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若者の政治参加
「17 歳の私たちができること」
高崎女子高等学校
目次
1.はじめに
2.選挙の現状
3.「18歳」選挙権
4.若者が政治に関心を持つには
5.最後に
1. はじめに
2年
柴田優奈
「人民の人民による人民のための政治」
これは、リンカーンがゲティスバークで行った演説の有名な言葉であり、民主主義の原
則となっている。この言葉からもわかるように、政治は国民のために行われているため、
国民は選挙を通して政治に参加しなければならない。しかし現在、将来日本を支える若
い世代の政治離れが問題となっている。そんな中 2014 年に国民投票の投票年齢が 18 歳
以上になったことがきっかけとなり今年 6 月公職選挙法等の一部が改正され、選挙権年
齢が 20 歳から 18 歳に引き下げられた。これにより、約 240 万人が新たに投票権を持つ
ことになり、若い世代の意見が政治に反映されることが期待されている。
世界の先進国の選挙権年齢を見ると、世界約 190 か国・地域のうち約 9 割が 18 歳以
上に選挙権を与えている。アメリカ、イギリス、カナダなどの欧米先進国や中国、イン
ドでは選挙権年齢は「18 歳以上」が主流となっている一方で、シンガポールやマレー
シアでは 21 歳以上となっている。アメリカでは、実際に高校へ行って演説することが
あるそうだ。また、2005 年にはアメリカミシガン州で高校生市長も誕生している。日
本よりも海外の高校生のほうが政治に関心があるような気もする。
現在、テレビのニュース番組や新聞では毎日、政治に関するニュースや記事は取り上
げられている。しかし、私たち高校生の会話では全くと言って良いほど、政治にまつわ
る話はでてこない。おそらく「政治は自分たちにとっては遠い存在である」と思ってい
る人が多いからではないだろうか。実際、地方選挙が行われてもその投票日や立候補者
を知っている高校生はほとんどいないだろう。私は現在高校 2 年生であるため来年から
投票できることになる。しかし、普段から政治に対してあまり関心をもっていない高校
生は、立候補者がどのような人物で、どのような政策を掲げているのかもわからない。
結局、「選挙に行っても何が何だかわからない」という人が多くなってしまうのではな
いか。また、選挙に少しでも関心があったとしても、ほかの予定が入っていればその予
定を優先してしまう高校生も多いのではないか。では、私たち若い世代がより政治に関
心を持つためにはどうすればよいのだろう。
2.選挙の現状
下の図1は昭和 42 年から平成 26 年までの衆議院選挙における年代別投票率の推移を
表している。昭和 42 年では 20 歳代の投票率は約 67%であったが、20 歳代の投票率は
年々下がっていき、平成 8 年には 36.42%と昭和 42 年の約半数となってしまった。し
かし、民主党による政権交代が行われた平成 21 年には 20 歳代の投票率は 49.45%、全
体の投票率は 84.15%にまで上がった。このことから、人々の関心を集めるような出来
事があると投票率が上がることがわかる。一方、昨年の選挙では 20 歳代の投票率は
32.58%、全体の投票率は 68.28%と低い水準にとどまっていることがわかる。また、
60 歳代と 20 歳代の投票率の差は年々大きくなっている。
図1
年代別投票率の推移
100
90
80
20歳代
70
30歳代
60
40歳代
50
50歳代
40
60歳代
30
70歳代以上
20
全体
10
0
S.42 S.51 S.61
H.2
H.8 H.15 H.17 H.21 H.24 H.26
総務省 衆議院選挙における年代別投票率の推移 より
図2
「私の政治参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」
と思うか
日本
0
20
40
60
そう思う
日本
6.1
どちらかといえばそう思う
24.1
どちらかといえばそう思わない
29.9
そう思わない
21.2
わからない
18.7
80
100
内閣府 平成 25 年度我が国と諸外国の若者の意識に関する調査報告書 より
ではなぜ、投票率がこんなにも下がってしまったのか。東京都選挙管理委員会は平成
26 年の衆議院選挙の主な棄権理由を調査した。調査によると、有権者全体を見ても、
120
選挙に魅力を感じない、行く必要を感じない人が少なくなく、20 歳代が棄権する理由
の上位三位は、
1. 仕事が忙しく時間がなかったから
2. 選挙によって政治や生活が変わるわけではないから
3. 適当な候補者がいなかったから
という理由になっている。図2からわかるように「選挙によって政治や生活が変わらな
い」と感じている人は半分近くもいるため、そういった人たちの意識を変えていく必要
がある。
現在日本の人口は 20 歳代 1275 万人、30 歳代 1627 万人、40 歳代 1815 万人、50 歳代
1550 万人、60 歳代 1819 万人、70 歳代以上 2411 万人(平成 27 年 8 月 1 日現在:出典
