-27大阪市立大学生活科学部紀要・第4 1巻 (1 9 9 3) コチニール色素による絹の染色に関する研究 皆川 基・原田智子・谷先リエ・山下千代 S t u d i e sontheDyeingo fS i l kF i b e rwitht h eColoranto fCochineal MOTOI MINAGAWA,TOMOKO HARADA,RIE TANIZAKl a ndCHIYO YAMASHITA 媒 染 お よ び 蘇 芳 ・ ア ル ミ ニ ウ ム ・ す ず 媒 染 で は 493nm 1.はじめに に,わずかに黄味を帯びた赤色の西洋茜および印度茜・ アルミニウム媒染では 6 13nmに , 赤色は三原色の一つで,彩度が高く,原始人や子供が わずかに紫味を帯び 最も興味をもっ色とされ,また人間の血の色や燃える火 , た赤色の蘇芳・アルミニウム媒染では 638nmに の色など興奮,情熱,暖かさを与える色とされてきた。 紫味を帯びた赤色の紅花では 700nmに そ れ ぞ れ 主 波 長 また赤色は緋色,紅色,朱色などの総称として 一般に用 が認められる。また鮮かな赤色を示すコチニール・すず いられ,常にはなやかな雰囲気を伴うためいつも色の主 媒染の絹布では最も高い彩度を示すことが認められる 役を果たしている O (A, B)。 また コチニールは数少ない赤色系の動物起源、 の生体色素で, 古くから羊毛の染色に広く用いられてきたが, 日本では 江戸時代からとり入れられ,多色性色素としての特徴を 0.8 生かした絹の染色に応用されてきた。 コチニール色素による絹 の淡色 濃色染めにおいては 0 . 7 すず媒染で鮮かな桜色から赤色に,アルミニウム媒染で 0 . 6 は赤昧の紫色に,銅およびクロム媒染では紫色に,また 鉄媒染では灰色から黒色にそれぞれ染め上げられる。こ 0. 5 のほかコチニール色素は希土類元素と反応して種々の色 y を呈する特徴を有するため,原料あるいは染め色時の水 0 . 4 質などによって微妙な影響をうける。 6_ _ _ コチニール,蘇芳,紅花,西洋茜,印度茜など代表的 一 一ご・ ・一 一 一一5 2一 0 .3 3一 一 一一 ・ な赤色系の天然色素によって染色された絹布を色差計で 差異が認められ,黄味の少ない赤色のコチニール・すず 0. ' 。 A. 赤色系天然色素で染色した絹布の表色値 コチニール 蘇芳 化 第一 ス ズクエン酸 塩 化 第一ス ズ 最 み ょう I 1ん 塩 0 . 48 1 y 0 . 2 8 2 Y(反射率) 9. 41 主波長 493nm 刺激純度 4 5.5% x 0. 44 1 0 . 2 9 2 1 3 . 5 7 493nm 34.0% 0 . 47 9 0 . 2 9 5 1 5 . 8 7 700nm 39.8% 木灰 47 2 0. 0. 3 2 0 1 1 .1 1 613nm 4 4. 1 % 0. 46 5 0 . 3 2 0 1 2 . 6 3 0 . 2 0 . 3 0 .4 0 . 5 0 . 6 B . 赤色系天然色素で染色した絹布の色 1:コチニール ・ス ズ媒染 2 :蘇芳 ・アル ミニウム媒染 3 :蘇芳・アル ミニウム・スズ媒染 4 :転花 5 :西洋茜 ・アル ミニウム媒染 6 :印度茜・アルミニウム媒染 613n~ 42.2% Ea ノ 、 EE唱B 〆,‘、 , . . . . 0. 45 9 0 . 3 0 2 7. 5 5 638nm 36.0% 木灰 0. 1 X 紅花(花餅) 西洋茜 印度酋 最 み ょ う1 Iん 氷酢酸 震みょう 1 Iん 焼 み ょ うI f ん 氷酢酸 媒染剤 蘇芳 、--1 0 . 2 測定し,色度図上にプロットすると,赤の中にも微妙な 使用染料 2一 一- 4 0 . 7 - 28- 生活環境学 3 . 実験方法 3. 1 コチニール色素抽出液の調製 還流冷却器をつけた 3つ口フラスコ抽出装置を用い, 細かく粉砕したコチニールを蒸留水によって下記に示す 条件で熱抽出した後,ガラスフィルターで漉過し,浮遊 物を除去して色素抽出液を調製した 。 (他出条件) コチニール:1 0 g/ P _ 抽出温度 5C以上 :9 抽出時間 2 0分間 :1 0 3 . 