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【琉球大学教育学部紀要】
【Bulletin of College of Education, University of the Ryukyus】
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沖縄島南部・漫湖およびその周辺水域の底生貝形虫群集
田吹, 亮一; 仲西, 麻乃
琉球大学教育学部紀要=Bulletin of Faculty of Education
University of the Ryukyus(84): 253-264
2014-02
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/31986
沖縄島南部・漫湖およびその周辺水域の底生員形虫群集
田吹亮一'・仲西麻乃"
BenthicostracodefaunafromMan-koi
ntheSouthernPartofOkinawaIsland,Japan
RyoichiTABUKI. andAsanoNakanishi..
Abstract
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方面へと流れ、那覇市の国場付近で長堂川、次い
はじめに
で餓波川と合流し、那覇港を経て、東シナ海に注
貝形虫は動物体(軟体部)と動物体を包む二枚
ぐ。国場川は沖縄では代表的な・汚染河川・でも
の石灰化した殻よりなり、分類学的には、甲殻類
ある。最近の下水道の整備や養豚場からの排水の
(斑門)のー網(貝形虫網)をなす。底生貝形虫
規制などの影響により改善の兆しはあるものの、
は広く水域に生息するが、個々の貝形虫種の個体
生活排水の継続的な流入のため、水質は劣悪とさ
は、水温、塩分濃度、水深等の環境要因の限られ
れる
9
8
8
)。
た範囲内で生存可能である (
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2
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)。この図場川の鏡波川との合流点付近に、
1
.25km
下流域に漫湖が広がる国場川は長さ 1
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E
Jに評価されている(i中縄県環境生活部、
没湖があり、主に植樹されたオヒルギ、メヒルギ、
の小河川である。西原町と与那原町の境界にある
ヤエヤマヒルギよりなるマングロープ林が縁取る
運玉森(標高 158m) に発し、南風原町から兼城
汽水性の干潟が広がる。毎年多くの水鳥が飛来す
・琉球大学教育学部地学教室
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沙レキだが、径
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川流域には多くのI
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いる 。 JポJ I~ した JHAl'é物からは 1院前 九がするが、こ
れ は 表1
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,
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が十数 cm,
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点は i何十'JH~jl 近 くにあって ー「 潮時はほとんど干 11 '1 し
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水深は大 i~l) の ri~I)ll.ï: で 10
A 地点での 川 ~JM は 5m
第 l図
m と!
よい。C地点の
-30cmであ った。 j
ま
点 でのいiJ劾川の川 ~JM は約 10
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紛の 干潮 時に行 ったが、
貝形虫用試料
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につ いては A 地点と C地点は 7)
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1L
I、
A 、 C の 2 地点では大 i~J) の 干潮 時に 試料保l伐 を
B地点 は 8
)
J1H の 、いずれも大潮の干 i~'J)1
1
与に
行った。一 方
、 B地点については、前半の 21
"
1は
、
J
行った(試料採取を 21Jに分け て行ったのは 1[
八
、 C地点同 様、大 i~J) の千i羽1)111'・ に行ったが、後述
で は こr i~JJ の II.\: IIIJ 内 に 3 地点の作業が完了しないと
するように、員形リ!
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本の採集の観.'
