ふるさと納税制度の検証

日 本 財 政 学 会 第 72 回 大 会
2015 年 10 月 17 日
ふるさと納税制度の検証
関西大学経済学部教授
近畿大学短期大学部専任講師
橋本恭之
鈴木善充
<要旨>
本稿では、ふるさと納税制度を検証した。その結果、第1にふるさと納税が導入されて
以 降 、 寄 附 金 額 に 占 め る 税 収 ロ ス の 比 率 は 毎 年 上 昇 し 、 2013 年 度 に は 77%に も 達 し て い
ること、第2に、ふるさと納税制度による地域間の税収格差是正効果は小さいこと、第3
に、各市町村のふるさと納税の状況からは、歴史的建造物の保存への寄附など明確な寄附
先を提示できた自治体では返礼品を提供しなくても、寄附を集めることに成功しているこ
と、大都市では、大口の個人寄附を受け取っているケースが多く、一人当たりの寄附額が
おおきくなっていること、牛肉や海産物など特徴ある特産品を多くもつ北海道下の市町村
では、返礼品を送付することで多くの寄附を集めていること、第4に、ふるさと納税制度
の活用には、公式ホームページの充実と民間のポータルサイトの連携が、返礼品の還元率
に頼ることなく、寄附を増加させることにつながること、第5に、ふるさと納税による寄
附額は、ふるさと納税に力を入れている一部の自治体に集中していること、第6に、ふる
さと納税の問題点としては、寄附税制の効率性が満たされていない可能性があること、高
額所得者に有利な節税手段を提供するものとなっていること、ふるさと納税に関する情報
公開が不十分であること、小規模団体ではふるさと納税制度を十分に活用できていないこ
とがわかった。
本稿ではふるさと納税の改善策として、地方税について設定されている特例部分を段階
的に廃止すること、ふるさと納税についての情報公開の最低限の基準を統一すること、小
規模団体でのふるさと納税制度の活用促進を提案したい。
第1節
はじめに
近 年 ふ る さ と 納 税 が ブ ー ム と な っ て い る 。 総 務 省 に よ れ ば 、 制 度 発 足 当 初 の 2008 年 に
は 日 本 全 体 で 寄 附 金 72 億 5,996 万 円 に 留 ま っ て い た も の が 、 2011 年 に は ふ る さ と 納 税 の
1)
形 で の 東 日 本 大 震 災 へ の 寄 附 が 急 増 し た こ と で 649 億 1,490 万 円 に も 達 し た 。 2012 年 は
東 日 本 大 震 災 へ の 一 時 的 な 急 増 の 影 響 が 消 え た た め 、 寄 附 金 額 は 130 億 1,128 万 円 と 減 少
し た も の の 、2013 年 に は 141 億 8,935 万 円 と 再 び 増 加 傾 向 に あ る 。2014 年 に つ い て は 2013
2)
年 を 大 き く 上 回 る 勢 い の 自 治 体 が 多 い 。こ れ は 、マ ス コ ミ 等 の 報 道 で 自 己 負 担 2,000 円 で 、
自己負担を大きく超える返礼品が期待できることが周知徹底されてきたためだ。ふるさと
納税制度において、各自治体は寄附金額のかなりの部分を返礼品につかっても歳入を増や
すことができる仕組みとなっている。
このため各地方団体の返礼品合戦は、近年益々過熱してきた。全国から多数の寄附を集
めている地方団体では、返礼品をグレードアップし、1年間に複数の寄附に分けた場合に
も返礼品を送付したり、寄附の金額別に寄附額の半額程度の特産品を用意しているところ
が多い
3)
。 個 人 住 民 税 所 得 割 の 1 割 ま で は 寄 附 金 額 に か か わ ら ず 2,000 円 の 自 己 負 担 で 済
むため、高額寄附への強いインセンティブを与えているわけだ
4)
。 た と え ば 、 10 万 円 の 寄
附 に 対 し て 、 5 万 円 の 特 産 品 が 入 手 で き る な ら ば 、 48,000 円 も の 利 益 を 寄 附 者 に も た ら す
ことなる。寄附を受け取った自治体と寄附者が受け取った利益は、寄附者が居住する自治
体 と 国 の 負 担 で 、 も た ら さ れ る こ と に な る 5) 。
