幼児期における体操競技指導法に関する研究 ―幼稚園での

青森大学付属総合研究所紀要
Vol. 16, No. 1, 23-33, September 2014
〔研究ノート〕
幼児期における体操競技指導法に関する研究
―幼稚園での体操経験者を対象にして―
A STUDY OF TEACHING METHODS FOR GYMNASTICS AMONG
VERY YOUNG CHILDREN
- AMONG YOUNG CHILDREN EXPERIENCED GYMNASTICS
TRAINING IN KINDERGARTEN 高
1
橋
肇1
青森大学(青森大学体操競技部部長・監督)
This study summarizes the results of the past survey, for instructors coaching gymnastics for very young children in
junior gymnastic clubs and kindergartens, in order to improve their instructions for assisting young children’s
competing ability in gymnastics. A comparison between the two groups of children was conducted. The first group
of children was coached through the training manual developed by the author and the second group of children did
not get any coaching before elementary school. This paper mentions not only about the aspects of competing ability
in gymnastics and how to introduce children to gymnastics and instruction methods for a particular event, but also
the effect of gymnastic activity on educational values for young children, the effect of recruitment for children into
a kindergarten, and the guardian’s view about their children attending to the gymnastic class.
Keywords : Very young children, Kindergarten, Gymnastics, Instruction Methods, Competing ability
はじめに
クラブで本格的指導を受けた選手と小学校から指
現在、国内に存在する体操競技指導書は技術中
導を始めた選手とを競技会で残した成績で比較し
心で上級者向けが多い。ジュニア選手の競技力向
たが大変効果的であると判断できた。その他に園
上を目的に、(財)日本体操協会発行の「男子ジュ
児の教育効果にもつながり保護者からも好評を得、
ニア選手のためのトレーニングマニュアル」基本
波及効果として園児募集につながった。
編・種目編(20013.31)が出版されたが、あくま
以上のことから幼児教育に携わる方々や、ジュニ
でジュニア選手強化育成の指導者向けである。そ
ア体操を指導する立場の人々に少しでも役立てば
れ以前の幼児期にどのような運動や種目的には何
と願いうものである。
がふさわしく、技術的にどの程度指導可能なのか
を示されたものが無い。
Ⅰ.幼児期の体操指導の現状
本研究はそこに着目し、体操の指導を5~6歳の
日本体操会がオリンピックで連覇を成し遂げ体
幼児に指導する場合、どんな事を考慮して指導す
操王国ニッポンの名を世界に轟かせた黄金時代か
べきかと、効果的な指導方法や補助方法等を考案
ら徐々に後退し始めた時期、日本の体操競技関係
してマニュアル的に実践してきた。その結果、幼
者たちはヨーロッパ、主に旧ソビエト連邦やドイ
児期に指導を受けて小学校入学後にジュニア体操
ツ等へ視察や研修に出向いた。そこで見た光景は
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青森大学付属総合研究所紀要
Vol. 16, No. 1, 23-34, September 2014
ジュニア選手の活発な体操指導の現状である。早
今後の課題とし、現在ジュニアや幼児の体操を指
速日本でもジュニア体操指導を本格的に手がける
導している方々やこれから指導を目指す若い方へ、
必要性を強烈に感じた関係者の報告で各地に広ま
安全な補助法でスキルアップや競技力向上の足が
った。その中で指導方法も紹介され、柔軟トレー
かりになればと願っている。
ニングと基本の倒立や体幹に関しての情報は重要
だという印象を受けた。今では全国各地にジュニ
Ⅱ.対象及び方法
ア体操クラブが立ち上げられ、指導方法も普及し
実践の対象期間は、幼稚園児の年中学年(5 歳)
て当たり前のように実践されている。(財)日本
の 9 月から翌年の年長学年(6 歳)の 8 月までの
体操協会発行「男子ジュニア選手のためのトレー
1年間。対象者は毎年 30 名前後であるが、幼児期
ニングマニュアル」基本編・種目編(20013.31)
に体操の指導を受けた選手 3 名〔:選手A.生年
は素晴らしいもので、今まで隠されがちな具体的
月日 1995~(幼児指導 1998~1999)、選手B.生年
指導法と経験や科学的な情報を織り込んだジュニ
月日 1997~(幼児指導 2001~2002)〕、選手C.生
ア・トレーニング・マニュアルです。日本国中の
年月日 1999~(幼児指導 2004~2005)と、小学1年
ジュニア指導者はバイブル的に愛用しているとい
生から体操を始めた 2 名〔選手D.生年月日 1997
っても過言ではない。筆者もその中の一人だが、
~、選手E. 生年月日 1999~〕である。年代は違
選手以前の幼児や初心者に対応しているとは言え
うがいずれも小学1年生から現在までの競技成績
ないので大変満足とはならない。
を調査した。主に調査対象として競技結果の成績
近年、幼児教育機関では発育・発達の時期なの
を取り上げたのが青森市体操発表会『ヤマダカッ
で様々な運動や習い事を取り入れる風潮にあるが、
プ』のマット選手権大会の成績である。
体操の専門家による指導を取り入れる施設は少な
い。なぜなら体操関係者であれば当然のように危
Ⅲ.結果
険性や補助法を知っているが、一般の幼児教育関
今回、調査の対象となったクラブ員は現在
係者で体操の経験者は少ないからである。そのよ
(2014.8)も現役選手として活躍しているが、幼
うな現状の中でも体操の重要性を信じ、専門的な
児期に体操の指導を受けた選手 A.は大学2年生、
指導をしてもらいたいという要望は保護者や教育
B.は高校2年生、C.は中学3年生と、小学校か
機関のなかに多いようで、私も数件依頼され、試
ら指導を受けた選手 D.は高校2年生、選手 E.