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判断したためである )
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、 A 地点と C地点はそれまで I
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収は約二 ヶ)
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Jった。 11
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i弱)1門ーに行い、 ßJ血,I,J,( で は、ノj、 i('J) の +i~})1昨に XJÍ!iし
た。 具体的には、 31
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砂
一
一 2
54 一
一
沖縄島南部・漫湖およびその周辺水域の底生貝形虫群集
質レキ試料のみ)と
C地点では 1
1月 1日
、 B地
点では 10 月 24 日に実施した。また、
4 恒"~I を、
の表面の堆積物(貝形虫個体を含む)をふるい落
とす。その後、レキを取り出し、ビニール袋内の
2
5
0メッシュのふる
2
5
0メッシュのふるいに残った堆
A地点(霊長藻試料のみ)と C地点では 1
1月 3
0日
、
堆積物と水を 9メッシュと
B地点では 1
2月 8日に行った。 B地点での後半
の 2回の調査は大潮でなく小潮の期間の干潮時に
行ったがその理由は以下の通りである。即ち、 i
朝
間帯での生物の採集は通常、潮位が最も低い、大
潮の干潮時に行われる(実際に、 A、C両地点に
ついては 4回の試料採取は全て大潮の干潮時に
0 B地点についても、前半の 2回を大潮
行った )
いの上』こあけ、
積物残溢を回収した。持ち帰った試料は、再度、
2
5
0メッシュのふるいに通し、水洗したあと、適
量、水を加えた。この水と堆積物の混合物と同量
のエタノールを加え、保存した。
最後に、検鏡用試料作成の手順を述べる。上記
の保存していた試料を
2
5
0メッシュのふるいの上
時の干潮時に実施したが、得られた員形虫生体は
にあけ、泥分やエタノールを完全に洗い流し、ふ
極めて少数であった。 B地点は満潮時の汀線付近
るいに残った残i
査を少量の水とともにビーカーに
に位置する。通常の試料・採取では大潮の干潮時の
移す。次に、染色液として、
汀線付近で試料採取を行うが、漫湖の場合、干潮
ズベンガル溶液を、ビーカー内の試料と同量加え、
0
.
5
g
/eの濃度のロー
時の汀線付近、即ち、没湖の中央付近での試料採
よく撹排した。なお、ローズベンガルによる染色
取は、そこへ向かう途上、調査者の足が干潟の泥
は貝形虫の動物体の有機質の部分(網H
胞の原形質
質の底質に沈み込んでしまうことから、事実上、
など)を染めることにより、試料採取時に生きて
不可能である。結果として、満潮線付近でも冠水
いた貝形虫個体と、最終的には染色されない無機
状態が維持されている・水溜まり'で試料採取を
質の殻のみの貝形虫個体および岩石・鉱物粒子と
行うしかない。そこで、なるべく B地点付近の
の区別を容易にする。半日程度放慣した後、染色
2
5
0メッシュのふるいに通し、
干潟の冠水時間が長い、小潮時、それも、小潮の
液を加えた試料を
ピークから 2、3日過ぎた日での試料採取が妥当
水洗した。その後、ふるいに残った残漬に水を加
と考え、後半の 2聞はその時期に実施した。結果
えた試料の入ったビーカーを疏水(水温 8
0t程
として、後半の 2
1
mでは、前半の 2回より、より
度)に浸す。この作業により、貝形虫の殻、岩石・
多くの貝形虫生体を得ることができた。
鉱物粒子など、無機質の粒子を染めているローズ
試料の種類は堆積物 (A地点:砂質レキ、 B、
ベンガル成分が溶出する。その後、試料を含む液
2
5
0メッシュのふるいに通し、水洗した
C地点:泥質砂 砂質泥)と藍藻類の付いたレキ
を再度、
(A地点)の二種類である。
後、電気乾燥機内で乾燥させる。
堆積物試料の採取は干潮時に水に浸っている
(冠水している)場所で実施した。堆積物試料は
間口
1
0
c
mの簡易ソリネットを用いて採取した。
具体的には、約 lcmの厚さの堆積物の表層を 5
今回の研究では、各試料、以上の手順で得ら
査の内、
れた堆積物残 i
6
0メッシュ(目の粗さが
0
.
2
5
m
m
) のふるいに残った残波の全量について、
実体顕微鏡下、貝形虫個体の拾い出しを行った。
mの距離にわたってすくい取る。採取後、符.られ
た堆積物に水を加え、よく撹排した後、水と有
環境要因
機物、微小生物および少量の鉱物からなる・上澄
み・を 9メッシュ(目の粗さが 2
mm) と 2
5
0メッ
今回の調査においては、試料採取と同時に環境
.
0
6
3
m
m
)のふるいの上にあけ、
シュ(目の粗さが 0
2
5
0メッシュのふるいに残った、砂サイズの:tt
1
積
要因の測定を行った。具体的な測定項目は水温、
物残誼を回収した。
理化研究所製)による 8項目、即ち、 pH、全硬度、
レキ試料については、水に面している側の表而
積が手のひら程度のレキ、
1
0個を採取した。具
塩分濃度、溶存酸素最の他、パックテスト(共立
硝酸、班硝酸、アンモニウム、リン、化学的酸素
要求量、化学的酸素要求鐙・低濃度である。なお、
体的には、レキとその周りの水をビニール袋に入
水温と溶存酸素量は iHORIBA DO METER
れ、採取したレキをビニール袋内で撹排し、レキ
ATAGOP
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t PAL
O M -51J、塩分濃度は i
一ー
255 ーー
琉球大学教育学部紀要
-0
6
S
J を用いて測定した。調査期間内の pH値
は 8または 7
.