2 コチニール色素による染色ならびに脱着方法 aiyo I ncubator M -3 0 0型 染色(または脱着)は T (振盗回数:60+2回/分)を用い,下記に示す条件で c o c h i n e a l ) 写真 1 コチニ ール C それぞれ行った。 (染色条件) 染 色 液 : 1:5 0 (対繊維) o c 染色温度:60+2 本研究では鮮かな赤色のコチニール色素に注目し,コ チニール色素による絹の染色に関する基礎的研究を行い, 染色時間:6 0分間 またコチニール色素特有の美しい色相を生かした色止め 染浴の pH:p H3.6 方法についても合わせ検討した。 ( 脱着条件) 蒸 留 水 : 1:5 0 (対繊維) o c 脱着温度:90+2 2 .材料 脱着時間:6 0分間 2 1 dx4本合色 繊維材料としては完全精練した絹糸 ( 100T/m, 7 0回繊度糸)を使用した。 3 . 3 金属塩による後媒染方法 色素としてはメキシコ産コチニールを使用した(写真 ・ 1) 3 . 2と同様に, TaiyoIncubatorM -3 0 0型 ( 振 漫 回 数 :60+2回/分)を用い,下記に示す条件で行った。 コチニール ( c o c h i n e a l ) はメキシコ,中央アメリカ, (媒染条件) 蒸 留 水 : 1:5 0 (対繊 維) puntia 南 ア メ リ カ な ど に 産 す る サ ボ テ ン 科 の 植 物 (O 媒染剤濃度:0. 5 7 . 5 g/ P _ c o c c i n e l l i f e r aM i l l e r, Opuntiatuna M i l l e rなど) 媒 染 温 度 :4 0士 2C に寄生するカイガラムシ科 C Coccusc a c t iL . ) のエン 媒 染 時 間 :3 0分間 , 0 Dactyl opiusc o c c u sCosta) の雌虫を乾燥し ジムシ C た虫体で,その虫体にはアントラキノン系の生体色素カ 3 . 4 染着量ならびに脱着量の測定 ルミン酸(約 10%) のほか脂肪, 島津 2波長/ダフ。 ルビーム自記分光光度計 UV-3 0 0 0 ロウなどが含ま れてい る 。 型を用い,コチニール色素抽出液の紫外部ならびに可視 量線を求め,残液比色法により染色前 ・後の染液の吸光 H C M 0 c qH CO ω人l v ' m o人日﹀" o HB , m人 凡 v ω 部吸収スペクトルの極大吸収波長とその波長における検 度と脱着後の吸光度を測定し,次式により繊維 19あた りの色素の染着量および脱着量 Cmg) を 求 め た 。 な お コチニール色素はカル ミン酸換算値で示した。 l )/D W 染着量 (mg/g繊 維)ニ C (D一 D carminica c i d( C Z Z H Z 0 0 1 3 ) 脱着量 (mg/g繊維) =CDz) / DW D:染色前の染液 の吸光度 媒染剤としてはカリウム明ばん,酢酸第 2クロム,酢 D,:染色後の染液の吸光度 酸鉄,酢酸銅,酢酸ストロンチウム,スズ酸ナトリウム, 以:脱着後の残液の吸光度 塩化ランタンなどの化学試薬を使用した。 C:染液中の色素量 (rng) (2) 』邑- . -29- 皆川他:絹の染色 ω 1 . 0 0 . 6 ‘ 峨 h 光 光 度 度 312nm L 0.3 od {トm -} 4mg/l00ml 0m l 2mg/l0 l m g /l 00 t n l 0. 5 mG l100ml 0 230 300 (nm) 1 1~ 0 200 250 長 波 30?nm> 340 巴 ) 0 . 8 臼 . t o 340 277nm 277nm 217nm 吸 光 吸 度 光 画、 , 度 ← 0. 4 01 0 . 5 312nm 0 ・ J ( ﹄ 1 m o d' v 。 0. 41100 釈 悩 希 0.8/100 8 。 図 1 希釈倍率の異なるコチニール抽出液の (A)紫外部吸収ス ペク 度 3 4 (m g/ l00ml) A)紫外部吸収ス 図 3 カルミン酸 ( トル の特 性 波 長曲線ならびに (B) 検 量 線 ペク トルの特性波長曲線な らび (B) 検 量 線 ω . 