コチニール色素による絹の染色に関する研究

-27大阪市立大学生活科学部紀要・第4
1巻 (1
9
9
3)
コチニール色素による絹の染色に関する研究
皆川
基・原田智子・谷先リエ・山下千代
S
t
u
d
i
e
sontheDyeingo
fS
i
l
kF
i
b
e
rwitht
h
eColoranto
fCochineal
MOTOI MINAGAWA,TOMOKO HARADA,RIE TANIZAKl a
ndCHIYO YAMASHITA
媒 染 お よ び 蘇 芳 ・ ア ル ミ ニ ウ ム ・ す ず 媒 染 で は 493nm
1.はじめに
に,わずかに黄味を帯びた赤色の西洋茜および印度茜・
アルミニウム媒染では 6
13nmに
,
赤色は三原色の一つで,彩度が高く,原始人や子供が
わずかに紫味を帯び
最も興味をもっ色とされ,また人間の血の色や燃える火
,
た赤色の蘇芳・アルミニウム媒染では 638nmに
の色など興奮,情熱,暖かさを与える色とされてきた。
紫味を帯びた赤色の紅花では 700nmに そ れ ぞ れ 主 波 長
また赤色は緋色,紅色,朱色などの総称として 一般に用
が認められる。また鮮かな赤色を示すコチニール・すず
いられ,常にはなやかな雰囲気を伴うためいつも色の主
媒染の絹布では最も高い彩度を示すことが認められる
役を果たしている O
(A,
B)。
また
コチニールは数少ない赤色系の動物起源、
の生体色素で,
古くから羊毛の染色に広く用いられてきたが,
日本では
江戸時代からとり入れられ,多色性色素としての特徴を
0.8
生かした絹の染色に応用されてきた。
コチニール色素による絹 の淡色
濃色染めにおいては
0
.
7
すず媒染で鮮かな桜色から赤色に,アルミニウム媒染で
0
.
6
は赤昧の紫色に,銅およびクロム媒染では紫色に,また
鉄媒染では灰色から黒色にそれぞれ染め上げられる。こ
0.
5
のほかコチニール色素は希土類元素と反応して種々の色
y
を呈する特徴を有するため,原料あるいは染め色時の水
0
.
4
質などによって微妙な影響をうける。
6_
_
_
コチニール,蘇芳,紅花,西洋茜,印度茜など代表的
一
一ご・
・一
一
一一5
2一
0
.3
3一
一
一一
・
な赤色系の天然色素によって染色された絹布を色差計で
差異が認められ,黄味の少ない赤色のコチニール・すず
0.
'
。
A. 赤色系天然色素で染色した絹布の表色値
コチニール
蘇芳
化
第一
ス ズクエン酸
塩
化
第一ス
ズ 最
み
ょう
I
1ん 塩
0
.
48
1
y
0
.
2
8
2
Y(反射率) 9.
41
主波長
493nm
刺激純度 4
5.5%
x
0.
44
1
0
.
2
9
2
1
3
.
5
7
493nm
34.0%
0
.
47
9
0
.
2
9
5
1
5
.
8
7
700nm
39.8%
木灰
47
2
0.
0.
3
2
0
1
1
.1
1
613nm
4
4.
1
%
0.
46
5
0
.
3
2
0
1
2
.
6
3
0
.
2
0
.
3
0
.4
0
.
5
0
.
6
B
. 赤色系天然色素で染色した絹布の色
1:コチニール ・ス ズ媒染
2 :蘇芳 ・アル ミニウム媒染
3 :蘇芳・アル ミニウム・スズ媒染
4 :転花
5 :西洋茜 ・アル ミニウム媒染
6 :印度茜・アルミニウム媒染
613n~
42.2%
Ea
ノ
、
EE唱B
〆,‘、
,
.
.
.
.
0.
45
9
0
.
3
0
2
7.
5
5
638nm
36.0%
木灰
0.
1
X
紅花(花餅) 西洋茜 印度酋
最
み
ょ
う1
Iん 氷酢酸 震みょう 1
Iん 焼
み
ょ うI
f
ん
氷酢酸
媒染剤
蘇芳
、--1
0
.