本稿の目的は、ふるさと納税制度が地方財政に与える影響、寄附者に対する影響をみた
1)こ こ で の 寄 附 金 総 額 は 、 寄 附 金 控 除 が 適 用 さ れ る 寄 附 金 額 を 集 計 さ れ た も の で あ る 。 ふ る さ と 納 税 で は 、 寄 付 を お
こ な っ て も 確 定 申 告 を お こ な わ な い 人 も 多 く 、 実 際 の 寄 附 金 額 は こ の 金 額 を 上 回 っ て い る 。 な お 、「 寄 附 金 」 は 「 寄
付」の法令用語である。
2)た と え ば 大 阪 府 泉 佐 野 市 で は 、 2013 年 度 に は 4,604 万 9,000 円 だ っ た も の が 2014 年 7 月 に 返 礼 品 の 見 直 し を し た こ
と で 寄 附 金 が 急 増 し 、 2014 年 度 に は 4 億 6,756 万 5,641 円 に 達 し て い る 。
3)2014 年 10 月 3 日 付 け 日 本 経 済 新 聞 記 事 に よ る と 、 新 潟 県 三 条 市 は 、 2014 年 10 月 か ら 寄 附 金 に 対 す る 返 礼 品 の 還 元
率を 6 割にまで引き上げている。
4)2015 年 度 か ら は 、 所 得 割 の 2 割 ま で が 自 己 負 担 2,000 円 で 済 む 。
5)ふ る さ と 納 税 制 度 に よ る 税 収 減 は 、 交 付 税 の 基 準 財 政 収 入 に 75 % が 算 入 さ れ る こ と に な っ て い る 。 つ ま り 交 付 団
体の居住者による寄付は、ほぼ国の税収ロスをもたらすことなる。
1
うえで、ふるさと納税制度の問題点を指摘し、その改善策を提示することである。本稿の
具体的な構成は以下の通りである。第2節では、ふるさと納税の仕組みと現状についてみ
ていく。まず、ふるさと納税の仕組みを数値例を使いながら説明していく。次に、ふるさ
と納税の現状について、制度導入以降のふるさと納税の寄附金総額の推移と寄附金総額に
占める税収ロスの推移をあきらかにする。第3節では、第1に寄附金税制が個人の寄附行
動に与える影響について、先行研究にもとづき整理する。第2に、都道府県別にふるさと
納税制度の活用の状況を確認する。第3に北海道、神奈川、愛知、大阪、福岡県下の各市
町村におけるふるさと納税の状況を見ていく。ふるさと納税による寄附金額上位の市町村
がどの程度の返礼品を用意しているかを中心に確認する。第4に、本稿で調査した各市町
村のふるさと納税額がどのような要素と相関があるのかについての分析をおこなう。具体
的には、ふるさと納税額と財政力指数と間に相関がみられるか等を確認する。ふるさと納
税制度の目的のひとつは、都会への人口流出に悩む「ふるさと」を応援することにあるか
らだ。財政力指数の低い団体ほどふるさと納税による寄附金を集めているならば、その目
的を達成していると言えることになる。第4節では、ふるさと納税の実態について大阪府
池田市と北海道増毛町のヒヤリング調査の結果を紹介する。第5節ではふるさと納税制度
の課題を整理する。まず、ふるさと納税制度の骨格を作成した総務省の『ふるさと納税研
究会報告書』を吟味することで、ふるさと納税制度の意義を確認する。次に、第3節の分
析を踏まえてふるさと納税制度の問題点を指摘する。第6節では本稿で得られた結論をま
とめ、ふるさと納税制度の改善策を提起する。
第2節
ふるさと納税制度の仕組みと現状
ふ る さ と 納 税 制 度 は 、 2007 年 5 月 の 総 務 大 臣 に よ る 問 題 提 起 を そ の 発 端 と し て い る6)。
そ の 内 容 は 、「 地 方 の ふ る さ と で 生 ま れ 、 教 育 を 受 け 、 育 ち 、 進 学 や 就 職 を 機 に 都 会 に 出
て、そこで納税する。その結果、都会の地方団体は税収を得るが、彼らを育んだ「ふるさ
と」の地方団体には税収はない、そこで、今は都会に住んでいても、自分を育ててくれた
「 ふ る さ と 」に 、自 分 の 意 思 で い く ら か で も 納 税 で き る 制 度 が あ っ て も 良 い の で は な い か 」
