橡 - さっぽろ自然調査館

帯 広 百年 記 念館 紀 要
第18号2000
北海道 における夏期 開花植物 の訪花昆虫相
Floralvisitorsof39plantsfloweringduringsummerinHokkaido.
渡 辺
修
・丹 羽
真 一
・渡 辺
展 之
※
OsamuWATANABE,Shin-ichiNIwAandNobuyukiWATANABE
ABSTRACT-weinvestigatedinsectfl・ralvisit・rs・n39plantsfl・wering
duringsummerinHokkaido,withrespecttofloralmorphologies.Ineachobservation,
insectswerecategorizedasbumblebees,wasps,ants,otherhymenoptera,dipteral
lepidopteraandcoleoptera.Furthermore,bumblebeesweredividedintotwotypes,
short-tonguespeciesandlong-tonguespecies.Theformerincluded、80吻
s6z卿)ozo(9ηsゑ∫and1ヲ.s6乃z6多z6ん
ろ%s勿
φ06γ 勿
ガ,andthelatterincluded、8.01ガz/6zsz4s乙1ガz/67∫z4sand
β.夕6206ηs空.Morethanonefloralvisitorwasobservedontheflowersof29plant
species,except10species.Aηg61ゼ6α%7s勿
αandR%4ろ6面
α
砺 吻werevisitedmore
frequentlythanotherspecies.Smallbees,ants,anddipterafavoredupward
dish-shapedflowers,suchasEγ
匁 θγoη 侃 η襯s,4gγ
伽 α吻毎 ブ砂 αηゴ6α,and7bγ
ゴ1ゑsメ
砂o痂6α.
Long-tonguebumblebeesfavoredsidewiseandlargetube-shapedflowers,suchas
地 プ)6たzsz4{うs〔∼
∬ げ1ゑs,1〃 ψ α'ガ
〔
ηz8クzo1ゴ
ーム
αクzg6z6,and/160η
露z4〃z夕6so6ηs6.Short-tongue
bumblebeesandLepidopterafavoredsmalltube-andbutterfly-shapedflowers,suchas
/1s'6η66α6and」
乙¢gπ痂 ηosαθ.Smallnumbersofwaspsandcoleopterawereobservedon
flowersofPo偲o鰍
辮sα6加
伽6ηs6andσ
初 ろ6〃舵 η6.Insummer,manyplantspecies
floweredandmanyinsectspeciesvisitedtheseflowers.Althoughthesecombinations
lookedapparentlydisorderly,relationshipbetweenflowersandinsectsisconsiderably
orderlyindeed.Thisreasonisthataccessibilitytofloralnectarand/orpollenforeach
insectisvariedbymorphologiesofbothflowersandinsectsthemselves.
は
花 の形 や 色 な ど の形 態 が,そ
じ
め
に
の花 の 花 粉 を運 搬 す る昆 虫 の種 類 ・行 動 と深 い 関 わ り を持 って
い る こ とは 古 くか ら知 られ て い る(河 野 ・井 上1992)。
花 の 形 態 の う ち,色
どに つ い て特 定 の 昆 虫相 との 結 びつ きが 確 認 さ れ て お り(田 中1997),例
・深 さ ・花 の 向 き な
え ば 口吻 が3-5mmと
短 いハ ナ ア ブ 類 が 訪 花 す る花 に は① 上 向 きに 咲 く(止 ま りや す い)② 穂 状 の 集合 花 で色 は 黄 色
か 白色(目
立 つ)③
あ る(田 中1999)。
しべ の 長 さ は 口吻 とほ ぼ 同 じ(腹 に 花 粉 を付 け や す い)と い っ た共 通 点 が
また 鈴 木(1992)は
花 昆 虫 相 を比較 して,そ
※ さ っぽ ろ 自然調 査 館
同 じ よ うな形 で 深 さ の み が 異 な るヤ マ ハ ッ カ属 の花 の訪
れ ぞ れ の 花 の 深 さに 合 っ た 口吻 を持 つ マ ル ハ ナ バ チ類 の み が 訪 花 ・送
札幌 市 厚 別 区青 葉 町4丁 目1
9
渡 辺 修 ・丹羽 真一 ・渡 辺 展之
北海 道 にお け る夏期 開花 植物 の訪 花 昆 虫相
粉 を行 な っ て い る こ と を確 認 して い る。
しか し花 と昆 虫 との結 び つ き は一 定 で は な く,さ ま ざ ま な条 件 の下 で 変 化 し う る。 植 物 側 と
昆 虫側 そ れ ぞれ の 目的 が 異 な る(送 粉 と採 餌)た
め に,昆
虫側 が 一 方 的 に利 益 を得 た り(盗 蜜
して送 粉 し な い),植 物 側 が一 方 的 に利 益 を得 た りす る(送 粉 させ るが 報 酬 を与 え な い)こ と も
よ く知 られ て い る(Higashietal.1988な
条 件(理
由)を
また,人
ど)。 場 所 に よ る訪 花 昆 虫 相 の変 化(違
い)や そ の
明 らか にす る こ とは 両 者 の 関係 を考 え る上 で 重 要 で あ る。
間 の諸 活 動 に伴 う帰化 植 物(ム
ハ ナ バ チ な ど)の 分 布 の拡 大 や,在
ラサ キ ツ メ クサ な ど)・帰 化 動 物(セ イ ヨウ オ オ マ ル
来 の訪 花 昆 虫 の生 息環 境 の 破 壊 な どに よ り,植 物 と訪 花 昆
虫 の 関 係 が 急 激 に 変 化 す る こ とが 考 え られ る。 特 に送 粉 者 と して 重要 なマ ルハ ナ バ チ 類 は社 会
性 で幼 虫 の養 育 を花 資源 の み に よ っ て行 な うため に,大 量 の 花 資 源 を必 要 と して お り,環 境 の
改 変 の影 響 を受 けや す い 。 そ して マ ル ハ ナ バ チ類 の 減 少 や 種 組 成 の 変 化 は,一 部 の 植 物 で は 結
実 率 の低 下 を招 くお そ れ が あ る(八 坂 ら1994な
ど)。 地 域 の訪 花 昆 虫相 を把 握 し,そ の変 化 を
モ ニ タ リン グす る こ とは生 態 系保 全 の 上 で も重要 で あ る。
