PDF 570KB

2.河川整備計画の目標に関する事項
本河川整備計画は、現時点における流域及び河川の状況に基づいたものである。
ただし、今後の流域及び河川をとりまく社会環境の変化などに合わせて、適宜見直すものと
する。
2.1
河川整備の基本理念
柳生川水系では、昭和28 年の台風13 号と昭和34 年の伊勢湾台風による高潮により甚大な
浸水被害を被った。また、昭和49年7月の台風8号では流域全体で約2,600戸に及ぶ家屋が浸水
した。近年では、平成20年8月末豪雨で、柳生川流域全体で278戸、狭窄区間上流で139戸もの
家屋浸水が発生するなど、沿川の市街地等で洪水による浸水被害が度々発生している。
洪水被害の発生及び現在の治水施設の整備状況から、柳生川の狭窄区間の治水施設整備を
早期に実現し、柳生川水系の治水安全度のバランスを図る必要がある。一方、目標とする治
水安全度を超える規模の洪水や、整備途上段階での施設能力を超える洪水による被害の軽減
を図るためには、地域防災力の向上が不可欠である。
また、柳生川の上流部や殿田川では、豊橋市とともに実施した河川の整備等により、良好
な自然・親水環境、景観を形成している箇所が多く、都市の中の貴重なオープンスペースと
して地域住民に親しまれていることから、地域住民と連携して、河川環境の保全・再生、良
好な景観の維持・形成を行う。これにより、河川に親しむ機会が増え、川への関心が高まり、
さらには、地域防災力の向上が期待できる。
このようなことから、柳生川水系においては、洪水等による水害に対して安全であるとと
もに、地域住民との連携により川に親しむ機会が増え、川への関心・人と人の結びつきが高
まり、地域防災力の向上が期待できるような整備を行い、地域住民が潤いや、安らぎを実感
できる川を目指すものとし、今後の河川整備の基本理念を以下に掲げる。
『街の潤い・憩いを育む安全・安心な川づくり』
~地域住民の川への関心を高め、
洪水に対して安全・安心できる
バランスのとれた川づくりを進めます~
- 17 -
2.2
河川整備計画の対象区間
本河川整備計画の対象区間は下表に示すとおりとする。
表-2.2.1
河川名
やぎゅう
柳生 川
とのた
殿 田川
やまなか
山 中川
河川整備区間の対象区間
区 間
約0.3km~約6.8km(河口から山中川合流点)
約6.5km
0.0km~約2.7km(柳生川合流点から二級河川上流端)
約2.7km
0.0km~約0.7km(柳生川合流点から二級河川上流端)
約0.7km
図-2.2.1
2.3
延 長
整備計画対象区間図
河川整備計画の対象期間
本河川整備計画の対象期間は、今後概ね 30 年とする。
2.4
洪水や高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する目標
柳生川及びその支川において、流域の状況、過去の浸水被害、現在の治水安全度、施設の整
備状況、氾濫区域内の人口資産等を総合的に勘案し、緊急性の高い区間において洪水等による
災害の発生の防止又は軽減を図るために、治水施設の整備を実施する。
洪水対策については、早期に整備の効果を発生させるため、年超過確率 1/5 の規模の降雨(1
時間雨量 49.4mm、24 時間雨量 177.7mm)による洪水を、安全に流下させることを目標とする。
- 18 -
高潮対策については、近年の高潮被害を契機に一部見直した伊勢湾台風規模の高潮による被
害の防止を図るため、高潮堤防の整備を実施する。既設の高潮堤防については、現在有してい
る高潮や津波に対する機能が適正に発揮できるように、今後も関係機関と連携し施設の維持に
努める。
また、本河川整備計画で河川工事の対象としない区間を含め、堤防や護岸等の河川管理施設
の機能を継続して確保するため、巡視、点検、補修等を適切に行い良好な状態を保持する。ま
た必要に応じて施設管理の高度化、効率化を図っていく。
一方、目標とする治水安全度を超える規模の洪水、高潮や、整備途上段階での施設能力を超
える洪水、高潮に対しては、発生した被害を踏まえて、必要な対策を講じる。想定される被害