6)加 藤 (2010)は 、 ふ る さ と 納 税 制 度 の 構 想 の 発 端 は 、 2006 年 10 月 に 西 川 福 井 県 知 事 が 提 案 し た 「 故 郷 寄 附 金 控 除 」
だとしている。
2
というものである
7)
。 こ の 問 題 提 起 を 受 け て 、 2007 年 10 月 に 『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告
書 』が ま と め ら れ 、2008 年 度 の 地 方 税 法 改 正 に よ り 、ふ る さ と 納 税 制 度 が 導 入 さ れ た 。2011
年 度 の 改 正 に よ り 、2011 年 1 月 以 降 に 支 出 し た 寄 附 金 か ら 適 用 下 限 額 が 5,000 円 か ら 2,000
円に引き下げられることとなった。この節では、ふるさと納税制度を検証するための基礎
的な作業として、ふるさと納税制度の仕組みと現状について紹介しよう。
(1)ふるさと納税の仕組み
出 所 : 総 務 省 http://www.soumu.go.jp/main_content/000254924.pdf 引 用 ( 閲 覧 日 2015 年 1 月 11 日 )。
図 1
ふるさと納税制度の詳細
ふるさと納税制度の基本的な仕組みは、都道府県・市区町村に対する寄附金のうち、
2,000 円 を 超 え る 部 分 に つ い て 、 一 定 限 度 額 ま で 、 原 則 と し て 所 得 税 と 個 人 住 民 税 か ら 全
額が控除されるというものだ。
その仕組みをより詳しくみたものが図 1 である。ふるさと納税制度では、所得税と個人
7)総 務 省 『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』 平 成 19 年 10 月 p.1 引 用 。
3
住民税の所得割の双方から、税額が還付される仕組みとなっている。所得税については、
ふ る さ と 納 税 以 外 の 寄 附 金 と 同 様 に 、 2,000 円 を 超 え る 寄 附 金 が 所 得 控 除 の 対 象 と な る 。
所得控除は課税所得を減少させるものであり、課税所得に適用される限界税率によって所
得税の還付額がかわることになる。個人住民税については、基本分と特例分の控除が適用
さ れ る 。基 本 分 と し て は 、2,000 円 を 超 え る 寄 附 金 に 対 し て 10 % の 税 額 控 除 が 適 用 さ れ る 。
特 例 分 は 、 2,000 円 を 超 え る 寄 附 金 額 に 、 100 % か ら 住 民 税 の 基 本 分 の 税 率 10 % と 各 納 税
者の課税所得に応じた所得税に適用される限界税率を差し引いた割合を乗じることで計算
される。つまり、所得税における還付額が各納税者の収入によって異なるものを、個人住
民 税 の 特 例 分 で 調 整 し 、 あ る 一 定 程 度 の 寄 附 ま で は 2,000 円 を 超 え る 金 額 が す べ て 、 所 得
税と個人住民税を通じて還付される仕組みとなっているわけだ。たとえば寄附金額が 3 万
円 の ケ ー ス で は 、 所 得 税 で 5,600 円 が 還 付 さ れ 、 個 人 住 民 税 が 基 本 分 と し て 2,800 円 、 特
例 分 と し て 19,600 円 が 還 付 さ れ る こ と に な る 。
ふ る さ と 納 税 制 度 の も と で 2,000 円 の 自 己 負 担 で 寄 附 が 可 能 な 金 額 は 、 年 収 に よ っ て 変
わってくる。これは税額の還付が納めた税額の一定範囲内に限定されているからだ。要す
るに所得が低く、税を負担していない人には還付すべき税が存在しないため、ふるさと納
税制度を利用して節税することが不可能となっているわけだ
表1
8)
。
ふ る さ と 納 税 に お け る 給 与 収 入 と 自 己 負 担 額 の 関 係 ( 2014 年 税 制 )