さ っぽ ろ 自然 調査 館 で は,北 海 道 に生 育 す る植 物 の訪 花 昆 虫 相 につ い て 調 査 を行 な って きて
い る。 一 地 域 の植 物 相 全 般 に つ い て訪 花 昆 虫 相 を 明 らか に し た例 は 尾 瀬(田 中1998)・ 京 都 北 部
(加藤1993)な
どが あ るが 少 な く,地 域 ・季 節 を縦 断 して モニ タ リン グ して い くこ とで 生 育 植 物
の 生 態 的 資 料 の 収 集 を図 る こ とを 目的 として い る。
本 報 告 で は1999年
夏 期 に行 な っ た訪 花 昆 虫 調 査 の結 果 を紹 介 し,花 の形 態 と訪 花 昆 虫相 との
関係 に つ い て論 じ る。 夏 期 は 開 花植 物 が 多 く,重 要 な送 粉 者 で あ るマ ルハ ナ バ チ類 の働 きバ チ
個 体 数 が 多 く観 測 しや す い 時期 で あ り植 物 間 の 比 較 な どに 適 して い る。 本 調 査 の一 部 は 一 般 市
民 参 加 に よ る 自然 観 察 会 に お い て実 施 した もの で,自 然教 育 と環 境 調 査 を兼 ね た 試 み の 一 つ と
し て も報 告 す る。
な お,美 幌 町 に お け る調 査 は 美 幌博 物 館 の特 別 展 の ため の予 備 調 査 の一
一環 と し て行 な わ れ た
もの で あ る。 また 滝 川 公 園 に お け る調 査 は滝 川 美 術 自然 史館 主催 の 「た きか わ 自然 ガ イ ド」 の
観 察 会 内 で実 施 し た もの で,調 査 は市 民参 加 者 に よ っ て行 な われ た もの で あ る。 調 査 に 参 加 し
て い た だ い た 市 民 の 方 々 お よび 美 幌 博 物 館 の 山鹿 百 合 子 さん,滝
ん に感 謝 した い。 ま た,花 の 形 態 等 の分 類 は 田 中(1996)を
粉 学 会 会 員)に
川 美術 自然 史館 の 吉 住 晴 美 さ
参 照 す る と と もに 田 中 肇 さ ん(花
ア ドバ イ ス い た だ き,文 献 な どの ご教 示 もい た だ い た。 厚 く感 謝 し た い。
調査地 と対象植物
調 査 は1999年7月
査 で延 べ25回
∼9月 に北 海 道 内 の8ヶ 所 で 実 施 した(表1)。
各 調 査 地 で は1∼5回
の 調 査 を行 な った 。い ず れ の調 査 も天 候 が 晴 れ か らや や 曇 りの 日の10時
の調
∼17時
の 時 間 帯 で あ る が,新 得 町 の調 査 は35℃ 前 後 の 高 気 温 下 で 実 施 した。
札 幌 市 の東 部 緑 地 は市 街 地 の 東 端 に位 置す る 自然 林 を 主体 とす る緑 地 で ・ 調 査 は そ の 中の 二
次 的 な草 原 で マ メ科 植 物5種
を対 象 に行 な っ た。 新 得 町 で は,市 街 地 北 部 の 畑 地 お よび 人 工 林
に 囲 ま れ た低 木 群 落 周 辺 と,標 高 約300mの
新 内地 区 の ミズナ ラ を主体 とす る落 葉 広 葉 樹 林 内
の 林 道 周 辺 で,キ ツ リフネ ・オ オ ア ワ ダ チ ソ ウ ・ツ リガ ネ ニ ン ジ ン ・エ ゾ ニ ュ ウ等19種
10
を対 象
帯広 百 年 記念 館 紀要
第18号2000
に 実 施 した 。 美 幌 町 で は,市 街 地 南 端 に位 置 す る美 富 自然 公 園 ・柏 が 丘 自然 公 園 の 落 葉 広 葉 樹
二 次 林(低 地 林)に 接 す る雑 草群 落,美
林 道 周 辺,標
高約520mの
幌 川 上 流 部 標 高約220mの
古梅 地 区 の針 広 混 交 林 内 の
美 幌 峠 周 辺 の亜 高 山風 衝 草 原 の4ヶ 所 に お い て 実 施 した。 前3地
で は,ク サ フ ジ ・エ ゾ ト リカ ブ ト等9種
ダ チ ソ ウ等 の 帰 化 植 物3種
点
の 里 山 の在 来 植 物 お よび オ オハ ン ゴ ン ソ ウ ・オ オ ア ワ
を対 象 と し,美 幌 峠 で は 亜 高 山草 原 に 特 有 の ナ ガバ キ タア ザ ミ ・チ
シマ セ ンブ リ ・ミソ ガ ワ ソ ウ の3種
を対 象 と した 。 滝 川 市 で は 市 街 地 南 端 で 空知 川 左 岸 に位 置
す る滝 川 公 園 の林 道 沿 い の 高 茎 草 本 群 落 で,ジ
ャ コ ウ ソ ウ ・エ ゾ トリカ ブ ト ・キ ン ミズ ヒ キ等
8種 を対 象 に,観 察 会 に お い て参 加 者 に 調 査 方 法 を説 明 した後 に 調査 を行 な っ た 。
調 査 対 象 種 は全 体 で は 表2に 示 し た16科39種
で,そ れ ぞ れ1∼4回
の調 査 で 延 べ15∼135分
の観 察 を行 な っ た 。
表1.訪
花 昆 虫 調 査 の 概 要(1999年),調
査 地 の 環 境 と調 査 期 間
・対 象 種
Table1.Locationandvegetationofeachstudysite,thedates,observers,and
numbersoffloweringplantspeciesineachobservation.
市 町 村
場
所
標高
周辺 環境
月
日
時
刻
時間
調
査
者
調査
回数
2595展351540
1999/7/2513
1札
幌市
東部緑地40二
次 草原
2新
得町
市 街 地 北180低
木群 落 ・畑 地1999/8/811
05 12
55150丹
3新
得町
新内
300落
葉広葉樹林
1999/8/816
45 17
1530修
4美
幌町
美幌峠
520亜
高山草原
1999/8/2110
00
11
00180丹
羽
展
修
33
5美
幌町
美 富公 園
葉広葉樹林
1999/8/2115
35
16
0590丹
羽
展
修
34
2090丹
羽
展
山鹿35
30落
6美
幌町
柏 が丘公 園36落
葉広葉樹林
1999/8/2210
50 11
7美
幌町
美 幌川上流220針
広混交林
1999/8/2215
00 15
3060展
8滝
川市
滝川公 園
15 12
00136参
40低
木 群 落 ・人 工 林1999/9/511
調査植
物種数(分)
519
羽 ・修
11
25
・山 鹿
加者
58
2539
831
4市 町 村 ・8地 点
調査 方法 と分析 方法
1.訪
花 昆 虫の 観 察
各 調 査 で は,調 査 区 を設 定 して そ の 中 の 開花 植 物 全 て に つ い て,訪 花 した 昆 虫 の種 類 と個 体
数 を記 録 した。パ ッチ訪 花個 体 数 は調 査 区 内 に 入 って訪 花行 動 を行 な って 区 外 へ 出 る まで を1頭
と し,調 査 区 内 で の移 動 は頭 数 に 含 ま なか っ た 。 調 査 区 は1m×2m∼2m×5m程
