珠洲市 里山里海ものづくりマップ

蒸した酒米に麹菌を混ぜ合わせる作業場
珠洲市┓里山里海ものづくりマップ
↓
① 酒 造業( 宝立町 )
そこ
第3号
酒造りの長を杜氏という。能
曳く漁業である。海中に網を沈め、船で 1 時間程度曳
珠洲市にも、里山里海資源を上手に活用し、地域再生を目指すリーダーがたくさんいます。
登杜氏は日本四大杜氏の一つに
き回した後、網を引き上げる。この作業
その一部ですがそんな素敵な人達と活動を紹介したいと思います。
はっしょう
数えられ、その発祥の地がこの
を1日6~9回行う。珠洲では50年以
一緒に、珠洲市の魅力を探しに行きませんか。
酒造会社であるといわれている。ここは江戸時代に創業
上も前から行われており、蛸島港沖合約
された造り酒屋である。酒造りには米と水が必要だが、
漁に使う道具
(ロープ、ウキなど)
くろみねやま
やまだにしき
ここでは米は山田錦(兵庫県産)、水は地元の黒峰山の
ふくりゅうすい
木ノ浦
しょう
伏流水を使用し、10月~翌年4月にかけて1升ビン約
高屋
30㎞、水深150~450mの漁場で
漁を行っている。午前0時に蛸島港を出
↓
折戸 川浦 狼煙
30万本分を生産している。
⑥ 底 曳き 網 漁業( 蛸島町 )
底曳き網漁業とは海底近くにいる魚やカニ等を網で
平成 23 年6月、能登の里山里海が「世界農業遺産」に認定されました。
とうじ
び
港し、帰港するのは午後3~5
時頃である。
日置
せいしゅ
近年清酒の消費量が減りつつあるため、旧のと鉄道の
ていおん れいぞう
せき
現在、珠洲では17隻の船が底曳き船団に
東山中
トンネルやレールを活用した低温冷蔵トン
所属し、ハタハタ、メギス、エビ、ズワイガ
ネルの建設や、トロッコ乗り体験を行うこ
大谷
寺家
とで、清酒の消費拡大を図っている。また、
ニなどを水揚げし、金沢へ出荷
ぎょかくりょう
唐笠
大谷峠
航空会社や世界の有名料理店等に清酒を売
している。近年、漁獲量の減少
三崎
ぎょか
ていめい
や魚価の低迷により底曳き網漁
り込み、国内だけでなく世界に向けても広
⑤
船が減りつつあるが、珠洲にと
く販売している。
ていちあみぎょぎょう
っては定置網漁業と並んで重要
若山
③ ④
な漁法となっている。
正院
蛸島
直
⑥
飯田
ビニールハウス内でイチゴを栽培し観光イ
珠 洲 市
⑤ 観 光イチ ゴ園( 正院町 )
こうせつさいばい
チゴ園を経営している。栽培床を腰より高い位置に設置して栽培する高設栽培を取り
②
入れている。これにより、立ったままの作業が可能となり、作業がしやすくなるだけ
上戸
くるまいす
↑
でなく、車椅子や立ったままイチゴ狩りができるようになった。また、気温や水の集
低温冷蔵トンネル
宝立
中管理により、天候に左右されない安定的な栽培が実現した。
①
ハウスの長さは約70m、栽培面積は約10a、3列で2段の栽培床が設
・・・・ ・・・・・
置されている。平成25年はあきひめ、べにほっぺなど5品種を栽培したが、
② 梨 栽培( 上戸町 )
アール
上戸町の高台にある26aの畑で約
毎年一部品種を替えながら珠洲の土地に適した品種を探求してい
100本の梨を栽培している。以前は
葉たばこを栽培していたが、約40年前に
能登森林組合珠洲支所
る。土にも工夫を凝らしており、杉の木の皮や炭などを混ぜ合わ
先代が梨栽培に切り替えて今日にいたっている 。 栽培品種は幸
(飯田町)では20数名
せて微生物(酵素)が住みつきやすくしている。今後はブルーベ
こう
すい
ほうすい
しゅうぎょく
水、豊水、秀玉、洋梨など14種類にのぼる。
じゅふん
梨は3~5月にかけて受粉し実をつける。5~6月に5個の実
てきか
から1個を残す割合で摘果し、6月末まで
び せい ぶつ
リーなど他の果樹にも取り組み、1年を通して「食べる楽しみ」
