1階床下

1階床下
1階床下に潜り、基礎の配置や形状を記録しま
す。土台や柱脚部の腐朽と蟻害の状況、含水率、
配管スリーブや人通口の位置などを調べます。
畳を上げて点検口を開ける
和室の畳を上げて点検口を開け、床下に潜
り込む。ここでは、外周調査で劣化が進行
していると判断した、浴室に近い6畳と4.5
畳の両方の和室に点検口を設けた
資料:匠建築
土台で見つけた
腐朽と蟻道
浴室南側の土台に発生し
ていた腐朽と蟻道。今後
の劣化の進行を判断する
ため、床下の温度と湿度
を数カ所で測定する
基礎の配置と床組
這いまわれる範囲から見える基礎に
ついて、布基礎や独立基礎といった
形式、配置・寸法、換気口や人通口
の位置、クラックの有無をチェック
する。土台や大引、根太の構成も確
認しておく
含水率や人通口も
土台や柱脚まわりの材の含
水率をできる限り測定して
記 録 す る。 人 通 口 の 寸 法、
配管スリーブの貫通状況な
どもチェックする
16 診断・計画・工事 マスターブック
劣化
Point
物置
納戸
トイレ
玄関
腐朽やシロアリによる食害な
ど、材の劣化状況を確認します。
浴室
4.5畳
物置
この建物では2カ所で大きな被
害を確認しました。
1つ目は浴室周辺。建物の内
外で、土台に腐朽や蟻道が認め
4.5畳
台所
居間
られました。蟻道は、南側の広
6畳
縁直下と廊下西側の基礎にもあ
0
1
2
りました。
凡例
腐朽、蟻害1階南側の広縁です。
2つ目は、
広縁
3m
蟻道
天井材は既に剥がされていて、
凡例
露出した構造材の幅広い範囲に
平面図 1階+基礎伏図
1階平面図
腐朽、蟻害
蟻道
雨漏りによる腐朽と蟻害を確認
しました。
1階の台所、居間、6畳和室の
天井、2階廊下の天井にも、雨
凡例
漏り跡が複数残っていました。
雨漏り跡 凡 例
物置
納戸
玄関
納戸
トイレ
玄関
物置
浴室
トイレ
雨漏り跡
4.5畳
浴室
4.5畳
6畳
台所
居間
台所
0
1
トイレ
2
物置
3m
0
1
浴室
6畳
6畳
居間
サンルーム
雨漏り跡
平面図 1階
平面図 2階
1階平面図
1階平面図
2階 平 面 図
2階 平 面 図
6畳
6畳
サンルーム
凡例
広縁
3m
4.5畳
8畳
6畳
広縁
2
8畳
8畳
判定:浴室まわりや増築部分などに腐朽・蟻害・蟻道
建物内外の浴室周辺で土台の腐朽・蟻害・蟻道を確認した。南面の広縁直下、廊下西端の基礎でも蟻道を、
広縁
広縁天井裏では広範囲に腐朽を確認した。1階台所、居間、
和室6畳、2階廊下の天井では雨漏り跡を確認した。
サンルーム
階平面図
2階 平 面 図
28 診断・計画・工事 マスターブック
事例
3
基礎をつないで不同沈下対策
資料4点:匠建築
南東側外観。敷地は後背湿地で建物は南東側に不同沈下。偏心率も桁行
で0.728と、建築基準法で定める0.3を上回っている
外周の基礎まわり。不同沈下によって雨樋の下端が外れている。東、南、北
面の基礎では、大規模または中規模のクラックを計5カ所確認した
不同沈下した南東に位置する2階6畳和室。周辺4カ所で建具の不具合が
生じていた。写真でも、敷居がたわんでいる様子がわかる
小屋組の接合状況。筋かいが取り付く柱の付近に、金物で固定されていな
い梁の継ぎ手がある
●建物概要
所感
不同沈下:南東側に向けて不同沈下している。発生時
建設地
東京都
新築年
1965年
構造・階数
在来軸組・2階建て
期は不明だが、近隣の工事などによって生じた可
能性がある。基礎は底盤の厚さと幅が不足してお
1階面積
47.80m2