行錯誤しながら幼稚園で指導している一人である。
は高校1年生である。
本稿では選手育成のトレーニングマニュアル以
幼稚園で指導を受けたA.~C.の選手はいず
前の幼児期のトレーニングマニュアル的なものを
れも県大会はもちろん東北ブロックで優勝経験を
目指し、全てのスポーツの基礎である体操を幼児
している。明らかに幼稚園児の体操指導はその後
という初心者に指導する導入段階を種目ごとに実
の競技者育成に役立ち、競技力向上につながって
践した内容を述べている。
いると判断できる。特に選手 A.は中学・高校・
体操競技の技術的なことや競技力向上など、長
大学で優秀な成績を残している。
年の指導経験から得た知識や重要な事柄の各論は
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表1.ヤマダカップ成績比較一覧
競技成績一覧(6 位入賞対象)
幼児期に体操の指導を受けた選手
選手A
西暦
平成
年齢 学年
2003
H15
8
小3
2004
H16
9
小4
2005
H17
10
小5
2006
H18
11
小6
2007
H19
12
中1
2008
H20
13
2009
H21
2010
選手B
ヤマダカップ
A クラス
1位
B クラス
1位
B クラス
1位
B クラス
1位
年齢 学年
―
―
7
小1
8
小2
9
小3
1位
10
小4
中2
1位
11
小5
14
中3
1位
12
小6
H22
15
高1
1位
13
中1
2011
H23
16
高2
2位
14
2012
H24
17
高3
1位
2013
H25
18
大1
―
小学1年生から体操を始めた選手
選手 C
ヤマダカップ
―
年齢 学年
選手D
ヤマダカップ
年齢 学年
選手E
ヤマダカップ
年齢 学年
ヤマダカップ
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
7
小1
入賞外
―
―
―
―
―
―
8
小2
入賞外
7
小1
―
7
小1
―
9
小3
入賞外
8
小2
8
小2
10
小4
入賞外
9
小3
9
小3
11
小5
入賞外
10
小4
10
小4
12
小6
Bクラス
1位
11
小5
1位
11
小5
13
中1
2位
12
小6
中2
1位
12
小6
14
中2
2位
13
中1
3位
15
中3
1位
13
中1
3位
15
中3
2位
14
中2
5位
16
高1
2位
14
中2
4位
16
高1
1位
15
中3
1位
A クラス
4位
A クラス
1位
A クラス
1位
B クラス
1位
B クラス
2位
B クラス
3位
B選手(幼児指導有り)
A クラス
5位
A クラス
1位
入賞外
B クラス
2位
B クラス
1位
A クラス 4
位
A クラス 2
位
B クラス 1
位
B クラス 6
位
B クラス 1
位
D選手(幼児指導無し)
1位
2位
3位
4位
5位
6位
入賞外
1年
2年
3年
4年
5年
6年
図:1ヤマダカップ入賞成績比較
Ⅳ.考察
人だけなので失敗などのアクシデントによる順位
表1.ヤマダカップ成績比較一覧を見ると、特
の入れ替わりがたまに起きるが、力の差は歴然で
に幼児期に体操指導を受けた選手Bと小学校から
ある。
クラブで体操を始めた選手Dでは明らかに差が出
以上のように幼児期の体操指導はその後の選手
ている特徴を図1で示した。この学年は選手が三
育成に良い影響を与えることがわかった。しかし、
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Vol. 16, No. 1, 23-34, September 2014
ただ単に指導すれば良いかというとそうではない。
の要素も取り入れた指導ができれば大変良いと思
そこには子供の発育・発達・心理状況等、どうし
われる。また、この時期の体育活動として有効な
ても幼児期という特性を充分に理解したほうが指
導する側・指導される側両者にとって有益である
表2
と確信できる。単に指導するといっても5~6歳
・耳や目からの情報で真似たり、リズムを作
1. リ ズ ム ったり、タイミングを掴む・あらゆるスポー
能力
ツの上達(動作の習得)は、真似ることから
入るので、どんな人にも欠かせない基本能力
の幼児なので、理解力不足や情緒が不安定なので
状況を見ながら効果的な方法を見出さなければな
コーディネーション七つの能力
・空間や移動中における身体のバランスを維
2. バ ラ ン
持し、崩れを素早く回復する・あらゆる運動
ス能力
の基礎を成す能力
・タイミングを合わせ、身体の各部位を正確
