特 許 公 報 特許第5756620号

〔実 8 頁〕
特 許 公 報(B2)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許番号
特許第5756620号
(45)発行日
(P5756620)
(24)登録日 平成27年6月5日(2015.6.5)
平成27年7月29日(2015.7.29)
(51)Int.Cl.
FI
A01K 63/04
(2006.01)
A01K
63/04
F
C02F
1/24
(2006.01)
C02F
1/24
B
C02F
1/36
(2006.01)
C02F
1/36
C02F
1/00
(2006.01)
C02F
1/00
P
C02F
3/34
(2006.01)
C02F
3/34
Z
請求項の数7
(全11頁) 最終頁に続く
(21)出願番号
特願2010-256012(P2010-256012)
(22)出願日
平成22年11月16日(2010.11.16)
有限会社ターレス
(65)公開番号
特開2012-105569(P2012-105569A)
東京都新宿区下落合1−2−16−701
(43)公開日
平成24年6月7日(2012.6.7)
審査請求日
(73)特許権者 506095777
(73)特許権者 397016770
平成24年10月16日(2012.10.16)
東和酵素株式会社
神奈川県平塚市達上ケ丘1番6号
(74)代理人 100108419
弁理士
(72)発明者 藤川
大石 治仁
進
東京都新宿区下落合1−2−16
ル7F
(72)発明者 宮崎
大堀ビ
有限会社ターレス内
和男
神奈川県平塚市達上ヶ丘1の6号
東和酵
素株式会社内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】育成水槽の水処理方法及び水処理装置
1
2
(57)【特許請求の範囲】
前記工程(II)が、プロテインスキマーを通過した、
【請求項1】
マイクロバブルを含有する処理水に超音波を照射するこ
生き物を育成する育成水槽の水を、プロテインスキマー
とで、処理水中のマイクロバブルをマイクロナノバブル
、次いで好気性微生物処理槽に導入し、再び育成水槽に
及び/又はナノバブルにするものである請求項1に記載
戻す水処理方法であって、
の水処理方法。
前記プロテインスキマーにおいて、該プロテインスキマ
【請求項3】
ーの下部に配置されたマイクロバブル発生手段により発
前記工程(III)が、マイクロナノバブル及び/又は
生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入され
ナノバブルを含有する処理水を、前記好気性微生物処理
た処理水に含まれる有機物を、プロテインスキマーの上
槽を通過させることにより、処理水のpH値を下げるこ
方に排出して除去する工程(I)、
10
となくアンモニアを分解するものである請求項1又は2
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
に記載の水処理方法。
バブルをマイクロナノバブル及び/又はナノバブルにす
【請求項4】
る工程(II)、及び
前記枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素剤
工程(II)で得られたマイクロナノバブル及び/又は
が、枯草菌の培養物である請求項1∼3のいずれかに記
ナノバブルを含有する処理水を、前記好気性微生物処理
載の水処理方法。
槽において、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含
【請求項5】
む酵素剤と接触させる工程(III)
前記枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素剤
を有することを特徴とする水処理方法。
が、天然植物を枯草菌で発酵させた乾燥粉粒である請求
【請求項2】
項1∼3のいずれかに記載の水処理方法。
( 2 )
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【請求項6】
この問題を解決すべく、特許文献2には、生き物の育成
前記育成水槽が海生生物を育成するものであることを特
に使用された水にマイクロナノバブルを含有させてから
