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品質確保 特集
改正品確法と直轄工事における
工事検査「技術検査」
国土交通省 大臣官房 技術調査課
工事監視官 白土 正美
規定する公共工事の品質確保の促進に関する法律
(以下「改正品確法」という)が改正された。
1. はじめに
本稿では,改正品確法等における工事検査 「技術検査」
(以下「工事検査」という)について
国土交通省直轄工事(以下
「直轄工事」という)
記載する。
における品質確保および生産性向上に関する諸課
題への対応については,入札・契約段階∼施工段
階∼工事の精算段階の各段階において種々の取り
2. 改正品確法
組みが行われてきている(図― 1 )
。
しかし,建設業を取り巻く環境は依然と厳し
平成26年 6 月 4 日公布,施行された改正品確法
く,受・発注者間で新たな課題も発生している。
第 7 条第 1 項では,発注者の責務が規定されてい
昨年 6 月には,公共工事の品質確保と中長期的
る。また,同条項第 6 号において,「完成後一定
な担い手確保を基本理念とし,発注者の責務等を
期間経過した後における施工状況の確認及び評
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図― 1 建設生産システムの効率化に係る施策
建設マネジメント技術 2015 年
2 月号 13
特集 品質確保
用後の性能等について,必要に応じて完成後の一
価」が新たに追加された。
定期間を経過した後において,施工状況の確認及
(以下,本文)
「発注者は,基本理念にのっとり,現在及び将
び評価を実施するよう努めるものとする。 来の公共工事の品質が確保されるよう,公共工事
の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保に
配慮しつつ,仕様書及び設計書の作成,予定価格
4. 発注関係事務の運用に関する指針
(以下「運用指針」という)
の作成,入札及び契約の方法の選択,契約の相手
方の決定,工事の監督及び検査並びに工事中及び
平成27年 1 月30日付けで策定された運用指針
完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務
(公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連
(以下「発注関係事務」という。
)を,次に定める
絡会議)の,「Ⅱ. 発注者関係事務の適切な実施
ところによる等適切に実施しなければならない。
について」「1. 発注関係事務の適切な実施」で
(1∼5 略)
は,以下の各段階において取り組むべき事項等が
6 必要に応じて完成後の一定期間を経過した後
とりまとめられている。
において施工状況の確認及び評価を実施するよ
⑴ 調査及び設計段階
う努めること。
⑵ 工事発注準備段階
3. 改正品確法に基づく,公共工事の品
質確保の促進に関する施策を総合的
に推進するための基本的な方針
(以下「基本方針」という)
⑶ 入札契約段階
⑷ 工事施工段階
⑸ 完成後
4―1 工事施工段階における工事検査
[工事中の施工状況の確認等] 平成26年 9 月30日に閣議決定された基本方針の
(前略)
第 2 公共工事の品質確保の促進のための施策に
適正かつ能率的な施工を確保するとともに工事
関する基本的な方針,6 工事の監督・検査及び
に関する技術水準の向上に資するため,出来形部
施工状況の確認・評価に関する事項は,以下のと
分の確認等の検査やその他の施工の節目(不可視
おりである。
となる工事の埋戻しの前など)において,必要な
(以下,本文)
技術的な検査(以下「技術検査」という。)を適
公共工事の品質が確保されるよう,発注者は,
切に実施する。技術検査については,施工につい
監督及び給付の完了の確認を行うための検査並び
て改善を要すると認めた事項や現地における指示
に適正かつ能率的な施工を確保するとともに工事
事項を書面により受注者に通知する。
に関する技術水準の向上に資するために必要な技
この技術検査の結果は工事の施工状況の評価
術的な検査(以下「技術検査」という。)を行う
(以下「工事成績評定」という。
)に反映させる。
とともに,工事成績評定を適切に行うために必要
な要領や技術基準を策定するものとする。 4―2 完成後における工事検査
[適切な技術検査・工事成績評定等]
(以下,本文)
(中略)
技術検査については,工事の施工状況の確認を
受注者から工事完成の通知があった場合には,
充実させ,施工の節目において適切に実施し,施
契約書等に定めるところにより,定められた期限
工について改善を要すると認めた事項や現地にお
内に工事の完成を確認するための検査を行うとと
ける指示事項を書面により受注者に通知するとと
もに,同時期に技術検査も行い,その結果を工事
もに,技術検査の結果を工事成績評定に反映させ