10 • 2 ω 0 . 8 吸 ‘ * k 1 t 度 度 0. 4 (↑mod-) , 0 . 5 。 ト- 01 。 400 。 亙75400 (nm) 波 o . 500 長 量 産 600 倒 0 . 9 ( 8 ) ‘ k (0m) ‘ E 光 .0.5 491nm 469nm ( ↑ 由 。 * .0 . 5 . . 1/100 駅 21官 。 ・ 3/100 ' v o d- ︹﹄﹁由 41V 。 4/100 。 B 図 2 希釈倍率の異なるコチニール抽出液の (A) 可視部吸収スペクトルの特性波長 •z 5 (m<</lOOml) 10 図4 ' カル ミン 酸 (A)可視部吸収ス ペ クトルの特性波長曲線ならびに (B) 検 量 線 曲線ならびに (B) 検 量 線 (3) 環 活 学 生 -3 0- 境 W:繊維の重量 (g) 1 .2 567nm 4.実験結果およびその考察 m nH フ﹄ ハ ヨ u v- 4n 寸 まず島津 2波長/ダフeルビーム自記分光光度計 I つI ﹀ ハ AU 4. 1 コチニール色素の性状について 吸 光 3 0 0 0 型を用い,コチニ ール色素抽出液の紫外部ならびに 可視部吸収スペクトルの特性波長曲線とその極大吸収波 度 pHl0 .50 0. 6 (ト。o d ) 長における色素濃度と吸光度との関係についてみると, 図 1, 2に示すように,いずれの濃度においても紫外部 , 277nm , および~310nm 付 吸収スペクトルでは 217nm 近に,また可視部吸収スペクトルでは 470nm, 495nm 525nm付 近 に そ れ ぞ れ 極 大 吸 収 波 長 を 示 し , 極 および、 大吸収波長における色素濃度と吸光度との聞にはいずれ 0 390 も直線的な比例関係を示すことが認められる。 一方 , 450 500 波 長 コチニール色素の主成分であるカルミン酸の紫 外部ならびに可視部吸収スペクトルについてみると,図 ・ 3, 4に示すように,紫外部では 277nmおよび、 312nm 550 (n m ) 図 5 PHの異なるコチニ ール抽出液の可視部吸収スペ クトルの特性波長曲線 付近に,また可視部では 469nm , 491nmおよび、 524nm . 1 0 付近にそれぞれ極大吸収波長を示し,極大吸収波長にお ける色素濃度と吸光度との聞にはいずれも直線的な比例 関係を示すことが認められる。 吸 このようにコチニール色素抽出液はカルミン酸水溶液 光 の特性波長曲線にほぼ一致することが認められるので, 度 以下の実験ではコチニール色素の染着量および脱着量は 0.5 (トoof -) 325nm カルミン酸換算値で示した。 4. 2 コチニール色素の抽出について t . . . _ 且H10.00 H7.08 48 pH6. pH5.75 H5.30 H4. 11 pH3.58 コチニール色素の主成分カルミン酸は赤色柱状品で水 水酸化アルカリ水溶液などに易溶の動物色素で,また水 . 0 200 溶液の pHによって色相に大きな変化が認められる(図 ・ 5) が,酸性 中性領域では紫外部吸収スペクトルの特 250 波 畏 300 (nm ) 340 図 6 PHの異なるコチニール抽出液の紫外部吸収スペ クトルの特性波長曲線 - J 、 性波長曲線にほとんど変化がなく, 277nm付 近 に 極 大 , )。 吸収波長を示すことが認められる(図 ・6 コチニール色素の抽出については従来から熱水による 吸 技法が示されている。そこで本研究ではまず抽出温度が 光 コチニール色素抽出液中の色素濃度におよぼす影響につ 度 いてみる,図 ・7に示すように,抽出温度を高めると抽 出液中の色素濃度は増大するが, 7 0C以上では色素量の 0 増加の割合いが少なくなることが認められる。 0.6 . - -0 . 3 ト c') o ' 、 了 5Cと一定にし, コチニール色素の抽 また抽出温度を 9 0 。 出時間と抽出液中の色素濃度との関係についてみると, 0分間以下の短時間抽出で色素は 図 ・8に示すように, 3 0分間以上の抽出では色素の抽出 急激に溶出されるが, 3 ' . e 20 占自 fA 40 度 60 C ¥ : ) 80 図 7 コチニール色素抽出温度と吸光度の関係 1 、・ 、 、 割合が減少し,抽出時間にともなって抽出液中の色素濃 j 6・ ・ . 