2階面積
45.60m2
延べ面積
93.40m
軒高
調査せず
2
床高
505mm
備考
新築時、住宅金融公庫は利用していない
り、強度の問題も考慮する必要がある。
建具の不具合:1、2階の建具の開閉に不具合が生じて
いる。梁のたわみなどによる建物の沈下が原因と
思われる。
壁の配置:1階梁間の耐力が必要耐力の4分の1以下と
極端に低く、桁行の偏心率も0.728と大きい。壁
の配置バランスを考慮した補強が望まれる。
劣化:浴室まわりの土台で腐朽と蟻道を発見した。床
下の防湿対策も含め、早急な対応が望まれる。
41
診断・計画・工事 マスターブック [調査結果]
トイレ
トイレ
トイレ
浴室
台所
浴室
浴室
台所
台所
納戸
納戸
納戸
洋室
6畳
6畳
洋室
洋室
2階外周位置
2階外周位置
ベランダ
居間
6畳
居間
居間
玄関
ベラ
ベラ
ンダ
ンダ
6畳
6畳
玄関
玄関
広縁
広縁
広縁
m
率図 1階
0 0 1 1 2 2 3m
3m
壁倍率図 1階
2階
凡例
壁倍率図 1階
壁倍率図 1階
2.0倍 外壁
(モルタル)
+筋かい
2階
2階
布基礎位置
布基礎位置
布基礎位置
凡凡
例例
独立基礎位置
独立基礎位置
独立基礎位置
2.0倍 外壁
2.0倍 外壁
(モルタル)
(モルタル)
+筋かい
+筋かい
床下換気口
床下換気口
床下換気口
1.5倍 外壁
1.5倍 外壁
(モルタル)
(モルタル)
+木舞壁
+木舞壁
クラック状況
( 大 中 小)
クラクラ
ック状況
ック状況
( ( 大 大 中 中 小)
小)
1.0倍 筋かい
1.0倍 筋かい
堅樋
(垂れ流し)
堅樋
堅樋
(垂れ流
(垂れ流
し)
し)
0.5倍 木舞壁ま
0.5倍 木舞壁ま
たは内壁
たは内壁
ハンドオーガー位置
ハンハン
ドオーガー位置
ドオーガー位置
1.0倍 確認
1.0倍 確認
した筋かい
した筋かい
(15×90程度)
(15×90程度)
基礎形状確認位置
基礎形状確認位置
基礎形状確認位置
1.5倍 外壁
(モルタル)
+木舞壁
1.0倍 筋かい
0.5倍 木舞壁または内壁
1.0倍 確認した筋かい
(15×90程度)
± ±
+380
+380
+380
腐朽
腐朽
腐朽
建具の不具合
建具の不具合
建具の不具合
隣地境界線
トイレ
トイレ
台所
浴室
浴室
隣地境界線
隣地境界線
隣地境界線
台所
台所
隣地高低差
±
隣地高低差
隣地高低差
トイレ
隣地境界線
隣地境界線
壁倍率図 2階
凡凡
例例 凡 例
浴室
納戸
洋室
6畳
納戸
納戸
洋室
洋室
6畳
6畳
±0
−80
±0±0
−80−80
ベランダ
居間
居間
居間
玄関
ベラ
ベラ
ンダ
ンダ
6畳
6畳
6畳
玄関
玄関
広縁
広縁
広縁
隣地境界線
0
1
2
隣地境界線
隣地境界線
0 0 1 1 2 2 3m3m
42 診断・計画・工事 マスターブック
−130
3m
−130
−130
配置平面図 1階+基礎伏図
平面図 2階
トイレ
浴室
台所
納戸
[補強計画案]200万円前後
洋室
6畳
台所
玄関は半島基礎なので、基礎を新設
台所
浴室
浴室
居間
して居間側とつなげます。基礎の下
6畳
では、鋼管パイプを打ち込む簡易な
締め固め工事を行います。締め固め
6畳
ベランダ
洋室
玄関
納戸
納戸
6畳
洋室
2階外周位置
2階外周位置
工事は一式約10万円、基礎工事やサ
0
1
ッシ工事を除いた補強工事費の総額
2
3m
広縁
居間
ベランダベランダ
居間
玄関
は208万9500円。極端に不足してい
0
10
21 3m
2