5で地点聞の違いは認められなかっ
-12mg/e
の
た。また、各地点、溶存酸素量は 4
第 84m
回の測定のいずれも O
.
0
2
m
g
lQで、「汚染がある J
と評価された。硝酸態窒素は 1回目に 5mg/e
が
検出され、「多い j と評価されたが、 l
、4回目は
硝酸態窒素)、リン(リン般態リン)の量、およ
1mgle
、3回目は 2mg/e
となり「ふつう Jと
評価された。リン酸態リンについては、 l回目が
O
.
lmg/e
となり、「少し汚染がある」、 2
、3回目
が0
.
2
m
g
le
、4回目は O
.
5
m
g
le
となり、最も悪
び化学的酸素要求量の測定結果について述べる。
い評価の「汚染がある Jとされた。化学的酸素要
範囲内の値を示した。ここでは、主に、地点問の
違いが顕著な塩分濃度と、水の汚染の指標として
重要な窒素(アンモニウム態窒素、亜硝酸態議素、
先ず、塩分濃度について述べる。 A 地点では、
4回の測定の内、 2回目の 1
2
%
。を除くと、 o
~ 1
%
。
0-26%
。の範囲
であった。 B地点については、 2
地点では海水に近く、 3
0~ 3
5協
内に収まる。 c
の範囲内にあった。なお、 A 地点は、満潮時、
1
0
%
。を超えることが予想される (
2回目の調査で
2
%
。を記録したことから )
0 B地点
干潮時ながら 1
では河川水の直接の影響はないので満潮時もほぼ
H
I目に 13mgle
で、それ以降の 3回は
求量は 1I
50mgle
となり、最も悪い評価の「汚れた水 Jと
された。
C地点では、アンモニウム態窒素は 1恒l
日が
O
.
2
m
g
/e
で、「やや汚れている Jと評価されたが、
2、4回目は l
.
Omgle
、3回目は O
.
5
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とな
り
,
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汚れている Jと評価された。亜硝酸態窒素
.
5
m
g
le
、4回目は 1mgle
を計
は 1、3回目は O
同じ値を示し、 C地点については、満潮時は海水
測、最も評価の悪い「汚れた水 j と評価された。
の塩分濃度あるいはそれに極めて近くなると予想
2回目は O.
1mglQと改善されたものの、「汚染が
される。
多い j との評価にとどまった。硝酸態窒素は 1
次に、水の汚染の指標としての、窒素、リンの量、
回目に lmgle
で「ふつう J
、2
、4回目に 5mg/
以上の最も悪い評価の「ひどく汚れている j と評
Eで最も汚染度の高い評価の「多い j、3回目に
2mg/eの値を示し、「ふつう Jとなった。リン酸
.
5
m
g
lQとなり、最
態リンの値は l、4回目に O
も評価の悪い「汚染がある Jであったが、 2回日
.
0
5
m
g
/e
、3回目は O
.
lmgle
で「少し汚染が
はO
価された(評価は共立理化学研究所の「パックテ
ある j と評価された。化学的酸素要求量について
化学的酸素要求量について、地点ごとに述べる。
A 地点:アンモニウム態窓素については、 l
回目は 0
.
2
m
g
lQで、「やや汚れている」、 2、4回
目は 2mglQ、 3回目は 5mg/Qとなり、 2mg/e
スト利用方法 Jに記載された「河川・湖沼水の評
、2回目に 20mgle
と
、
は 1、4回目に lOmgle
価の目安」による)。亜硝酸態窒素は l、4回目
最も評価の惑い「汚れた水 Jであったが、 3回目
.
