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高電圧リチウムイオン電池正極材料LiNi0.5Mn1.5O4の製造及びその表面の改質
南京航空航天大学 材料科学・技術学院/南京 210016
Email: [email protected]
研究の背景
高い動作電圧、広い動作範囲、大きな比エネルギー、汚染ゼロ、使用寿命が長いといった特徴から、リチウムイオン電池
には幅広い応用の可能性がある。スピネル構造のニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5O4、またはLNMO)は三次元の拡
散チャネルを持つためリチウムイオン(Li+)の伝導に有利で、かつ構造が安定している。さらに、その理論放電比容量は147
mAh g-1に達する。より重要な点は、プラトー電圧が4.7 Vと高く、効率密度やエネルギー密度が相対的に高いということで、
このことにより国内外の研究者の広い注目を集めている。但し、この素材に含まれるNi、Mnはいずれも遷移元素で、高温下
で長時間かけて焼結製造する必要があるが、酸素欠損を起こしやすく、このため製造された素材に非活性物であるLixNi1xOなどの雑質を生成することがある。また、 LiNi0.5Mn1.5O4素材の充放電電位レンジは従来の電解液の安定範囲を超えてお
り、充電時に多価金属イオンによる電解液の酸化分解が起こる恐れがあり、高温下におけるサイクル安定性の改善が急務
である。ここでは素材の加工性能と電気化学性能という二つの観点から、ミクロ・ナノ多階層構造の形成とナノ化、及び表面
被覆の改質というアプローチにより、LiNi0.5Mn1.5O4の電気化学性能を効果的に改善した。
LiNi0.5Mn1.5O4微細球
リチウムイオン導体
の表面修飾
図3. 被覆改質メカニズム図解
図5.純質LNMOとLNMO@Li2SiO3サ
ンプルの電気化学性能の研究
図1. NH4HCO3共沈法により製造した前駆体 (a, b)とNLNMO(c, d)サンプルのSEM写真
図4.純質LNMO(a)とLNMO@Li2TiO3
5%(b-d)サンプルのTEM写真
結論
1. NH4HCO3を沈殿剤とする新しいシンプルな共沈法により、高電位正極材料となる多階
層構造LiNixMnyO4ミクロ・ナノボールの製造に成功した。このミクロ・ナノ構造は、電解液
の浸入やリチウムイオン(Li+)伝導経路の短縮に有利であり、サンプルは優れた電気化
学性能を示した。0.1 C時において、放電比容量は132.7 mAh g-1にも達し、2 Cおよび5 C
の大電流密度下においても、放電比容量はなお115.9 mAh g-1 および93.8 mAh g-1を維
持した。25 ℃、電流密度1 Cの条件で50サイクルを終えた後も、95.0%という高い容量保
持率を維持した。また、このサンプルは球形であり、流動性と加工性能に優れる。
2. Li2MO3 (M=Ti、Si、Zr)は、高温条件下において発生する正極材料LiNi0.5Mn1.5O4と電解
液との酸化反応を効果的に抑制できるため、高温下における素材のサイクル安定性を
改善できる。また、Li2MO3はリチウムイオンの導体として、リチウムイオン(Li+)の電極・電
解液における伝導性能を効果的に改善し、素材の放電レートを向上させることができる。
研究成果
図2. (a)2種のサンプルの異なる電流密度下における放電比
容量 (b) 正規化した放電比容量 (c, d) N-LNMOとNa-LNMO
(Na2CO3を沈殿剤とする)の異なる電流密度下における放電
曲線 (e, f)2種のサンプルの25 ℃及び55 ℃、電流密度1 C
下におけるサイクル寿命図
Publications
[1] H. Deng, X.G. Zhang* et al., Progress in Chemistry, 2014, 26, 939. (Review)
[2] H. Deng, X.G. Zhang* et al., J. Mater. Chem. A, 2014, 2, 18256.
[3] H. Luo, X.G. Zhang* et al., ChemElectroChem, 2015, 2, 127.
