9. 新生仔豚を用いた新生児低酸素性虚血性脳症モデル における肝障害の病理組織学的検討 香川大学 医学部 小児外科学 久保 裕之、下野 隆一、田中 彩、 藤井 喬之 香川大学 医学部 小児科学 日下 隆、安田 真之、小谷野耕祐、 神内 済、濱野 聡 香川大学 医学部 炎症病理学 上野 正樹 香川大学 医学部 神経機能形態学 三木 崇範 【緒言】周産期・新生児医療領域で最も重大な病態の一つに、新生児仮 死による低酸素性虚血性脳症 (HIE) がある。この病態の解明、治療確立 のため数々の研究がなされているが、同時に引き起こる他の臓器障害に ついてはよく知られていない。特に、肝障害は全身状態に強く影響する 病態であるが、HIE の急性期に、肝障害を示唆する血液データの報告は あるものの、肝臓を組織学的に評価した報告はなく、またその際の肝保 護について治療方針は確立されていない。 【目的】HIE 発症時に同時に引き起こる肝障害を病理組織学的に調査し、 脳保護治療として用いられる低体温治療が肝に与える影響を調査する。 【方法】生後 24 時間以内の新生仔豚を用い、人工呼吸器管理を行い、以 下の3群を作成する。 ①コンロトール [n= 4 : ] 24 時間後に抜管。 ②低酸素負荷群 [n= 8 : ] 低濃度酸素を吸入させ、脳血流が下がったこと を確認して蘇生。その後抜管。 ③低体温治療群 [n= 6 : ] 低酸素負荷後、蘇生と同時に 34 ℃の低体温治療 を24時間行い、その後抜管。 3群とも抜管後は 4 日間飼育し、5 日目に肝臓を摘出し、HE 染色、脂 肪染色を行う。 【結果】HE 染色では、細胞の壊死、炎症細胞の浸潤を示唆する所見は 認めなかった。脂肪染色では、コントロール群に比し、低酸素負荷群の 門脈領域に脂肪蓄積が増加した。一方、低酸素負荷群に比し、低体温治 療群では脂肪蓄積が減少した。 【考察】新生児の低酸素性虚血性脳症の治療法として、低体温療法は現 在の段階で、国際的に唯一有効性の証明された治療法であるが、肝への 影響は明らかにされていない。今回の実験では、低酸素負荷により門脈 領域に増加した脂肪蓄積が、低体温治療により抑制されたことが明らか になった。すなわち HIE 発症時の低体温治療は脳だけでなく、肝臓の保 護にも寄与している可能性が高いと考えられた。
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