2
測定し,色度図上にプロットすると,赤の中にも微妙な
使用染料
2一
一- 4
0
.
7
- 28-
生活環境学
3
. 実験方法
3.
1 コチニール色素抽出液の調製
還流冷却器をつけた 3つ口フラスコ抽出装置を用い,
細かく粉砕したコチニールを蒸留水によって下記に示す
条件で熱抽出した後,ガラスフィルターで漉過し,浮遊
物を除去して色素抽出液を調製した 。
(他出条件)
コチニール:1
0
g/ P
_
抽出温度
5C以上
:9
抽出時間
2
0分間
:1
0
3
.
2 コチニール色素による染色ならびに脱着方法
aiyo I
ncubator M -3
0
0型
染色(または脱着)は T
(振盗回数:60+2回/分)を用い,下記に示す条件で
c
o
c
h
i
n
e
a
l
)
写真 1 コチニ ール C
それぞれ行った。
(染色条件)
染 色 液 : 1:5
0 (対繊維)
o
c
染色温度:60+2
本研究では鮮かな赤色のコチニール色素に注目し,コ
チニール色素による絹の染色に関する基礎的研究を行い,
染色時間:6
0分間
またコチニール色素特有の美しい色相を生かした色止め
染浴の pH:p
H3.6
方法についても合わせ検討した。
(
脱着条件)
蒸 留 水 : 1:5
0 (対繊維)
o
c
脱着温度:90+2
2
.材料
脱着時間:6
0分間
2
1
dx4本合色
繊維材料としては完全精練した絹糸 (
100T/m, 7
0回繊度糸)を使用した。
3
.
3 金属塩による後媒染方法
色素としてはメキシコ産コチニールを使用した(写真 ・
1)
3
.
2と同様に, TaiyoIncubatorM -3
0
0型 ( 振 漫 回
数 :60+2回/分)を用い,下記に示す条件で行った。
コチニール (
c
o
c
h
i
n
e
a
l
) はメキシコ,中央アメリカ,
(媒染条件)
蒸 留 水 : 1:5
0 (対繊 維)
puntia
南 ア メ リ カ な ど に 産 す る サ ボ テ ン 科 の 植 物 (O
媒染剤濃度:0.
5
7
.
5
g/ P
_
c
o
c
c
i
n
e
l
l
i
f
e
r
aM
i
l
l
e
r, Opuntiatuna M
i
l
l
e
rなど)
媒 染 温 度 :4
0士 2C
に寄生するカイガラムシ科 C
Coccusc
a
c
t
iL
.
) のエン
媒 染 時 間 :3
0分間
,
0
Dactyl
opiusc
o
c
c
u
sCosta) の雌虫を乾燥し
ジムシ C
た虫体で,その虫体にはアントラキノン系の生体色素カ
3
.
4 染着量ならびに脱着量の測定
ルミン酸(約 10%) のほか脂肪,
島津 2波長/ダフ。
ルビーム自記分光光度計 UV-3
0
0
0
ロウなどが含ま れてい
る
。
型を用い,コチニール色素抽出液の紫外部ならびに可視
量線を求め,残液比色法により染色前 ・後の染液の吸光
H
C
M
0
c
qH
CO
ω人l
v
'
m
o人日﹀"
o
HB
,
m人 凡 v
ω
部吸収スペクトルの極大吸収波長とその波長における検
度と脱着後の吸光度を測定し,次式により繊維 19あた
りの色素の染着量および脱着量 Cmg) を 求 め た 。 な お
コチニール色素はカル ミン酸換算値で示した。
l
)/D W
染着量 (mg/g繊 維)ニ C (D一 D
carminica
c
i
d(
C
Z
Z
H
Z
0
0
1
3
)
脱着量 (mg/g繊維) =CDz) / DW
D:染色前の染液 の吸光度
媒染剤としてはカリウム明ばん,酢酸第 2クロム,酢
D,:染色後の染液の吸光度
酸鉄,酢酸銅,酢酸ストロンチウム,スズ酸ナトリウム,
以:脱着後の残液の吸光度
塩化ランタンなどの化学試薬を使用した。
C:染液中の色素量 (rng)
(2)
』邑- .
-29-
皆川他:絹の染色
ω
1
.