2
m
g
le
、2、3回目に O
.
lmglQの測定値が得
に0
e
は 5mg/eとなり、「汚染が多い Jと評価された。
.
lmgl 以上の最も悪い評価の「汚れた
られ、 O
以上、水の汚染の指標となる環境要因、即ち、
水」と評価された。硝酸態窒素は 3回目に lmgl
無機三態窒素およびリン酸態リン、および化学的
Eで「ふつう」と評価されたが、 1
、2、4回目は
、20mgle
の値が得
それぞれ 45mglQ、5mgle
以上の最も悪い評価の「多い Jと
られ ,5mgle
評価された。リン酸態リンについては全 4I
!I
とも
1
.
0mg/e
で
、 0
.
2
m
g
le
以上の最も悪い評価の「汚
染がある Jとされた。化学的酸素要求量の測定結
、3回目は 1
3mgle
、
果は l、2回目は 20mgle
4回目は 10mglQとなり、 10mgle
以上の最も惑
い評価の「汚れた水 Jとされた。
B地点では、アンモニウム態窒素は 1
、3回目
.
2
m
g
le
、2、4回目は O
.
5
m
g
leとなり「や
はO
や汚れている j と評価された。亜硝酸態窒素は 4
酸素要求最の値から、調査、試料採取を行った 3
地点の水域の水は、少なからず汚染されているこ
則した。 3地点のなかでは、 A 地点の汚染
とが判 l
の度合いが高い。これは A 地点のレキに藍藻類
が付いていることと照応する。次に、 C地点の汚
染の度合いが高く、 B地点の汚染の度合い相対的
に低い。ただし、化学的酸素要求量については 3
地点の内で B地点が最も多いが、これは、 B地
点が千出の時間が長く、かっ干潟の生物の活動が
盛んな事と関係しているかもしれない。
一
-256 -
沖縄尚南部・漫湖およびその周辺水域の底生貝形虫群集
いると考えられる貝形虫種について、その産出状
貝形虫群集
況および生態分布上の特徴について述べる。上述
本研究では 4
3属 5
7種の貝形虫を識別した(第
l表)。貝形虫個体としては圧倒的に遣がい(殻)
度との関係について述べ、その他の水質に関する
(以下、殻個体)が多い。生体が見つかったのは
要因、特に、人為的汚染に関わる無機三態窒素、
した環境要因との関係については、主に、塩分濃
7種のみで、 C地点の試料番号 r
5
21Jの砂泥質
リン酸態リンおよび、化学的酸素要求量との関係に
試料を除けば、生体の数は少ない。上述したよう
ついては簡単に触れる程度とする。
に、堆積物試料、レキ試料(レキの上には藻類が
貝形虫 7種(淡水性種 l種、汽水性種 2種、海
生育)のいずれも定面積から得られた試料であり、
生稲 4種)の生体が発見されている(第 1表)。
0メッシュ(目の粗さが 0
.
2
5
m
m
) のふる
今回、 6
この内、淡水性種の H
e
r
p
e
t
o
c
y
p
r
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sc
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.r
e
p
t
a
n
s
いに残った堆積物試料残誼の全員について、実体
は A地点の砂レキ試料、汽水性種の I
s
h
i
z
a
k
i
e
l
l
a
顕微鏡下、貝形虫個体の拾い出しを行ったことか
かuensis と Leptocytheres
p
.は B地 点 の
r
y
u
ら堆積物試料、レキ試料の各々の種類の試料につ
砂泥質の試料から発見されている。なお、よ
いて、得られた員形虫個体の数は試料開で比較可
r
y
u
k
y
u
e
n
si
s は Tsukagoshi(
l9
9
4
)に よ り 沖 縄 島
能な同一基準の個体密度を表している(ただし、
北部の鹿佐次川河口の汽水域で得られた標本を
レキ試料については‘半定量的'と考えた方が良
もとに命名、記載された。 A 地点では干潮時の
い)。殻個体のみの貝形虫種は 4
8種、化石よりな
混分濃度が 0
%
。あるいはそれに近い値まで下がる
る種は 2種である。
が、すでに述べたように、満潮時は少なくとも
貝形虫種リスト(第 1表)の種数が比較的多
1
0
%
。を超えることが予想される。このような塩分
いのは B地点の 1
0月の試料(試料番号 n024J)
.c
f
.r
e
p
t
a
n
sは生息可能と考え
濃度の範囲でも H
から多数の海生種(多くは殻個体)が産出した
られる。その他、生体が発見された 4種は海生種
ことによる。この試料に含まれる海生種の多く
r
o
p
o
n
t
o
c
y
p
r
i
ss
p
.を除き、浅海砂底ある
だが、 P
は海生植物(海草類および海藻類)に付着し
いは砂泥底に特有な員形虫属、種である。特に
e
s
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/
e
b
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sc
f
.