度が増す傾向が認められる。 も 、 ニ & 3 J ? , .'ー (4) -3 1- 皆川 他 :絹 の染色 . 15 50 吸 ~ 光1 .0 ひ---0 脱 箸 量 :40ト • 脱 者 度 f 0--0 染 着 量 、 き30 忌0.5 ロ1 0 g / 、 - ゑ20 i 往 o 60 抽 出 時 (m in) 間 、 - 1 20 1 0 図 8 コチ ニール色素抽出時間と吸光度 の関係 0 0 0 -_ _ ・・・ ・ ) 嶋一一0-時 一0 100 o 0ー ベ コ 染 着 量 40 60 温 度 100 脱着量 図1 0 コチニ ールの染色温度が絹繊維 の染着量ならび に 脱着量 に及ぼす影響 50 仇民脱 mg/g繊維 ) 〆町、 n V 5 染 o. nunv JV ス -脱着量︿ mg/﹄ g繊維﹀ つ 140 , 。 CC) 80 ロ 染 着量・脱 着 量 。--0 20 0.‘ー ‘・ 2 4 PH .‘“・ 6 1 0 e 0 ー ー ー 『ー ー ー ー ー 『 。 ー 0 … 0 ー ー . . . . . . . . . . . _ , - 。 図 9 コチニール染浴中の PHが絹繊維の染着量 な らび に脱着量に及ぼす影響 60 染色時間 (min) 120 1 コチニール の染色時聞が絹繊維 の染着量 ならびに 図1 脱着量 に及ぼす影響 したが って本研究ではコチニール色素の抽 出は抽出温 5Cと一定にし , 1 2 0分間抽出を行 った が , 濃 色 染 度を 9 0 5g/i濃度以下の炭酸 ナ ト リ ウ ム 溶 3付近の染浴で最も高い染着量 を示 し,染浴 の pHが中 液を用いる短時間の熱抽 出方法も必要となる 。 なおアル 性側に移行すると.染着量が急激に低下することが認め カ リ抽 出法の場合はできるだけ抽 出温度を 低 く し 抽 出 られる 。 めを考慮すると, また染色絹から の色素 の脱着量 につ いてみると, .染着 後,直ちに抽出 液を酸性に調製する。 量と同様に染浴の pHが中性側 に移行するほど減少する 4 . 3 コチニール色素による絹の染色について 6%から 2 0%と増 が,色素 の脱落の割合すなわち脱着率 1 まず規定条件下で調 製 されたコチ ニ ー ル色素の染浴 し, pHが中性側 に移行す るほど色落ちしやすくなるこ pH が絹 の染着量およ び脱着量にお よぼす影響について とが認め られ る 。 み ると ,図・ 9に示す よ うに, コチニー ル色素 で は pH (5) 長 つぎに上記と同様, コチ ニー ル色素抽出液を用い,染 活 環 学 生 -3 2- 境 色温度が絹の染着量および脱着量におよぼす影響につい なって染着量が直線的な比例関係をも って増すことが認 てみると,図 ・1 0に示すように,コチニール色素では 3 0 められる 。 ℃付近の染色温度で最も高い染着量を 示 し,色素の脱着 量 も染色温度が高くなるにつれてわずかに低下 するこ と 4. 4 コチニール色素の色止め効果について が認められる。また色素の脱落の割合(脱着率)からみ コチニール色素による絹の染色においては色素特有の 4, _ , 5% 減少する傾 美しい赤色系 の色相が得られるが,繊維基質に対する色 向が認められ,わずかに色落ちしに くく なることが認め 素の結合が比較的弱 く,特に濃色染めでは色落ちが見立 られる 。 つ場合が多し、。 そこで, ると ,染色温度が高くなるにつれて 同様に染色時間がコチ ニー ル色素 の絹 へ の染着量およ コチニ ール色素特有の色相の変 化をともなわない色止め効果を目的と して各種金属塩に 1に示す び脱着量 におよぼす影響についてみると,図 ・1 よる後媒染を試 みた。 0分間以上 ように, 染着量は染色時間とともに増加し, 6 まずすず,アル ミニウム,鉄,銅, クロム, ストロン ではほぼ一定の値を示 すことが認められる 。 