0
0
.
6
‘
峨
h
光
光
度
度
312nm
L
0.3
od
{トm
-}
4mg/l00ml
0m
l
2mg/l0
l
m
g
/l
00
t
n
l
0.
5
mG
l100ml
0
230
300
(nm)
1
1~
0
200
250
長
波
30?nm> 340
巴
)
0
.
8
臼
.
t
o
340
277nm
277nm
217nm
吸
光
吸
度
光
画、
,
度
←
0.
4
01
0
.
5
312nm
0
・
J
(
﹄
1
m
o
d'
v
。
0.
41100
釈 悩
希
0.8/100
8
。
図 1 希釈倍率の異なるコチニール抽出液の
(A)紫外部吸収ス ペク
度
3
4
(m g/ l00ml)
A)紫外部吸収ス
図 3 カルミン酸 (
トル の特 性 波
長曲線ならびに (B) 検 量 線
ペク トルの特性波長曲線な らび
(B) 検 量 線
ω
.
10
•
2
ω
0
.
8
吸
‘
*
k
1
t
度
度
0.
4
(↑mod-)
,
0
.
5
。
ト-
01
。
400
。
亙75400
(nm)
波
o
.
500
長
量
産
600
倒
0
.
9
(
8
)
‘
k
(0m)
‘
E
光
.0.5
491nm
469nm
(
↑
由
。
*
.0
.
5
.
.
1/100
駅
21官
。
・
3/100
'
v
o
d-
︹﹄﹁由
41V
。
4/100
。
B
図 2 希釈倍率の異なるコチニール抽出液の
(A) 可視部吸収スペクトルの特性波長
•z
5
(m<</lOOml)
10
図4
' カル ミン 酸 (A)可視部吸収ス ペ
クトルの特性波長曲線ならびに
(B) 検 量 線
曲線ならびに (B) 検 量 線
(3)
環
活
学
生
-3
0-
境
W:繊維の重量 (g)
1
.2
567nm
4.実験結果およびその考察
m
nH
フ﹄
ハ
ヨ
u
v-
4n
寸
まず島津 2波長/ダフeルビーム自記分光光度計
I
つI
﹀
ハ
AU
4.
1 コチニール色素の性状について
吸
光
3
0
0
0
型を用い,コチニ ール色素抽出液の紫外部ならびに
可視部吸収スペクトルの特性波長曲線とその極大吸収波
度
pHl0
.50
0.
6
(ト。o
d
)
長における色素濃度と吸光度との関係についてみると,
図 1, 2に示すように,いずれの濃度においても紫外部
, 277nm
, および~310nm 付
吸収スペクトルでは 217nm
近に,また可視部吸収スペクトルでは 470nm, 495nm
525nm付 近 に そ れ ぞ れ 極 大 吸 収 波 長 を 示 し , 極
および、
大吸収波長における色素濃度と吸光度との聞にはいずれ
0
390
も直線的な比例関係を示すことが認められる。
一方
,
450
500
波
長
コチニール色素の主成分であるカルミン酸の紫
外部ならびに可視部吸収スペクトルについてみると,図 ・
3, 4に示すように,紫外部では 277nmおよび、
312nm
550
(n m )
図 5 PHの異なるコチニ ール抽出液の可視部吸収スペ
クトルの特性波長曲線
付近に,また可視部では 469nm
, 491nmおよび、
524nm
.
1
0
付近にそれぞれ極大吸収波長を示し,極大吸収波長にお
ける色素濃度と吸光度との聞にはいずれも直線的な比例
関係を示すことが認められる。
吸
このようにコチニール色素抽出液はカルミン酸水溶液
光
の特性波長曲線にほぼ一致することが認められるので,
度
以下の実験ではコチニール色素の染着量および脱着量は
0.5
(トoof
-)
325nm
カルミン酸換算値で示した。
4.
2 コチニール色素の抽出について
t
.
.
.
_
且H10.00
H7.08
48
pH6.
pH5.75
H5.30
H4.
11
pH3.58
コチニール色素の主成分カルミン酸は赤色柱状品で水
水酸化アルカリ水溶液などに易溶の動物色素で,また水
.
