 754 455 415 445 70 75 83 84 84 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 高齢者虐待 虐待の種類 17 介護放棄等 平成26年度 複数回答(件) 0 性的虐待 n=161 34 経済的虐待 49 心理的虐待 61 身体的虐待 0 10 20 30 40 50 60 70 相談者の種別 平成26年度 25 その他 複数回答(件) n=137 15 病院CW 26 家族 本人 17 48 ケアマネ、事業所 6 民生委員 0 10 20 30 40 50 60 被虐待者の年齢 平成26年度 n=84 7 90歳以上 13 85~89歳 25 80~84歳 16 75~79歳 17 70~74歳 6 65~69歳 0 5 10 15 20 25 30 虐待を受けている人の8割が女性 平成26年度 男性 18% 女性 82% n=84 虐待を受けている人の要介護認定の 有無 平成26年度 n=84 虐待を受けている要介護認定者の 認知症の有無 虐待者の続柄 嫁・婿 5% その他 2% 孫 2% 息子 36% 配偶者 31% 娘 24% 平成26年度 n=84 虐待者と被虐待者の世帯状況 不明 1% 別居 平成26年度 n=84 18% 同居 81% 高齢者虐待 対応状況 平成26年度 複数回答(件) n=95 30 23 22 20 10 0 9 13 5 23 長崎市の養護施設従事者による虐待 相談・通報状況 H22年度 相談・通報 件数 虐待判断 件数 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 2 5 6 7 5 0 3 6 0 0 施設の種類としては、特養・短期入所生活介護・ グループホーム・有料ホーム 身体拘束禁止規定と 高齢者虐待 身体拘束の問題点 ・本人への精神的苦痛(不安・怒り・あきら め・屈辱) ・身体機能の低下(関節の拘縮・筋力低下な ど) ・家族、親族等への精神的苦痛 ・ケアを行う側の士気の低下 「緊急やむを得ない」場合を除いて、身体拘 束は原則すべて高齢者虐待に該当します。 身体拘束について 具体例 ・徘徊、転落しないようにベッドや車いすにひも等で縛る。 ・自分で降りられないように、ベッドを柵で囲む。 ・点滴、栄養チューブを自分で抜かないよう四肢を縛る。 ・皮膚をかきむしらないようミトン型の手袋をつける。 ・車椅子から立ち上がらないようベルトをつける。 ・脱衣を制限するため、つなぎ服を着せる。 ・行動を落ち着かせるため、向精神薬を過剰に服用させる。 ・自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。 「身体拘束ゼロへの手引き」(厚生労働省)より 緊急やむを得ない場合 下記の3項目をすべて満たしている場合をいう。 例外3原則 ①切迫性・・・本人や他の入所者の生命・身体が危険に さらされる可能性が著しく高いこと。 ②非代替性・・・身体拘束その他の行動制限を行う以外に 代わりになる介護方法がないこと。 ③一次性・・・身体拘束その他の行動制限が一時的で あること。 やむを得ない場合でも その手続きは慎重に行う ・例外3原則の確認手続きは、「身体拘束廃止委員会」等 チームで行い、施設全体で判断する手続きをとる。 またその様態や時間、利用者の心身の様子、やむを得なかっ た理由を記録する。 ・利用者や家族に対し、目的・理由・時間(帯)・期間等を できるだけ詳しく説明し、十分な理解・同意を得る。 ・状況をよく観察、検討し、要件に該当しなくなった場合は すみやかに拘束を解除すること。(解除期間を必ず設定) ◆身体的拘束の届出 身体的拘束等開始後速やかに提出 ① 「身体的拘束等報告書」、「緊急やむを得ない身体的拘束等 に関する説明書」の写し(原本は事業所保管)を福祉総務課 に提出。 ② 「身体的拘束等経過観察・再検討記録」を記載し、事業所保 管。 ③ やむを得ず期間を延長する場合は、再度次の書類を福祉総務課 に提出。 (1)身体的拘束等報告書 (2)緊急やむを得ない身体的拘束等に関する説明書の写し (3)経過観察・再検討記録の写し 不適切なケアへ対策と防止策 虐待を考えるための2つの視点 顕在化した虐待 意図的虐待 非意図的虐待待 緊急やむをえない 場合以外の 身体拘束 不適切なケア グレーゾーン 高齢者虐待・不適切なケアへの対策 ①利用者の心身の状態を把握し、安全を確保する。 ②事実確認、組織内で情報を共有し、対策を検討す る。 ③速やかに本人・家族への説明や謝罪、関係機関へ報 告 ④原因を分析し、再発防止のための取組を行う 高齢者虐待・不適切なケアの防止策 ①組織運営の健全化 ②負担やストレス・組織風土の改善 ③チームアプローチの充実 ④倫理観とコンプライアンスを高める 教育の実施 ⑤ケアの質の向上 ①組織運営の健全化 • 理念とその共有 介護の理念や組織運営の方針を明確にし、職員間で 共有しながら、その実現のための具体的な取り組みを行う。 • 組織体制の問題 それぞれの職責や役割を明確にし、苦情処理体制をはじ めとする必要な組織(委員会などの合議体)を設置する。 • 運営姿勢の問題 第三者の目を入れ開かれた組織にする、利用者・家族と の情報共有に努める。 ②負担やストレス・組織風土の改善 • 負担の多さの問題への対策 柔軟な人員配置、効率優先や一斉介護を見直し 個別ケアを推進 • ストレス問題への対策 職場の人間関係に配慮し、声をかけあう関係づくり • 組織風土の問題への対策 すべての職員がその取り組みに参加し体験的に共有 する ③チームアプローチの充実 ①関係する職員がどのような役割をもつべきなのか を明確にする ②リーダーの役割を明確にする ③チームとして動く範囲を確認する ④情報を共有するための仕組みや手順を明確に定める ⑤チームでの意思決定の仕組みや手順を明確に定める ⑥よりよいケアを提供するためには立場を超えて 協力することが必要であることを確認する ④倫理観とコンプライアンスを 高める教育の実施 ・非利用者本位の問題への対策 「利用者本位」の原則を再認識すること ケアの内容や方法がそれに沿ったものになっているか確認 ・意識不足の問題への対策 基本的な職業倫理、専門性に関する学習の機会を持つ ・虐待、身体拘束に関する知識の問題への対策 ⑤ケアの質の向上 1 認知症ケアの問題への対策 ①認知症という病気について、正確に理解する ことが必要 ②行動・心理症状には本人なりの理由があると いう姿勢で原因を探っていくことが必要 ⑤ ケアの質の向上 2 アセスメントと個別ケアの問題への対策 ①利用者の心身状態を丁寧にアセスメントする利 用者の実生活の中での困難さや本人がもっている 力を、具体的に把握・分析する ②アセスメントに基づいて個別の状況に即したケ アを検討する (事例1) • 女性介護職員Aが、認知症がある女性利用 者Bが食事中によそ見をすることから、耳を 引っ張ったり、アゴを動かしたりするなどして 顔を食事介助しやすい向きに変えていた。 • その行為を見た他職員がおかしいと思い尋 ねたが、職員Aは不適切な介護行為であると の認識がなかった。 • 他職員に相談し、表面化した。 (事例2) • 男性職員Aによる、女性利用者Bへの強い言 葉による行為の制止が、実習に来ていた学 生から管理者に伝えられたことにより、表面 化した。 • その後の事実確認により、同じような態度を 取っていた職員がほかにもいたが、半ば黙認 されている状況であったことがわかった。 (事例3) • 女性利用者Bから「職員Aは怖くてものを頼め ない」という苦情が別の介護職員にあった。 • 苦情を受けた職員から相談された生活相談 員は、介護主任に話し、職員Aの業務態度な どを確認した。 • その結果、夜間帯に水分摂取をさせない、お むつ交換・体位交換を意図的に怠るなどの行 為が常態化していたことが判明した。 長崎市の相談・支援体制 相談の流れ 被虐待高齢者 虐待の発見者 通報 相談 相談 相談 届出 相談 長崎市地域包括支援センター(19か所) 相談・連絡・協力 長崎市高齢者すこやか支援課 (保健所・行政センター・介護保険課・生活福祉課との連携) 事実の確認・調査 高齢者すこやか支援課 (保健所・行政センター・介護保険課・生活福祉課との連携) 事実の確認・調査 指導・助言 ケア会議の開催 長崎市高齢者虐待防止 ネットワーク運営委員会 協力 援助要請 警察署長に援助要請(必要時) 高齢者の住所・居所への立ち入り調査 適切な対応策の検討及び支援の実施 ○見守り ○継続的な支援(相談・訪問) ○施設サービスの利用 ○在宅サービスの利用 ○老人福祉法による措置 長崎市の相談・支援体制 ・高齢者虐待専用窓口と専用電話を設置 ・保健師や社会福祉士が24時間対応 ・地域包括支援センターとの連携 ・高齢者虐待防止に関わる研修会の企画・実施 ・高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会で対策を協議 ・DV防止法と高齢者虐待防止法との棲み分けにより、県 との連携を行う 長崎市における 高齢者虐待相談窓口 ○ ○ ○ 地域包括支援センター19ヵ所 長崎市高齢者すこやか支援課 高齢者虐待専用電話 虐待相談専用 電話 827-6499 高齢者すこやか支援課 電話 829-1146 (休日・夜間) 電話 822-8888 <参考文献> 長崎市 *「長崎市高齢者虐待防止・支援マニュアル」 認知症介護研究・研修センター *「高齢者虐待を考える ~養介護施設従事者等におる高齢者虐待防止のための事例集~ 」 *「施設・事業所における 高齢者虐待防止学習テキスト」 厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」 *「身体拘束ゼロへの手引き ~高齢者ケアに関わるすべての人に~」
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