コンビニエンスストアの経営戦略

コンビニエンスストアの経営戦略
明治大学
経営学部
経営学科
2年
須賀
目次
1、 はじめに
2、 TOP3 のコンビニ
① セブン-イレブンの経営
② ローソンの経営
③ ファミリーマートの経営
3、 その他のコンビニ
4、 共通点と相違点
5、コンビニの今後
1、 はじめに
コンビニエンスストアは、食料品、生活雑貨、ATM、コピー機、光熱費の払い込みなど
数多くの商品やサービスで、いまや私たちの生活に欠かせないものとなっている。ひとた
び街に出てみれば、様々な企業のコンビニが目に入る。事実、コンビニ業界は拡大を続け
ていて、現在では飽和状態にあり、国内だけでも 50000 店舗以上が出店しているのが現状
である。また、コンビニの進出は経済成長の著しい東南アジアを中心に海外にまで広がり
始めている。このような状況の中でも、業界内での上位 3 社であるセブン-イレブン、ロ
ーソン、ファミリーマートは順調に店舗数や業績を伸ばしている。その一方で 4 位以下の
コンビニは、売上高や出店数の鈍化、フランチャイズの離脱など苦しい状況におかれ、業
界格差が目立っている。その中で、これらのコンビニは生き残りをかけ、どのような戦略
をとり、どのような方法で差別化を図っているのだろうか。
2、 TOP3 のコンビニ
現在、日本におけるコンビニの売上でTOP3 を占めるコンビニは上記でも挙げたとおり次
の 3 つのコンビニである。1 位がセブン-イレブン、売上高は 37812 億円。次いで 2 位が
ローソン、売上高は 19453 億円。3 位がファミリーマート、売上高は 17219 億円となって
いる。日本フランチャイズチェーン協会によれば、2014 年時点でのコンビニ業界の業界規
模はおよそ 9 兆 7309 億円 1で、この 3 つのコンビニによるほぼ寡占状態にあると言える。
では次にそれぞれのコンビニがどのような経営を行っているのかをみてみる。
① セブン-イレブンの経営
セブン-イレブンの取っている経営戦略として代表的なものは、「ドミナント戦
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http://www.jfa-fc.or.jp/
略」である。
「ドミナント戦略」とは、セブン-イレブンが創業以来、基本として
いる戦略で一定地域に集中的に出店する高密度多店舗出店方式である。2この戦略
のメリットは、ひとつひとつの店舗が近いため、配送コスト・時間を減らし、食料
品に関しては食中毒などを予防できること、フランチャイズ加盟店への経営アドバ
イスの時間の確保が可能なこと、チェーンの認知度の向上、来店頻度の増加、広告
効率の向上などが挙げられる。この戦略のために店舗数 1 位であるにもかかわらず、
未だに出店していない県も存在する。また、セブン-イレブンはプライベートブラ
ンド商品の開発にも力を入れている。「セブンプレミアム」という名前のこのプラ
イベートブランド商品は低価格よりも高品質を重視して大ヒット商品を生み出し
ている。
② ローソンの経営
ローソンは、
「マルチフォーマット開発」を進めてきた。これは、通常店舗の 1.2
~1.5 倍規模の店舗で高い利益率の店舗網を展開していくものである。この戦略に
よって、従来のコンビニが取り込めていなかった女性客やシニアの利用者にターゲ
ットを絞ることで新しい客層へのノウハウを蓄積することが可能である。この「マ
ルチフォーマット開発」における進化型コンビニには、健康志向コンビニエンスス
トア「ナチュラルローソン」、生鮮コンビニエンスストア「ローソンストア 100」、
そしてそのさらに進化形である進化型コンビニエンスストア「ローソンマート」が
ある。 3ローソンもプライベート商品「ローソンセレクト」を開発している。
③ ファミリーマートの経営
駅構内や病院、高速道路のサービスエリア・パーキングエリア、オフィスビル内
などの施設や、他業態との協業による一体型店舗など、従来とは異なる形態や立地
での積極出店によって量の拡大による増収を目指す。4いまやファミリーマートの
店舗数は 10000 店舗を上回るまでに店舗網が拡大している。また、海外進出にも積
極的な姿勢を見せており、
「グローバルNo.1」を戦略フォーカスとして、東南アジ
アを中心にタイ、中国、台湾などに 5000 店舗を超える数の出店を行っている。さ
らに、プライベートブランド商品「FamilyMart collection」のグローバル展開を開
始、各国に「FamilyMart collection」を開発・管理するための組織を設置し、商品
開発に関するノウハウを共有し合うだけでなく、他チェーンとの差別化を図ってい
る。
3、 その他のコンビニ
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石川(1998),74 ページ
http://www.lawson.co.jp/index.html
http://www.family.co.jp/
TOP3 のセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート以外にも多くもコンビニが存在
する。そのなかで、4 位と 5 位であるサークル K サンクスとミニストップの経営戦略を見
てみる。
サークルKサンクスは、従来のコンビニの主要客層であった 20 代から 30 代の男性客に
加え、中高年層や女性客などの新たな客層の獲得を目指して、新フォーマット店舗の開発
に取り組むとしており、青果・生鮮日配品に強みを持たせた「ミニスーパー型店舗」やフ
ァーストフードを強化した「ファーストフード強化型店舗」を展開していく 5。また、駅構
内や病院などには設備投資や運営コストを極力抑制し、
「ミニ店舗」という形での出店を推
進している。また、親会社である、ユニグループ商品開発力・調達力を結集してプライベ
ートブランド商品の開発を強化して高品質の商品、低価格の商品のバランスをとり、消費
者のニーズに対応する。
ミニストップもサークルKサンクスと同様にコンビニとファーストフード店を融合さ
せた店舗を展開しており、これをミニストップでは「コンボストア」と呼んでいる。さら
に店舗内にイートインコーナーを設けることによっていつでもできたてもおいしさを店内