徴とする請求項1∼5のいずれかに記載の水処理方法。
、その処理水を、ポリ塩化ビニリデン充填材と共に微生
【請求項7】
物を収容した領域中を通過させて、微生物を効率的に活
生き物を育成する育成水槽の水を、プロテインスキマー
性化する方法が開示されている。
、次いで好気性微生物処理槽に導入し、再び育成水槽に
【0005】
戻す水処理装置であって、
一方、育成水中のタウリン等の有機物を除去する方法と
生き物を育成する育成水槽と、
しては、プロテインスキマーを用いる方法が知られてい
マイクロバブル発生装置が下部に配置されたプロテイン
スキマーと、
る。
10
【先行技術文献】
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
【特許文献】
バブルをナノバブルまたはマイクロナノバブルにする、
【0006】
マイクロナノバブルまたはナノバブル発生手段と、
【特許文献1】特開2002−27863号公報
得られたマイクロナノバブルまたはナノバブルを含有す
【特許文献2】特開2007−312609号公報
る処理水を、枯草菌または枯草菌および有機物分解酵素
【発明の概要】
を含む酵素剤と接触させる好気性微生物処理槽とを備え
【発明が解決しようとする課題】
、
【0007】
前記プロテインスキマーにおいて、該プロテインスキマ
ところで、上述した特許文献1、2に記載の方法は、好
ーの下部に配置されたマイクロバブル発生装置により発
気性微生物として亜硝酸生成菌や硝酸生成菌などを用い
生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入され 20
るため、アンモニアは硝酸や亜硝酸に酸化され、育成水
た処理水に含まれる有機物を、プロテインスキマーの上
に硝酸や亜硝酸が含まれることになって、育成水が酸性
方に排出して除去し、
になってしまう。生き物のためには、育成水のpHは、
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
通常7.4∼7.8程度であるのが好ましく、このpH
バブルをマイクロナノバブルまたはナノバブルとし、次
の値を維持するために、常にpHを調整し続けなければ
いで、
ならないという問題があった。
前記マイクロナノバブルまたはナノバブルを含有する処
【0008】
理水を好気性微生物処理槽に導入することを特徴とする
そこで、本発明は、生き物を育成する育成水槽の水を、
水処理装置。
プロテインスキマー、次いで好気性微生物処理槽に導入
【発明の詳細な説明】
し、再び育成水槽に戻す水処理方法であって、育成水槽
【技術分野】
30
水のpHを調整しなくとも7.4∼7.8程度に保持さ
【0001】
れ、安定的かつ効率よく育成水槽水の浄化処理を行うこ
本発明は、海生生物等の生き物の育成に使用された育成
とができる水処理方法、及び水処理装置を提供すること
水槽の水を浄化処理する方法、及びこの方法の実施に好
を目的とする。
適な水処理装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【背景技術】
【0009】
【0002】
かくして本発明によれば、下記(1)∼(4)の水処理
生き物の育成に使用された育成水槽の水には、生き物か
方法、及び(5)の水処理装置が提供される。
ら排出されたタウリンやたんぱく質が分解して生じるア
(1)生き物を育成する育成水槽の水を、プロテインス
ンモニアを含んでいる。
【0003】
キマー、次いで好気性微生物処理槽に導入し、再び育成
40
水槽に戻す水処理方法であって、
アンモニアは、非常に低濃度であっても、海水魚等の水
前記プロテインスキマーにおいて、該プロテインスキマ
生生物に対して毒性を有する。
ーの下部に配置されたマイクロバブル発生手段により発
そのため従来においては、重力式濾過槽内に配置した亜
生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入され
硝酸生成菌や硝酸生成菌などの好気性バクテリアを用い
た処理水に含まれる有機物を、プロテインスキマーの上
て酸化処理することにより、アンモニアを除去していた
方に排出して除去する工程(I)、
(特許文献1等)。しかしながら、この方法は、上記亜