独身者世帯
夫婦子ども2人世帯
給与収入
5万 円 寄 附 2 万 円 寄 附 5万 円 寄 附 2 万 円 寄 附
300
30,150
4,650
33,700
8,200
400
23,750
2,000
27,300
2,000
500
14,350
2,000
17,650
2,000
600
7,350
2,000
10,650
2,000
607
2,070
2,000
10,170
2,000
608
2,000
2,000
10,100
2,000
657
2,000
2,000
6,670
2,000
658
2,000
2,000
2,000
2,000
700
2,000
2,000
2,000
2,000
備考:子ども2人は中学生以下と想定。
出 所 : http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html ( 閲 覧 日 2015
年 1 月 11 日 ) 控 除 額 計 算 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン よ り 作 成 。
表 1 は、ふるさと納税における給与収入と自己負担額の関係を示したものである。給
8)消 費 税 の 逆 進 性 緩 和 措 置 と し て 民 主 党 政 権 の も と で 導 入 が 検 討 さ れ て い た 給 付 付 き 税 額 控 除 制 度 は 、 所 得 税 を 納 税
していない世帯にも、最低生計費の消費税額相当額を「給付」する制度であった。
4
与 収 入 が 300 万 円 の 場 合 に は 、 5 万 円 寄 附 す る と 自 己 負 担 額 は 30,150 円 、 2 万 円 寄 附 す る
と 自 己 負 担 は 4,650 円 と な る 。 同 じ 給 与 収 入 300 万 円 で も 、 夫 婦 子 ど も 2 人 の 世 帯 だ と 5
万 円 寄 附 し た 場 合 の 自 己 負 担 額 が 33,700 円 、 2 万 円 寄 附 し た 場 合 の 自 己 負 担 額 が 8,200 円
となっている。同じ年収なら扶養家族が多いと所得控除が多くなり、税負担が減少するの
で ふ る さ と 納 税 に よ る 節 税 メ リ ッ ト も 減 少 す る こ と に な る 。給 与 収 入 400 万 円 の 場 合 に は 、
2 万 円 の 寄 附 な ら ば 、 独 身 世 帯 で も 夫 婦 子 ど も 2 人 の 世 帯 で も 、 2,000 円 の 自 己 負 担 と な
っ て い る 。5 万 円 の 寄 附 の 場 合 に は 、給 与 収 入 400 万 円 の 独 身 世 帯 の 自 己 負 担 は 23,750 円 、
夫 婦 子 ど も 2 人 の 世 帯 の 自 己 負 担 額 は 27,300 円 と な る 。 つ ま り 比 較 的 少 額 の 寄 附 な ら ば 、
低 所 得 層 で も 、 自 己 負 担 2,000 円 で の 寄 附 が 可 能 と な る が 、 寄 附 金 額 が 大 き く な る に し た
が っ て 、 自 己 負 担 2,000 円 で 寄 附 が で き る 年 収 が 高 く な る わ け だ 。
こ の ふ る さ と 納 税 制 度 は 、 2015 年 度 税 制 改 正 で さ ら に 拡 充 さ れ る こ と が 決 ま っ た 。 具
体 的 に は 、2015 年 1 月 14 日 閣 議 決 定 さ れ た「 平 成 27 年 度 税 制 改 正 の 大 綱 」に よ る と 、
「個
人住民税における都道府県又は市区町村に対する寄附金に係る寄附金税額控除(ふるさと
納税)について、次の措置を講ずる。① 特例控除額の控除限度額を、個人住民税所得割
額 の 2 割 ( 現 行 : 1 割 ) に 引 き 上 げ る 。( 注 ) 上 記 の 改 正 は 、 平 成 28
年度分以後の個人
住民税について適用する。③ 確定申告を必要とする現在の申告手続について、当分の間
の措置として、次のとおり、確定申告不要な給与所得者等が寄附を行う場合はワンストッ