成績評定に反映させる。
技術検査については,施工について改善を要す
るものとする。 また,工事の性格等を踏まえ,工事目的物の供
14
建設マネジメント技術 2015 年
2 月号
ると認めた事項や現地における指示事項を書面に
品質確保 特集
より受注者に通知する。
である。
各発注者は,工事成績評定を適切に行うために
必要となる要領や技術基準をあらかじめ策定す
6. おわりに
る。
[完成後一定期間を経過した後における施工状況
の確認・評価]
工事検査には,会計法第29条の11第 2 項の規定
(以下,本文)
に基づく検査(給付の完了の確認)と,品確法第
工事の性格,地域の実情等を踏まえ,必要に応
7 条第 1 項を踏まえた検査(技術検査)がある。
じて完成後の一定期間を経過した後において施工
いずれも,適正かつ能率的な施工の確保および
状況の確認及び評価を実施するよう努める。
工事に関する技術水準の向上に資するため,適切
に実施される。
国土交通省では,これらについて,公共工事関
5. 直轄工事における工事検査
係者等との情報共有,連携強化に努めることとし
ている。
直轄工事における工事検査は,表― 1 のとおり
表― 1 工事検査の種類
検査の位置付け
種類
目 的
完成検査
給付の完了
の確認
技術検査
○
○
完成部分検査
既済部分検査
既済部分検査
工事の完成を確認するための検査。
請負者からの完成通知を受けた日から14日以内(民法上は起算日不算入の原則がある
が,検査の時期については起算日算入となっている)に行う。
会計法上の検査と技術検査の両方を行う。
この検査に合格すれば,発注者から受注者へ請負代金の支払いが行われ,工事目的物
が発注者に引き渡される。
工事の完成前に代価の一部を支払う必要がある場合において,工事の既済部分を確認
するための検査。
請負者から出来形部分等の確認の請求を受けた日から14日以内に行う。
会計法上の検査を行う。
この検査に合格すれば,部分払い金の支払いは行うが,部分払い相当部分の引渡しは
行わない。
○
※
工事の完成前に設計図書で予め指定された部分(以下「指定部分」という。)の工事
目的物が完成した場合に当該部分を確認するための検査。
請負者から指定部分の完成通知を受けた日から14日以内に行う。
会計法上の検査と技術検査の両方を行う。
この検査に合格すれば,部分払い金の支払いを行い指定部分の引渡しが行われる。
○
○
中間技術検査
当該工事の主要工種を考慮(不可視となる工事の埋戻しの前等,設計図書との整合を
確認しておき,できるだけ手戻りを少なくする等の目的で,請負者に対する中間時点に
おける“技術指導”の意味合いを持つ)し,工事施工の途中段階で行われる検査。
会計法上の検査は行わず,技術検査のみを行う。
検査結果が設計図書と適合するものであっても,代価の支払いや引渡しはない。
当該検査は,契約図書で予めこの検査を実施する旨を明記しておき,発注者が必要と
判断した時に行うものである。
(ただし,検査日については工事工程との調整もあるこ
とから請負者の意見も聞いて決めることとなる。
※
完成後技術検査
部分使用検査
総合評価方式やVE提案方式など性能規定発注方式等による提案事項について,工事
完成後一定期間経過後に,契約に基づく性能規定,機能が確保されているかどうかを確
認する検査。
性能規定等による契約では,完成検査時にその性能・機能等を確認することはできな
いため,工事完成後一定期間経過後の時点で契約に基づき性能規定の検査(履行の確
認)を行うことになる。
ただし,工事目的物そのものは工事完成後に通常の完成検査(性能規定部分を除く)
を行い,引き渡し,対価の支払いは行われる。検査結果が適合しない場合には,性能規
定部分に関し契約違反としてペナルティが課せられる。
【監督職員による検査(確認を含む)】
工事目的物の全部または一部の完成前において,発注者がこれを使用する必要が生じ
た場合に行う検査。
検査の結果,適合が確認されれば,発注者は請負者の承諾を得て部分使用することに
なる。この場合,使用部分は引き渡しを行わないので,代価の支払いはないが使用部分
に関して双方で文書による確認をしておく必要がある。
○
○
―
※
適用
契約書第31条
技術検査要領
第 2 第 2 項
契約書第37条
41条
既済部分技術基準
(※中間技術検査
と兼ねることがで
きる。
)
契約書第38条
技術検査要領
第 2 第 2 項
技術検査要領
第 2 第 3 項
(※既済部分検査
と兼ねる場合は会
計法上の検査も行
う。
)
(検査技術基準)
技術検査基準
第 5 条
契約書第33条
(※中間技術検査
に よ る 検 査( 確
認)でも良い。)
出典)
「公共事業の品質確保のための監督・検査・工事成績の手引き―実務者のための参考書―」
(平成22年 7 月国土交通省)
建設マネジメント技術 2015 年
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