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
硝酸生成菌や硝酸生成菌を常に繁殖させるために、常に
バブルをマイクロナノバブル及び/又はナノバブルにす
微生物に酸素を供給する必要がある等、ランニングコス
る工程(II)、及び
トが高いという問題があった。
工程(II)で得られたマイクロナノバブル及び/又は
【0004】
50
ナノバブルを含有する処理水を、前記好気性微生物処理
( 3 )
JP
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槽において、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含
【0012】
む酵素剤と接触させる工程(III)
本発明の水処理方法及び水処理装置によれば、好気性微
を有することを特徴とする水処理方法。
生物処理槽に導入される処理水は、マイクロバブルでは
(2)前記工程(II)が、プロテインスキマーを通過
なくマイクロナノバブル及び/又はナノバブルが含まれ
した、マイクロバブルを含有する処理水に超音波を照射
ているものであるので、配置される好気性微生物や育成
することで、処理水中のマイクロバブルをマイクロナノ
水槽中の生き物(特に海生生物)が、マイクロバブルが
バブル及び/又はナノバブルにするものである(1)に
圧壊するときの衝撃波によりダメージを受ける(場合に
記載の水処理方法。
よっては死滅する)ことを避けることができる。
(3)前記工程(III)が、マイクロナノバブル及び
本発明の水処理方法及び水処理装置によれば、アンモニ
/又はナノバブルを含有する処理水を、前記好気性微生 10
ア性窒素を含有する処理水を、好気性微生物処理槽にお
物処理槽を通過させることにより、処理水のpH値を下
いて、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素
げることなくアンモニアを分解するものである(1)又
剤で処理することで、アンモニア性窒素は無害な窒素ガ
は(2)に記載の水処理方法。
スに変換される。したがって、アンモニア性窒素が亜硝
【0010】
酸性窒素又は硝酸性窒素に変化して処理水が酸性化して
(4)前記枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む
、生き物に悪影響を与えることがない。従って、育成水
酵素剤が、枯草菌の培養物である(1)∼(3)のいず
槽の水のpHを調整したり、水を頻繁に交換する必要が
れかに記載の水処理方法。
ない。
(5)前記枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む
本発明の水処理方法及び水処理装置によれば、プロテイ
酵素剤が、天然植物を枯草菌で発酵させた乾燥粉粒であ
ンスキマーを通過したマイクロバブルを含む処理水は、
る(1)∼(3)のいずれかに記載の水処理方法。
20
マイクロナノバブル及び/又はナノバブルを含む処理水
(6)前記育成水槽が、海生生物を育成するものである
に変換して好気性微生物処理槽に導入(送液)される。
ことを特徴とする(1)∼(5)のいずれかに記載の水
マイクロナノバブル及び/又はナノバブルは極めて微小
処理方法。
な気泡であるため、全体として表面積が大きく、好気性
【0011】
微生物は効率よく空気を取り込むことができ、結果とし
(7)生き物を育成する育成水槽の水を、プロテインス
て好気性微生物を活性化させ、処理効率を大幅に向上さ
キマー、次いで好気性微生物処理槽に導入し、再び育成
せることができる。
水槽に戻す水処理装置であって、
【図面の簡単な説明】
生き物を育成する育成水槽と、
【0013】
マイクロバブル発生装置が下部に配置されたプロテイン
【図1】本発明の水処理方法に使用する育成水槽の水処
スキマーと、
30
理装置の概念図である。
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
【図2】本発明に用いる好気性微生物処理槽の一例の構
バブルをマイクロナノバブル及び/又はナノバブルにす
造断面図である。
る、マイクロナノバブル及び/又はナノバブル発生手段
【図3】本発明に用いる好気性微生物処理槽の一例の構
と、
造断面図である。
得られたマイクロナノバブル及び/又はナノバブルを含