の職員で市内の森林の保全・活用事業を行
しょくりん
したくさが
こう そ
かんばつ
と「見る楽しみ」が味わえる観光農園を目指している。
っている。当初は植林・下草刈り・間伐な
どを行っていたが、近年は間伐を中心に行
しょうちゅう
はんしゅつざい
はっこうがく
に袋かけを行う。8月下旬~11月上旬に
っている。伐採された木は切り捨てと搬出材に分けられ、
かけて品種に合わせて収穫する。自園での
搬出材は穴水の木材市場へ出荷される。市場で選別された
「梨狩り体験」のほか、道の駅等での店頭
木材は、建築材やベニヤ材に活用され、特に珠洲のアテ材
販売、電話による注文販売を行っている。
は高価格で取り引きされる。また、県や市と連携して航空
事業主の長年にわたる豊富な
薬剤散布によるマツクイムシ防除事業や土砂
はタンクや樽に貯蔵し、長期間熟成させる。熟成させることで味わいが落ち着き風味が豊かに
経験と徹底した栽培管理で加
くずれを防ぐ仕事なども行い、森林の保全や
なる。その後、割り水や自社の焼酎を混ぜ合わせることでアルコ
賀梨以上の高糖度の梨を生産
災害対策に取り組んでいる。課題としては、
ール度数を調整し製品化している。焼酎の本場の九州では短期間
し、北海道から沖縄まで全国
木材の値段がなかなか上がらないことや林業
の熟成が一般的だが、ここでは3年以上、中には30~40年間
に向けて出荷している。
を志す若者が少ないことがあげられる。
熟成させ、風味豊かな焼酎を全国に出荷している。今後も長期熟
てってい
醗酵学を学んでいた先代が戦後
まんしゅう
ぼうじょ
③ 森林の保全・活用(市内一円)
こうぼ
満州から帰国して焼酎づくりを開始した。蒸した大麦に焼酎用の酵母と
・・・
水を混ぜ、8~20日間かけて醗酵させる。醗酵が終わったもろみをしぼ
こうくう
やくざいさんぷ
④ 焼 酎づく り(野 々江町 )
じょうりゅうき
たる
ふっとう
り、蒸留機で蒸留し、沸騰させ、蒸発した気体を冷やして原酒をつくる。原酒
じゅくせい
成を長所として、多様な製品を生産し販売していく。
らく のう
⑪ マ ツタケ 林の再 生(三 崎町)
⑦ 酪 農(唐 笠町)
珠洲市は以前からマツタケの産地であったが、近年マツタケの生産量は
国の開発事業で整備された農地
ちくせき
に5戸の酪農家が入植し酪農団地を
せいいくかんきょう
タケの生育環境が悪化したことや、アカマツの高齢化によるものだと考えら
ヘクタール
結成している。団地では牧草地約6ha
れる。そこで「NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海」では、かつてのマツ
を所有しており、自前の牧草を飼料として乳牛ホルス
じゅれい
タケ林を取り戻そうと活動している。樹齢60年を超えるアカマツを伐採するとともに、草刈り
タイン177頭を飼育し、年間1,015tの生乳を
や地かきを行い、マツの新芽が発生しやすい環境づくりを進め
さくにゅう
生産している。毎日早朝と夕方、牛舎の清掃・搾乳・
生乳保管・後片づけを行い、生乳を金沢へ出荷してい
ぎゅうふん
ふ えいよう か
減少している。これは落ち葉や枝が地表に蓄積して富栄養化が進み、マツ
にゅうしょく
たいひしゃ
る。牛糞は共同の堆肥舎でおがくず等と混ぜ合わせ熟
成させる。この堆肥は、主に牧草地の肥料として活用
ジュンサイとは、スイ
ている。地かきした地表からはマツの新芽とともに、多種類のキ
レンなどと同じように葉
ノコが発生している。今後も開拓した土地の保全・活用を進めマ
を水面に浮かべる多年生
ツタケ林の再生を図っていく。
の水草であり、北海道から九
たんすい
こしょう
州の澄んだ淡水の湖沼に自生
しているが、注文があれば販売も行っている。
だえんけい
ち か けい