度 の観察 し
や す い 大 きさ で任 意 に設 定 した 。 調 査 区 に よ っ て対 象 植 物 の 種 数 や 個 体 数,開 花 数 は 異 な り,
種 数 は1∼12種
で あ っ た。 調査 対 象 植 物 に つ い て は,調 査 区 内 の 花数 ・花 序 数 ・個 体 数 を カ ウ
ン ト した(一 部 は 抽 出 した サ ンプ ル の 花 序 数 ・花 数 か ら推 定 した)。 観 察 時 間 は基 本 的 に30分
と し,訪 花 頻 度 の低 か っ た 美 幌 峠 で は60分
区 に よっ て は1回
と した 。調 査 時 に は訪 花 昆 虫 の行 動 を観 察 し,調 査
の訪 花 あ た りの訪 花 花 序 数 や パ ッチ 内 で の 滞在 時 間 を記 録 した 。
訪 花 昆 虫 の 種 類 は 目視 に よ っ て 同 定 し,目 レベ ル で分 類 した 。 た だ し,膜 翅 目 につ い て は マ
ルハ ナ バ チ 類 ・セ イ ヨ ウ ミツバ チ ・ス ズ メバ チ 類 ・小 型ハ ナ バ チ 類 等 ・ア リ類 に 区分 し,マ ル
ハ ナ バ チ 類 につ い て は 可 能 な 限 り種 の 同定 を行 な っ た(ニ セ ハ イ イ ロ マ ル ハ ナ バ チ とハ イ イ ロ
マ ル ハ ナ バ チ に つ い て は 区別 して い な い が,北 海 道 の平 野 部 で は前 者 が 一 般 的 で あ る と い わ れ
て い る;鷲 谷 ほ か1997)。
1
1
渡辺 修 ・丹羽 真一 ・渡辺 展之
2.訪
北海 道 にお け る夏期 開花 植物 の 訪花 昆 虫相
花 頻 度 に よ る訪 花 昆 虫 タ イ プ の 分 類
訪 花 頻 度 はパ ッチ 訪 花 個 体 数 を観 察 時 間 で 除 して1時
間 あ た りの訪 花個 体 数 と して 求 め た。
また 複 数 の 調 査 で観 察 した植 物 に つ い て は,植 物 ご とにパ ッチ 訪 花 個 体 数 の 総 和 を求 め て 総 観
察 時 間 で除 し,そ の植 物 の 平 均 訪 花 頻 度 を求 め た 。
訪 花 昆 虫 を 「マ ルハ ナ バ チ 類 」 「そ の他 のハ チ 類 」 「ア リ類 」 「双 翅 目」 「鱗 翅 目」 「鞘翅 目」の
6つ に分 類 し,植 物 ご とに そ れ ぞ れ の 訪 花 昆 虫 全 体 に 占め る比 率 を求 め た 。 また,訪 花 回 数 が2
回以 上 の植 物 に お け る比率 を も とに ク ラ ス タ分 析(最
近 隣 法)を 行 な い,訪 花 昆 虫 相 に よ る タ
イ プ分 け を行 な っ た。 マ ル ハ ナ バ チ 類 に つ い て は,中 舌 長 な どか ら「長 舌 種 」(エ ゾ トラ マ ル ハ
ナ バ チ とエ ゾナ ガ マ ルハ ナ バ チ)と
1993)そ れ ぞ れ の 比 率 を求 め,マ
「短 舌 種 」(そ れ 以 外 の種)に 分 け て(鷲 谷 ほ か1997,井
上
ルハ ナバ チ の 訪 花 が見 られ た植 物 を 「長 舌 種 」の 訪 花 す る 「長
舌 型 」 と 「短 舌 種 」 の訪 花 す る 「短 舌 型 」 に タ イ プ分 け した。 また 結 果 との 比較 ・
参 照 の ため ,
過 去 の 訪 花 昆 虫 に関 す る文 献(田 中1970;1978;1988;1997;1998,田
藤 丸1996;1998)の
3.花
中 ・河 野1988,平 塚1988,
結 果 に つ い て も ま とめ て 示 した 。
の 形 態
調 査 時 に花 の外 見 上 の 特 徴 をス ケ ッ チ に よ り記 録 し,花 冠 の 開 口部 か ら蜜 腺 までの 深 さ(mm)
と花 冠 の 内径 を測 定 し た(図1)。
さ らに 色 ・形 ・向 き につ い て 観 察 及 び 図鑑 等 の 記 述 か ら分 類
した・ 色 は 白色 ・黄 色 ・紫 色 ・青 色 ・赤 色 の5つ
に,形
は皿 型 〔花 弁 が 開 い て い る〕・浅 筒 型 〔花
弁 基 部 が 筒 状 に な っ て お り浅 い〕・深 筒 型 ・管 型(花 冠 が 細 長 い)・ 仕 掛 型(距
蜜 腺 が 隠蔽 され て い る)の4つ
分 類 した(表2に
に,向
きは 上 向 き ・上 ∼横 向 き ・横 向 き ・横 ∼ 下 向 き の4つ に
各 植 物 の値 ・形 質 を示 し た)。
結
1.訪
・弁 等 に よ って
果
花 昆 虫相
訪 花 昆 虫 相 は 植 物 に よ っ て 大 き な 違 い が 見 ら れ た(表3お
よ び 図2)。
マ ル ハ ナ バ チ 類 は ,エ
ゾ ト リ カ ブ ト ・ジ ャ コ ウ ソ ウ ・キ ツ リ フ ネ な ど の 大 型 の 花 や エ ゾ ヤ マ ハ ギ ・ク サ フ ジ な ど マ メ
科 の 蝶 状 花(「 仕 掛 型 」)の 一 部,オ
オ ハ ン ゴ ン ソ ウ な ど キ ク科 の 筒 状 花(「 管 型 」)で 多 く観 察
さ れ た 。 そ の 多 く は 採 蜜 を行 な っ て い た 。 ハ ナ バ チ 類 は ヒ メ ジ ョ オ ン や ヤ ブ ジ ラ ミ ・ヤ マ ク ル
マ バ ナ な ど の 小 型 の 花(「 皿 型 」)で 多 く観 察 さ れ た 。 オ オ イ タ ド リで は ス ズ メ バ チ 類 が 観 察 さ
れ た 。 ア リ類 は エ ゾ ニ ュ ウ ・ヤ ブ ジ ラ ミの セ リ科 の 花 や オ オ ア ワ ダ チ ソ ウ で 観 察 さ れ た 。 ハ ナ
ァ ブ や ハ エ な ど の 双 翅 目 は,セ
か,マ
リ科 や キ ク科 の 皿 型 ・筒 状 花(「 管 型 」)の 集 合 花 で 特 に 多 い ほ
メ 科 を 除 くほ と ん ど の 植 物 で 観 察 さ れ た 。 そ の 多 くは 花 上 で 花 粉 を 採 餌 し て い た
キ チ ョ ウ な ど の 鱗 翅 目 は,ム
ハ ン ゴ ン ソ ウ な どの キ ク科
ラ サ キ ツ メ クサ ・ツ ル フ ジ バ カ マ な ど の マ メ 科 や ,ヨ
,エ
ゾ タ チ カ タ バ ミな ど で 観 察 さ れ,吸
は ハ ナ ム グ リ ・テ ン ト ウ ム シ の 仲 間 が エ ゾ ニ ュ ウ で,ヒ
で観 察 さ れ た の み だ っ た 。
12
。 モン
ブ スマ ソ ウ ・
蜜 行 動 が 見 られ た。 鞘 翅 目
メハ ナ カ ミキ リの仲 間 が ヒメ ジ ョオ ン
帯広 百 年 記 念館 紀 要
表2.対
象 種 の 一 覧,種
第18号2000
名 と花 の 形 態
Table2.Floralcharacteristicsofthefloweringplantsspeciesusedinthisstudy.
