北九州マラソン 2015 出場記~雨、風にも負けず、一喜一憂を愉しむの巻~ 栗秋和彦 ○冬のマラソンのリスクはなぁに ? 早朝の予報では 9 時頃まで小雨ときた。でこんなときほど予報はあたる。JR 西小倉駅着場面では小雨 が降り出し、案の定トホホである。その後も降ったりやんだりの微妙な天気に気勢はそがれたが、それも スタートしてからはほとんど上がり、12 ㌔過ぎの戸畑付近では雲間からときおり薄日が差す展開に。昨年 よりはマシだとこのときまでは思ったが、時間が経つにつれだんだん風が強くなり、31 ㌔を過ぎた門司港・ 西海岸では突風交じりの強風が渦巻いた。しかも最後の 10 ㌔が強烈な向かい風である。気温も下がり終 盤の赤坂海岸付近では雪も舞いはじめ、体感温度は0度を下回った筈。冬のマラソンだからこそ気象条 件のリスクは高く、侮れない。 小雨模様の中、手荷物をトラックに預ける ○3 ヶ月前、福岡マラソンの轍は踏まないぞ ! 昨秋の福岡マラソンでは 30 ㌔過ぎからハンガーノックに襲われ、ラスト 7 ㌔をほぼ歩く羽目に陥った。 手持ちのパワージェルを小量摂取しただけで、エイドの食べ物にはいっさい見向きしなかったツケがきっ ちりと廻ったものと思っている。そこで今回は絶対歩かないため、給食所では意識的に食べまくり、ハンガ ーノックは起こさないぞ ! と厳に誓った。短絡的に申せばエントリーフィー分の元は取るぞ、と言い聞かせ たこと。37 ㌔地点の小倉牛こそ取り損なったが、バナナを中心におはぎに羊羹、クロワッサン、ミカンなど など、私設エイドの飴玉も有難くいただいた。これでもし歩いてしまったら道理が通らなくなり、原因はハン ガーノックじゃなかったことになる ? スタート前 25 分、トイレに並ぶ 15 分前ギリギリに C ブロックへ 9 時ちょうど号砲一発、Aブロックのスタート風景 ○レース全体のあらまし スタート直後、JR 日豊線を跨ぐ金田の高架橋を上り下りすると、正面の皿倉山方向から風が吹き、けっ こうな体感抵抗を感じた。まだまだ序盤も序盤、慌てずに行こうぜ ! と言い聞かせる。すなわち自重気味 にとの意識は働いたが、大蔵までの上りに加え、向かい風で思ったほかペースが伸びず高炉台公園から の下りを利用して少しペースを戻した。この間、殆ど抜かれっぱなしだったが、「若人よ、先に行ってね !」 と意に介するつもりはなかった。意に反し C ブロックからのスタートだったので、己の力量から言ってこの 状況を甘受するしかあるまい、と腹をくくったのだ(と言うほど大袈裟ではないけれど・・・)。 そして東田のいのちのたび博物館を一周するとまた緩い上りと下り、枝光を迎えて10㌔を 1 時間と 55 秒はネットで 58 分余りだから先ずは思惑どおりのペースか。更に前半のアクセントは緩やかに上る戸畑 への峠道と、コースとしては変化に富み飽きはこない。がいかんせん長丁場だもの、ルーチンワークは 1 ㌔ごとの表示板を探し出し、5 分台後半のラップタイムを確認すること、それの繰り返しだ。 スペースワールド目指して下る 戸畑駅前を経て戸畑 2 丁目を走る 26 ㌔過ぎ、大里本町 2 丁目付近 で八幡東区に分かれ告げ、牧山峠から戸畑駅前への下りは少しペースも上がったが、まもなく右折、 名も知らぬ通りを左に右に、九工大付近から真颯館高校下、日明、鋳物師、東港から住金に至るまで土 地勘のないコースは想像力が働かず集団の中、流れに任せるしかなかった。そして目まぐるしくも小さな アップダウンをこなしていく中で、極力脚は使うまいと自重を強いたつもりである。その意味で㌔ 6 分切り のスピードが持続的最適速度と信じて走った。まだまだ余力もあったのでスピードアップも可能だったが、 この低金利時代にあっても、シニア世代にハイリスク・ハイリターンは禁物 (何のこっちゃ?) なのだ。思い 上がって突っ走れば (たいしたスピードアップにはならないにしても・・・) ツケはきっちり廻ってくるのが、 過去の経験則でもある。 そんなこんなの煩悶を繰り返しながら小倉駅新幹線口まで戻ってきて 20 ㌔地点は 1 時間 59 分余り。さ ぁいよいよここからがフルの一合目と心得て新たな気持ちで前へ前へと進んだ。しかし身体疲労は確実に 進んでいるので、思惑と実態との乖離を如何に食い止めながら走ることが肝要であって、そんなことは百 も承知。しかし走ってみなければ分からないことも百も承知。承知の割には結果は分からん、これぞ何回 走ってもフルの奥深さなんですね(と今回もまた同じことを言ってます)。 27 ㌔前の小森江付近 折り返し直前、 唐戸行船乗場手前 西海岸の強風はドラえもんには大変! さてゴール地点の国際会議場を左手に見遣り、砂津を左折して末広橋を渡ると国道 199 号も勝手知っ たるエリアに突入。しかもここから門司港までは一週間前に試走したばかりなので、目をつぶっていても 大丈夫なのだ(との心意気だね)。でここまで来ると目下の関心事はトップ選手とどこですれ違うかである。 