澁谷工業 - 今村証券

2016 年 3 月 14 日
澁谷工業(6340)
担当 織田真由美
レーティング:NEUTRAL(2011/9/5)→
OUTPERFORM
中国の経済減速の影響があるものの、国内需要堅調。株価下落で割安感あり。
売上高
(百万円)
伸び率
(%)
営業利益
(百万円)
伸び率
(%)
経常利益
(百万円)
伸び率
(%)
純利益
(百万円)
伸び率
(%)
EPS
(円)
1 株配
(円)
連 12/6
68,176
+16.4
連 13/6
73,305
+7.5
連 14/6
79,093
+7.9
連 15/6
80,430
+1.7
連 16/6(予)
85,000
+5.7
第 2 四半期累計期間
連 14/7-12
36,538
+14.2
連 15/7-12
34,628
-5.2
株価(2016/3/14)
期末発行済み株式数(15/12 末)
期末自己株式数(15/12 末)
時価総額
企業価値(EV)
ROE(15/6 実績)
予想配当利回り
予想 PER
BPS(15/12 実績)
PBR
CFPS(15/6 実績)
PCFR
EV/EBITDA(15/6 実績)
1,088
3,473
4,991
4,870
4,550
+183.1
+219.1
+43.7
-2.4
-6.6
1,203
3,820
5,336
5,082
4,700
+255.8
+217.4
+39.7
-4.8
-7.5
219
1,739
3,243
8,286
3,220
+691.8
+86.5
+155.5
-61.1
7.94
62.85
117.20
299.46
116.37
10.00
10.00
15.00
20.00
20.00
1,174
1,562
1,391
28,149
480
39,156
39,596
22.0
1.4
12.0
1,574.51
0.9
142.0
9.8
8.4
-13.0
+33.0
円
千株
千株
百万円
百万円
%
%
倍
円
倍
円
倍
倍
1,366
1,593
-20.0
+16.7
876
1,049
-10.1
+19.8
31.67
37.94
10.00
10.00
株価チャート(週足)
出所:澁谷工業、ブルームバーグ、今村証券
ボトリングシステムで国内シェア 6 割のトップメーカー、世界では 3 位。創業以来のボトリ
ング技術をコアに培ったロボット制御技術や無菌化技術、レーザ技術などによって事業領域をパ
ッケージングプラント事業から、半導体製造システムや人工透析装置等の医療機器を擁するメカ
トロシステム事業や、農業用設備事業に拡大、近年では iPS に注力している。1200 件を超す国
内特許件数を武器にしたダントツ製品の開発が強みで、M&A にも積極的。
主力のパッケージングプラント事業(資料1・酒類用、食品用、薬品・化粧品用、その他の
合計)は、高速化・省力化・高品質化など生産性向上が求められる中で堅調に推移している。殊
に同社のボトリングシステムは、容器の形状や
液の種類、生産能力など多様なニーズに応じる
ことができることから、飲料メーカーや食品メ
ーカー、医薬品・化粧品メーカーなど多様な業
種に納入実績がある。また、同社は業界で初め
て無菌充填装置を開発し、殺菌工程の省略・常
温での充填を可能にした。常温での充填が可能
ならばペットボトルも薄くてすみ、飲料メーカ
ーのコスト削減につながる。無菌充填装置の国
内シェアは 8 割に上り、中国や東南アジアの飲
料メーカーからの引き合いも多い。
資料1:売上高推移
無菌充填装置の販売拡大は同社の収益性の向
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上にも寄与している。無菌状態を維持するために定期的なメンテナンスが必要で、ストックビジ
ネスとしての面が業績安定につながりつつあるようだ。
同社は創業以来のボトリング技術をコアに、研究開発や積極的な M&A によって事業領域を拡
大してきた。容器にレーザマーキングを施すレーザ技術がレーザ加工機や医療機器に広がり、さ
らには半導体製造システムやウォータジェット切断加工機などに拡大したほか、医薬品の充填機
で培った無菌技術が再生医療システムにとつながっている。また、M&A によって得たハンドリン
グ技術や検査技術、固定物充填・包装技術、超音波技術がシナジー効果を生み、業績拡大に奏功、
売上高はリーマン・ショック後に落ち込んだものの、その後は増収が続いている(資料2参照)。
(資料2)
医療機器
ボトリング技術
容器用
レーザマーキング
ロボット制御
技術
包装システム
兼用化技術
F‐CAM
ボトリングシステム
レーザ
水虫治療器
レーザ技術
レーザ加工機
製薬設備システム
無菌化技術
無菌充填システム
半導体用
レーザマーキング
洗浄技術
非接触
加工技術
超高精度
位置決め技術
SAMACS
洗浄システム
ウォータジェット切断加工機
半導体製造システム
再生医療システム
水素ガス切断加工機
(澁谷工業作成資料より転載)
注力しているのは再生医療だ。iPS 細胞(人工多能性幹細胞)のロボット自動細胞培養システ
ムを開発したほか、細胞の塊(スフェロイド)を積み上げて、立体的な組織・臓器を製造する世
界初のバイオ3Dプリンターを再生医療ベンチャーのサイフューズと共同開発した。大学や研究
機関などとの共同研究も進めており、山口大学とは肝硬変治療である「ABMi 療法」で共同研究
を進めているほか、幹細胞を培養して肝硬変を治療する方法について山口大学が持つ特許を自由
に使える独占的実施権を獲得している。また、理化学研究所が認定するヘリオス(東証マザーズ
4593)に出資し網膜の再生医療に関して業務提携をしている。業績に寄与するには時間を要する