また脱着量 チウムおよびランタンなどの金属塩を用いたコチニ ール についてみると , 染着量の増加にともな ってわずかに増 色素抽出液の紫外部ならびに可視部吸収スペクトルの特 す傾向が認められるが, 色素の脱落の割合からみるとほ 3 ,1 4に示 す よ う に , 性波長曲線に つ いてみると,図 ・1 とんど変化 が認められない。 S n)では 277nm, 320nm, 475n m および~497nm すず ( また染浴中の色素濃度がコチニール色素の絹へ の染着 に,アル ミニウム ( A l)では 285nm, 490nm, 517nm 2に示 すように,染 量および、 脱着量に つ いてみる,図 ・1 および、 547nmに,鉄 ( Fe+2 ) では 294nmおよび; 460nm 浴中 の色素濃度を増すと,染着量は直線的な比例関係を 1 . 8 もって増大することが認められる 。一方,色素の脱着量 についてみると,染浴中の色素濃度が増すに つれてわず‘ かに多 くなり , 色落ちしやすくなる傾向が認められる。 このようにコチニール色素による絹の染色においては 1 , 5 uで, 0C,染色時間 6 0分間五 染浴 pH3付近,染色温度3 0 最も高い染着量 を示し,染浴中の色素濃度の増大にとも 吸 150 光 、. ・ 4 'JiHpbvah t・ 脱着量 ハU R v n v ハ) 7 t 0. 5 と ! 只V 段着量・脱着量︿ mg/g繊維﹀ (ト。。︺l ) 125 … 。O . ‘ , ・ 度 。ーベコ祭着量 、 、' ー . ・ 2 、 . o、、 ' γ . 0 25 波 . . l j 川 ・4 JHR . r f uJ . . こλ l、 :a-・ 33 : : 2・ ・ 図1 3 媒染剤の種類がコチニール色素溶液の紫外部吸収 - J 3/4 スペク トルの特性波長曲線に及ぼす影響 1 (原液) 媒梁舟J I 希釈倍率 波長 に脱着量に及ぼす影響 2 8 5 2 5 0 2 0 6 2 7 5 2 2 0 2 7 7 2 7 8 2 21 2 7 4 2 9 4 2 7 9 3 2 0 3 2 7 2 7 7 3 1 5 、 ・e 3 2 0 a' ( nm) a Al b C rc F ed C ue S rf S ng L ah コチニール 、 , 図1 2 コチニール染浴中 の濃度が絹繊維 の染着量なら び h A a 1 /2 、 3 4 0 十 1/4 長 . a e・ r ・ :﹃ 。 3 (n m) 2 d - .J0., _ . . . 0 ・ ∞ f (6) ー 回 自 伝 - 33- 皆川他:絹の染色 0.6 a 吸 b 0 . 4 1 光 度 ~司、 ト c n o0 . 2 、 ー . , / 。 400 700 600 500 波 長 ( nm) 図1 4 媒染剤の種類がコチニール色素溶液の可視部吸収スペクトルの特性波長曲線に及ぼす影響 a-Al b-Cr cFe d-Cu e S r f S n g-La h -コチニール 媒染剤 由 波長 (nm) 4 9 0 5 1 7 5 4 7 4 6 7 4 9 3 4 6 0 5 8 1 5 2 3 4 7 5 5 5 7 4 9 7 4 9 6 5 2 1 5 5 7 4 7 6 4 9 2 5 2 5 すずの媒染剤濃度を増すと急激に色素の脱着量が減少し, 3 脱者量 1g/ R以 上 の 媒 染 剤 濃 度 で す ぐ れ た 色 止 め 効 果 が 認 め られる 。 以上のようにコチニール色素による絹の染色において は色素の結合が比較的弱 く,色落ちしやすい欠点が認め m , g / られるが,すず媒染(後媒染)によりコチニール色素特 1 議 有の美しい色相を生かした色止め効果が明らかになった。 80.5 また多色性色素としてのコチニール色素の特性を生かし o 0.5 1 : 3 5 た媒染および、 色止め効果については今後の研究課題と考 7 . 5 篠染剤濃度 ( ' 1/1 ) える。 図1 5 媒 染 剤 〈塩 化 第二 すず)濃度の異なるコチニール 色素抽出液が絹繊維の脱着におよぼす影響 5. 総 括 コチニールは桃山時代にポルトカソレ人やオランダ人に に,銅 ( C u ) では 275nmおよび、581nmに , クロム ( C r ) よって輸入され,豊臣秀吉が愛用した狸々緋(非常に鮮 では 2 50nm, 274nm, 467nm および~493nm に,ストロ かな濃い緋色)の陣羽織の染色に使用された 。 