昨年はナフコを過ぎ海岸端でぶっちぎりの立石選手(安川電機)と出会ったが、今年はなかなかトップが現 れない。赤坂海岸の工場群に入りしばらくしてようやくのトップと出会い、ちょっとしてまた一人、そして今 度は二人。それも前評判の高かった立石選手ではなく見知らぬ面々の後、5.6 番手で高濱君のお出まし だ。がいずれも強烈な向い風に翻弄されているのがはっきり分かった。トップクラスでも難渋さが分かるほ どの帰り道だもの、自分自身追い風の真っ只中にいたものの、帰りを思うと心中穏やかではなかったが、 案じてもどうなるものでもなし。先ずは早く地元の門司へ入りたい一心で歩(走)を刻んだ。 さて国道 199 号も鹿児島線を挟んで手向山を右手に見遣ると門司への区境だ。にわかに周りは賑やか になり、ほどなくホームコースの大里海岸緑地を左手に見ると、やがてヤマダ電機前が 25 ㌔地点。沿道 の応援の多さは際立っており、まさにこのあたりは我が町・大里のハレの舞台なのでピッチも上がるし、追 い風も味方につけ、けっこうベースアップしたつもりだった。しかし 1 ㌔ラップは 5 分 40~50 秒の間をいっ たりきたりと期待値には及ばず、もうちょっとどうかならんのかねぇ、と苦笑いしつつ自問自答の体。それ でも門司港に入り、門司警察署前で 30 ㌔の大台を超えれば、あと 12 ㌔余。と同時に走りの重さもじわじ わと忍び寄り、疲労が確実に溜まってきているのが分かった。しかしいよいよ西海岸に入れば、永木氏率 いる門司港運(株)応援団の声援と楽団演奏の後押しで、気分は高まる筈。そして永木&松石両兄と一瞬 の邂逅。唐戸行連絡船乗り場前のロータリーまではイケイケドンドンだったと思う。 31.5 ㌔付近、西海岸の埠頭を走る 37 ㌔付近を粘走 ラスト 500 ㍍ スパート ところがある程度予想はしていたものの、折り返してみて状況は大きく変わった。強烈な向い風の洗礼 だ。ドラマシップ脇から海岸埠頭へ出ると更に激しく風は舞い、おじさんは木の葉のように翻弄されるのみ。 70 ㎏の重石(我が身)をもってしてもこんな感じだったので、小柄な女性ランナーなどはさぞやおおごとに 違いなかろう。と慮るのも束の間、今度は海峡の白波が岸壁に砕けて大粒のシャワーの如く、二度も波を 被ってしまいこっちもおおごとであったが、この地でこんな波濤に遭うのは初めてのこと。西海岸での尋常 ならざる光景が強く脳裡に残ったのでありますね。さぁて再び国道 199 号に戻りあとは粘れるだけ粘るの みであったが、そのためには食べれるだけ食べようと決意も新たにして(と大仰は似合わないなぁ)、復路 を辿った。 あと 200 ㍍で有森さんの熱烈出迎え 角を曲がるとあと 100 ㍍余り 嗚呼、ゴール! 完走メダルは松本零士×小倉織のコラボ それにしてもこの向い風は我慢のしどころ。今風に言えば「心が折れかかった」が、条件はみんな同じ だもんねと開き直った。もっともラップは確実に落ちてはいくのだけど・・・。しかしこの風の中でも 30 ㌔から ゴールまでの所要時間で、穏やかだった昨年よりも 3 分以上縮まっていたのが、粘れたことの証であって、 特にラスト 2.195 ㌔は我ながら脚が動き、ストレスを感じなかった。こうして 4 時間 15 分余の波瀾万丈ドラ マは終わったが、後刻ネットに配信された5㌔毎のラップを見ると、無機質な数字の裏に濃縮されたその 時々のドラマがリアルに隠され興味は尽きない。この趣味を始めて四半世紀以上、22 回目の完走の重み を噛みしめてにんまりと反芻しているが、この含み笑い人様には見せられませんなぁ。 【42.195kラップタイム ()は昨年の記録】 Start 地点まで 02:02 (01:15) 0~5km 30:11 (28:24) 5~10km 28:42(27:59) 10~15km 29:07(27:54) 15~20km 29:19(28:32) 中間点 02:05: 51(02:00:25) 20~25km 29:20(28:55) 25~30km 29:42(29:47) 30~35km 31:32(32:01) 35~40km 32:14(33:07) 40~Finish 13:16(15:11) 所要時間 04:15:25(04:13:05) 6 分 03 秒/ ㌔(5 分 59 秒/㌔) Nettime 04:13:23 (04:11:50) 6 分 00 秒/㌔ (5 分 58 秒/㌔) 総合順位 2832 位/完走者 8957 人(出走者 10016 人) (男子全体)2580 位/完走者 7350 人 (一般 60 ~64 才男子) 116 位/完走者 412 人(出走者 489 人) 天候:小雨のち曇り 気温:2℃~6℃ 南西 の風(最大)12 ㍍ (平成 27 年 2 月 8 日)
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