3. 連 結 能 に無駄なく同調させる・フィギュアスケート
力
のジャンプや球技に必要・スポーツではない
がドラムなどの音楽でも必要な能力
・自分の身体の位置を時間的・空間的に正確
4. 定 位 能 に決める。味方や相手、ボールなどとの距離
力
感をはかる・アクロバティックな競技や集団
スポーツ、球技などに欠かせない能力
・合図に素早く正確に対応する能力・合図は
5. 反 応 能 陸上競技のピストルのような音だけでなく、
力
格闘技で人と触れるような触覚や筋感覚も含
まれる
・予測した状況の変化に対して動作を切り替
6. 変 換 能
える・フェイント動作の多い球技や格闘技な
力
どのスポーツには必須な能力
らない。つまり指導する側の経験や発言等、指導
力が重要な鍵を握ると言っても過言ではない。
具体的な指導方法へ入る前に、Ⅳ.1 幼児期の特
性と運動について、Ⅳ.2 幼児期の体操競技に有効
な遊びと運動能力基礎作り等を考察してみる。そ
して、あくまでも筆者独自の場合であるが、Ⅳ.3
実際に幼稚園で指導する前の導入段階から進めて
いく。
Ⅳ.1 幼児期の特性と運動について
身体の発育・発達の過程から見れば、一番先に
発達すといわれる神経系のことを考慮せずに指導
・手や足、用具などを精密に操作する能力・
7. 識 別 能 視覚との関係にも密接なつながりがあり、手
力
と目を微調整する場合の能力は、「HAND-EYE
コーディネーション」などと呼ばれる
はできない。スキャモン(1883-1952)の発育・
発達曲線(臓器別発育曲線)では人の神経系は生
後 5 歳頃までに 80%の成長を遂げ、12 歳でほぼ
100%になるといわれている。この時期に様々な神
のは、一般的にコーディネーショントレーニング
経回路が次々と張り巡らされて形成されていく大
(旧東ドイツのスポーツ運動科学者によって考案
切な時期になので大変重要である。体操競技だけ
された)といわれ、身体の動きをコントロールす
でなく様々な競技(スポーツ)にとっても重要な
る調整力を高める情報系・神経系のトレーニング
ので、決して一つの種目に偏った指導にならない
である。第一線で活躍する競技者の多くはこの能
ようにしなければならない。子供たちの年齢から
力が高く、子供の頃に活発で人一倍さまざまな遊
見てもこの時期は集中力が長続きせず、常に多様
びを体験しているといわれている。遊びにかぎら
な刺激を身体が求める特徴がある。この意味は神
ずいろいろなスポーツを体験している人ほど専門
経回路にさまざまな刺激を与え、その回路をさら
種目を習得する際の伸びに違いが出てくる。遊び
に張りめぐらせ、神経系の配線をより多様に形成
していこうとする自然な欲求の現われなのである。
子どもたちは集中力がないのでも弱いのでもない。
や様々なスポーツを通して多面的な基礎作りをす
ればするほど、ゴールデンエイジの 9 歳~12 歳、
さらに将来で発展する準備になる。コーディネー
非常に高い集中力を持ちながらも、常に新しく多
ショントレーニングの基本的概念を体系化した理
種多様な刺激を身体が求めているのである。よく
論表2がある。
「この子は落ち着きがない」といわれる子供ほど
上記能力がそれぞれ単独で機能するのではなく、
優秀なのである。飽きさせないで楽しませる遊び
複数の能力が組み合わされ、相互に関連し合いな
26
青森大学付属総合研究所紀要
Vol. 16, No. 1, 23-33, September 2014
がら運動が行われる。Ⅰ~Ⅶの能力開発に関連す
きり言って「じっと」していられない。前にも述
る遊びやトレーニングメニューを考案し実施する
べたが「じっと」していればダメなのである。落
べきである。
ち着きがない子どもほど動物である人間としては
優秀なのである。しかし、体操の指導をしなけれ
Ⅳ.2
幼児期の体操競技に有効な遊びと運動能力
ばならず、こちらに注目してもらわなければ進め
基礎作り
られない。うまく集中させるテクニックとして「常
では体操競技をする上で幼児期にどんな遊びを
に多様な刺激を身体が求める特徴」を利用するの
していれば、一般的な「運動能力」の基礎が整え
である。筆者はあまり良いことではないが常にニ
られるのか。複数の能力が相互に関連し合うので
コニコできず、幼稚園の先生らしからぬ雰囲気が
一概にこれだと断言はできないが、あえて取り上
多いのである。気を付けようと思うのだが普段は
げるなら筆者は「木登り」的な遊びが一番有効で
学生と接しているので切り替えが難しいのと照れ
はないかと思うのである。走る・跳ぶはもちろん
くさいのである。だがそのことが子どもたちには