【図4】本発明に用いる好気性微生物処理槽の一例の構
有する処理水を、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素
造断面図である。
を含む酵素剤と接触させる好気性微生物処理槽とを備え
【発明を実施するための形態】
、
【0014】
前記プロテインスキマーにおいて、該プロテインスキマ
以下、本発明を、1)水処理方法、及び(2)水処理装
ーの下部に配置されたマイクロバブル発生手段により発 40
置に項分けして詳細に説明する。
生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入され
1)水処理方法
た処理水に含まれる有機物を、プロテインスキマーの上
本発明の水処理方法は、生き物を育成する育成水槽の水
方に排出して除去し、
を、プロテインスキマー、次いで好気性微生物処理槽に
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
導入し、再び育成水槽に戻す水処理方法であって、
バブルをマイクロナノバブル及び/又はナノバブルとし
前記プロテインスキマーにおいて、該プロテインスキマ
、次いで、
ーの下部に配置されたマイクロバブル発生手段により発
前記マイクロナノバブル及び/又はナノバブルを含有す
生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入され
る処理水を好気性微生物処理槽に導入することを特徴と
た処理水に含まれる有機物を、プロテインスキマーの上
する水処理装置。
方に排出して除去する工程(I)、
【発明の効果】
50
前記プロテインスキマーを通過した処理水中のマイクロ
( 4 )
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8
バブルを圧壊させて、マイクロナノバブル及び/又はナ
マイクロバブル発生装置としては、マイクロバブルを発
ノバブルにする工程(II)、及び
生させることができる装置であれば、特に制約はなく、
工程(II)で得られたマイクロナノバブル及び/又は
公知のものを用いることができる。例えば、ベンチュリ
ナノバブルを含有する処理水を、前記好気性微生物処理
ー管(一部がくびれた構造を有する管)、又はオリフィ
槽において、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含
ス板(中心に孔の開いたドーナツ状の板)を内蔵したシ
む酵素剤と接触させる工程(III)を有することを特
ャワーヘッド内でマイクロバブルを発生させる装置(特
徴とする。
開2006−116518号公報、特願2006−77
【0015】
553号等);液体中に配置した本体パイプ内に気体を
本発明において、浄化処理される水(処理水)としては
混合した液体を吐出し、本体パイプ内の下流側に配置し
、植物の水耕栽培後の水耕液、水産養殖後の養殖水、魚 10
た衝突壁に衝突させてマイクロバブルを発生させる装置
類蓄養設備又は施設からの蓄養水、水族館施設からの展
(特開2005−334869号公報);空気ポンプ等
示循環水、人工海水などが挙げられる。本発明のより顕
の空気圧送源で、加圧した空気を微細目の網部材又は多
著な効果が得られる観点からは、水産養殖後の養殖水、
孔質板等を通して水中に吹き出してマイクロバブルを発
魚類蓄養設備又は施設からの蓄養水、水族館施設からの
生させる装置(特開2006−68631号公報等);
展示循環水などの魚類(好ましくは海水魚類)を育成す
渦巻き水流を作り、この水流で空気を剪断してマイクロ
る設備又は施設の水、人工海水であるのが好ましい。
バブルを発生させる装置(特開2003−126665
【0016】
号公報等);等が挙げられる。これらの中でも、効率よ
本発明の水処理方法は、上記工程(I)∼(III)を
く簡便にマイクロバブルを発生させることができること
有することを特徴とする。
から、特願2006−77553号に記載されたマイク
<工程(I)>
20
ロバブル発生装置を用いるのが好ましい。
工程(I)は、プロテインスキマーにおいて、該プロテ
【0021】
インスキマーの下部に配置されたマイクロバブル発生手
本発明に用いるプロテインスキマーとしては、具体的に
段により発生させたマイクロバブルにより、育成水槽か