プ で 控 除 を 受 け ら れ る 「 ふ る さ と 納 税 ワ ン ス ト ッ プ 特 例 制 度 」 を 創 設 す る 。」 と さ れ て い
る。
このふるさと納税ワンストップ特例制度は、寄附の利便性を高めるという名目で創設さ
れたものだ。ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用するためには、寄附者は、各自治
体から送付された利用申請書を送り返す必要がある。しかも寄附先の自治体は5つまでに
制限され、誤って5カ所以上に返送した場合、すべてが無効となるため、寄附者の居住地
の自治体はその旨を通知する必要が生じてしまう。5 カ所以内の寄附の場合は、ふるさと
納税による減税が、所得税でなく、ふるさと納税を行った翌年の 6 月以降に支払う住民税
の減額の形でおこなわれる仕組みとなっている。つまり、納税者がふるさと納税ワンスト
ップ特例制度を利用した場合には、本来国税の減収となるべきところが、地方税の減収と
なるという不思議な制度となっている。現在、確定申告は国税庁の入力フォームを利用す
れば、源泉徴収票に記載された給与収入等の情報を入力するだけですむように簡便化され
ている。マイナンバー制度導入までの過渡的な措置として、このような不完全なシステム
5
を拙速に導入する必要があったのかどうかは疑問の残るところだ。
特 例 控 除 の 控 除 限 度 額 を 2 割 に 引 き 上 げ る と 、 2,000 円 の 自 己 負 担 で 寄 附 で き る 金 額 が
倍 増 す る こ と に な る 。 こ れ は 、 表 1 で み た 自 己 負 担 2,000 円 で 寄 附 が で き る 年 収 の 下 限 を
引 き 下 げ る 効 果 と 、 高 所 得 層 が 自 己 負 担 2,000 円 で 寄 附 で き る 金 額 を 押 し 上 げ る 効 果 を も
たらすことになる。
表 2 寄附金税制の概要
認 定 NPO 法 所 得 控 除
人 等 へ の 寄 方式
付
税額控除
方式
ふるさと納税
寄 附 金 額 - 2,000 円 = 寄 附 金 控 除 額
寄 附 金 限 度 額 は 所 得 の 40 %
( 寄 附 金 額 - 2,000 円 ) × 40 % = 寄 附 金 特 別 控 除 額
寄 附 金 限 度 額 は 所 得 の 40 %
所得税(国税)
( 寄 附 金 額 - 2,000 円 ) = 寄 附 金 控 除 額
寄 附 金 限 度 額 は 所 得 の 40 %
住民税(地方税)
・ 基 本 控 除 = (寄 附 金 額 - 2,000 円 )× 10%
・ 特 例 控 除 = (寄 附 金 額 - 2,000 円 )× (90%- 所 得 税 の 限 界 税 率 )
このふるさと納税制度は、既存の寄附金税制の一部を借用したものとなっている。既存
の寄附金税制とふるさと納税の仕組みをまとめた表 2 にもとづき、両者を比較検討してみ
よ う 。 既 存 の 認 定 NPO 法 人 等 へ の 寄 附 は 、 所 得 控 除 方 式 と 税 額 控 除 方 式 の ど ち ら を 選 択
す る こ と が で き る 。 所 得 控 除 方 式 は 2,000 円 を 超 え る 寄 附 を 所 得 控 除 す る も の で あ り 、 寄
附 限 度 額 は 所 得 の 40 % に 制 限 さ れ て い る 。 税 額 控 除 方 式 は 、 2,000 円 を 超 え る 寄 附 の 40
%を所得税額から差し引くものだ。ふるさと納税制度における国税の節減部分は、前者の
所得控除方式がそのまま地方団体への寄附に適用されるものである。
所得税部分は、ふるさと納税制度は既存の寄附金税制を借用したものとなっているが、
ふるさと納税制度には、特例部分が存在している。これは前述したように、所得税と個人
住民税に適用される基本分で控除しきれなかった部分を調整する措置となっている。既存
の寄附金税制のもとでは、寄附金額が増加すると所得控除方式、税額控除方式のいずれの
方式であっても、かならず自己負担額が増加していくことになるのに対して、ふるさと納