総務省統計局)となっている。高齢者の人口が多いということは、政治家も高齢者の
ための政策を考えがちになってしまうのではないか。それにより、私たち若い世代の政
治的関心が低くなり、結果的に投票率も低くなってしまったのだろう。
3.18 歳選挙権
選挙権が 18 歳に引き下げられたことにより、最高裁判所の裁判官の国民審査や、地
方自治体の住民投票も同様に投票資格が 18 歳以上となった。また、18 歳、19 歳は、
「S
NSなどで他人の選挙運動メッセージを広める」
「他人の選挙運動の様子を動画共有サ
イトに投稿する」
「自分で選挙運動メッセージを掲示板・ブログなどに書き込む」
(総務
省 インターネット選挙運動解禁に関する情報 より)などのインターネット上での選
挙運動が可能になる。
なぜ、今、選挙権年齢を引き下げる必要があったのか。図1からわかるように 20 歳
代の投票率が最も低い。しかし、少子高齢化に伴う社会保障問題などは若者のこれから
の生活に関わることである。選挙を通して、若者自身がこの問題を考えていく必要があ
り、そして、より政治に若者の意見を取り入れたいという考えが政府にあったからだ。
これを機に、全国各地で高校生による模擬投票や高校生に選挙の意義を伝え、18 歳選
挙権につてを説明するという活動が行われている。そういった活動により、高校生の政
治、選挙に対する関心が高まるのではないかと思う。
4.若者が政治に関心を持つためには
日本と海外では若者の政治に対する意識はどのように異なるのだろうか。
内閣府は若者の意識を把握し、日本の若者の意識の特徴を分析するため、各国満 13 歳
から満 29 歳までの男女を対象に以下の 7 か国で調査を行った。
図3
あなたは自国の政治にどれくらい関心がありますか?
日本
韓国
非常に関心がある
アメリカ
どちらかといえば関心がある
英国
どちらかといえば関心がない
ドイツ
関心がない
フランス
わからない
スウェー…
0
50
100
150
内閣府 平成 25 年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査
より
グラフから、ドイツ、韓国では若者の政治に対する意識は高いことがわかる。しかし、
アメリカ、フランス、イギリス、スウェーデンの若者の政治に対する意識は日本と大差
はないと言える。2012 年にアメリカで行われた大統領選挙での 18 歳から 29 歳の投票
率は 45%(出典:The Center Of Information & Research On Civic Learning & Engagement)
となっている。一方で、2012 年の韓国での大統領選挙の投票率を見ると、19 歳が 74%、
20 代前半が 71.1%、後半が 65,7%(出典:韓国中央選挙管理委員会報道資料)と若
い世代の投票率が日本と比べて断然高いことがわかる。よって、やはり若者の投票率を
上げるには、
『政治に対する意識』や『選挙に対する意識』を変えていくことが必要で
ある。
では、意識を変えるために具体的にどのようなことを行っていけばいいのか。私は、
以下の3つのことを提案したい。
① 政治について学ぶ機会を増やす
若者の政治に対する関心を高める最も効果的な方法は、学校で政治に触れる機会
を増やすことだ。学校での授業で触れることで印象に残り、興味を持つようになる
と思うからだ。文部科学省は 2022 年度以降、選挙権が 18 歳に引き下げられたこと
を踏まえて、
「公共」という政治意識を高める科目を必修化するという案を提言した。
しかし、教育基本法第 8 条第二項で「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、
又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
」と定めら
れているため、実際の政党の公約を用いてディベートを行ったり、模擬投票を行っ
たりするのは難しい。だが、今行われている政治に基づかなければ、生徒は関心を
持たないだろう。この状況を検討しなければならないと考える。ドイツでは国家機
関が積極的にサポートする「ジュニア選挙」が行われている。それは、ただ単に模
擬投票を行うのではない。各党の政策を事前に学んだうえで投票に臨むのだ。また、
投票通知書の作成から投票日の投票所の管理まで生徒自身が厳格なマニュアルのも
とで行うである。この厳格さが生徒のやる気を生むといわれている。
(参考文献:近
藤孝弘 ドイツの政治教育
「ジュニア選挙」の目指すもの)日本でも、より多く
の学生がリアリティーのある模擬投票を経験すべきだ。
『平成 25 年度我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』
(内閣府)によれば、
政策決定関与についての調査を行ったところ、
「子供や若者が対象の政策や制度は対
象者に聞くべき」という質問に対して「そう思う」と回答した割合が 67.7%であっ
た。つまり、若者は自分自身に関わる問題であれば政治に関わりたいと思っている
のだ。社会保障問題、環境問題、外交問題等の現在日本が抱えている問題は、いず
