IASB公開草案「投資不動産の振替(IAS第40号の修正案)」に対する意見

IASB公開草案「投資不動産の振替(IAS第40号の修正案)」に対する意見
平 成 28年 3 月 18日
日本公認会計士協会
日本公認会計士協会は、国際会計基準審議会(IASB)の継続的な努力に敬意を表する
とともに、IASB公開草案「投資不動産の振替(IAS第40号の修正案)」に対するコメン
トの機会を歓迎する。
以下、公開草案の質問項目についてコメントする。
質問1―修正案
IASB は、IAS 第40 号の第57 項を次のように修正することを提案している。
(a) 企業は、用途変更の証拠がある場合に、かつ、その場合にのみ、不動産を投資不
動産に又は投資不動産から振り替えなければならない。用途変更は、不動産が投資
不動産の定義を満たしたか又は満たさなくなった場合に生じる。
(b) 第57 項(a)から(d)に示された状況のリストの性格付けを改めて、用途変更が生じ
ているという証拠の例の網羅的でないリストであり、網羅的なリストではないもの
とする。
これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
提案された修正内容には同意しない。
用途変更が行われる場合を明確化する本公開草案の目的には同意する。しかし、本公
開草案の提案内容では、実務の多様性を解消することは困難と考えられるため、具体的
な修正内容には同意しない。用途変更による振替をどの時点で行うべきかの原則の整理
と、判断に資するガイダンスが必要と考える。
例えば、販売目的で保有している又は建設中のビルを、市場の状況を勘案して賃貸ビ
ルに転用する場合、おおむね次のようなプロセスが存在すると考えられる。
(1) 販売用不動産から賃貸ビルへの転用を意思決定機関において承認する。
(2) 仕様の変更のための工事を実施する(必要な場合)。
(3) 第三者とオペレーティング・リース契約を締結する。
(4) オペレーティング・リースを開始する。
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本公開草案では、投資不動産への又は投資不動産からの用途変更による振替は、当該
不動産が投資不動産の定義に該当するかどうかに基づき行うこととされている。投資不
動産の定義は「賃貸収益若しくは資本増価又はその両方を目的として保有する不動産」
とされており(IAS 第 40 号第5項)、将来の用途が現時点では未定な土地や、建設中の
不動産であっても投資不動産の定義に該当すること(IAS 第 40 号第8項(b)及び(e))
を勘案すると、上記の例では(1)の意思決定機関における承認の時点で投資不動産の定
義を満たし、用途変更による振替が行われると考えることもできる。
一方で、本公開草案では証拠による裏付けが強調され、更に IAS 第 40 号第 57 項にお
ける従来の列挙項目が例示項目として存続している。特に、棚卸資産から投資不動産へ
の振替は「他者へのオペレーティング・リースの開始」の時点で行うという例示(IAS
第 40 号第 57 項(d))が存在することからすれば、上記の例では(4)のオペレーティング・
リースの開始時点で初めて用途変更による振替が行われると考えることもできる。
このように、本公開草案で提案されている投資不動産の定義により判断することと例
示項目とは必ずしも整合せず、逆に混乱を招くおそれがある。また、提案の内容では実
務の多様性を解消することも困難と考えられる。
したがって、用途変更による振替をどの時点で行うべきかの原則の整理と判断に資す
るガイダンスが必要と考える。
質問2―経過措置
IASB は、IAS 第40 号の修正案の遡及適用を提案している。これに同意するか。賛
成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の修正内容に同意しないため、特段のコメントはない。
以
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上