のこと、木登りは高いところに上がってみたいと
新たな刺激となり、筆者の一挙一動を注目して自
いう好奇心と、勇気や安全かどうかの判断力が養
然に集中させることができるようである。当然そ
われ、何より高いところに登ってみたいという達
のことは園長先生に許可を得て、サポートとして
成感が得られるのである。昔であれば女の子でも
幼稚園の先生を同席してもらうことにしている。
活発な子は男の子と一緒に木登りやジャングルジ
そのような状況の中で技術指導に入る前の導入段
ム的な遊びをやっていた記憶がある。最初は恐怖
階と指導内容を述べることとする。
心であまり高いところに登れないが、年上の子ど
もや活発な同年代の子どもがどんどん高いところ
A
まで登っていく姿を見て羨ましいと思ったことが
目標とする技術指導に入る前に子どもたちの注意
ある。自分も早くあの高いところまで登ってやろ
をこちらに向けさせる必要がある。子ども達は何
うと思ったものである。現代の都会であればそう
をするかわからいという危険性が常にある。まし
いう危険なことを周囲が許さないこともあるが公
て体操競技となれば非日常的運動と称し、一般的
園や施設などでも似たような遊具で疑似体験でき
に危ないことが多いように思われている。ちょっ
るところもある。木にぶら下がり登る時のように、
とした怪我でも大騒ぎをする保護者が多いのが現
両手両足を同時に動かし、体重を支えながらバラ
状である。技術指導をするにしても説明と指示と
ンスをとり、自分の五感で危険を感知、察知し、
いうパターンを繰り返すわけなので、その機会を
俊敏に危機回避の状況判断をしなければならない。
利用して条件反射的に注目するように仕向けたほ
全て自分でしなければならないのが発育・発達の
うが良いようである。手順としては最初に「起立」
過程で最も重要な経験になると思われる。そのよ
と「着席」や「気を付け」「休め」的な集団行動
うな機会があるときはどんどんやらせるべきだと
の初歩的な動作を行う。
思うのである。
体操指導に持ち込む前の指導
具体的な指導内容は表3のとおりである。初対
面でもこのようなことで遊んでいると条件反射的
Ⅳ.3
幼稚園での体操指導
に集中することができ、指導の受け入れ態勢が出
ここでは幼稚園で実際に指導しているなかで、
来上がる。毎日やらなくても2~3回続けてやる
筆者なりに工夫して実施していることを紹介する。
園児は5~6歳なので想像できると思うが、はっ
27
と忘れなくなる。
青森大学付属総合研究所紀要
表3
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体操指導を行う前の指導
項
目
備
表4
考
項
立っている状
態から合図で
素早く座る動
作をする
・この時に発言者の「言葉」に注意を
促し、
「座れ」と似たような同音で入
る単語、例えば「スワン」を早口で言
う
・すると素早くという動きに集中し、
「座れ」と言われなくても間違って座
る子がいる
・当然びっくりし、慌てて立ち上がる
1
・周囲からは「クスクス」と笑いが出
る
・次にもう一度やることを宣言し、今
度は「座れ」ではなく
「はい!」と言いながら同時に強く手
を叩く
・また何人か座る子が出る
・このような繰り返しで集中力が増す
ことになる
座 っ て い る 状 ・上と同様だが「起立」を同音で入る
態 か ら 合 図 で 単語、
「きりん」とか「キリギリス」
2
素 早 く 立 つ 動 とかを使う
作をする
集合や整列
・時間を指定して(例えば3秒)間に
3
合わなければやり直しをする
B
ウォーミングアップ
目
備
考
よつあし
1
2
3
ウォーミングアップ
準備運動を兼ねて運動神経を発達させる動作
をしながら、競争心への刺激とバランス感覚を養
い、筋力アップを兼ね備えたトレーニングをする。
よつあし
4
特に私の持論であるが、四足運動は手足を同時に
動かして移動するので、運動神経の発達にはとて
よつあし
も良い運動だと確信している。まして四足で後ろ
・早く行きたいがために半立
四 足競争(前方)
ちになりマットに指先だけで
マットの端から端ま
触れて四足にならないで進む
で(6m)四足状態で
子どもがいるので注意
競争し、フロアー部分
・運動能力の差が歴然とする
で立ち上がりステー
ジまで走って行き(3
m)、ステージにタッ
チしてスタートライ
ンまで戻る競争
よつあし
・この動作がすぐできるのは
四 足競争(後方)
人間だけである
マットの端から端ま
・幼児であればスムーズにで
で(6m)4 足状態で
きる子が 1/3 程度である
競争し、フロアー部分
・自分では後ろに行こうとし
で立ち上がりステー