またコチ ( 8け で は 279nm, 320nm, 523nmおよび' 5 5 7 ニールは江戸末期には梶子果実で黄色に下染めした上に L a ) で、は 278nm, 327nm, 4 9 6 nmに,またランタン ( 重ね染めされ,赤黄色から黄赤色などに染め上げる赤色 nm, 521nmおよび、 557nm付 近 に そ れ ぞ れ 極 大 吸 収 波 系色素として使用されていた 。 ンチウム コチニール色素による染色は日本では絹染めが中心に 長を示し,すず塩を除く,他の金属塩ではコチニール色 なっていたが, 素特有の色相が複雑に変化することが認められる。 そこで塩化第 2すずを媒染剤としたすず媒染(後媒染) られ,また綿染めではタンニンで下染めした後に用いら れていた。 を行い,媒染剤濃度がコチニール色素の脱着量におよぼ す影響についてみると,図・ ヨーロ ッパで は古くから羊毛染めに用い 1 5に示すように,塩化第 2 Hh ・ , . ' (7) 1)コチニ ール色素の紫外部ならびに可視部吸収ス ぺ -34- 生活環境学 クトルについてみると, 2 77nm,3 1 0nm,470nm, 4 9 5 で,色素の脱落が減少しすぐれた色止め効果が認めら 525nm付近にそれぞれ極第吸収波長をもっ nmおよび‘ れる 。 特性波長曲線を示し,極大吸収波長における色素濃度と 6. 文 献 吸光度との聞には直線的な比例関係を示すことが認めら 1)山崎青樹:草木染の事典(東京堂出版)p . 1 7, 1 8, 1 1 8, 1 1 9( 1 9 8 4) れる 。 2) コチニール色素による絹 の染色においては染浴 pH3付近,染色温度3 0C付近,染色時間6 0分間以上で, 2)吉岡常雄:天然、 染料の研究 一理論と実際染色法 ( 光 0 村推古書院) p . 3 99 9, 1 0 8, 1 6 21 6 3( 1 9 7 4) 最も高い染着量を示し,染浴中の色素濃度の増大にとも I I 3)上村六朗ほか:日本染織辞典 (東京堂 出版) p .7 なって染着量が直接的な比例関係をもって増すことが認 I 8 6( 1 9 7 9) められる。 4)中江克己編 :染織事典 (泰流社) p. 1 4, 1 8 8( 1 9 8 1) 5)神戸文子 :暮らしの色彩(保育社)p . 2 0 2 3( 1 9 6 8 ) (平成 5年 1 0月1 2日受理) 3) 各種金属塩を媒染剤と する コチニール色素によ る 絹の染色においてはそれぞれの媒染剤で色相に複雑な変 化が認められるが,すず媒染ではコチニール色素特有の 赤色系の鮮かな色相が得られ,媒染剤濃度 1-5g/,R Summary C o c h i n e a 1wa simporte di n t oJapant h r o u g hPor t u gue s eandDutc hi nt heErao fMomoyama,or i nt h el a t t e rh a l fo ft h e1 6t hc en t u r y. C o c h i n e a lw e r eus e df o rdye i n gf o rv e r yb r i l l ia n ts c a r 1e tan ti que c o a t swor no v e rt h earmor,whichweref a v o r e dbyHid e y o sh iToyot omi .Moreover,c o c h i ne a lwere us e df o rr e d d is hc o1 o r a ntf orove r-d ye i ngofy e l l o wc 1 0 thd y e dwit hagar d e n i at og e tr e d d i s hy e l l o w o ry e l l o w i s hr e dc 1 o t h. hed y e i n gw i t hc o ch i n ea lh a sb e e nu s e df o rma in ly