は、WO2007/108145号パンフレット、特開
ら導入された被処理水に含まれる有機物を、プロテイン
2009−45001号公報、特開2009−2788
スキマーの上方に排出して除去する工程である。
94号公報等に記載されたプロテインスキマーにおいて
【0017】
、水中に微小な泡を発生させる手段をマイクロバブル発
プロテインスキマーは、水中に微小な泡を発生させ、そ
生装置としたものが挙げられるが、これらに限定される
の界面に、水質悪化の原因となるたんぱく質等の有機物
ものではない。
等を吸着させて水槽外に除去する装置である。
【0022】
本発明においては、プロテインスキマーとして、該プロ 30
<工程(II)>
テインスキマーの下部に配置されたマイクロバブル発生
工程(II)は、前記プロテインスキマーを通過した処
手段により発生させたマイクロバブルにより、育成水槽
理水に含まれるマイクロバブルをマイクロナノバブル及
から導入された被処理水に含まれる有機物を、プロテイ
び/又はナノバブル、好ましくはナノバブルにする工程
ンスキマーの上方に排出して除去する作用を有するもの
である。
を用いる。
マイクロバブルは、水中で比較的安定であるため、プロ
【0018】
テインスキマーを通過した処理水はマイクロバブルを含
マイクロバブルは、直径が1∼1000μm、好ましく
んでいる。この工程では、このマイクロバブルを何らか
は5∼100μmの微細な気泡)であり、通常の気泡と
の方法により、マイクロナノバブル及び/又はナノバブ
異なり、水中で縮小し、消滅(圧壊)する性質を有する
ル(以下、これらをまとめて「ナノバブル等」というこ
。なお、通常のバブル(気泡)は、水の中を上昇して、 40
とがある。)とする。
ついには表面でパンとはじけて消滅する。
この工程は、前記プロテインスキマーを通過した処理水
マイクロバブルはマイナスイオンを帯びており、プラス
を、プロテインスキマー通過後、好気性微生物処理槽に
イオンである汚れと結びついて浮上し圧壊して、汚れを
導入するまでの間に行われる。
水面へと浮かび上がらせることができる。
【0023】
【0019】
ここで、マイクロナノバブルとは、その発生時において
処理水にマイクロバブルを含有させるためには、マイク
10μmから数百μm前後の直径を有する気泡をいう。
ロバブル発生装置を用いる。水は表面張力が高いため、
また、ナノバブルとは、数百nm以下の直径を有する気
通常のバブリングでは100μm以下の気泡を生成させ
泡をいう。ナノバブルは長時間水の中に存在できる性質
ることは不可能である。
を有する。
【0020】
50
【0024】
( 5 )
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10
工程(II)において、マイクロバブルをナノバブル等
できる。
にするのは、次の理由による。
【0029】
(a)次の工程(III)に用いる好気性微生物処理槽
枯草菌の培養物に含まれる菌体数は、本発明の優れた効
に配置される好気性微生物や育成水槽中の生き物(特に
果を得る上では多いほど好ましいが、通常1×10
1
1
3
∼
魚類)が、マイクロバブルが圧壊するときの衝撃波によ
2×10
りダメージを受ける(場合によっては死滅する)ことを
1
避ける。
個/gである。
(b)ナノバブル等は微小な気泡であるため、全体とし
【0030】
て表面積が大きく、好気性微生物は効率よく空気を取り
酵素剤は、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リ
込むことができ、結果として好気性微生物を活性化させ 10
パーゼ等の有機物分解酵素の1種又は2種以上を含むも
、処理効率を大幅に向上させることができる。
のである。酵素剤としては、上記枯草菌の培養物をその
【0025】
まま用いてもよいし、このものに、他の微生物の培養物
マイクロバブルをナノバブル等にする方法としては、特
や植物等から抽出したものを添加したものでもよい。ま
に限定されず、例えば、マイクロバブルを含む処理水に
た、単離・精製したものであっても、単離・精製するこ
対し、超音波振動装置により超音波振動を印加する方法
となく、混合物としてそのまま使用することもできる。
(特開2006−289183号公報など)、マイクロ
【0031】