デ科
ミ ズ ヒ キA耐emroη
ガ〃forme赤
浅
上 横22
2タ
デ科
ミ ゾ ソ バPers'c∂r'∂
3タ
デ科
オ オ イ タ ド リReyηoα
肋 αηberg"赤
浅
上43
筒
4ナ
デ シ コ科
エ ゾ オ オ ヤ マハ コベSオe〃
上43
皿
上616
5キ
ンポ ウ ゲ 科
6オ
トギ リ ソ ウ 科
エ ゾ ト リ カ ブ トAcoη'ωmyezoeηse紫
仕
横 下1315
オ ト ギ リ ソ ウHyρer'cαmerecωm黄
皿
上615
7バ
ラ科
キ ン ミ ズ ヒ キAgr'moη'aノ
8マ
メ科
エ ゾ ヤ マ ハ ギLesρedez∂b'co'or紫
皿
上 横24.5
9マ
メ科
ム ラサ キ ウ マ ゴ ヤ シMed'c∂gos∂
10マ
メ科
11マ
メ科
12マ
オr'∂s∂cわ∂〃ηeηs's白
∂r'∂r∂d'∂ηs白
∂ρoη'c∂
黄
仕
横115
加aO紫
仕
上 横5.53
ム ラ サ キ ツ メク サ
τr'fo〃umρrafeηseO赤
仕
上 横62
シ ロツ メ クサ
τr'fo〃umreρeηsO白
仕
上 横42
メ科
ツ ル フ ジ バ カマ
γ1d∂ ∂moeη ∂
紫
仕
横 下125.5
13マ
メ科
ク サ フ ジWd∂cr∂cc∂
紫
仕
横 下93
14カ
タ バ ミ科
エ ゾ タ チ カ タ バ ミOx∂
黄
浅
上48
15フ
ウ ロソ ウ 科
ゲ ン ノ シ ョ ウ コGeraη'σmオ
白
皿
上510
16ツ
リフ ネ ソ ウ科
キ ツ リ フ ネ'mρaオ'eηsm〃
一オ
∂ηgere黄
17セ
リ科
エ ゾ ニ ュ ウAηge〃caαrs'η
∂
18セ
リ科
セ リOeηa耐
19セ
リ科
ヤ ブ ジ ラ ミ
20リ
ン ドウ科
チ シ マ セ ン ブ リSwerオ'∂
21シ
ソ科
ジ ャ コ ウ ソ ウCわe'omρs'smoscわ
22シ
ソ科
ヤ マ ク ル マ バ ナC〃mρod1αmcわ'ηeηsey∂
23シ
ソ科
エ ゾ シ ロ ネLycoρ
24シ
ソ 科
ミ ソガ ワ ソ ウ
25キ
キ ョウ 科
ツ リ ガ ネ ニ ン ジ ンAdeηoρ
26キ
ク科
ヤ マ ハ ハ コAηaρ
27キ
ク科
エ ゾ ゴ マ ナAsオerg'e加
28キ
ク科
ヨ ブ ス マ ソ ウC∂c∂"∂
29キ
ク科
マ ル バ ヒ レ ア ザ ミC'rs'αmgray∂
30キ
ク科
ヒ ヨ ド リ バ ナEσ
31キ
ク科
コ ウ ゾ リ ナPlcr'sわ'er∂do'desva乙gノ
32キ
ク 科
オ オ ハ ン ゴ ン ソ ウRudbecκ'∂'∂dη'∂
33キ
ク 科
ハ ナ ガ サ ギ クRudbeck'∂'∂dη'∂t∂va乙
34キ
ク 科
ナ ガ バ キ タ ア ザ ミS∂ussαre∂r'eder'v∂
35キ
ク科
ハ ン ゴ ン ソ ウSeηecloc∂
36キ
ク科
オ オ ア ワ ダ チ ソ ウSo〃d∂goglg∂
37キ
ク科
ヒ メ ジ ョ オ ンSオeη
∂cオ's∂ηηασsO白
浅
38ユ
リ科
タ チ ギ ボ ウ シHosオ
∂s'eわo/d"vaLrecオ1fo〃a紫
筒
39ツ
ユ ク サ科
ツ ユ ク サComme〃
〃sfoηf∂ η∂
加 ηberg〃
わeノ ∂γ
∂η'c∂
τor〃
心1aρoη'c∂
オeオr∂
ρeオ∂'∂
仕
横306
白
皿
上14
白
皿
上14
白
皿
上13
青
皿
上4.56
筒
横 下3510
∂fa紫
孔sん'beオcわeηse紫
管
横103
αsuη'〃orαs白
管
横22
∼eρeオ∂sσbsess〃's紫
筒
横2515
わor∂f〃 ρわy〃∂v∂ 乙 ノ∂ρoη'c∂
わ∂〃sm∂rg∂r'オ ∂ce∂
〃
青
筒5205
白
浅
上51
白
浅
上62
管
横 下82
管
上 横152
管
上 横102
わ∂sオ
∂オ∂sαbsρ.orleη オ
∂'心y∂乙orleη オ
∂〃s白
側m紫
ρ∂for'umc加eηsev∂
乙oρ ρos'オ'fo加m白
∂bresceηs黄
オ∂
○
黄
わorteηs'sO黄
乙yezoeηs's紫
ηη∂b'fo〃us黄
ηオe∂v∂L'e'oρ
η∂commuη1s青
わy〃∂
○
黄
浅
上152
管
上 横51
浅
上302
管
上132
管
上122
管
上 横82
仕
幅
1タ
名
態
さ
形 深
学
き
の 向
名
花 形
種
色
名
科
帰化
糞
上51
横 下3510
横105
13
渡 辺 修 ・丹 羽真 一
一・渡辺 展 之
表3.植
北海 道 に おけ る夏期 開 花植 物 の訪 花昆 虫相
物 別 の 訪 花 頻 度 と訪 花 昆 虫相
Table3.Visitationratesandindividualnumbersofallinsectsvisitingeach
floweringPlant.
種
訪
名
頻
麟 胞 体
数平 均
1ミ
ズ ヒ キ11500
2ミ
ゾ ソ バ13000.0@+@@
度
最低
オ イ タ ド リ12112
4エ
ゾ オ オ ヤ マ ハ コ ベ26011.00
5エ
ゾ
ト リ カ ブ
.06*121*
ト ギ リ ソ ウ13000
.0**
ン ミ ズ ヒ キ3851913
.46.021.6118
ゾ ヤ マ ハ ギ13036
.03
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20チ
マルハナ 他のハチ類 アリ類 双翅目 鱗翅目 鞘翅目
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最高
文献,*一 近縁種 の文 献)
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花
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1,977268
8.1
一一一一一一一一一一一一一一一一;」 一駒輯-層 暫一
証 一一9一 一一一一一一一・
帯広 百 年 記念 館 紀要
図1.主
第18号2000
要 な対 象 植 物 の 花 の 形態
Fig.1.111ustrationsofflowersoftypicalplantsinthisstudy.
15
渡辺 修 ・丹羽 真一 ・渡辺 展之
北海 道 にお け る夏期 開 花植 物 の訪花 昆 虫相
■ 懇 窺 回1ミ享類 團 アリ類 □ 双翅目 囮 鱗翅目 圏 鞘媚
エ ゾヤ マハギ
ナガバ キタ アザ ミ
クサフ ジ
エ ゾ トリカブ ト
キ ツ リフネ
チ シマ セ ンブ リ
ミソガ ワ ソウ
オオ アワダ チ ソウ
オオハ ンゴ ンソウ
キ ンミズ ヒキ
エ ゾ ゴマ ナ
ヒ メジ ョオン
エ ゾニ ュウ
ヤ ブ ジラミ
ゲ ン ノシ ョウコ
エ ゾ シロネ
エ ゾタチ カタバ ミ
ムラサ キ ウマ ゴヤシ
ヨブ スマ ソウ
ツルフ ジバカ マ
ハ ンゴ ンソウ
ム ラサキ ツ メクサ
ヤマ クルマバ ナ
0.00.2040.60.8
図2.主
要23種
の 訪 花 昆 虫 相 と そ の ク ラ ス タ 分 析 結 果(樹
Fig.2.Resultsofclusteranalysisoffloralvisitorsonmain23plants.