の軽減を図るために、整備途上段階においても適宜、浸水想定区域図等の見直しを行うととも
に、平常時においても、洪水ハザードマップ作成の支援や情報提供、水防体制の強化及び関係
機関や地域住民との連携等を図り、地域防災力の向上に努める。
また、さらなる治水安全度向上のため、流域対策やため池の保全等について、関係機関等と
の連携を図る。
河川津波対策については、南海トラフ沿いで発生する、発生間隔が数十年から百数十年に一
度規模の地震・津波(施設計画上の津波)に対し、津波が河川を遡上し、河川堤防を越流して
発生する災害から人命や財産等を防御することを目標とする。また、地震対策としては、南海
トラフ沿いで発生する地震や内陸直下型地震に対し、河川堤防が地震により沈下し、地震直後
の平常の河川水や、復旧期における小規模な洪水が堤防を越流して発生する被害を防ぐことを
目標とする。
この目標に向けた対策の実施にあたっては、海岸管理者等と連携して、堤防等の耐震・液状
化対策など必要な対策を実施するものとする。まずは、
「第3次あいち地震対策アクションプラ
ン」
(平成26年12月公表)に「浸水・津波から命を守る」対策として位置付けた、背後地に
おいて甚大な被害が予測される区間の堤防等の耐震・液状化対策を優先して実施する。
一方、南海トラフ沿いで発生する、発生頻度が極めて低いものの科学的に想定しうる最大規
模の地震・津波(最大クラスの津波)に対しては、施設対応を超過する事象として、人命を守
ることを最優先とし、
「施設計画上の津波」を対象に行う施設対応等に加え、ソフト対策も総動
員した総合的な対策の推進により減災を目指す。
※計画高潮堤防高 T.P.4.2m
※計画高潮位 T.P.3.47m
※河口が位置する地域海岸における設計津波の水位
2.5
T.P.3.1m
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標
狭窄部上流に位置する花田地点における過去 10 年間(平成 16 年から平成 25 年)の平均渇水流
量は約 0.15m3/s、平均低水流量は約 0.26m3/s である。柳生川及びその支川である殿田川・山中
川においては、現在取水されていない状況である。
- 19 -
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、流況等の把握に努めるとともに、
今後の水利用の動向等を十分に把握した上で、動植物の生息・生育・繁殖環境、親水や景観等
の河川環境、流水の清潔な保持等に配慮し、安定した流量を確保するために、今後とも豊橋市
と連携して適正な対応に努める。
2.6
河川環境の整備と保全に関する目標
河川環境の整備と保全に関しては、柳生川上流部や殿田川の親水施設や堤防が、地域住民の
憩いの場となっていることを踏まえ、治水と調和した河川環境の整備と保全に努めるとともに、
豊橋市や地域住民と連携した川づくりを推進することに努める。
○ 動植物の良好な生息・生育・繁殖環境の保全・再生
動植物の良好な生息・生育・繁殖環境の保全・再生については、多様な動植物の生息・生
育・繁殖環境及び生態系ネットワークの形成に配慮するため、関係機関や地域住民と連携し、
多自然川づくりに努める。
また、良好な自然環境を保全・再生するため、必要に応じてモニタリングを行い、改善に
努める。
○ 川と人との豊かなふれあい活動の場の維持・形成
川と人との豊かなふれあい活動の場の維持・形成については、川に親しみ、ふれあい活動
の場にするため、豊橋市や地域住民と連携し、親水施設や川辺の散策路などの維持・形成に
努める。また、豊橋市の関連計画等との連携、調整を図り、必要に応じ親水空間の整備に努
める。
○ 良好な景観の維持・形成
良好な景観の維持・形成については、住宅地など、周辺環境と調和した水辺空間の維持・
形成に努める。
○ 水質の改善
水質の改善については、河川空間の地域住民の利用状況等を踏まえ、下水道等の関連事業、
豊橋市や地域住民と連携し、良好な水質となるよう改善に努める。
- 20 -