朝の法話 第二十二回 十二月十一日 全校の皆さん 、おはようございます。 先週は初雪が舞い、本格的に冬を感じるようになりましたね。今年 は暖冬といわれていますが、寒さで体調を崩さないようにしたいもの です。 さて、仏教のお話に「古井戸のたとえ」という物語があります。 ある死刑囚が刑の執行が近づくにつれて、死の恐怖に耐えられなく なって牢から脱獄しました。その国では脱獄囚は象に踏み殺させると いう決まりがあったので、象が追いかけてきました。男は象から逃れ るため、逃げる途中見つけた古井戸の中に、つる草につかまって途中 まで降りて隠れました。そして、ふと井戸の底を見ると、そこには毒 蛇が男の落ちてくるのを待ちかまえていたのです。また、上の方でカ リカリと音がするので見ると、一匹の白ねずみがつる草の根元をかじ っています。男はつる草がいつ切れるか気が気でない状態に追い込ま れました。その時、古井戸のそばの大木からポトンと落ちてくるしず くがあります。それをなめてみると甘い蜜でした。その蜜を次から次 へとなめているうちに、男は自分が危険な状況になっていることをす っかり忘れてしまったのでした。 このたとえ話について釈尊は次のようにお説きになっています。 「牢の中とはこの世の中のことであり、死刑囚とは迷える私たち人 間のことである。追いかけてくる象とは常に移り変わってゆく無常な この世の中のすべての事柄を指しており、古井戸とは私たち人間の住 む家のことだ。井戸の底の毒蛇とは苦しみの連続である地獄のことで あり、つかまっているつる草とは人間の寿命のこと。白ねずみとは刻々 と過ぎゆく時間、月日のことであり、甘い蜜とは世の中のすべての誘 惑である。私たちは寿命のある命を生きていることを知っていながら、 周囲からの甘い誘いに左右され、楽しいこと、楽なことを求めて、本 当に大切なことに目を向けることを忘れている。」と。 どうでしょう。その時の快楽だけを求めて、自分勝手な行動をして はいないか、今一度、自分を見つめてみてはいかがでしょうか。 これで朝の法話を終わります。
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