て生活する葉上種(例えば、 X
h
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i
)、またはサンゴ礁に特有な種(例えば、
H
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a/
a
c
t
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) である (
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iand
N
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.1
9
8
8
.1
9
9
1
.1
9
9
5
)。即ち、これらの種の
L
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sは汽水域の内湾奥砂
9
8
7
)、サ
泥底にも多く生息するほか(池谷他. 1
T
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iandN
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.
ンゴ礁砂底に広く出現する (
1
9
8
8
)0 L
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s
i
sとLoxoconchas
p
.の
ほとんどは、本研究の調査水域である汽水域、砂
2種は比較的塩分濃度の低い漫湖の B地点でも生
泥質の底質を生活の場としていない。これらの
体が産出しているので、塩分濃度の広い範囲に
種の大部分は他の試料中には出現しないことを
適応した、広塩性の海生種と考えられる。一方、
併せ考えると、これらの種の殻個体は、満潮時、
P
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p
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.と C
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a
t
a
外洋側(恐らく那覇港あるいはそれより外洋側)
の生体の産出は C地点に限られるため、この 2
から潮流により運び込まれた可能性が高い。特
穂は海水あるいは海水に近い塩分濃度の汽水に適
に
、 2
0
1
2年 9月から 1
0月にかけて襲来した台風
応していると考えられる。
時に、高潮に伴い、漫湖に運び込まれた可能性
殻個体のみ発見されている貝形虫種は 4
8種で
がある。種リストの最後の 2穏
、 K
r
i
t
h
es
p
.およ
ある(第 1表)。その内、淡水性穂は 6種 で あ
びB
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のp
r
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ss
p
.は浅海帯下部
∞
漸深海帯の泥
る (
H
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n
d
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r
s
o
n
.1
9
9
0:大久保 .2 4
)。生体が発
底を生息の場とする深海性貝形虫であり、その殻
.c
f
.r
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p
t
a
n
sの他、殻のみ見つかっ
見された H
(各々 l個体産出)は白濁するなど、他の貝形虫
たH
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c
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ss
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.と D
o
/
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r
o
c
y
p
r
i
ss
p
.の 産 出
種と異なり、保存状態が悪い。この 2種の殻個体
は A地点、に限られるが、他の 4種 は A地 点 以
は沖縄島中南部に広く露出する島尻層群の地層か
外でも発見された。後者の淡水性種の殻個体は
ら洗い出された・誘導化石・と考えられる。
淡水域、あるいは A 地点のような塩分濃度の低
以下、調査水域およびその周辺水域に生息して
い汽水域に生息していた個体の殻が河川を通じ
琉球大学教育学部紀要
て下流側に流されてきたものと考えられる。 B、
第8
4集
に述べたように、本調査水域は、いずれの測定項
C地点の多くの試料から殻個体が多数見つかっ
目においても、多少とも汚染されていると評価さ
た内湾泥底に特有な 4稀(第 l表)は調査水域
I本においては、干潟に生息する
れた。ただ、 F
内、あるいはその近辺を中心に生息している可
ndT
s
u
k
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g
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s
h
i(
2
0
0
2
)お
只形虫の研究は Nakaoa
能性がある。日本本土の内湾性貝形虫の生態分
2
0
0
8
)のみで、貝形虫の生態分
よび中尾・塚越 (
布について述べた池谷・塩崎(19
9
3
) によれば、
布、個体情!主と.1'.記の水の人為的汚染の指標とな
S
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aと B
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.