16
1.0
形 図)
帯 広 百 年 記念 館 紀要
o
30
第18号2000
30
課
25
25
20
20
雛
写
無15
囲「7
無15
嚢
竃
10
乙
灘
10
5
5
欝 '霧灘
轍
禍
配
00
00
麗
-5。10-15-20-25-30-35-40_45
卍
籔擁 霧
-5-10-15-20-25-30-35-40-45
訪花頻 度
訪 花 頻 度
(1)全
体
(2)マ
(1):byallinsects
図3.対
ル ハ ナ バ チ 類
(2):byonlybumblebees
象 植 物 の 訪 花 頻 度(1時
間 あ た り)の
頻 度 分 布
Fig.3.Frequencydistributionofvisitationratesoneachplant.
マ ル ハ ナ バ チ 類 は5種
類 が 確 認 さ れ た(い ず れ も働 き バ チ)。 種 類 相 は 植 物 に よ っ て 違 い が 見
ら れ た 。 エ ゾ トラ マ ル ハ ナ バ チ お よ び エ ゾ ナ ガ マ ル ハ ナ バ チ の 長 舌 型 の マ ル ハ ナ バ チ は,エ
ゾ
ト リ カ ブ ト ・ ミ ソ ガ ワ ソ ウ ・キ ツ リ フ ネ な ど の 大 型 で 深 筒 型 ま た は 仕 掛 型 の 花 の み で 観 察 さ れ
た 。 エ ゾ オ オ マ ル ハ ナ バ チ ・(ニ セ)ハ
の マ ル ハ ナ バ チ は,オ
イ イ ロ マ ル ハ ナ バ チ ・シ ュ レ ン ク マ ル ハ ナ バ チ の 短 舌 型
オ ハ ン ゴ ン ソ ウ ・オ オ ア ワ ダ チ ソ ウ な ど の 筒 状 花(「 管 型 」)や ク サ フ ジ
等 で 多 く観 察 さ れ た 。
2.訪
花 頻 度
各 植 物 の 訪 花 頻 度 お よび 訪 花 昆 虫相 を表3に,マ
ル ハ ナ バ チ類 の 訪 花 頻 度 お よ び種 類 を表4
に 示 した 。 訪 花 頻 度 は 対 象 植 物 の 平 均 で1時 間 あ た り8.1回 で,最
も高 い の は エ ゾ ニ ュ ウ の
46.0回 だ っ た。 ミズ ヒキ な ど10種 の 植 物 で は観 察 時 間 内 に訪 花 昆 虫 は観 察 され なか った 。訪 花
頻 度 は 図3(1)の
よ うな頻 度 分 布 を示 し,5回
未 満 の 植 物 が最 も 多か っ た 。
マ ル ハ ナバ チ 類 の 訪 花 頻 度 は 対 象 植 物 の 平 均 で1時 間 あ た り2 .2回 で,最
ン ゴ ン ソ ウ の16.0回
だ っ た。対 象 植 物 の69%の27種
が観 察 され ず,訪 花 頻 度 は 図3(2)の
3.各
も高 いの は オ オハ
で は観 察 時 間 内 にマ ル ハ ナ バ チ類 の訪 花
よ うな頻 度分 布 を示 した 。
植 物 の訪 花 昆 虫 タ イ プ
2回 以 上 の 訪 花 が 見 ら れ た23種
行 な っ た(図2右)。
チ 型(1種)の4タ
そ の 結 果,マ
の 植 物 に つ い て,昆
ル ハ ナ 型(9種)・
虫 グ ル ー プ 別 頻 度 を元 に ク ラス タ分 析 を
ア ブ 型(8種)・
チ ョ ウ 型(5種)・
ハナバ
イ プ に 大 き く分 か れ た 。 さ ら に マ ル ハ ナ 型 は マ ル ハ ナ バ チ の み(3種)・
ル ハ ナ バ チ と双 翅 目(5種)・
翅 目 とハ ナ バ チ 類(1種)・
多 グ ル ー プ(1種)の3タ
双 翅 目 と鱗 翅 目(1種)の3タ
イ プ,ア
ブ 型 は 双 翅 目 の み(6種)・
マ
双
イ プ に 分 け られ た 。
17
渡 辺 修 ・丹 羽真 一 ・渡辺 展之
表4.植
北海 道 に おけ る夏期 開 花植 物 の訪 花昆 虫相
物 別 の 訪 花 マ ル ハ ナ バ チ相 と頻 度
Table4.Visitationratesandindividualnumbersofbumblebeesvisitingeach
floweringPlant.
名
数
回
察間 ー
観 分
延時 ー
査数
調回
種
マル ハ ナ バ チ訪花 回数
訪 花 頻 度
1時 間
あたり
最低
頻度
最高
頻度
オオ
ハイ
シュ
トラ
5エ
ゾ トリカブ ト
2
75
6
4.81.3
1
30
3
6.0
3
30
1
2.0
1
8エ
ゾ ヤ マハ ギ
10ム
ラサ キ ツ メクサ1
11シ
ロツ メ クサ
1
30
1
2.0
12ツ
ル フ ジバ カ マ
1
30
0
0.0
13ク
サフジ
3
6**
@
1
十
2113.32.030.9
*
95
120
16キ
ツ リフ ネ
4
105
13
7.4
20チ
シ マ セ ンブ リ
1
60
2
2.0
21ジ
ャ コウ ソ ウ
1
45
1
1.3
24ミ
ソガ ワ ソ ウ
1
60
44.0
32オ
オ ハ ン ゴ ン ソ ウ1
30
816.0
34ナ
ガ バ キ タア ザ ミ1
60
36オ
オ ア ワ ダチ ソウ2
60
*「
10
ナガ
2
18
@
13@
2
1
13
2
16
5
14
12
2.0
2
2
1313.012
オ オ 」 は エ ゾ オ オ マ ル ハ ナ バ チ,「 ハ イ 」 は(ニ
セ)ハ
3
1
イ イ ロ ∼,「 シ ュ」 は シ ュ レ ン ク ∼,「
トラ 」 は
エ ゾ トラ ∼,「 ナ ガ 」 は エ ゾ ナ ガ ∼ を 示 す 。
4.花
の 形 態 と訪 花 昆 虫 タ イ プの 関係
花 の形 態 と訪 花 昆 虫 タ イプ の 関 係 を表5・ 図4に
ま とめ た。 花 の 色 で はマ ルハ ナ 型 に は 白 色
花 が 見 られ ず 紫 ・青 色 花 が 多か っ た の に 対 し て,ア ブ 型 は 全 て 白花 ・黄 色 花 だ った 。 ま た訪 花
マ ルハ ナ バ チ タ イプ で は 紫 色 花 が 長 舌 型 で 多か っ た 。
花 の 形 で は マ ル ハ ナ 型 で は 仕 掛 型や 管 型 が 多 か った の に対 して,ア
ブ型 は 皿 型,チ
ョウ 型 で
は管 型 が 多 か っ た。 また 訪 花 マ ルハ ナ バ チ タ イ プ で は 仕 掛 型 は 長 舌 型 で 多 か った 。
花 の 深 さは マ ルハ ナ 型 が 平 均14.3mmと
た(多 重 比 較,p〈0.05)。
もっ と も深 く,ア ブ 型 の3.3mmと
有意 な差が あっ
幅 に対 す る深 さ の 比 は ア ブ 型 の み低 か っ た(p<0.05)。
で は長 舌 型 で深 さ が平 均23.8mmで
短 舌 型 の7.9mmに
マ ルハ ナ 型
比 べ て 有 意 に 深 か っ た(t検
定,p〈
0.05)。 訪 花 タ イプ は花 の 向 き ・深 さの 組 み合 わせ とよ く対 応 して お り,マ ル ハ ナ 型 は横 向 き ∼
下 向 きで 深 い花,チ
た(図4-1)。
ョウ型 は 向 きに 関 わ りな くや や 深 い花,ア
ブ型 は上 ∼横 向 き の浅 い 花 だ っ
また マ ルハ ナ 型 の 中 で も長 舌 型 は横 向 き∼ 下 向 きで深 い 花,短 舌 型 は よ り浅 い花
だ った(図4-2)。
5.調
査 場 所 に よ る訪 花 昆 虫 タ イ プ の 違 い
同 じ植 物 に つ い て3回
以上 の 調 査 を行 な って い る種 に つ い て,訪 花 頻 度 ・訪 花 昆 虫 相 の 比 較
を表6に 示 した 。 調 査 問 で の 訪 花 頻 度 や 昆 虫 相 の違 い は いず れ の種 で も大 きか っ た 。 オ オ ア ワ
ダチ ソ ウや オ オ ハ ン ゴ ン ソ ウ で は 同地 域 の 調 査 に お い て も差 が 見 られ た。 一 方,エ
18
ゾ トリカ ブ
帯 広 百 年 記念 館 紀要
表5.花
第18号2000
の 形態 と訪 花 昆 虫 タイ プの 関 係
Table5.Relationshipsbetweenfloralcharacteristicsandvisitorstypes.