3m
偏心率も0.117に低減されます。
6畳
6畳
2階
広縁
広縁
玄関
補強計画b案1階
た1階梁間の存在耐力は必要耐力に
ほぼ匹敵する4176kgになり、桁行の
トイレ
2階外周位置
トイレ
壁量が少ない1階の南面に壁を新
設し、残りの外周を足元補強します。
凡例
補強計画案 1階
平面図 2階
壁補強
(構造用合板、
三角形状金物+ブレースたすき掛け)
補強計画b案1階
補強計画b案1階
2階 2階足元補強
凡例 凡例
[補強計画案]300万円以上
足元補強 足元補強
壁補強
(構造用合板、
壁補強
(構造用合板、
三角形状金物+ブレースたすき掛け)
三角形状金物+ブレースたすき掛け)
台所
はない壁にしていた個所がありまし
た。これらの“元開口部”を中心に補
強する案です。200万円前後の計画
に比べ、1階で4カ所、2階で2カ所、
6畳
トイレ
もともと開口部をつぶして耐力壁で
トイレ
居間の西側、1階6畳の北側などに、
台所
浴室
浴室
納戸
洋室
6畳
洋室
2階外周位置
2階外周位置
壁の補強個所を増やします。1階南側
居間
の壁補強と基礎の新設は、200万円
ベランダベランダ
居間
前後の計画と同様です。
玄関
万5000円。1階 梁 間 の 存 在 耐 力 は
6畳
6畳
広縁
広縁
玄関
総額は、基礎工事など別途で367
5230kgで必要耐力を上回ります。
納戸
補強計画案 1階
補強計画案 2階
補強計画c案1階
補強計画c案1階
2階 2階
凡例 凡例
[補強計画案]100万円前後
台所
象にします。総額は130万7250円。
1階梁間の存在耐力は、必要耐力の
半分の現状(2044kg)から、約4分の
3に当たる3147kgまで上がります。
なお、上記2案を含めた各案の見
積もりは、小屋裏接合部の金物によ
る補強工事として、4人工一式5万円
6畳
トイレ
と北側の開口部を除く外周全体を対
トイレ
足元補強に特化した案です。南側
台所
浴室
壁補強
(構造用合板、
壁補強
(構造用合板、
ML金物+ブレースたすき掛け)
ML金物+ブレースたすき掛け)
足元補強 足元補強
浴室
納戸
洋室
6畳
納戸
洋室
2階外周位置
2階外周位置
居間
ベランダベランダ
居間
玄関
6畳
6畳
広縁
広縁
玄関
を含んでいます。
補強計画案 1階
平面図 2階
凡例 凡例
足元補強 足元補強
43
診断・計画・工事 マスターブック 床の補強
水平剛性を高めるため、2階の床を補強します。
2階床を剥がして構造用合板を張る方法と、1階
天井裏からブレースを設置する方法があります。
補強面の下地をつくる
構造用合板で補強した事例。2階の既存床の仕上
げを剥がし、構造用合板を設置するための下地材
を、天端をそろえるように相欠きにして組む。約
450mmの間隔で根太を並べた
千鳥に配置
構造用合板を敷く。弱い部分を生
じさせないために、構造用合板は
目地を通さず千鳥に配置するのが
望ましい。板面には鉛筆でくぎや
木ネジを施工する線を記しておく
150mm以内のピッチで
N50くぎや木ネジを用い、150mm
以内のピッチで打ち込む。くぎや木ネ
1階から補強する方法も
ジの頭はめり込まないように注意する
1階の天井を剥がして、三角形状の金物とブレ
ースで補強する方法もある。手順は壁の補強と
同様。現場の条件に応じて、無理なく工事でき
る方法を選択する
作業後の確認
構造用合板を固定した状態。構造
用合板の強度は打ち込んだくぎや
木ネジの状態によって左右される
ので、作業後に必ず確認する
54 診断・計画・工事 マスターブック