0
200
溶液の pHによって色相に大きな変化が認められる(図 ・
5) が,酸性
中性領域では紫外部吸収スペクトルの特
250
波
畏
300
(nm )
340
図 6 PHの異なるコチニール抽出液の紫外部吸収スペ
クトルの特性波長曲線
- J
、
性波長曲線にほとんど変化がなく, 277nm付 近 に 極 大
,
)。
吸収波長を示すことが認められる(図 ・6
コチニール色素の抽出については従来から熱水による
吸
技法が示されている。そこで本研究ではまず抽出温度が
光
コチニール色素抽出液中の色素濃度におよぼす影響につ
度
いてみる,図 ・7に示すように,抽出温度を高めると抽
出液中の色素濃度は増大するが, 7
0C以上では色素量の
0
増加の割合いが少なくなることが認められる。
0.6
.
-
-0
.
3
ト
c')
o
'
、
了
5Cと一定にし, コチニール色素の抽
また抽出温度を 9
0
。
出時間と抽出液中の色素濃度との関係についてみると,
0分間以下の短時間抽出で色素は
図 ・8に示すように, 3
0分間以上の抽出では色素の抽出
急激に溶出されるが, 3
'
.
e
20
占自
fA
40
度
60
C
¥
:
)
80
図 7 コチニール色素抽出温度と吸光度の関係
1
、・
、
、
割合が減少し,抽出時間にともなって抽出液中の色素濃
j 6・
・
.
度が増す傾向が認められる。
も
、
ニ
&
3 J
?
,
.'ー
(4)
-3
1-
皆川 他 :絹 の染色
.
15
50
吸
~
光1
.0
ひ---0 脱 箸 量
:40ト
•
脱
者
度
f
0--0 染 着 量
、
き30
忌0.5
ロ1
0
g
/
、
-
ゑ20
i
往
o
60
抽 出 時
(m in)
間
、
-
1
20
1
0
図 8 コチ ニール色素抽出時間と吸光度 の関係
0 0 0 -_ _
・・・
・
) 嶋一一0-時
一0
100
o
0ー ベ コ 染 着 量
40
60
温
度
100
脱着量
図1
0 コチニ ールの染色温度が絹繊維 の染着量ならび に
脱着量 に及ぼす影響
50
仇民脱
mg/g繊維 )
〆町、
n
V
5
染
o.
nunv
JV
ス
-脱着量︿ mg/﹄
g繊維﹀
つ
140
,
。
CC)
80
ロ
染 着量・脱 着 量
。--0
20
0.‘ー
‘・
2
4
PH
.‘“・
6
1
0
e
0
ー
ー
ー
『ー
ー
ー
ー
ー
『
。
ー
0
…
0
ー
ー
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
_
,
-
。
図 9 コチニール染浴中の PHが絹繊維の染着量 な らび
に脱着量に及ぼす影響
60
染色時間 (min)
120
1 コチニール の染色時聞が絹繊維 の染着量 ならびに
図1
脱着量 に及ぼす影響
したが って本研究ではコチニール色素の抽 出は抽出温
5Cと一定にし , 1
2
0分間抽出を行 った が , 濃 色 染
度を 9
0
5g/i濃度以下の炭酸 ナ ト リ ウ ム 溶
3付近の染浴で最も高い染着量 を示 し,染浴 の pHが中
液を用いる短時間の熱抽 出方法も必要となる 。 なおアル
性側に移行すると.染着量が急激に低下することが認め
カ リ抽 出法の場合はできるだけ抽 出温度を 低 く し 抽 出
られる 。
めを考慮すると,
また染色絹から の色素 の脱着量 につ いてみると, .染着
後,直ちに抽出 液を酸性に調製する。
量と同様に染浴の pHが中性側 に移行するほど減少する
4
.