(1)訪
花 昆 虫 タイ プ
(1)=allinsects
種数
色
白
マ ル ハ ナ 型9
黄
62
蝶
1121
型5
皿型
浅筒型
管型
深 さ(mm)
筒型
仕掛 型
1
4
1
平均深さ 深さ/幅
14.33.4
10.03.3
4
76811
計23
(2)訪
赤
1
双 翅 目 型8
合
青
351
ハ ナ バ チ 型1
類
形
紫
5
3
3.31.4
3
3
8.73.4
1
7
9.02.7
筒型
仕掛型
7
花 マルハ ナバ チ タイプ
(2):onlybumblebees
種数
型5
型5
紫
形
青
赤
皿型
浅筒型 管 型
深 さ(mm)
14
2
221
1
平均深さ 深さ/幅
23.82.6
1←
舌
舌
黄
つ0
長
短
色
白
3
7.93.9
トで は 同 じ美 幌 町 内 で も美 幌 川上 流 の 自然 林 内 に比 べ て,市 街 地 郊 外 で は マ ルハ ナ バ チ 類 が 観
察 され ず,訪 花 頻 度 も低 か っ た 。
考
察
夏 期 に お け る北 海 道 の 訪 花 昆 虫
北 海 道 内 の7ヶ 所 で 訪 花 昆 虫 相 を調査 した結 果,39種 の うち29種
た。 マ ル ハ ナ バ チ類5種
の植 物 で訪 花 昆 虫 を確 認 し
をは じめ,多 種 の 昆 虫 が訪 花 して花 粉 ・蜜 な ど を利 用 して い た。 訪 花
種 数 は2個 体 以 上 訪 花 した植 物 で訪 花 昆 虫 が1種
の み だ っ た の は5種
と少 な く,多 くの植 物 が
複 数 種 の 昆 虫 の 訪 花 を受 け て い た。 実 際 に は ア リ類 や 小 型 ハ ナ バ チ 類 な どの よ う に盗 蜜 に近 い
もの もあ り,植 物 に よ っ て は 送 粉 の 役 割 を果 た して い る昆 虫 が 限 られ る もの もあ るが,資 源 と
して 利 用 す る昆 虫 は幅 広 い とい え る。
訪 花 が 確 認 され なか っ た10種
は訪 花 頻 度 が 潜 在 的 に低 い種 と考 え られ るが,調 査 地 ・時 期 に
よ って 訪 花 が見 られ る こ と もあ り,傾 向 を述 べ る に は今 回 の 調 査 で は 不 十 分 で あ る。 特 に ミゾ
ソバ は ハ ナ ア ブ 型(平 塚1988,田
ナ バ チ 型(田 中1978)に
中1999),コ
ウ ゾ リナ は チ ョ ウ型(田 中1970) ,ツ ユ クサ はハ
相 当す る訪 花 昆 虫 相 が本 州 で確 認 さ れ て お り(表3参
照),北
海道 で も
同様 の傾 向 を示 す 可 能 性 が 高 い。 ま た,マ ルハ ナ バ チ類 の訪 花 が 確 認 され た植 物 は3分 の1以
下 で あ っ たが,一 般 に は マ ルハ ナ バ チ 類 は ほ とん どの 植 物 の 花 を利 用 して い る と も言 わ れ て い
る(ハ イ ン リッチ1991,加
藤1993)た
め,今
回訪 花 が 見 られ な か っ た植 物 で も低 頻 度 で訪 花 し
て い る可 能 性 は あ る。
19
渡 辺 修 ・丹羽 真一 ・渡辺 展之
北海 道 にお け る夏期 開 花植 物 の訪花 昆 虫相
(1)全
体
(1)forallinsects
(2)マ
ル ハ ナバ チ 類
(2)foronlybumblebees
図4.花
の 向 き ・深 さ と 訪 花 昆 虫 タ イ プ の 関 係
Fig.4.Relationshipsbetweenfloralmorphologiesandmainvisitors.
20
帯 広 百年 記 念館 紀 要
表6.同
第18号2000
植 物 の 訪 花 昆 虫相 の 調 査 場 所 に よ る比 較
Table6.Comparisonoffloralvisitorsfaunaforsameplantspeciesamongdifferent
observations.
