青森県農林業関係試験研究情報 平成27年3月 第48号 青森農研フラッシュ (地独)青森県産業技術センター・農林部門 研究成果 肥効調節型肥料を用いた 「つがるロマン」の疎植栽培 農林総合研究所 肥効調節型肥料(てまいらずA)を用いた「つがるロマン」の疎植栽培で、慣行栽培並みの収量 が得られる施肥量を明らかにしました。 技術の内容 これまで、肥効調節型肥料(てまいらずA)を用いた 「つがるロマン」の坪当たり70株程度の栽培では、 窒素施肥量の5~10%の減肥が目安でしたが・・・ この肥料を用いた「つがるロマン」の坪当たり37~50株 の疎植栽培では、 減肥しないことで、 慣行栽培並みの 収量が得られます。 成熟期頃の様子 生育・収量等の特徴 稈長は 栽植株数が少ないほど長くなりますが、 倒伏はみられません。 45 1株穂数や1穂籾数が多くなるため、 ㎡当たり籾数は慣行栽培並みになります。 葉色値(数値が大きいほど色が濃い) 42 39 36 33 30 37株/坪植 50株/坪植 慣行栽培 40日後 60日後 80日後 移植後の日数 成熟期前 葉色は、生育中期以降濃く推移します。 また、登熟期の葉色のさめ方が遅く、 成熟期は慣行栽培に比べ3~5日程度 遅くなります お問い合わせ 収量は、慣行栽培並みになります。 農林総合研究所・作物部 (℡0172-52-4396) 研究成果 高圧洗浄機を利用した 効率的なりんごの粗皮の削り方 りんご研究所 りんごの樹皮が自然に枯死してできる粗皮は、病害の早期発見を妨げるうえに害虫の温床となり ます。このため、粗皮削りを行って病害虫の早期発見、密度低減を図りますが、手作業では多大な労 力を伴います。そこで、高圧洗浄機の効率性及び有効性について検討しました。 これまで手作業で行われていたりんごの粗皮削りは、 高圧洗浄機を利用すると効率的に行うことができる ことが判りました。 効率的な粗皮の削り方 粗皮削りの作業時間(15MPa) 樹幹との距離 (㎝) 作業圧力 (MPa) 15 20 25 30 35 8 × ○ △ - - 10 - × ○ △ - 15 - × × × ○ △ (注) ○:粗皮が適度に削れる、△:粗皮の削れ方が不十分、 ×:樹皮も削れる、××:木質部が露出、-:試験なし 高圧洗浄機での削れ方 過剰(××) やや過剰(×) 処理区 (3樹平均) 高圧洗浄機 手作業 約83秒 約940秒 (注)15年生「ふじ」/M.26/マルバカイドウを供試、 直射式ノズル装着の高圧洗浄機を使用 高圧洗浄機の作業圧力が15MPa場合、30cmの 距離で適度に粗皮を削り取れ、作業時間は手作 業による粗皮削りの1/10程度に短縮できます。 適度(○) クワコナカイガラムシに対する効果 作業時間 不足(△) リンゴ腐らん病の 早期発見につな がります。 農薬を使わない ため、環境にやさ しい病害虫密度 低減技術です。 作業上の注意 10 卵 の う 数 / バ ン ド 8 6 4 粗皮下で越冬 するクワコナカイ ガラムシの密度 を低減させるこ とができます。 2 0 高圧洗浄処理 無処理 (注) 卵のう:200~300個の卵が包まれている袋 バンド:産卵用に切断した帯状の段ボール紙、 太い枝に巻き付けて使用する 水や粗皮の跳ね返りが激しいので、長靴、 手袋、合羽及び保護めがね等が必要です 今後の展開 「りんご生産指導要項」、 「指導参考資料」や「あおもり農業」等の普及雑誌に情報提供を行って、高圧洗浄 機による粗皮削りの実施率の向上を図ります。 お問い合わせ りんご研究所 病虫部 (℡0172-53-6132) 研究成果 チモシー草地へのアカクローバ追播技術 -簡便で安価なアカクローバ追播機の考案- 畜産研究所 アカクローバは嗜好性・消化性に優れた粗飼料ですが、チモシーなどイネ科牧草との混播栽培では、 イネ科牧草との競合・踏圧害等により経年的に衰退します。そこで、アカクローバ植生回復のため、簡易 追播技術を明らかにするとともに、既存の機器を活用した安価なマメ科牧草用播種機を考案しました。 追播アカクローバの 定着促進技術 60% 1番草刈取直後追播・踏圧有り 一番草刈取後より も、二番草刈取後の 方が定着率高い 1番草刈取3日後追播・踏圧無し 2番草刈取直後追播・踏圧有り 40% 追播後の踏圧方法 乾草、サイレージ 調製中に 圃場全体が2~3 回踏圧される。 2番草刈取3日後追播・踏圧無し チモシー刈取直後の 追播+踏圧で 20% アカクローバ率アップ 0% 2番草 3番草 1番草 追播1年目 2番草 3番草 追播2年目 アカクローバ率の推移 テッダー、レーキ、ロールベーラ等の走行軌跡 田植同時除草剤散粒機を 改造した モアコンディショナ装着型 追播機 2番草刈取同時追 播直後の種子 1番草刈取同時追播した アカクローバ発芽個体の 2番草刈取時の状態 ポリタンクを使って種子タンクを 増設すれば 広い圃場にも対応可能。 考案したアカクローバ追播機 市販の追播専用機:数百万円 既存の機器活用:十万円以下 自力で改造可能。 