3 コチニール色素による絹の染色について
6%から 2
0%と増
が,色素 の脱落の割合すなわち脱着率 1
まず規定条件下で調 製 されたコチ ニ ー ル色素の染浴
し, pHが中性側 に移行す るほど色落ちしやすくなるこ
pH が絹 の染着量およ び脱着量にお よぼす影響について
とが認め られ る
。
み ると ,図・ 9に示す よ うに, コチニー ル色素 で は pH
(5)
長
つぎに上記と同様,
コチ ニー ル色素抽出液を用い,染
活
環
学
生
-3
2-
境
色温度が絹の染着量および脱着量におよぼす影響につい
なって染着量が直線的な比例関係をも って増すことが認
てみると,図 ・1
0に示すように,コチニール色素では 3
0
められる 。
℃付近の染色温度で最も高い染着量を 示 し,色素の脱着
量 も染色温度が高くなるにつれてわずかに低下 するこ と
4.
4 コチニール色素の色止め効果について
が認められる。また色素の脱落の割合(脱着率)からみ
コチニール色素による絹の染色においては色素特有の
4,
_
, 5%
減少する傾
美しい赤色系 の色相が得られるが,繊維基質に対する色
向が認められ,わずかに色落ちしに くく なることが認め
素の結合が比較的弱 く,特に濃色染めでは色落ちが見立
られる 。
つ場合が多し、。 そこで,
ると ,染色温度が高くなるにつれて
同様に染色時間がコチ ニー ル色素 の絹 へ の染着量およ
コチニ ール色素特有の色相の変
化をともなわない色止め効果を目的と して各種金属塩に
1に示す
び脱着量 におよぼす影響についてみると,図 ・1
よる後媒染を試 みた。
0分間以上
ように, 染着量は染色時間とともに増加し, 6
まずすず,アル ミニウム,鉄,銅,
クロム,
ストロン
ではほぼ一定の値を示 すことが認められる 。 また脱着量
チウムおよびランタンなどの金属塩を用いたコチニ ール
についてみると , 染着量の増加にともな ってわずかに増
色素抽出液の紫外部ならびに可視部吸収スペクトルの特
す傾向が認められるが, 色素の脱落の割合からみるとほ
3
,1
4に示 す よ う に ,
性波長曲線に つ いてみると,図 ・1
とんど変化 が認められない。
S
n)では 277nm, 320nm, 475n m および~497nm
すず (
また染浴中の色素濃度がコチニール色素の絹へ の染着
に,アル ミニウム (
A
l)では 285nm, 490nm, 517nm
2に示 すように,染
量および、
脱着量に つ いてみる,図 ・1
および、
547nmに,鉄 (
Fe+2
) では 294nmおよび;
460nm
浴中 の色素濃度を増すと,染着量は直線的な比例関係を
1
.
8
もって増大することが認められる 。一方,色素の脱着量
についてみると,染浴中の色素濃度が増すに つれてわず‘
かに多 くなり , 色落ちしやすくなる傾向が認められる。
このようにコチニール色素による絹の染色においては
1
,
5
uで,
0C,染色時間 6
0分間五
染浴 pH3付近,染色温度3
0
最も高い染着量 を示し,染浴中の色素濃度の増大にとも
吸
150
光
、.
・
4
'JiHpbvah
t・
脱着量
ハU R v n v
ハ) 7 t
0.
5
と
!
只V
段着量・脱着量︿ mg/g繊維﹀
(ト。。︺l )
125
…
。O
.
‘
,
・
度
。ーベコ祭着量
、
、'
ー
.
・
2
、
.
o、、
'
γ
.
0
25
波
.
.
l j 川 ・4 JHR
. r f uJ
.
. こλ
l、 :a-・ 33 :
:
2・
・
図1
3 媒染剤の種類がコチニール色素溶液の紫外部吸収
- J
3/4
スペク トルの特性波長曲線に及ぼす影響
1 (原液)
媒梁舟J
I
希釈倍率
波長
に脱着量に及ぼす影響
2
8
5
2
5
0 2
0
6
2
7
5 2
2
0 2
7
7
2
7
8
2
21
2
7
4 2
9
4
2
7
9 3
2
0
3
2
7
2
7
7
3
1
5
、
・e
3
2
0
a'
(
nm)
a
Al b
C
rc
F
ed
C
ue
S
rf
S
ng
L
ah
コチニール
、
,
図1
2 コチニール染浴中 の濃度が絹繊維 の染着量なら び
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- 33-
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波 長 (
nm)
図1
4 媒染剤の種類がコチニール色素溶液の可視部吸収スペクトルの特性波長曲線に及ぼす影響
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5
すずの媒染剤濃度を増すと急激に色素の脱着量が減少し,
3
脱者量
1g/ R以 上 の 媒 染 剤 濃 度 で す ぐ れ た 色 止 め 効 果 が 認 め
られる 。
以上のようにコチニール色素による絹の染色において
は色素の結合が比較的弱 く,色落ちしやすい欠点が認め
m
,
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/
られるが,すず媒染(後媒染)によりコチニール色素特
1
議
有の美しい色相を生かした色止め効果が明らかになった。
80.5
また多色性色素としてのコチニール色素の特性を生かし
o
0.5 1
:
3
5
た媒染および、
色止め効果については今後の研究課題と考
7
.