ているが手足が勝手に前へ動
ジまで走って行き(3
き出し困惑する子どもが多い
m)、ステージにタッ
チしてスタートライ
ンまで戻る競争
片足走行(左右)
・幼児の成長度合いが早い子
けんけん(片足)でマ と遅い子の差があるが 1/10 位
ット端まで競争し、フ がうまくできない
ロ ア ー 部 分 を 両 足 で ・普通は片足を後ろに曲げる
走り(3m)、ステー が 2/10 位が膝を前に持ち上げ
ジ に タ ッ チ し て ス タ て曲げる
ートラインまで戻る
競争
両足ジャンプ
・この動作も正確にできない
両 足 を 揃 え て 膝 を 前 子が 2/10 位いる
に持ち上げ、マット上 ・足が前後にずれるのが多い
をジャンプしながら
で競争し、フロアー部
分を両足で走り(3
m)、ステージにタッ
チしてスタートライ
ンまで戻る競争
へ歩くなどは普通の子どもにとって大変難しい動
C
作である。どんな俊敏な動物でも前に進むことし
ストレッチ・柔軟運動
かできないのが現実である。動物の神経回路やバ
ジュニア選手育成の指導であればストレッチと
イオメカニクス的にそのような仕組みになってい
柔軟は一番と言ってよいほど重要なトレーニング
るのである。ペットや家畜の中には訓練で上手に
になる。バイオメカニクスの見地からも骨格や関
後ろ歩きのできる動物もいるが、スムーズといえ
節の可動範囲に関することなので、選手としての
ない。人間の子どもは最初の動きはぎこちなくて
可能性がこの段階で決まるといっても過言ではな
も何回か繰り返すことで競い合えるほど速くでき
い。このことは世界をリードする日本の体操界や
るようになるのである。運動の内容は下表4の通
関係者の間では常識となっている。それに付け加
りだが、二つの班に分けて、同じ動作で競争をさ
え日本人特有の緻密さや細かいところまでの気配
せると効果的である。
りと、断片的であるが武士道的精神が優秀な選手
育成の鍵となり、他国の競技者が容易に真似でき
ない要素になっている。
28
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ここでは専門的な指導に入る前の導入段階なの
以外の動きにも理想があり手や足・つま先・指先
で細かい所の指導ではなく、体操らしい動きをす
までも減点の対象となる。子ども達にとって腕や
るための代表的なストレッチと柔軟運動表5を指
脚を伸ばして理想的に表現する動作は、簡単にで
導する。前にも述べたように落ち着くことが苦手
きることではないので習慣化させることが必要で
な年齢なので、簡単な動作で実施をする。
ある。週1時間の授業なので瞬時に反応するまで
は1~2ヶ月の期間、根気強く指導する必要があ
表5
ストレッチ・柔軟運動
る。習得の早い子には手の指先や足首とつま先を
項
目
体操特有の動きを
考慮したストレッ
チ(20~30 秒)
特に肩の可動範囲
を意識する
備
考
・首を回す
・前で両手の指を組み真上・左右
の斜め上に持ち上げる
・後ろで両手を握り前に突き出す
ように胸を張る
・片腕を胸につけ、反対の手で強
1
く胸に引きつける
・片腕を頭の後ろに上げ、曲げた
肘を反対の手で身体の中心方向
へ引く
・立位体前屈で膝を曲げず、肩や
首の力を抜く
長座から前屈の柔 ・足を揃えたり、膝を伸ばすこと
軟(20~30 秒)
が困難なため前屈時に両手で両
2
足のつま先を握る指示をする
伸ばす指示をする。個々に理想通りできる子ども
が増えてくると、自然に全体ができるようになる。
体操競技の選手育成を考えて指導する場合は、
足のつま先と足首を伸ばすことが大変重要なこと
である。つま先と足首の柔軟から始まり、自力で
伸ばせるようになるための筋力トレーニングなど
を様々な方法で強化する。ここでは単純に腕や脚
が伸ばせるようになるための導入段階とし以下の
表6でコレオグラフ的動作を指導する。
表6
コレオグラフ的動作
項
目
備
考
合図により腕と指先を ・横や前に挙げるとき水平に
伸ばし、前・横・上・ する
1 横斜め上にあげさせる ・上に挙げるときは腕が平行
になるように腕が耳に触れ
るよう指示する
腕を横に開き立った状 ・簡単で面白い動作なので子
態で足を左右に肩幅程 どもたちは積極的になる
度開き、左右に傾けな ・手や足に力を入れることを
2 がら片足を横に上げる 指示し覚えさせる
動作を繰り返す(やじ ・慣れてきたら指先や足首・
ろべえ的な動き)
つま先を伸ばすよう指示を
する
左右開脚座で前屈
・この時にほとんど子どもの両足
が内転し、膝が曲がるので注意す
る
・対策として開脚時にかかとを床
3
にしっかりつけ足首を背屈させ
る