バブルを含む処理水を、マイクロ波発生装置、超音波発
これらの中でも、特に優れた処理効果を得ることができ
生装置及びバブル圧壊手段からなるナノバブル発生装置
るものとしては、穀類等の天然植物を枯草菌で醗酵させ
によりナノバブルを発生させる方法(特開2007−1
た乾燥粉粒を主体とした活性汚泥等の種植剤が挙げられ
36255号公報)、処理水を多孔性フィルターに通す 20
る。例えば、商品名「ミタゲンクリアー」(東和酵素(
濾過処理を少なくとも一回行う方法(特開2009−7
株)製)、「ミタゲンアンサー」(東和酵素(株)製)
2649号公報)、マイクロバブルをナノバブルに剪断
、「B4」(東和酵素(株)製)などとして市販されて
する方法(特開2008−178792号公報など)等
いるものが挙げられる。
の公知の方法が挙げられる。これらの中でも、簡便かつ
【0032】
効率よくナノバブル等にすることができることから、マ
枯草菌等の添加量は、本発明の効果が得られる量であれ
イクロバブルを含む処理水に対し、超音波振動装置によ
ば特に制限されない。例えば、枯草菌の培養物を使用す
り超音波振動を印加する方法が好ましい。
る場合には、添加する単位重量あたりの菌体数にも依存
【0026】
するが、一般的には、10
<工程(III)>
の枯草菌等を使用する場合には、処理水1m
次いで、工程(II)で得たナノバブル等を含有する処 30
10∼300g程度である。
理水を好気性微生物処理槽に導入する。工程(II)で
【0033】
得たナノバブル等を含有する処理水には、生き物の排泄
処理水に枯草菌等を添加した後、一定時間が経過して、
物などに由来するアンモニア性窒素が含まれている。工
枯草菌等の菌体数が減少した場合や、育成水槽の水を新
程(III)は、ナノバブル等を含有する処理水を、枯
しい水と交換した場合には、本発明の所望の効果が得ら
草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素剤と接触
れなくなるおそれがある。そのような場合には、枯草菌
させることにより、アンモニア性窒素の分解処理を行う
等を更に添加することが好ましい。
ものである。
【0034】
【0027】
追加の添加量は、本発明の効果を得ることができる量以
本発明においては、前記好気性微生物処理槽に用いる好
上であれば特に制限されないが
気性微生物として、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵 40
、処理水10m
素を含む酵素剤(以下、「枯草菌等」ということがある
1
個/g、より好ましくは1×10
3
7
1
∼10
9
0
当たり、通常1×10
1
∼2×10
1
個/gの菌体数
3
3
当たり、
個/g∼2×
0
0
個/gの菌体を含む10∼300gを、1∼6月
個/g、好ましくは1×10
7
∼2×10
1
10
1
個/g、好ましくは1×10
8
個/g∼2×1
。)、好ましくは枯草菌の培養物、より好ましくは、天
0
然植物を枯草菌で発酵させた乾燥粉粒を使用する。
に少なくとも1回添加すればよい。
【0028】
【0035】
枯草菌の培養物は、天然植物を枯草菌で醗酵させて得ら
このように、処理水に、枯草菌等を連続的又は一定期間
れるものである。天然植物としては、例えば、もろこし
毎に一定量ずつ添加することにより、育成水槽の長期に
粉、小麦粉、ふすま、大豆かす、米ぬか等の穀類又は穀
わたる連続運転が可能となる。
類から得られるものを用いることができる。また、醗酵
【0036】
させる場合においては、リン酸二水素アンモニウム等の
好気性微生物は、酸素に基づく代謝機構を備えた生物で
リン酸塩や炭酸カルシウム等の無機塩を添加することが 50
ある。細胞の呼吸で知られた過程の中で、好気性菌は、
( 6 )
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たとえば糖や脂質のような基質を酸化してエネルギーを
ンスキマー(2)→好気性微生物処理槽(3)→育成水
得るために、酸素を利用する。好気性微生物としては、
槽(1)の順で循環させることで、育成水槽の水の浄化
枯草菌や亜硝酸生成菌、硝酸生成菌などが挙げられる。
処理を行うものである。図中、矢印(→)は水の移動を
本発明に用いる枯草菌は、酸素を利用することができる