0
%
0の地分濃度
b
i
s
a
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n
s
i
sは内湾奥泥底の 20- 3
に適応した汽水性検で、前者は水深 2-7m、後
る環境要因との│羽係については調べられていな
議論は難しい。ただ、調査水域の劣悪な水質が貝
者は水深 5-9mに特徴的に出現するとされる。
形虫の生存を妨げている可能性は大きい。具体
N
e
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c
y
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h
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r
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t
t
a
.sp.は近縁種の生体が石垣島・西
表向IlI
Jに広がるサンゴ礁、石西礁の水深 2
0m前
的には、 A 地点で得られた貝形虫の生体は、計
い。このような比較データがない中では、詳細な
後の小浜島・黒島聞の水路部(海域)の泥底より
3回の調査で‘採取された 6試料からは、わずか
H
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r
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sr
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p
t
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n
sの 5個体であった。どの
多数得られている(松永, 1
993MS)。これら j
尼底
環境要因が効いているかについては今後の課題だ
極は産出状況および引ミ態分布上の特徴から、漫湖
が
、 A 地点においては、劣悪な水質が貝形虫の
J:j:J央付近の干潮時でも冠水している水域(=国場
生息を妨げていると考えられる。 B、C地点につ
川の流路)に生息している可能性が向い。
いても、同様に貝形虫生体の種数、個体数を低く
以上、貝形虫個体を生体と殻個体に分けて、個々
抑えている可能性がある。ただ、 B地点について
H状況、生態分布の特徴をもとに
の貝形虫穂の産 I
は、その位置が満潮線近くにあることからくる干
検討した結果、本調資水減とその周辺水域の貝形
1
1
¥時間の長さが只形虫の生存に悪影響を与えてい
虫群集は以下のような生態分布を示すと考えられ
る可能性がある。 C地点からの試料の内、試キ1
;
・
番
る。即ち、長堂川下流域 (A地点)のような、汽
水域ではあっても、干潮時にはほぼ淡水域といっ
号r
5
21Jの試料からは 1
0
0個体を超える貝形虫
生体が得られたが、同じ C地点からの他の時期
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sc
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p
t
a
n
sの
てもよい水域には、 H
の試料と比べて、水質に関して特に好適な状況下
ような淡水性種が生息すると推定される。より塩
にあったとは言い難い。干潟を中心とする汽水性
分濃度の高い汽水域の没湖では、潮位上高い位
の成生貝形虫の種の多様性や個体密度に対し、水
置にあって、干潮時に一部、子出する干潟の砂
の汚染が具体的にどのような影響を与えているか
泥底には、汽水性種 (
l
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l
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かuensis
については今後の検討課題となろう。
とL
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c
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esp.) とともに、広士益性の砂
まとめ
成ないし砂泥底に特有な海生税 (
L
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si
sと L
.sp.) が生息する。また、個
1.悶場川沿いの没湖およびその周辺水域に 3調
(
A地点:長堂川下流域、 B地点:漫
体数は多いものの、遣がい(殻)しか発見され
査地点
な か っ た 、 内 湾 泥 底 に 特 有 な 種 (S
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s
i
s
) は、没
1央 部 (=岡場川の流路)付近のような、
出l
の1
:
1
湖
、 C地点:岡場川最下流域)を設け、各地
・
干潮時でも冠水している水域で生活している可
能性が高い。
c地点のような、より海域に近い
環境では海水ないし海水に近い指分濃度の汽水
点について、貝形虫用試料採取および環境
要因の測定を約 2ヶ月に l図、計 4回行った。
0
1
2年 5月 2
1
具体的には、 A、C地点では 2
日
、 7月 3
1日
、 1
1月 1日
、 1
1月 3
0日に、 B
地点では 5月 2
1日
、 8月 l目
、 1
0月 2
4日
、
C
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aお よ び P
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i
s
1
2月 8E
Iに実施した。調査は大潮の干潮時
に行ったが、 B地点での 3、
4回目(10月 2
4日
、
1
2月 8日)の調査は貝形虫生体の採集を考慮、
s
p
.