れ私たち 10 代にも関わってくる。そのような問題を話し合い、自分たちなりの解決
策を考えていくということを学校等で行うべきだ。そのような活動によって、政治
に関心を持つ人が増えるだろう。
② 選挙活動に工夫を
2013 年よりネット選挙運動が解禁され、ツイッターやフェイスブック等のSNS、
動画共有サービス等で選挙運動することが可能になった。スマートフォンの普及が
進んでいるため、ネットでも選挙運動をしたほうが、若者には影響があるのではな
いか。私たちが、立候補する人はどのような人物であるのか、どのような政策を掲
げているのかを完璧に知ることは難しい。また、選挙ポスター掲示板は至る所に設
置されているが、
「止まって見る」のは大変である。掲示されているポスターや立候
補者のコメント等をネットに掲載すれば、家の中にいても選挙について知ることが
できる。
このようなネット整備をして、選挙活動を工夫していくことも必要である。
③ 投票を身近に
「投票所まで行くのが大変」
「投票所へ行くのが面倒」と感じている人も多いので
はないか。インターネット投票ならば、いつどこからでも簡単に投票でき、開票も
早く終わるが、セキュリティー面でまだ問題が残る。しかし、インターネット投票
が可能になれば投票率は上がるだろう。また、大学進学のために地元を離れている
学生にとっては、投票するために帰省するというのは難しい。
「地元に帰らなくても
大学で投票できる」という仕組みを整えれば、大学生の投票率も上がるのではない
か。しかし、そのような投票区外投票は二重投票防止等の理由で認められていない
が、総務省によって検討が進められている。
現在、2016 年夏の選挙で期日前投票を中央大学で行おうと「VOTE AT CHUO!!」と
いう活動が学生によって行われている。自分たちと同世代がこういった活動をする
ことで選挙、投票に対する関心が高まるだろう。また、投票方法をわかりやすく伝
えるマスコットキャラクターや曲、CM等を作ることで、投票に対する意識も変わ
るのではないか。
5.最後に
来年、18 歳から投票できるようになる。若者の多くが抱いている「自分が政治参加
しても何も変わらない。
」という考えを「自分が政治参加することで何かが変わる」と
いう考えに変えていかなければならない。そのためには、選挙権をまだもたない年齢で
の政治教育を充実させていき、政治に対する意識を高めていくべきだと考える。より良
い社会を形成していくためには、多くの人が日本について考え、それぞれの意見を、選
挙を通じて反映させていく必要がある。
17 歳の私は今何をすべきか。「投票する」ということは有権者としての責任を伴う。
周囲の人の意見にながされることなく、自分の考えを持って正しく投票しなければなら
ない。そのためには、政治に関心を持ち、日頃から「どうして問題になっているのか」
「どのように解決していけばいいのか」と考えるべきだ。現在、国会や地方議会で審議
されている問題は私たちの将来に関わることである。「まだ自分たちには関係ない」と
思うのではなく「自分たちの将来のために」と思い、今から様々な課題と向き合ってい
きたい。
参考文献
・About the USA ゲティスバーク演説
http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-majordocs-gettysburg.html
・内閣府 平成 25 年度我が国と諸外国の若者の意識に関する調査
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf/b2_2.pdf
・朝日新聞 2015 年 8 月 5 日
http://www.asahi.com/articles/ASH835VJBH83UTIL03M.html
・文部科学省 教育基本法資料室
http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/004/a004_08.htm
・読売新聞 2015 年 8 月 14 日
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/special/CO015131/20150813-OYT8T50025.html
・東京都選挙管理員会 Let’s すたでぃ選挙
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/letsstudy/letsstudysenkyo.pdf
・近藤孝弘 ドイツの政治教育 「ジュニア選挙」の目指すもの
http://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2012/08/doitsu.pdf
・ニュース 中大ニュース
中央大学
http://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/communication/hakumon/2015_03/pdf/2015_03-20.
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