示す。
が、嫌気的にエネルギーを産み出す方法をも備えている
【0042】
。
先ず、育成水槽(1)の水がプロテインスキマー(2)
【0037】
に送られる。プロテインスキマー(2)の下部には、マ
枯草菌等は、特にアンモニア性窒素の分解能力に優れ、
イクロバブル発生装置(4)が取り付けられ、そこでマ
アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に変換
イクロバブルを発生させる。発生したマイクロバブルは
した後、さらに無害な窒素ガスに変換する。このため、 10
、処理水中のたんぱく質などの汚れを付着しながら上へ
処理水が酸性化することがなく、生き物に悪影響を与え
移動し、プロテインスキマー(2)の汚物捕集部(7)
ることもない。
に集められる。図中、(8)は捕集された汚れである。
【0038】
【0043】
本発明に用いる好気性微生物処理槽としては、枯草菌又
一方、プロテインスキマー(2)中の処理水の一部は、
は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素剤が何らかの方
配管(6)を通って、好気性微生物処理槽(3)へ送ら
法により担持されており、工程(II)で得たナノバブ
れる。プロテインスキマー(2)と配管(6)の間には
ル等を含有する処理水を、該好気性微生物処理槽中を滞
、汚れを付着したマイクロバブルを通過させないための
留・通過させることにより、ナノバブル等を含有する処
フィルター(図示を省略)が取り付けられている。
理水に含まれるアンモニア性窒素を分解処理することが
【0044】
できるものであれば、その形態は特に限定されない。例 20
配管(6)を通過する処理水にはマイクロバブルが含ま
えば、後述するものが挙げられる。
れているが、プロテインスキマー(2)と好気性微生物
【0039】
処理槽(3)を繋ぐ配管(6)の中間には、マイクロナ
以上のようにして、育成水槽の水のpHを調整したり、
ノバブル及び/又はナノバブル発生装置(5)が配置さ
定期的に水交換する作業を行うことなく、長期に亘り、
れ、そこで、マイクロバブルを含む処理水がナノバブル
安定して効率よく連続して水処理を行うことができる。
等を含む処理水に変換される。マイクロナノバブル及び
【0040】
/又はナノバブル発生装置(5)としては、例えば、マ
2)水処理装置
イクロバブルを含む水に超音波を照射して、ナノバブル
本発明の水処理装置は、生き物を育成する育成水槽の水
等を含む水に変換する装置が挙げられる。もちろん、マ
を、プロテインスキマー、次いで好気性微生物処理槽に
イクロバブルをナノバブル等に変換できるものであれば
導入し、再び育成水槽に戻す水処理装置であって、生き 30
、他の方法による装置であってもよい。
物を育成する育成水槽と、マイクロバブル発生装置が下
【0045】
部に配置されたプロテインスキマーと、前記プロテイン
その後、ナノバブル等を含む処理水は、好気性微生物処
スキマーを通過した処理水中のマイクロバブルをナノバ
理槽(3)へ導入され、そこで、アンモニア性窒素の分
ブル等にするマイクロナノバブル及び/又はナノバブル
解処理が行われる。好気性微生物処理槽(3)としては
発生手段と、得られたナノバブル等を含有する処理水を
、
、枯草菌又は枯草菌及び有機物分解酵素を含む酵素剤と
(a)図2に示すように、内部に、ナノバブル等を含有
接触させる好気性微生物処理槽とを備え、前記プロテイ
する処理水が流れる流路を設け、該流路中に充填材を多
ンスキマーにおいて、該プロテインスキマーの下部に配
層に収容し(ウールマット9/多孔質濾材10/多孔質
置されたマイクロバブル発生手段により発生させたマイ
濾材10/多孔質濾材10/ウールマット9)、該充填
クロバブルにより、育成水槽から導入された処理水に含 40
材表面に枯草菌等を担持させ、ナノバブル等を含有する
まれる有機物を、プロテインスキマーの上方に排出して
処理水をポンプ11により下方から上方へ流通させるよ
除去し、前記プロテインスキマーを通過した処理水中の
うにしたもの(外部式濾過器タイプの好気性微生物処理
マイクロバブルをナノバブル等とし、次いで、前記ナノ
槽3A)や、
バブル等を含有する処理水を好気性微生物処理槽に導入
(b)図3に示すように、ナノバブル等を含有する処理
