ニコチンアミドによる妊娠高血圧腎症の新規治療法の開発

東北大学病院臨床研究推進センター
Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital
文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム
ニコチンアミドによる妊娠高血圧腎症の新規治療法の開発
研究概要
プロジェクト責任者:髙橋信行
妊娠高血圧腎症 (preeclampsia, PE) は、妊娠にともなっておこる蛋白尿を伴った高血
圧で、妊婦死亡、胎児死亡、未熟児発生の主因である。根治的薬物療法はなく、胎児胎
盤娩出以外に根治療法はない。我々は、マウスモデルを用いて、ニコチンアミド (Nam)
がPEを改善すること、妊娠を維持し、胎児発育不を改善することを明らかにした。 Nam
はPEの病態の根幹を治療でき、妊婦に投与可能な初めての薬物である。PMDAの対面
助言に基づき、 Nam測定法の開発とそのバリデーションを終了した。トキシコキネティク
スを27年3月終了予定。今後、生殖発生毒性試験を行って、PⅠ/Ⅱ治験を行い、臨床
POC取得を目指す。
薬学研究科 臨床薬学分野
髙橋信行
PE治療の現状と課題
➣妊娠の5~8% (日本国内で年間約6万人) に発症。妊娠年齢の上昇に伴い、患者数増加
➣病因不明で、妊婦死亡・胎児死亡・未熟児発生の主因
➣根治的薬物療法はなく、降圧薬で母体降圧・救命ができても、血管内皮障害 (endotheliosis) が改善しないため、胎児胎盤系
への血流が減少し、子宮内環境が悪化することが多い。分娩による病的胎盤除去が唯一の治療法。
➣高血圧のみならず、 endotheliosisを改善し、PEに伴う胎児発育不全・流早産を改善できる薬物治療は医療現場において長
年にわたり渇望されてきた。
非臨床的POC
➣血管内皮増殖因子 (VEGF) 受容体の可溶型アイソフォームsFlt-1 を過剰発現させたマウスにおこるendotheliosis・高血圧
・蛋白尿・流早産・胎児発育不全をNamが著明に改善することを明らかにした (特許申請済)。
➣ sFlt-1 上昇を伴わないPEもある。そこで、 血中sFlt-1 上昇を起こさず、trophoblast (栄養芽細胞) の異常による着床不全・
胎盤発育不全・PEをおこすマウスにおいても、NamがPEおよび妊娠の転機を改善することを明らかにした。
PMDAとの事前面談・対面助言
➣NamはNam欠乏症や経口摂取の不充分な妊産婦に投与されてきたが、治験開始前にトキシコキネティクス(TK)および生
殖発生毒性試験 ICH-Ⅱ (出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験) を行うよう助言を受けた。
➣LC-MS/MSを用いた血中Nam定量法を確立し、そのバリデーションを終了した。その結果、TK用採血量を従来の半分にし、
同一動物での経時的採血・AUCの算出が可能であることを明らかにした。
➣妊娠および非妊娠雌ラットを用いたTKが進行中 (平成27年3月終了見込み) である。
➣ Nam作用機序の詳細を解明するよう助言を受け、現在研究中である。
薬事承認・保険医療化までの見通し
➣ 橋渡し研究シーズCに応募する。
➣生殖発生毒性試験 ICH-Ⅱを行う。
➣ PMDAと治験プロトコールの戦略相談を行い、治験届を提出。
➣医師主導治験 (Phase Ⅰ/Ⅱ) を行い、臨床的 POC を獲得し、
企業との提携を目指す。
H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34
生殖発生毒性試験
PⅠ/Ⅱ治験実施戦略策定
PⅠ/Ⅱプロトコール作成
治験届け提出・治験審査
PⅠ/Ⅱ治験
PⅢ治験実施戦略策定
PⅢプロトコール作成
治験届け提出・治験審査
PⅢ治験
企業交渉 ライセンスアウト
薬事申請・承認
保険医療化