・つま先を前の床に倒さないよう
に指導する
左右開脚座で左右 ・前屈時に両手でつま先を握らせ
4 に前屈
る
左右開脚座から前 ・柔軟性がある子は容易にできる
屈し床に胸を着け が、硬い子は膝を曲げても良い
5 たまま足を後方に
閉じるように股関
節を返す
ブリッジ
・手の着き方は耳の横に、足裏全
体を床に着くように注意し一気
に押し上げる
・柔軟性があり上手に出来る子ど
6
もには足を閉じて膝も伸ばすよ
うに指示をする
・容易に出来ない子は床を手と頭
で支えさせる
E
マット運動
体操競技では男子6種目、女子4種目と多様な
運動能力を要するが、初心者向けの指導では動き
の構造上マット運動が全ての基本になるので、補
助法を示しながら実施する具体的指導法を種目ご
とに述べることとする。
マット運動では園児の筋力が未発達なので基本
D
コレオグラフ的動作
的な動作をする。ここで大切なことは補助をする
体操でいうコレオグラフとはバレイの振り付け
ということである。補助をすることの重要性はス
からきているもので、演技で表現するところの腕
キンシップのみならず、動作をひとりで「できな
や脚の動かし方である。アクロバティックな技術
い」状態を、補助することによって「できる」と
29
青森大学付属総合研究所紀要
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いち
後 転
①直立から合図(一 )で
〈後ろ回
両掌を耳横に準備する
り〉
に
②合図(二)でしゃがみ
立ち
いう事実に変えることになる。このことが技術の
習得にどれだけ強い影響を与えるかということを
実践してわかっている。上手くできない現状がそ
の子どもの 100%の実力であるならば、補助をす
4
ることによって現状よりも上手く出来た場合、
さん
③合図(三 )で後ろに転
がり手で押し上げて回る
100%以上の成果を出したことになる。こういう事
実が多く繰り返されることで、より安全に高度な
技術の習得を早めることになる。子ども達の身体
倒 立
①マットに手を着き四つ
〈 逆 立 ん這いになり、ステージ
ち〉
や椅子・台など高い所に
片足を上げ、残る足も台
にのせる→両手で支える
ことが可能なら肋木や壁
などを利用し徐々に足を
高くする
②足の振り上げ方はしゃ
がみ立ちでマットの前方
に両手を着かせ、片足を
後方に伸ばさせる
③次に②の状態で伸ばし
5
た足を上方にジャンプし
ながら振り上げる動作を
繰り返す
④慣れてきたら立った状
態で補助者に向かって片
足を前に出し、両手を上
げ(バンザイ)させ上か
ら振り下ろしマットに手
を着き、後方の足を振り
上げながら前の足で蹴り
上げる
⑤習熟したら壁倒立など
も良い
側 転
①倒立が出来て両手で体
重を支えられる子どもで
なければ出来ない(倒立
が基本)
②側転でひねりの向きが
人それぞれだが、子ども
6
の背面に立ち両腕を左右
にあげさせ補助者が腕を
クロスして子どもの腰に
手を回し側転を誘導する
の発達・発育状況を考えるならばマット運動の内
容は一般的で簡単なことしかできないが、体操競
技6種目の動作が全てこのマット運動に集約され
ていると行っても過言ではない。
表7
マット運動の内容
項
目
内
容
いち
前 転
①直立から合図(一 )で
〈 前 回
両手を前に挙げる
り〉
に
②合図(二)しゃがみ立
Ⅰ 段階
ち
備
考
・出来ない子は
補助で頭を支え
後頭部がマット
に着くように
し、お尻を持ち
さん
③合図(三 )マットに手 上げて回す
を着く
1
よん
④合図(四 )手を着いて
お尻を上げる
ご
前 転
Ⅱ 段階
回りなが
ら足を抱
えて立つ
2
前 転
Ⅲ 段階
回りなが
ら膝つま
先を伸ば
す
3
⑤合図(五)後頭部をマ
ットにつけて回る
①マットにしゃがみ立ち
をし、後方に転がり反動
で戻る動作を5回ぐらい
繰り返す
②上記①が出来たら転が
ってもどった時、足裏全
体をマットに着けしゃが
み立ちをする
③上記②ができたらマッ
トに手を触れず、立ち上
がる
①前方へ回転し、背中が
マットに着いた時、回転
を止めさせ膝・つま先を
伸ばす確認をする
②上記①で確認できた子
は、前方へ回転するとき
足がマットから離れた瞬
間、膝・爪先を伸ばして
起き上がる時に抱え込ん
で立ち上がる
③容易にできる子は立つ
ときに両手を前に伸ばし
て立ち上がる
・この動作では
頭を支える首の
筋肉が発達して
いないので出来
ない子はなかな
か出来ない
・起き上がろう
として足から手
を離し、マット
に手を着く子ど
もが多い
・コツは回ると
きにマットを軽
く蹴って回転す
るスピードをも
らう
・見本を見せて、