ですぐに楽しめるような工夫もされている 6。また、イオングループ傘下のミニストップは
イオンのプライベートブランド「トップバリュ」を取り扱っており、イオンの電子マネー
の「WAON」などのポイントサービスを行い、集客を図っている。
4、 共通点と相違点
これらのコンビニの経営を見てみると、セブン-イレブンの「セブンプレミアム」、ロー
ソンの「ローソンセレクト」
、ファミリーマートの「FamilyMart collection」、ミニストッ
プの「トップバリュ」と、ほぼすべてのコンビニにおいてプライベートブランド商品の開
発が為されていた。しかしミニストップのように、消費者のニーズに合わせて高品質な商
品・低価格な商品をそれぞれ開発するコンビニがある一方で、セブン-イレブンのように
高品質にこだわり、商品を開発しているコンビニもある。これは、セブン-イレブンが消
費者のニーズに合わせるより、高い品質を重視した商品を生み出すことで大ヒットを狙っ
ているというところに違いがあるためではないかと考えられる。
ほぼすべてのコンビニが行っていることとして、ポイントカードが利用可能であるとい
う点も挙げられる。具体的にはセブン-イレブンの「nanaco カード」、ローソンの「Ponta
カード」
、ファミリーマートの「T カード」、サークル K サンクスの「+KR ポイントカード」、
ミニストップの「WAON」である。ほとんどのポイントカードはそのコンビニだけでなく、
異なる業態の店舗でまでも利用することが可能である。これらのポイントカードにはリピ
ーターを獲得する狙いがあると考えられる。しかし多くの消費者がそれぞれのコンビニの
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http://www.circleksunkus.jp/
http://www.ministop.co.jp/
ポイントカードを持っている場合が多いため、これによって顧客を確保できているのかに
は疑問が残る。
各コンビニの出店方法を見てみると、セブン-イレブンのような「ドミナント戦略」を
とっているコンビニは少なく、この戦略はセブン-イレブンが業界のトップの座に君臨し
ていられる大きな要因のひとつとなっているのではないだろうか。この戦略によって、全
国四十七都道府県に出店しているローソン、ファミリーマートに対し、未だ出店していな
い県も存在することからこれらのコンビニとは対照的な出店方法をしていることがわか
る 7。次にローソンの「マルチフォーカス戦略」に関してだが、これは「コンボストア」と
いう形でのミニストップや「ミニスーパー型店舗」
・「ファーストフード強化型店舗」によ
るサークルKサンクスの同様の戦略をとっている。しかし、ミニストップはイートインコー
ナーを設置したファーストフードとコンビニが融合した店舗だけしか展開おらず、サーク
ルKサンクスも青果日配品とファーストフードを重視した店舗だけの展開なのに対し、ロー
ソンは「ナチュラルローソン」
、
「ローソンストア 100」
、
「ローソンマート」など数多くの進
化型コンビニを展開し様々な客層に対応した形態の店舗展開をしている。これによってミ
ニストップやサークルKサンクスに比べてより多くの客層のニーズに対応することのでき
るノウハウを蓄積することが可能である。さらに、このノウハウの蓄積をプライベートブ
ランド商品の開発に活かして様々な客層のニーズにより応えることができるというサイク
ルが出来上がっていると考えられる。このようにセブン-イレブンはある地域にターゲッ
トを絞った高密度多店舗出店。その一方でローソン、ミニストップ、サークルKサンクスは
「マルチフォーマット開発」による進化型コンビニによる出店での店舗網の拡大。ファミ
リーマートは、日本国内にとどまらず、海外にも 10000 店舗を超える店舗数の出店をして
おり、積極出店で店舗数を増加させることによる増収を目指している。またファミリーマ
ートの積極出店は、駅構内や病院、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアなど他
の業態と一体になった店舗など様々な工夫がされた出店をしている。それぞれのコンビニ
が各プライベートブランド商品の開発やあらゆる出店方法での店舗展開をしているのがわ
かる。
5、 コンビニの今後
先にも述べたとおり、現在のコンビニ業界はセブン-イレブン、ローソン、ファミリー
マートの 3 社による寡占状態にある。この現状では TOP3 のコンビニと同じような経営戦
略をしていては、決して勝ち残っていくことはできない。各コンビニが高品質の様々な商
品やサービスの提供を始めたことで、「近くて便利」というだけで消費者の集まる時代は終
わってしまった。今後、コンビニ業界で勝ち残っていくためには、高品質のプライベート
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田中(2006),38 ページ
ブランド商品の開発や出店方法のみならず、多種多様なサービスの提供に至るまでさまざ
まな点でほかのコンビニとの違いを明確に示し、差別化を図っていくことが非常に重要で
ある。また、コンビニ業界は日本国内において飽和状態にあるため海外での店舗展開も重
要になってくるのではないだろうか。
6、 参考文献
・石川昭、根城泰『セブン-イレブンだけがなぜ強い』1998.産能大学出版社
・緒方知行、田口香世『セブン―イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか』2014.日本経済
新聞出版社
・田中陽『セブン-イレブン覇者の奥義』2006.日本経済新聞社
・http://www.circleksunkus.jp/ (サークル K サンクス)
・http://www.family.co.jp/ (ファミリーマート)
・http://www.jfa-fc.or.jp/ (日本フランチャイズチェーン協会)
・http://www.lawson.co.jp/index.html (ローソン)
・http://www.ministop.co.jp/ (ミニストップ)
・http://www.sej.co.jp/ (セブン-イレブン)