する。葉は楕円形で、地下茎は水底の泥の中にある
この団地では、自分の牧場で生まれた乳牛を、輸入
木ノ浦
飼料に頼らずに自家製飼料(牧草)を与えて飼育し、
折戸 川浦 狼煙
安全な生乳の生産
が、茎が伸びて水面近くまで達する。茎の先端の芽
かんてんしつ
↑ 地かき・草刈り後に
マツの新芽が発生
おお
ぬめりがあるが、酢の物、吸い物などの食材として
高屋
に努めている。
ねんえき
の部分や若葉の裏面は寒天質の粘液で厚く覆われ、
⑧
ちんちょう
日置
東山中
寺家
珍重されている。
大谷
・・・
平成24年に珠洲商工会議所が市内のため池に
唐笠
↓ 自家製飼料(自前の牧草)
⑧ マ スター ドづく り(川 浦町)
⑦
三崎
「NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海」に調
⑨
⑩⑪
来た人である。移住当初、道の駅の店長に就任し、大
蛸島
正院
について調査・研究中である。珠洲のジュンサイは
在来種であり、商品化の価値は十分にある
れんけい
と見られ、今後民宿やホテルと連携した
直
栽培が期待されている。
飯田
珠 洲 市
ジュンサイ採取中 →
⑩ ジ ュンサ イ栽培 (三崎 町)
豆を原料にした様々な商品を開発してきた。そのう
ち川浦町で自生している「川浦からし菜」を知り、
査を依頼した。現在、ジュンサイに適した水質など
ざいらいしゅ
若山
創業者は田舎暮らしを求めて都会から移り住んで
しゅうにん
自生しているジュンサイを商品化できないかと、
大谷峠
上戸
宝立
からし菜を活用した商品開発を始めた。そして、から
し菜からマスタード(練りがらし)を生産し、道の
枝を横に伸ばして、
駅や市内のホテル等で販売している。
高さをそろえている
加工作業は市内の工房を借りて行っているが、い
ずれは生産・加工・流通のすべてを自前で行うこと
ろく じ さんぎょうか
(6次産業化)や海藻を原料にした商品開発を目指
している。また、全国の人に珠洲を知ってもらいた
い、珠洲を感じてもらいたいと珠洲の良さのPRに
も努めている。
→
⑨ ワ イン用 ぶどう 栽培( 三崎町 )
三崎町にある国営パイロット事業による開拓地でワイン用ぶどうを栽培している。平成6年、能登
しょうれい
空港開港を機に県からぶどう栽培を奨励されて先代が始めた。12aの畑でマスカットベリーA(ワ
イン用ぶどう)を130本栽培し、作業をしやすくするために枝を
横に伸ばし、木の高さを人の身長程度にそろえている。6月下旬に
開花・受粉し、9月半ばに濃い紫色の実をつけ、10月初めに収穫
する。色は巨峰より黒く、糖度はスイカ以上で甘い。ここでは約
1.2tのぶどうを収穫し穴水のワイン会社へ出荷している。
珠洲市には世界に誇れる美しい里山里海が残されています。
今、私たちの里山里海には、持続可能な形で利用・保全してい
くための取り組みが求められています。珠洲市社会教育委員は、
平成23年から里山里海の資源を活用した事業にどのようなも
のがあるのか、また、どのような取り組みが行われているのか
を調査し、その結果を「里山里海ものづくりマップ」にまとめ、
小・中学生の皆さんや市民の皆様にご紹介しています。今年も
いくつかの事業を調査し、事業の概要をこの「里山里海ものづ
くりマップ」
(第 3 号)にまとめました。どうぞご覧ください。
このマップを通して里山里海の利用・保全の大切さを理解して
いただければ幸いです。終わりになりましたが、このマップの
作成にご協力をいただいた皆様に心より感謝申し上げます。
「ぶどう栽培は楽しくて飽きない。」
と語る事業者。珠洲の開拓地で新た
からし菜
作成・発行:平成26年3月 珠洲市社会教育委員
な事業に取り組んでいる。
→
問 合 せ:珠洲市教育委員会事務局生涯学習係
(TEL:0768-82-7826)