s il kf i b e r s .However,I n Europea n I nJapan,t o ch i ne a1hasb e e nus e df o rt h edy e ingo fwoo1f i b e r sfromol dt ime s. Fort h edye i n gof c ou n t r ie s,c c o t t onf i b e r s,t hec o c h i n e a lha sb e e nus e da f t e rp r e l i m i nar yd y e i n gw i t ht a n n i n . 1) Thec o c h i n e a lc o l o r a n ts howsas pe c i f i cwavel e ng th c u r v e havi n g a maximum a b s o r p t i o n wavel e n g t ha ta p p r o x i m a t e 1 y277nm, 310nm, 470nm, 493nmand525nm.Al i n e a rp r o p r o ti on a lr e l a t i o n s h i pi sr e c o gn i ze dbetweenaεonc en t r at ionofc ol or an tanda b s o r b e n c y . ah i g h e s tdyeuptakei sr ec o gn i z e di n 2) I nt h edye i n go fs i l kf i b e r sw i t ht h ec o c h i n e a lc ol o r a n t o, t h ed y e i n gb a t ho fa p p r o x i m a t e l ypH3,a t3 0Candf o rd u r a t i o no fd y e i n gtimeo fl o n g e rt h a ns i x t y m i n u t e s .I ni sr e c o g n i z e dt h a tt h ed y eu p tak ei n c r e a s e si nl i n e a rp rop o r t i o nt ot hec onc en t r a t i o no f " e i n gb a t h . c ol o r an ti nt h edy 3) I nt hedye i n gofs i l kf i be r sw i t hc o c h i ne alc o l or an ti ncombinationw i t hav a r i e t yo fmetal 1i c h ehued e p e n d sont h ek i n do fmordan t .T i nmordantg i v e sab r i l l i a n tr e d d is hhue s al t sa smordant,t s p e c i f i ct ot h ec o ch i n e a lc o l o r a n t .Theh i g h e s td y euptak ei sr e c o g n i z e da tt h ec o n c e n t r a t i o no fmotd o a n to f3-5g/1 ,a ta p p rox i m a t e 1 ypH3,a tat e m p e r a t u r eo f6 0C,f o rt h ed u r a t iono fd y e i n gt i m e ofmoret h a nt h i r t yminut e s,wheret h eremovalo fc o l o r a n td e c r e a s e sandt h ee f f e c to fac o l o rf i x i n g i sr e c o g n i z e d . ・ 4 0 四 (8) J &
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