散粒機本体価格 込みで10万円以下 お問い合わせ 畜産研究所 酪農飼料環境部 (℡0175-64-2231) ただ今研究中 ナラタケ類の生息環境における 放射性物質調査 林業研究所 林業研究所では、県や市町村と連携して野生きのこの出荷制限解除に向けた調査に取り組んでいます。 今年度はナラタケ類の解除を目指し、空間線量や、きのこ(子実体)とその生息基質の放射性物質濃度を調 査しました。現在までに得られた結果についてご紹介します。 野生きのこの出荷制限 出荷制限解除の条件 福島第一原発事故 放射性物質の拡散 野生きのこの モニタリング検査 ◆食品中の放射性物質 濃度の基準値100Bq/kg 出荷制限指示 (野生きのこの場合) ◆青森市、十和田市、 鰺ヶ沢町、階上町 →基準値超過 ◆1種類でも基準値を 超過すると全ての種類が 出荷制限 きのこ(子実体)の生息基質の放射性セシウム ◆直近1か月の検査結果 が全て基準値以下 ◆基準値を超過しないこと が統計的に推定できること ◆種類ごとに解除できる 基質:きのこが生えている土台 基質と子実体の放射性セシウム137濃度(Bq/kg)の相関関係 基質 検体数 中央値 (最小-最大) 子実体の中央値 (最小-最大) 相関係数 (p値) 木材 36 4.7 (1.8-15.0) 5.0 (3.4-31.0) 0.59 (p<0.05) 落葉 2 14.0-150.0 3.9-9.8 - A0層 6 28.0 (4.5-76.0) 5.0 (4.7-9.6) 0.57 (p>0.05) 土壌0-5cm 6 82.0 (7.9-180.0) 5.0 (4.7-9.6) 0.36 (p>0.05) 土壌5-10cm 6 42.0 (14.0-64.0) 5.0 (4.7-9.6) 0.57 (p>0.05) 土壌10-15cm 6 27.5 (4.8-79.0) 5.0 (4.7-9.6) 0.33 (p>0.05) ナラタケ類の 放射性セシウム 落葉や土壌のセシウム濃度が高いからといって、きのこのセシウム濃度が同様に 高いとは一概に言えない(相関が低い) 木材のセシウム濃度は、きのこのセシウム濃度に影響を及ぼす可能性が大きい (相関が高い)が、他の基質と比べると木材のセシウム濃度は比較的低い 4市町サンプル数=150検体 0.15 きのこ(子実体)と 生息する土台(基質)との セシウム濃度の関係 対数正規分布近似曲線 最大で31Bq/kg(基準値超過なし) 対数正規確率分布に当てはめた結果… 基準値超過の可能性は非常に低い 確率密度 0.05 かつ、ナラタケ類の濃度も低いことから… 50Bq/kg 0.00 関係性の高そうな木材の濃度が比較的低濃度 0.10 50Bq/kg以上の値が出る確率は0.001%以下 0 20 40 60 80 100 放射性物質濃度(Bq/kg) 今後の展開 子実体の放射性セシウム137濃度(Bq/kg) 調査から得られた結果をもとに統計的な解析を行い、青森県産ナラタケ類の安全性を示すとともに、解除に 向けた取組みを県と連携して行っていきます。 お問い合わせ 林業研究所 森林環境部 (℡017-755-3257) ただ今研究中 ニンニク葉枯病に発生した Q o I (キューオーアイ)剤 耐 性 菌 野菜研究所 県内のニンニク圃場では、平成24年頃からニンニク葉枯病が多発傾向にあります。 特にQoI(キューオーアイ)剤のアゾキシストロビン20%製剤(商品名:アミスター20フロアブル)を散布し た後に葉枯病が多発したという事例があったことから、近年の多発の原因は葉枯病菌の薬剤感受性 低下ではないかと考えられました。 そこで、県内各地のニンニク圃場から葉枯病菌を集め薬剤の感受性検定を行ったところ、一部の 圃場で耐性菌の発生が確認されました。 QoI剤:ストロビルリン系殺菌剤 ニンニク葉枯病とは 葉に白い斑点を生じ、徐々に拡大して赤紫 色の病斑となり、多発すると葉が枯れ上が る病気です。 収穫期に茎葉が枯れることで りん茎に玉割れが生じやすくなります。 葉枯病の病徴 耐性菌の発生状況 アゾキシストロビンを添加した培地検定の結果、上北地域、三八地域、中南地域、西北地域で 耐性菌の発生が確認されました。 PCR-RFLP法による遺伝子診断の結果、耐性菌ではチトクロームb遺伝子の変異が確認 されました。 アゾキシストロビン100μg/ml (実用成分濃度)添加PDA培 地による感受性検定 耐性菌と判定 耐性菌の発生拡大を防ぐために 耐性菌の発生が認められた圃場ではQoI剤の使用を中止しましょう。 同一成分及び系統を含む薬剤の連用は避け、ローテーション散布を行いましょう。 今後の調査・研究 引き続き耐性菌の発生状況を調査します。また、耐性菌に対しても有効な防除法を開発します。 お問い合わせ 野菜研究所 病虫部 編集・発行 (℡0176-53-7171) 地方独立行政法人 青森県産業技術センター 農林総合研究所 〒036-0522 青森県黒石市田中82-9 TEL 0172-52-4346 FAX 0172-52-4399 ホームページ http://www.aomori-itc.or.jp/
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