所
場
月日
観察
時間
訪
訪花頻度
回 数(/時
花
回
間)マ ルハナ 他のハチ類 ア リ類
数
マルハナ
双翅目 鱗翅 目
率
エ ゾ トリ カ ブ ト
美幌 町
美幌 町
美幌 川上流
滝川
8/2230
8/2230
8/2230
9/545
2
4.0
2
4.0
510.0
1
1
0%
0%
100%
100%
1
1
1
5
1.3
1
オオ ア ワダチ ソウ
美幌 町
美幌 町
美幌 町
8/2130
8/2130
8/2130
918.0
7
1734.0
6
8/2230
8/2230
9/521
16320
510.0
78%
35%
0%
2
5
5
1
1
4
2
3
3
4
1
4
3
オオ ハ ンゴ ンソウ
美幌 町
美幌 町
滝川
5100
8
0720
0%
50%
0%
キ ツ リフネ
8/830
8/830
9/530
9/515
新得
新得
滝川
滝川
2
4.0
1020.0
100%
90%
25%
50%
2
9
1
4
8.0
1
3
2
8.0
1
1
3
6.0
キ ン ミズ ヒ キ
8/2230
9/530
9/525
美 幌町
滝川
滝川
0%
0%
0%
3
714.0
1
6
9
921.6
クサ フ ジ
7/2535
8/2130
8/2130
札幌
美 幌町
美 幌町
2034.318
2
4.0
2
2
4.0
1
0
0.0
4
8.0
0
0.0
2
90%
100%
50%
1
0%
1
ゲ ン ノシ ョウ コ
新得
美 幌町
滝川
8/830
8/2230
9/545
3
花 の 形 態 と訪 花 昆 虫相
訪 花 昆 虫が 確 認 され た29種 の 植 物 は,美 幌 峠 に お け る3種 を 除 い て,同 所 的 か つ 同 時期 に開
花 す る花 で あ り潜 在 的 な周 辺 の 昆 虫 相 は共 通 して い る もの と思 わ れ る。 しか し,植 物 に よ り訪
花 昆 虫 相 は大 き く異 な り,そ の パ ター ン は大 き く4つ に分 け る こ とが で き た。 そ して これ ら の
パ ター ン は花 の 形 態 とよ く対 応 して お り,以 下 の よ うに従 来 の 「送 粉 シ ン ドロー ム論 」(河 野 ・
井 上1993)で
よ く説 明 で き る。複 雑 な;構造 や 深 い 筒 型 の花 に は,そ れ に対 応 した 高 い学 習能 力,
逆 さ ・斜 め で も と ま る能 力 を持 つ マ ル ハ ナ バ チ 類 が 訪 花 して い た。 これ らの 花 は紫 ・青 色 で お
そ ら く蜜 量 も多 く,マ ルハ ナ バ チ 類 が 専 攻 して 訪 れ る よ うに な っ て い る。 さ らに,同
じマ ルハ
ナ バ チ に訪 花 され る植 物 で も,ク サ フ ジ ・チ シ マ セ ンブ リ等 の よ うに 花 冠 の深 さが10mm以
の 花 に は短 舌 型 マ ル ハ ナ バ チ が,ミ
下
ソ ガ ワ ソ ウ ・エ ゾ ト リカ ブ トの よ うに 深 い花 冠 を持 つ 花 に
は 長 舌 型 マ ルハ ナ バ チが 訪 花 して お り,訪 花種 は 明 瞭 に分 か れ て い た 。 京 都 北 部 に お い て 同様
1
2
渡 辺 修 ・丹 羽真 一 ・渡 辺 展之
北 海 道 にお け る夏 期 開花植 物 の訪 花 昆 虫相
の 調査 ・分 析 を行 な っ た結 果 で も,マ ルハ ナ バ チ の 口吻 の 長 さ に 応 じた 訪 花 昆 虫相 の ク ラ ス タ
が 現 れ て お り(井 上1993),花
冠 の 深 さが 訪 花 昆 虫 相 と密 接 な 関 係 に あ る こ とが 分 か る。 一 方,
キ ン ミズ ヒキ ・ヒ メ ジ ョオ ン な ど皿 型 の小 さ い花 に は,口 吻 が 短 くな め とる こ と しか で きな い
小 型 の 双 翅 目昆 虫 が 集 ま って い た。 これ らの 花 は ほ とん どが 白 ・黄 色 で集 合 して い る こ とか ら
よ く 目立 ち,双 翅 目昆 虫 の よ うな機 会 的 に 訪 花 す る昆 虫 を集 めや す くな っ て い る。 ハ ン ゴ ン ソ
ウ ・ヨブ ス マ ソ ウ な どの 花 は 管 状 の 細 長 い 内部 に 蜜 を持 ち,長 い 口吻 で吸 蜜 す るチ ョウ類 が し
ば しば訪 花 す る。 こ れ ら は長 い しべ を持 ち,チ
ョ ウの よ うな 著 し く長 い 口吻 を持 つ 昆 虫 で も花
粉 が付 着 しや す くな って い る。
ア リ類 は観 察 で は 送 粉 に は 貢 献せ ず に蜜 の み を盗 ん で い た が,特
に特 定 の 形 態 の花 で 見 ら れ
るわ け で は な か っ た 。 エ ゾ ト リカブ トの よ うに 複 雑 な形 の 花 で は双 翅 目な ど を排 除 して い る が
ア リ類 の 侵 入 は 防 げ な い もの と思 わ れ る。
植 物 の送 粉 戦 略 か らみ た花 の 形 態 の 意義
各 訪 花 昆 虫 に は 形 態 や 生 活 史 上 の特 性 か ら,訪 花行 動 や 植 物 の 送 粉 へ の貢 献 の 度 合 い に差 が
見 ら れ る(表7)。
マ ル ハ ナ バ チ類 は 学 習 能 力 が 高 く同 種 の 花 を連 続 して訪 花 す る こ と(定 花 性)
や,長 い 毛 に 花 粉 が 着 きや す い こ とな どか ら,送 粉 者 と して の有 効 性 が 高 い とい われ る(Beattie
etal.1973;Thomsonetal.1982;Schemske&Horvitz1984)。
しか し,コ ロ ニー の 維 持 の
た め に効 率 的 な花 蜜 採 集 を行 な う必 要 が あ るマ ル ハ ナ バ チ 類 に 専 攻 的 に訪 花 して も ら うに は,
蜜 の 報 酬 を 多 くす る よ うな戦 略 が 必 要 とな る。 ま た,そ の 蜜 を他 の 昆 虫 か ら 防衛 す るた め に長
い 花 筒 や 複 雑 な構 造 にす る必要 が あ り,花 に か け る コス トが 大 き くな る。
一 方 ,ハ ナ ア ブ 類 は学 習 能 力 が 低 く植 物 個 体 間 の移 動 も少 な い が,一 般 に個 体 数 が 多 く,送
粉 の 頻 度 を高 め るの に有 効 で あ る(加 藤1993)。
これ らの 昆 虫 を利 用 す る に は,花 数 を 多 くして
訪 花 を受 け る機 会 を 多 くす る戦 略 が 有効 とな る が,花 一 つ 一 つ の コ ス トは小 さ くて す む と考 え
られ る。
今 回 の 対 象 種 で は,エ
戦 略,キ
ゾ トリカ ブ ト ・キ ツ リフ ネ ・エ ゾ ヤ マ ハ ギ等 が 花 の 構 造 を複 雑 に す る
ン ミズ ヒキ ・ヒ メ ジ ョオ ン ・ヤ ブ ジ ラ ミ等 が 花 数 を 多 くす る戦 略 に 当 た る。 また オ オ
表7.訪
花 昆 虫 の 訪 花 行 動
・特 性 の 一 覧
Table7.Characteristicsoflifehistoriesandforagingbehaviorforeachfloral
VISltor.