理想像を意識さ
せる
F
・後転は幼児の
頭が体に比べて
大きいので困難
である
・補助的に踏切
板をマットの下
に置き傾斜を利
用する
・まっすぐ回る
ように補助をす
る
・もうすでにで
きる子どもには
両手が揃ってい
るか注意をする
・まだ出来ない
子どもにも両手
を揃えるよう指
導をする
・倒立の補助を
しながら頭を背
屈し目線はマッ
トの手と手の中
間を見る
・足の振り上げ
で膝を曲げる子
どもが多いので
伸ばして上げる
練習も必要
・側転をしたこ
とがない子ども
には手とり足と
り補助をする
・側転をすると
きに、左右どち
らを向くか確か
める
・確かめ方は倒
立をするときに
左右どちらを出
すかで確認する
跳び箱運動
跳び箱は幼稚園で一番といってよいほど興味を
持つ種目である。明らかに運動が苦手だと思える
子どもでも一生懸命やろうとする。ましてやすで
に跳んだことがあり、自信のあるような子どもは
我先にと列の先頭に並ぼうとする。いざ跳び始め
30
青森大学付属総合研究所紀要
ると目が真剣になり、列を跳び箱に向かってまっ
すぐ並ばせたはずがすぐに弓なりに曲がり誰が跳
べるか見ているのである。この時の集中力は机に
向かっている時と全くと言って良いほど違うので
ある。ある意味で生命力を感じる瞬間でもあり嬉
2 開脚跳び
しい気持ちになるのは筆者だけではないはずであ
る。しかし全員が跳べるわけでもない。見ている
と踏切の動作ができない子どもが多く、初歩的な
動作からの導入が必要だとすぐに判断できる。指
導していて多い問題が、ロイター板(踏み切り板)
を片足で踏むことである。助走をして片足で踏み
切って両足でロイター板を踏む動作から指導して
いくことになる。しかしこれが難しい。子ども達
は跳び箱を目の前にすると例によって「常に多様
3 台上前転
からだ
な刺激を身体が求める特徴」が先走り、跳び越え
ることに集中してしまうようである。意外と元気
で活発な子どもほど融通が利かなくなり苦慮した
Vol. 16, No. 1, 23-33, September 2014
③跳び越えるコツは
手を跳び箱の遠くに
着き、両手で突きなが
ら臀部が跳び箱に触
れる前に股関節へ引
き込む
④着手してから跳び
越えて着地するまで
顔を上げて視線を前
に向けさせる
⑤着地では足を閉じ
る指導をする
⑥開脚跳びの習熟度
が増したら跳び箱を
徐々に高くしてレベ
ルを上げる
①跳び箱の手前に着
手し、前転するスペー
スを確保する
②踏み切り後、臀部を
上方へ持ち上げマッ
トの前転のように回
る
③上記②ができたら
踏切後、膝・爪先を伸
ばす指導をする
・幼児は頭部が重く
跳 び越える 時に視
線 を下に向 けると
バ ランスを 崩すし
危険である
・跳べても跳べなく
て も補助を するこ
とが大切である
・補助のしかたは跳
び 箱の横か ら脇の
下 に手を入 れて両
手で持ち上げる
・この動作の補助は
左 手で後頭 部を抑
え 右手で腹 部を持
ち上げながら回す
・跳び箱の両脇に落
と さないよ うにす
る
ことが度々ある。助走の勢いにまかせ片足で踏み
切り、両足を開いて跳び越えようとするのである。
Ⅴ
結論
そのことがあってからは跳び箱をやる前に、2~
選手育成のトレーニングマニュアル以前の、幼
3歩助走して両足でジャンプするという動作をし
児期のトレーニングマニュアル的なものを考案し、
ている。子ども達の日常の運動の中に走って両足
体操を幼稚園の年中という初心者に指導する導入
でジャンプするという動作がなかっただけなので
段階からウォーミングアップ・ストレッチ・柔軟・
ある。表8ではそういう事をふまえた細かい指導
コレオグラフ的運動、そしてマット・跳び箱と実
内容になっている。
践してきたが、幼児の成長や選手育成、園児の募
集や地域貢献と様々な波及効果があり筆者なりに
以上がウォーミングアップからマット運動・跳
も大変有意義なものだと実感している。幼児期の
び箱運動である。
発育・発達に考慮した独自のトレーニングマニュ
表8
項
アル的指導法は安全で、園児の成長に良い教育的
跳び箱運動
目
内
容
①跳び箱の踏切板の
手前に高さ 20cm、幅
20cm ほどの 障害 物
を置き、4~5mの助走
から片足で踏み切り
助走と踏
1
跳び越えて踏切板に
切
両足で着地する
②上記①の課題がで
きたらそのまま跳び
箱に着手し跨いで座
る
備
考
・最初はロイター板
だけ置く
・踏切ができたら跳
び箱を置く
効果をもたらす。
体操に興味があり上達の早い幼児はマット運動
や跳び箱運動の指導で、指先や脚線・つま先など
の細かい姿勢づくりの指導を容易に受け止め、ジ