とみられるものの、市場拡大とともに同社の存在感は高まりそうだ。
7 期連続の増収を目す同社だが、2016 年 6 月
期第 2 四半期連結決算では、受注が伸び悩む中
で減収増益。薬品・化粧品用パッケージプラン
トや農業用設備事業は伸長したものの、メカト
ロシステム事業において韓国および台湾での半
導体関連の設備投資が減速したことや、中国の
経済減速によって設備投資案件が先送りされつ
つあることが足を引っ張った。受注高は前年同
期比 4.6%減の 392 億 86 百万円にとどまり(資
料3参照)、これを受けて同社は今期の業績予想
を下方修正、営業利益は増益見通
しから一転して減益見通しとし
た(資料4参照)。
尚、最終利益については前期に
特別利益として厚生年金基金代
行返上益 73 億 54 百万円を計上し
連結
資料3:受注高推移
売上高
前期実績
前回予想
修正予想
営業利益 経常利益
純利益
百万円
百万円
百万円
円
80,430
90,000
85,000
4,870
5,500
4,550
5,082
5,600
4,700
8,286
3,820
3,220
299.46
138.06
116.37
資料4:通期業績予想の修正
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2
EPS
百万円
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た反動から大幅減益見通しだ。
受注が伸び悩む中で、先行きについて懸念も
あろうが、悲観する必要はなさそうだ。薬品・
化粧品用パッケージプラントでは需要が堅調な
こと、2015 年 12 月末時点の受注残高が 457 億 2
百万円と高水準にあることが支えとなる。また、
同社の売上高は 7 割程度を国内が占めることか
ら(資料5参照)
、海外が落ち込んだとしても、
国内が堅調であればカバーは可能だ。その国内
については、企業の設備投資は引き続き堅調だ
(資料6参照)。また、上期の受注減少の要因の
一つである半導体製造装置受注高は回復しつつ
ある(資料7参照)
。
資料6:法人企業統計調査 設備投資
出所:ブルームバーグ
資料5:地域別売上高推移
資料7:半導体製造装置受注高&BB レシオ
出所:一般社団法人 日本半導体製造装置協会
数年来赤字を計上していたメカトロシステム
事業が黒字化したことも収益を支える。メカト
ロシステム事業は医療機器、半導体製造装置、
切断加工機が主力だが、この中で半導体製造装
置が足を引っ張っていた。2012 年 1 月に子会社
化したカイジョーが黒字化したことで、同事業
部門が黒字化に至ったことはポジティブな印象
だ。とはいえ、半導体製造装置は製品サイクル
が短く、事業環境が厳しいだけに今後も同部門
の収益性には注意したい。
資料8:営業利益推移
課題は海外販売の強化だ。殊に北米は拡大余地があるとして、電子線(EB)で滅菌するボト
ル充填装置で米コカ・コーラやペプシコなどに攻勢をかける。また、子会社化ファブリカトヤマ
ではカップ麺充填シールシステムが東南アジア向けに好調で、新工場を建設中だ。TPP(環太平
洋連携協定)が締結されれば農業用設備の選果選別プラントなどの需要拡大も期待できそうだ。
バイオ関連としてはやされ、2014 年に一時 3500 円台をつけた株価は、今年 2 月に一時 1200
円を割り込んだ。足元では 1400 円近くまで戻してきているものの、バリュエーション面では売
られすぎの感がある。今期業績予想は達成の可能性があるうえ、たとえ受注案件が先送りとなり
売上高が前期並みとなったとしても営業利益は 2 割程度の減益にとどまるとみられ、EPS は 100
円程度が期待できる。アジアの景気減速には注意が必要だが、成長性に期待が持たれることから
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投資判断をOUTPERFORMとする。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------アナリストによる証明
本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解
を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬
も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------レーティングの定義
O U T P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超上回ると予想される。
N E U T R A L:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンの+10%と-10%の間に入ると予想される。
U N D E R P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超下回ると予想される。
トータルリターン:株価変動率+配当利回り
目標株価は 12 ヵ月間の投資を想定しており、将来発行されるレポートで修正されることもあります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------本資料に記載された意見及び予想は、記載された日付における今村証券の判断であり、これらは予告なく変更される場
合があります。今村証券は本資料の記載された日付以降に内容の変更・修正を行う義務を負いません。本資料はお客様
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