Patents
[1] X. G. Zhang, H. Deng et al., Surface modification of LiNi1/2Mn3/2O4 with Li+
conductive Li2MO3(M=Ti 、Si 、Zr) as cathodes for Li-Ion Batteries,
201310322664.5
[2] X. G. Zhang, H. Deng et al., Synthesis of spherical Ni1/4Mn3/4CO3 and its
transformation into LiNi1/2Mn3/2O4 microspheres, 201310322662.6
リチウムイオン電池正極材料LiMPO4 (M=Fe, Mn, Co)及び
Li3V2(PO4)3の製造及びその電気化学性能の研究
南京航空航天大学 材料科学・技術学院/南京 210016
Email: [email protected]
研究背景
オリビン構造のLiMPO4 (M=Fe, Mn, Ni, Co)は突出した安全性能や低価格、優れたサイクル寿命性能などの利点があり、現
時点において最も将来性のある正極材料とされる。中でも代表的な素材であるリン酸鉄リチウム (LiFePO4)については、学術
界や産業界で既に幅広い研究がなされており、動力や大規模エネルギー貯蔵などの分野に多く導入されている。このほか
Li3V2(PO4)3は、三次元リチウムイオン拡散チャネルの枠を構成し、構造の安定性に優れることから、近年になってリチウムイオ
ン電池の正極材料の研究においてクローズアップされている。しかし、これら素材は電子導電率やリチウムイオン拡散係数
が極めて低いため、サイクル寿命性能や放電レートが悪く、次世代高比エネルギーリチウムイオン二次電池への応用は極め
て難しい。ここでは素材の構造や形状のコントロールやイオンのドーピング、カーボン系複合素材の製造などに着目し、一連
の研究を進め、素材に優れた電気化学性能を持たせることができた。
カーボン系被覆 (Fe, Ni, Mn)
菱面体晶系Li2NaV2(PO4)3
図5. LNVP-1 (a , b) 、LNVP-2 (c , d)のSEM写真
図1. (a)従来の固相法及び新手法を用いて製造した活物質の図解 (b)電子移動経路の図解
図7. LNVP-1 (a, c) 、 LNVP-2 (b, d)材料のCV曲線及び充放電曲線
(e) 放電レート (f) 放電レート2C時のサイクル安定性曲線
LNVP-1: 菱面体晶系 Li2NaV2(PO4)3
LNVP-2: 複合相 Li2NaV2(PO4)3
図6. 菱面体晶系Li2NaV2(PO4)3の構造図解
花型階層構造の LiMnPO4
図2. (a) 窒素ガス雰囲気下における FeO(acac)3 と
LiH2PO4 の熱重量曲線(昇温速度5 ℃min-1) (b)
LiFePO4/C複合物の XRD回折パターン (c)
LiFePO4/CのSEM写真 (d) LiFePO4/CのTEM 写真
図3.(a) LiMnPO4/C複合素材のXRD回折パターン
(b) LiMnPO4/C複合素材のSEM写真 (c)
LiMnPO4/C複合素材のTEM写真 (d) LiMnPO4/C複
合素材の異なる放電レートにおける放電曲線 挿
入図は最近報道されたLiMnPO4 電極材料の放電
レート比較
独自の利点
(1)その他の炭素源を添加することなく、in situ炭化
反応により、電気活性物質を均一に被覆するカー
ボン層を得ることができる。
(2)焼き戻しの過程で、顆粒の成長を効果的に抑え
ることができる。この研究結果は、電気化学活性の
高いナノ電極材料の製造のために、新たな手法と
思考を提供するものである。
(3)この方法は適用性が幅広く、製造プロセスがシン
プルであることから、産業化への将来性が期待され
る。
図4. LiCoPO4/C複合材料のTEM写真 (c) LiCoPO4/C
複合材料のCV曲線 (掃引速度0.2 mV s−1) (d)
LiCoPO4/C複合材料の異なる放電レート条件下にお
ける放電曲線
L. Shen, X. G. Zhang* et al., Nano Lett. 2012,
12, 5673−5678
研究成果
[1] L. Shen, X.G. Zhang* et al., Nano Lett.2012, 12, 5673.
[2] P. Nie, X.G. Zhang* et al., CrystEngComm, 2012, 14, 4284.
[3] Y. Zhang, X.G. Zhang* et al., RSC Adv., 2014, 4, 8627.
[4] C. Zhang, X.G. Zhang* et al., RSC Adv., 2014, 4, 38791.
図9.花型階層構造のLIMnPO4単結晶の形成メカニズム
図 8. 花型構造のLiMnPO4単結晶ミクロ構造のFE-SEM写真(a, b)
及び(c)TEM写真、 (d)高解像度TEM写真 挿入図はLiMnPO4
個別ナノ粒子の制限視野電子回折パターン
低温溶媒熱法を用い、ジエチレングリコールと水とを反応媒質
とすることで、LiMnPO4の花型階層構造を作り出すことに成功。
LiMnPO4はいずれも、LiMnPO4単結晶ナノ粒子で構成され、直
径は約10~20 μmである。実験結果は、混合溶媒がLiMnPO4の
花型階層構造の形成において決定的な役割を果たし、ブドウ
糖が単結晶構造の形成に重要な影響を及ぼしたことを示して
いる。また、ブドウ糖は溶媒熱法のプロセスにおいてin situ炭
化反応を起こし、LiMnPO4 表面を均一なナノ厚さのカーボン層
で被覆する。
感謝
国家重点基礎研究発展計画プロジェクト (973)(No.2014CB239701)、国家自然科学
基金(No.21173120, 51372116)、江蘇省自然科学基金重点特別資金支援プロジェ
クト(No.BK2011030)