することを特徴とする。
水が流れる流路を設け、該流路中に充填材を多層に収容
【0041】
し(ウールマット9/多孔質濾材10/ウールマット9
本発明の水処理装置の概念図を図1に示す。
)、該充填材表面に枯草菌等を担持させ、処理水をポン
図1に示す水処理装置は、育成水槽(1)、プロテイン
プ11とモータ12で上昇させ、該処理水を上部シャワ
スキマー(2)、及び好気性微生物処理槽(3)からな
ーノズル13からシャワー状に流下させるようにしたも
り、育成水槽(1)の水を、育成水槽(1)→プロテイ 50
の(上部式濾過器タイプの好気性微生物処理槽3B)な
( 7 )
JP
13
5756620
B2
2015.7.29
14
どが挙げられる。
を含むものであるため、好気性微生物処理槽に配置され
【0046】
る好気性微生物や育成水槽中の生き物(特に魚類)が、
前記充填材としては、ウールマット;活性炭、ガラス繊
マイクロバブルが圧壊するときの衝撃波によりダメージ
維、セラミックス、ポリ塩化ビニリデンなどからなる濾
を受ける(場合によっては死滅する)ことを避けること
過機能を有する多孔質部材の表面に、枯草菌等を担持さ
ができる。
せたもの;が挙げられる。前記充填材の形状は特に限定
さらに、ナノバブル等は微小な気泡であるため、全体と
されず、例えば、板状、円盤状、リング状などが挙げら
して表面積が大きく、好気性微生物は効率よく空気を取
れる。
り込むことができ、結果として好気性微生物を活性化さ
【0047】
せ、処理効率を大幅に向上させることができる。
枯草菌等はアンモニア性窒素に対する分解力が強く、好 10
【符号の説明】
気性微生物処理槽中において、枯草菌等は、アンモニア
【0050】
性窒素を亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に変換した後、さ
1・・・育成水槽
らに無害な窒素ガスに変換し、結果として処理水のpH
2・・・プロテインスキマー
値が7.4∼7.8に保持されるものと考えられる。ま
3・・・好気性微生物処理槽
た、図4に示すように、図3に示す好気性微生物処理槽
4・・・マイクロバブル発生装置
において、該処理槽の底部に凹み部分14を設け、そこ
5・・・マイクロナノバブル及び/又はナノバブル発生
に嫌気性環境にある領域を形成して、好気性微生物処理
装置
槽中に好気性環境となる領域と嫌気性環境となる領域と
6・・・配管
を形成するようにしてもよい(上部式濾過器タイプの好
7・・・汚物捕集部
気性微生物処理槽3C)。
20
8・・・捕集された汚れ
【0048】
9・・・ウールマット
本発明の水処理装置によれば、育成水槽の水のpHを調
10・・・多孔質濾材
整したり、定期的に水を交換する作業を行うことなく、
11・・・ポンプ
長期に亘り、安定して効率よく連続して水処理を行うこ
12・・・モータ
とができる。
13・・・上部シャワーノズル
【0049】
14・・・凹み部分
また、処理水が、マイクロバブルではなくナノバブル等
【図1】
【図2】
( 8 )
【図3】
JP
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B2
2015.7.29
【図4】
────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
C02F
3/04
(2006.01)
C02F
3/34
C02F
3/06
(2006.01)
C02F
3/04
C02F
3/20
(2006.01)
C02F
3/06
C02F
3/20
審査官
(56)参考文献
坂田
101D
Z
誠
特開2004−016168(JP,A)
特開2008−178792(JP,A)
特開2007−152275(JP,A)
特開2007−312609(JP,A)
特開2009−119385(JP,A)
特開2007−117799(JP,A)
特開2007−136255(JP,A)
高橋正好
他,「微細気泡の最新技術
マイクロバブル・ナノバブルの生成・特性から食品・農
業・環境浄化・医療への応用まで」,日本,株式会社エヌ・ティー・エス,2006年11月
6日,初版,p.267-279
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A01K
61/00−63/06