)が生息する。
小潮の干潮時に行った。環境要因について
に適応した海生種 (
L
.u
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n
s
i
s、 L
.sp.、
人為的汚染に関係する環境要因について、すで
一
ー 258 一
は、水温、塩分濃度、 i
容存椴素量のほか、パッ
沖細品市 f
i
l.世抑!およびその周辺水域の底生日形虫群集
クテストによる pHなど 8項目について測定
ただ、日本において、干潟に生息する貝形虫
と水の汚染の指標となる環境要因との関係
した。
2
.計 1
4試料(藍藻類が付いたレキ試料 :
3試料、
堆積物試料 :
l
l試料)について、 6
0メッシュ
虫の穂の多様性や個体密度に対し、水の汚染
(日の粗さが 0
.25mm) のふるいに残った堆
が具体的にどのような影響を与えているか、
積物試料の全量から、実体顕微鏡下、貝形虫
今後の検討課題となろう。
についてはほとんど調べられていない。貝形
個体を拾い出した。その結果、 4
3属 5
7穫の
引用文献
貝形虫を識別した。この内、生体が発見さ
れた積は 7種、遣がい(殻)のみの種は 4
8
鶴、化石よりなる種は 2様であった。なお、
生体の数は、 l試料 (
C地点の試料番号 f
5
21
J
の試料)を除き、残り 9試料では少数に留まっ
た
。
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2
2
8p
p
.
池谷仙之・長谷川浩志・鹿島徹子, 1
9
8
7
.介 形
3
. 貝形虫種の産出状況、生態分布の特徴をもと
虫化石の解析一川崎市街地(神奈川県)の完新
に、本調査水域とその周辺水域の貝形虫群集
世介形虫群集一. (松島義章編)川崎市内沖積
の生態分布を以下のように推定した。即ち、
A 地点のような、汽水域ではあっても、干潮
層の総合研究.p
p
.5
1・
6
3
.
池谷仙之・塩崎正道 .
1
9
9
3 日本沿岸内湾性介形
時にはほぼ淡水域といってもよい水域には、
虫類の特性ー古環境解析の指標としてー.地質
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n
sの よ う な 淡 水 性
9号.p
p
.1
5
・
3
2
.
学論集.第 3
種が生息している。より塩分濃度の高い汽水
松 永 孝 幸 .1993MS
,八重山群島石西礁海域ー特
域の漫湖については、潮位上高い位置にあっ
に小浜島・黒島聞の水路部ーの貝形虫群集.琉
て、干潮時には一部、干出する干潟の砂泥底
4
p
p
.
球大学教育学部理科教育専修卒業論文. 1
には、汽水性種 (
/
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h
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) と広塩性の海生種
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sと L
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.
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生息‘している。また、個体数は多いものの、
遣がい(殻)だけしか発見されなかった、
.andTsukagosh
.
iA.,2002,8rackishN
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1
5
.
'
+
1尾 有 利 子 ・ 塚 越 哲 .2008干潟域に生息する貝
内湾泥底種 C
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形虫群集の季節変化と経年変化. 日本大学文
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是湖の中
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9
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理学部自然科学研究所研究紀要 N
4
. 調査水域内の劣悪な環境が貝形虫の生存を妨
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7
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.
.
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.
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.
1
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1
5
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.
大久保一郎. 2
0
0
4
. 日本淡水産カイミジンコ類に
1
p
p
.
ついて 7
沖縄県環境生活部(編・発行) .2
0
1
2
.平成 2
2年
げている可能性が大きい。特に、 A 地点で
度水質測定結果(公共用水域及び地下水) ,
1
l4
水の汚染の程度は高く、得られた貝形虫生体
p
p
.
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lReefo
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Okinawa.]
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. I
nT
.Hana
.
iN.Ikeya&
央部(=国場川の流路)付近の、干潮時でも
冠水している水域で生活している可能性が
向い。 C地点のような、より海域に近い環境
では海生種 C
L
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o
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その水域の環境の劣悪さが貝形虫生体の種
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259 ーー
琉球大学教育学部紀要
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第8
4集
要約
本研究では、没湖とその周辺水域に生息する貝
形虫群集の種組成および生態分布について調べ
た。国場川沿いの漫湖およびその閥辺水域の 3
地点において、約 2ヶ月おきに試料採取を行い、
4試料を採取、室内作業を経て、 4
3属 5
7種
計1
の貝形虫を識別した。生態分布については以下の
通りである。 即ち、長堂川下流域の、汽水域内
ではあっても、干潮時にはほぼ淡水域といって
もよい水域には、 H
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れる。より海域に近い関場川最下流域の砂泥底
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が生息している。調査水域内の劣悪な水中環境が
貝形虫の生存を妨げている可能性が大きいが、詳
細は今後の研究の課題である。
第 1表
員形虫種リスト
(種群
A:淡水性種
B:汽水性種
C:内湾泥底種
D:海生種)
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