○プロジェクト研究1146-2 研究課題 「チーム医療におけるシミュレーション教育の構築に関する研究」 ○研究代表者 医科学センター 准教授 武島玲子 ○研究分担者 看護学科 助教 黒田暢子 (5名) 看護学科 教授 市村久美子 看護学科 准教授 高橋由紀 看護学科 講師 髙村祐子 付属病院 診療部 准教授 河野 豊 ○研究協力者 付属病院 (7名) ○研究年度 副看護部長 旭佐記子 看護師 立原美智子 理学療法士 木村亜紗子 東京医科歯科大学大学院 福田友秀 慈生会等潤病院看護師 瀧本幸司 日立製作所日立総合病院看護師 正田傑 筑波メディカルセンター病院看護師 大澤侑一 平成24年度 (研究期間) 平成23年度~平成25年度(3年間) 1.研究目的 近年、シミュレーション医療教育の重要性が認識され、多くの大学・病院で導入されてきている。 本教育は、成人教育理論のもとに、主体的に参加し、体を動かしながら日常の業務のなかで遭遇し そうな問題点を考えトレーニングすることであり、受動的に知識を得るのではなく、参加者は楽し く、充実感と達成感を得ながら体験する方法である。また、模擬体験したことを振り返ること(デ ィブリ-フィング)で、自ら学習の必要性に気づき自主的な学習ができる利点がある。 一方、本学は医療系大学として「チーム医療」を重要な位置づけにしている。本教育は、心肺蘇 生や緊急時対応から始まり、現在では多分野で実施されている。看護教育では、看護基礎教育にお ける実践技能教育への本教育の効果的な導入方法とその評価はまだない。また、本学では、多職種 混合シミュレーションとして検討する必要があるが、この分野では、まだ研究がない。そこで本学 付属病院において多職種混合シミュレーションを実施し、その検証から学部教育への応用が期待さ れる。さらに学生の課外時間における自主的な自己学習の環境を整備し、良質で安全な医療を提供 するための生涯教育という視点からも重要な教育手法となる。 そこで、本研究の目的は、3つのグループに分けて、チーム医療におけるシミュレーション医療 教育の構築に関する研究を行い、それらの教育効果についての実用性評価の研究を行うことである。 加えて、継続的な学習ができる環境を整備するための方策を研究する。 【チーム1】「看護学におけるシミュレーション教育の意義と効果」:本学看護学科のこれまでのシミ ュレーション教育の評価とその課題について、学生の主観的評価から検討する。 【チーム2】「リハビリテーション専門病院での多職種混合シミュレ-ション教育の実践と効果」:付 属病院での、災害時対応シミュレーションを計画・実施し、その効果を検討する。 【チーム3】「シミュレ-ション教育の継続的な学習システムの構築」:本学卒業生へのアンケート調 査から、卒業生は、患者急変時の対応、気道内分泌物の吸引方法、災害時対応、採血・リハ時の実 技などの要望が判明したので、患者の急変時の対応、災害時対応において、シナリオベースのシミ ュレーション教育方法を作成する。 なお、本研究内容は、本学倫理委員会の承認を得ている。 2.研究方法 【チーム1】 本学看護学科4年生50名に昨年と同じ内容[新人看護職員教育ガイドラインを参照した看 護技術91項目の習得度と、その習得に学内演習(シミュレーション教育)は役に立ったか]のアンケ ートを実施し、昨年度の結果と比較する。次に、昨年度の調査の際調査協力意思が確認できた、平 成23年度看護学科卒業生27名に、新人看護師として臨床現場にて働いて1年目を振り返り、現在の 看護技術の習得度と、基礎看護教育での学内演習は役に立ったかについてアンケート調査を行う。 【チーム2】 全職種(大学職員含む)による災害時対応シミュレーションを実施し、参加者へのアン ケート調査から、分析検討する。 【チーム3】 本学卒業生の現状、スキルラボ、シミュレーション教育についてのアンケート調査を検 討する。次に災害時の看護師の臨床判断に関する文献検討を通して、災害時に看護師がどのような 視点から緊急性の判断を行っているかという実態を明らかにする。