5
篠染剤濃度 (
'
1/1
)
える。
図1
5 媒 染 剤 〈塩 化 第二 すず)濃度の異なるコチニール
色素抽出液が絹繊維の脱着におよぼす影響
5. 総 括
コチニールは桃山時代にポルトカソレ人やオランダ人に
に,銅
(
C
u
) では 275nmおよび、581nmに
, クロム (
C
r
)
よって輸入され,豊臣秀吉が愛用した狸々緋(非常に鮮
では 2
50nm, 274nm, 467nm および~493nm に,ストロ
かな濃い緋色)の陣羽織の染色に使用された 。 またコチ
(
8け で は 279nm, 320nm, 523nmおよび'
5
5
7
ニールは江戸末期には梶子果実で黄色に下染めした上に
L
a
) で、は 278nm, 327nm, 4
9
6
nmに,またランタン (
重ね染めされ,赤黄色から黄赤色などに染め上げる赤色
nm, 521nmおよび、
557nm付 近 に そ れ ぞ れ 極 大 吸 収 波
系色素として使用されていた 。
ンチウム
コチニール色素による染色は日本では絹染めが中心に
長を示し,すず塩を除く,他の金属塩ではコチニール色
なっていたが,
素特有の色相が複雑に変化することが認められる。
そこで塩化第 2すずを媒染剤としたすず媒染(後媒染)
られ,また綿染めではタンニンで下染めした後に用いら
れていた。
を行い,媒染剤濃度がコチニール色素の脱着量におよぼ
す影響についてみると,図・
ヨーロ ッパで は古くから羊毛染めに用い
1
5に示すように,塩化第 2
Hh
・
,
.
'
(7)
1)コチニ ール色素の紫外部ならびに可視部吸収ス ぺ
-34-
生活環境学
クトルについてみると, 2
77nm,3
1
0nm,470nm, 4
9
5
で,色素の脱落が減少しすぐれた色止め効果が認めら
525nm付近にそれぞれ極第吸収波長をもっ
nmおよび‘
れる 。
特性波長曲線を示し,極大吸収波長における色素濃度と
6. 文 献
吸光度との聞には直線的な比例関係を示すことが認めら
1)山崎青樹:草木染の事典(東京堂出版)p
.
1
7,
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1
8,
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1
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1
9
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4)
れる 。
2) コチニール色素による絹 の染色においては染浴
pH3付近,染色温度3
0C付近,染色時間6
0分間以上で,
2)吉岡常雄:天然、
染料の研究 一理論と実際染色法 (
光
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村推古書院) p
.
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3(
1
9
7
4)
最も高い染着量を示し,染浴中の色素濃度の増大にとも
I
I
3)上村六朗ほか:日本染織辞典 (東京堂 出版) p
.7
なって染着量が直接的な比例関係をもって増すことが認
I
8
6(
1
9
7
9)
められる。
4)中江克己編 :染織事典 (泰流社) p.
1
4,
1
8
8(
1
9
8
1)
5)神戸文子 :暮らしの色彩(保育社)p
.
2
0
2
3(
1
9
6
8
)
(平成 5年 1
0月1
2日受理)
3) 各種金属塩を媒染剤と する コチニール色素によ る
絹の染色においてはそれぞれの媒染剤で色相に複雑な変
化が認められるが,すず媒染ではコチニール色素特有の
赤色系の鮮かな色相が得られ,媒染剤濃度 1-5g/,R
Summary
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