ハナバチ類
セ イ ヨ ウ ミツ バ チ
高
窩
やや低
やや低
篇
低
社
小 型 ハ ナバ チ類
スズ メ バ チ類
単(社)
社
ア リ類
小 型ハナアブ類
ツ リア ブ類
社
大型ハナアブ類
チ ョウ 類
甲虫類
※セ イ ヨ ウ ミツバ チ個 体 数 は 周 辺 で の 養 蜂 の 頻 度 ・季 節 に よ り変 化 す る 。
※網 が け は植 物 か ら見 て 有 効 な 特 性 。
22
多
多
多
低
盗蜜
行動
高
高
低
高
少な い
少な い
少な い
ある
高
高
少 ない
る る い"る
あ あ な晶
あ
低
やや低
※
普逓
低
高高高
長
やや短
やや短
短
短
短
植物間の 悪天時の
移
動 行動制約
低多低 低低
高
高
高
高
低
低
高
低や高 低低
や
蜜 ・花粉
蜜 ・花粉
蜜 ・花粉
蜜 ・花粉
蜜
蜜
高低 低低低
社
社
短
短 長や長 短
や
定花性
中 中中中 中
個体
密度
粉
粉
㈱蜜舵 蜜花
蜜
鱗翅 目
鞘翅 目
口吻長
単単単 単単
ア リ類
双翅 目
花資源への
依 存 度
い る
な あ
長舌型 マルハ ナバ チ
短舌型 マルハ ナバ チ
採餌対 象
底﹂﹂鋤践ノ司象
マルハナ類
社 会性
多 多
訪花昆 虫の種 類
帯 広 百 年記 念 館 紀要
第18号2000
ハ ン ゴ ン ソ ウ は マ ル ハ ナ バ チ 類 だ け で な くハ ナ ア ブ 類 ・チ ョ ウ 類 も誘 引 し て い る こ と か ら,中
間 的 な 戦 略 を と っ て い る も の と考 え ら れ る 。
保 全 の観 点 か ら
帰 化 植 物 は 主 に 双 翅 目 と短 舌 型 マ ルハ ナ バ チ を利 用 す る もの が 多 か った 。 特 に オ オ ア ワ ダ チ
ソ ウ ・オ オハ ン ゴ ン ソ ウ な どは 訪 花 頻 度 も在 来 種 に 比べ て 高 く,在 来植 物 の 訪 花 昆 虫 を奪 っ て
い る可 能 性 が あ る。 群 落 と して も大 き く,開 花 期 間 が 長 い もの が 多 い た め,影 響 は か な り大 き
くな る可 能 性 が あ る。 特 に,帰 化 植 物 の 増加 は 短 舌 型 マ ル ハ ナ バ チ相 を利 用 す る在 来種 に 対 し
て,悪 影 響 を与 え る恐 れ が あ る。
一 方 ,長 舌 型 マ ル ハ ナ バ チ を利 用 す る植 物 は,こ
れ らの 昆 虫 との結 び つ きが 強 い。 しか し,
美 幌 の 例 で は 市街 地 近 郊 で は 長 舌 型 マ ルハ ナ バ チ が観 察 され ず,エ
ゾ ト リカ ブ トの訪 花 昆 虫相
は 山間 部 と大 きな 差 が 見 られ た 。 こ の こ とか ら市 街 地 近 郊 で は資 源 量や 営 巣 場 所 の制 約 か ら長
舌 型 マ ルハ ナ バ チ の 個 体 数 が 少 な い可 能 性 が 示 唆 さ れ,他 殖 性 で あ るエ ゾ トリカ ブ ト(紺 野 ほ
か1999)な
どの 長 舌 型 利 用植 物 の 受 粉 の 成 功 率 が下 が る可 能 性 が あ る。
自然 教 育 ・市 民 参 加 調 査 と して の 評 価
は じめ に述 べ た よ うに滝 川公 園 に お け るデ ー タ は 市 民 調査 に よ っ て得 た もの で あ る。 調 査 に
入 る前 に,調 査 の 意 義 を解 説 す る と と もに,調 査 方 法 や 訪 花 昆 虫 の 区別 法 を紹 介 した 。 昆 虫 の
同 定 は一 般 の 人 に は 難 し く,野 外 で の判 別 は 不 可 能 に近 い が,今
回用 い た よ うな簡 単 な分 類 法
な ら それ ほ ど習 熟 を必 要 と しな い 。 調 査 中 に は,判 別 に迷 っ た時 に 随 時質 問 を受 け る形 で 対 応
す る こ とで,精 度 を上 げ るこ とに 努 め た。 実 際 に はハ ナ ア ブ と小 型 のハ ナ バ チ,マ
ルハ ナ バ チ
に 擬 態 した ア ブ の よ うに紛 らわ し い ケー ス もあ る の で若 干 の 誤 認 も含 まれ る可 能i生も否 め な い
が,「 花 と訪 花 昆 虫」の 対 応 関 係 を大 枠 でつ か む に は あ ま り問 題 に な らな い だ ろ う。 訪 花 昆 虫 を
種 レベ ル で 同定 す る こ とが 重 要 で あ る こ とは い う ま で もな い が,多
くの植 物 で訪 花 者 が ほ とん
ど分 か っ て い な い 現 状 で は,今 回 用 い た簡 単 な分 類 法 で も十 分 に意 味 の あ る生 態 情 報 とな る。
自然 に対 す る関 心 の 高 ま りか ら各 地 で市 民 調査 が 行 な わ れ て きて い る。 しか し,そ の場 限 り
の もの で発 展 性 に 欠 け て い た り,新 しい知 見 が得 ら れ な い もの で あ るこ と も 多 い。 市 民 に よ る
調 査 が 発 展 して い くか ど うか は,調 査 自体 の 面 白 さ ・楽 し さ と共 に,い か に 自然 情 報 と して 意
味 が あ る もの を集 積 で き るか が重 要 で あ る。 市 民 調 査 の 導 入 と して よ く用 い られ る地 域 の 動植
物 の 目録 づ く りは,簡 単 に始 め る こ とは で き る もの の,調 査 と して の単 調 さ,要 求 さ れ る高 い
同定 技 術 な どの 問題 点 に 加 え て,踏 査 ・同定 の精 度 の み で 成 果 の 評 価 が 決 ま って しま う点 で 一一
般 市 民 に は し きい が 高 い 。 そ れ に対 し訪 花 昆 虫 調査 は,自 然 情 報 と して の価 値 ・継 続 して行 な
う意義 も高 く,生 態 的 な面 白 さ を伝 え る調 査 で あ り,市 民調 査 に 適 した カ リキ ュ ラ ム の一 つ と
して提 案 で き る もの で あ る。
調 査 方 法 の 課題
送 粉 へ の 貢 献 の指 標 と して,よ
り正 確 に は単 位 時 間 内 の訪 花 花 序 数 や 蔚 や 柱 頭 に ふ れ る回数
な ど を用 い る必 要 が あ る。チ シマ セ ン ブ リは 訪 花 頻 度 で マ ル ハ ナ バ チ 類 が33%で
は 「マ ル ハ ナ 型 」 とな った が,実
際 に は 訪 花 花 序 数 で は8%に
今 回 の分 析 で
す ぎず 貢 献 度 は低 い可 能 性 が 高
23
渡辺
修 ・丹 羽真 一 ・渡 辺展 之
北 海道 に おけ る夏期 開花植 物 の訪 花 昆虫相
い。 花 の 形 態 か ら見 て も後 者 の数 値 の 方 が よ り実 態 に あ っ て い る よ うに 思 わ れ る。
同 じ種 ・同 じ場 所 で も結 果 に は大 きな 差 が 見 られ た 。 訪 花 頻 度 や 昆 虫 相 を決 定 す る要 因 に は,
今 回検 討 した よ うな 花 の 形 態 ・環 境 以 外 に も,時 刻 ・天 候 ・花 密 度 ・他 種 の 開 花 量 な ど 多 くの
要 因 が考 え られ る。 これ らの要 因 も考 慮 して検 討 を行 な うた め に は そ れ ぞれ の種 に つ い て 調 査
の 反復 回数 を 多 くし,デ ー タ を充 実 す る こ とが 必 要 で あ る。 ま た,今 回 チ ョウ類 ・ハ ナ ア ブ類
な どは 細 分 して い な いが,こ
れ ら につ い て も体 サ イ ズ ・口吻 サ イ ズ 等 に よ り区分 して分 析 す れ
ば マ ル ハ ナバ チ種 間 で見 られ た よ うな訪 花 す る植 物 との 対 応 関 係 が 見 つ か るか も しれ な い。 こ
れ に つ い て も今 後 の 課 題 で あ る。
ー
弓
文
用
献
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瀬 の 花 の 受 粉 生 態 学 的 研 究.「 尾 瀬 の 総 合 研 究 」:529-571.尾
田中
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ナ ア ブ 類 に 好 ま れ る 花 た ち.遺
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肇 ・矢 原 徹 一(1988)ツ
ユ ク サ の 受 粉.採
集 と飼 育40:646-647.
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24
マ ル ハ ナ バ チ ハ ン ドブ ッ ク 」.40pp.文
林 の 孤 立 化 が3種
一 総 合 出 版.
の 多 年 草 の 結 実 率 に 与 え る 影 響.日