それらをもとに患者の急変時や 災害時対応におけるシナリオベースのシミュレーション教育方法をインストラクショナルデザイ ンに基づき作成する。 3.研究結果 【チーム1】 看護学科4年生の回答数は、12(回収率24%)であった (2013.2月末)。看護技術の習得度 について「習得している」と答えた数が半数(6人以上)だった看護技術は10項目だった。各項目で の学内演習の評価の確認では、すべての項目で「役に立った」と答えた数が約7割以上(8~12人)で あり、概ね肯定的に評価していた。 「習得している」と回答した項目はほぼ昨年度と同じであった。 卒業生対象のアンケートに関しては、現在郵送にて依頼中であり、回収後集計予定である。 【チーム2】 アンケートでは、職員の 88%が「シミュレーションを行ってよかった」、82%が「自分 の取るべき役割を理解できた」、97%が「今後も継続訓練の必要性がある」と回答した。反面、「災 害の際にスムーズに行動できる」は 24%と少なく、より具体的な行動指標と訓練の必要性が示唆さ れた。自由記述では、今後自部署の対応のみでなく他部署での動き方も知りたい、階段を使ったエ アーストレッチャーでの搬送は 1 人 1 回が限界であり、多人数を配置したほうがよい。という具体 的な意見も得られた。その後、災害時必要物品の整備や各ユニットにおける自発的な活動(ディリ ーカンファランスにおける多職種参加型 3 分間シミュレーションやアクションカードの作成および 訓練の実施等)へと発展した。 【チーム3】 本学卒業生(平成20~22年度)486名を対象に卒後の実際とスキルラボの利用についての アンケート調査を分析した結果、ラボが本学にできた場合には、83%の卒業生が利用希望し、その 内容は、患者急変時の対応、気道内分泌物の吸引方法、災害時対応、採血・リハ時の実技などが全 職種からみられた。そこで、患者急変時の対応と災害医療のシナリオ作成をした。初めに文献検討 をし、災害時対応のシミュレーション作成のニーズを抽出し、シナリオベースの災害医療シミュレ ーション教育プログラムを作成した。インストラクショナルデザインに基づき、シナリオと高機能 シミュレータなどの整合性を整え、効果的・効率的な設計を行った。 4.考察(結論) 【チーム1】 昨年度同様、看護技術を習得するために学内演習は役に立ったと学生が自己評価してい た。今後も、具体的にどの学内演習が「役に立った」のか、なぜ学内演習が「役に立った」「まあ 役に立った」という学生が多いのに「習得している」という評価に繋がらないのかについて検討し、 技術習得するための効果的な学内演習の方法を明らかにしていきたい。 【チーム2】アンケート結果やその後に各部門で発展的かつ自主的行動を起こしたことから、職員の災 害対策への意識は向上している。今後は年1回の全体訓練と並行し、各部門での訓練も実施を検討 していきたい。 【チーム3】本学の4学科卒業生から、スキルラボへの期待、参加の意志がみられたので、卒業生も参 加できるシナリオベースの災害医療シミュレーション教育を作成した。また、チーム合同で患者急 変時のシミュレーションの作成を開始した。さらにシナリオを増やし、インストラクショナルデザ インに基づく実施と評価を行いプログラムの改善、継続的な学習システムの確立を目指していきた い。 5.成果の発表(学会・論文等,予定を含む) ①災害時における看護師の役割と行動に関する文献検討.大澤侑一,福田友秀,瀧本幸司,正田 傑, 武島玲子.第 43 回日本看護学会学術集会(仙台)2012.9 ②リハビリテーション専門病院における多職種合同シミュレーションの実践報告.~今後のアウトカム 評価に向けて~.髙村祐子、旭佐記子、武島玲子、立原美智子、河野 豊、木村亜紗子.日本リハビ リテーション連携科学学会第 14 回大会(千葉)2013.3 6.参考文献
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