ュニア(小学校)から体操競技を続けていく上で
の基礎や基本づくりに大変有効である。小学校の
教育課程で器械体操の指導がある時は、卒園生が
見本となり小学校教諭の手助けとなっている。家
31
青森大学付属総合研究所紀要
Vol. 16, No. 1, 23-34, September 2014
庭などで日常生活の変化として、
「根気強くなった」 体的な手法だが、指導書や文献などを参考にせず
とか、
「明るく活発になった」
、
「礼儀正しくなった」
長年の実践の中で会得した効果的な方法である。
など、練習に参加することによる良い面の教育的
このように体操競技6種目の中の一つの動作や技
効果が多い。初心者の幼児においては運動をする
術的なことに対しても、今まで述べたように細か
時に、危険な動きや理解できない動きを求められ
く解説が可能である。全ての技術をこのようにま
ても防衛本能が働き力を抜くのでケガは少ない。
とめるとなれば壮大なスケールになるがやってみ
稚園児の募集増に良い影響を与える。
たいという興味や使命感も無い訳ではない。条件
が整えば是非挑戦してみたいものである。
Ⅵ
まとめと課題
その他にも選手育成には、バイオメカニクスや
私が指導している幼稚園では秋にマット運動や
技術を効果的に習得する補助器具と設備に関する
跳び箱、組体操を取り入れたマスゲームとして発
練習環境のこと、地域性・気質・家庭環境・学校・
表会で披露しているが毎年大変好評である。また、
指導者・組織(協会や連盟)
・政治・派閥・審判等々、
近隣小学校の学習発表会へ毎年招かれて演技を披
様々なことが関係する。そのような課題に関して
露している。小学校の教育課程に器械体操の指導
も調査し研究を深め、指導者を目指す人に伝えた
がある時は、卒園生が見本となり小学校教諭の手
い思いがある。指導者は選手育成の過程で様々な
助けとなっている。
方法論を自らが学び、経験していくことが大切だ
保護者側としては体操競技と聞けば一般的に
がいろいろな情報を知っていて損はないと思うし、
「けがの発生」を心配事としてあげるが、初心者
教わる選手にとっては知っている指導者の方が有
の幼児においては無茶をする発想そのものが無い
益であることは間違いない。
ようで、20 年ほどの指導の中で一度も発生してい
ない。むしろ防衛本能が働き、危ないことや理解
文
献
できない動きを求められた場合などは力を抜くの
である。要するにトレーニングにならないことの
1)財団法人 日本体操協会:男子ジュニア選手のた
方が多いのである。また、家庭などで日常の変化
めのトレーニング・マニュアル 基本編・種目編(2001)
としてよく耳にするのは、
「根気強くなった」とか、
2)大学生の健康・スポーツ科学研究会:大学生の健
「明るく活発になった」、「礼儀正しくなった」な
康・スポーツ科学(2012)Ⅱ,6,
ど、練習に参加することによる良い教育的効果が
6-1
現れる面が多い。
122-123 図
臓器別発育曲線
3)綿引 勝美:「コーディネーションのトレーニ
本稿での具体的な種目の指導方法の解説部分は、
筆者が初歩的な体操を初心者に指導する場合の具
32
ング」新体育社,(1990)
青森大学付属総合研究所紀要
Vol. 16, No. 1, 23-33, September 2014
A STUDY OF TEACHING METHODS FOR GYMNASTICS
AMONG VERY YOUNG CHILDREN
- AMONG YOUNG CHILDREN EXPERIENCED GYMNASTICS
TRAINING IN KINDERGARTEN Hajime TAKAHASHI1
1
Aomori University (Manager of Aomori University Gymnastic Club)
本研究は幼児教育機関やジュニア体操クラブ等で指導している方々と、これから指導を目指す
方々へ安全で効果的な補助法や指導方法でスキルアップや競技力向上への足がかりになればと調
査結果をまとめたものである。具体的には独自に考案した「幼児期のトレーニングマニュアル」
的なものを幼稚園で実践した選手と、小学1年生から初めてクラブで体操を始めた選手の競技成
績を比較している。単に競技力向上だけに留まらず体操指導の導入段階から各種目の具体的な指
導方法が述べてある。その他幼稚園等の園児に対する教育効果や募集への影響、保護者の評価と
波及効果についても述べている。
キーワード:幼児、幼稚園、体操、指導法、競技力
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