税制度には特例分が存在するために、ある一定の範囲までは寄附金額を増加させても、自
己 負 担 額 が 2,000 円 の ま ま で す む と い う 特 異 な 制 度 と な っ て い る わ け だ 。 こ の よ う な 違 い
は、政策目的の違いで説明できる。既存の寄附金税制は、納税者による寄附を促進するた
めに、寄附の一定割合を政府が補助するという考え方に沿って構築されている。これに対
して、ふるさと納税制度は、寄附金税制の仕組みの一部を借用しているものの、納税者が
6
自 分 の 税 を 納 税 す る 地 域 を 自 分 で 選 択 で き る よ う に す る こ と を 目 的 と し て い る 9) 。
ふるさと納税制度のもとで、各自治体は自分の自治体に納税地域を変更してもらうため
に、返礼品を提供していることになる。なお、ふるさと納税による返礼品は、ふるさと納
税による返礼品は、所得税法上一時所得となる
10)
。ただし、一時所得が課税対象になるの
は 、 一 年 間 の 一 時 所 得 の 総 収 入 マ イ ナ ス そ の 収 入 を 得 る た め 支 出 し た 金 額 マ イ ナ ス 50 万
円 が プ ラ ス の 金 額 に な る 場 合 だ け で あ る 。 し た が っ て 返 礼 品 の 金 額 が 50 万 円 を 超 え な け
れば、非課税となる
11)
。
(2)ふるさと納税の現状
ふるさと納税の現状については、まず、全体的な動きからみていこう。図 2 は、ふるさ
と納税による寄附とそれ以外の寄附の推移を描いたものである。ここで、ふるさと納税に
よる寄附金額は、総務省『寄附金税額控除に関する調(都道府県・市区町村に対する寄附
金 ( ふ る さ と 納 税 )』 各 年 版 の 数 字 で あ り 、 ふ る さ と 納 税 以 外 の 寄 附 金 額 は 、 総 務 省 『 市
町村課税状況調べ』各年版の「寄附金税額控除に関する調べ」に掲載されている寄附金の
合計額(道府県民税分)からふるさと納税の金額を差し引いて求めたものである
12)
。
こ の 図 か ら は 、 ふ る さ と 納 税 、 ふ る さ と 納 税 以 外 の 寄 附 が 2008 年 か ら 2010 年 に か け て
微 増 し 、 東 日 本 大 震 災 の 影 響 で 2011 年 に 、 両 者 と も 急 増 し 、 2012 年 に は 2010 年 に 近 い
水 準 ま で 減 少 し 、 2013 年 に は 再 び 増 加 傾 向 が 見 ら れ る こ と が わ か っ た 。 表 2 で み た よ う
9)ふ る さ と 納 税 制 度 に お け る 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て は 、 第 5 節 で 詳 し く 言 及 す る 。
10)所 得 税 法 第 36 条 第 1 項 。
11)2014 年 9 月 17 日 付 け 日 本 経 済 新 聞 記 事 に よ れ ば 、 宮 津 市 が 1,000 万 円 以 上 の 寄 付 者 に 対 し て 750 万 円 の 土 地 を 無
償で提供するプランを発表したところ、課税される可能性があるという総務省の指導により取りやめたという事例が
存在している。
12)『 市 町 村 課 税 状 況 調 べ 』 に は 、 都 道 府 県 、 市 町 村 、 特 別 区 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と 納 税 )、 共 同 募 金 会 、 日 本 赤
十 字 社 に 対 す る 寄 附 金 、 条 例 で 定 め る も の に 対 す る 寄 附 金 ( 認 定 NPO 法 人 等 へ の 寄 附 ) の 金 額 と 合 計 額 が 掲 載 さ れ て
いる。寄附金の合計額としては、道府県民税分として集計された数字を使用している。道府県税分を合計額としたの
は 、 認 定 NPO 法 人 へ の 寄 附 が 道 府 県 の み で 認 め ら れ 、 市 町 村 民 税 に つ い て は 寄 附 金 控 除 の 対 象 と な ら な い ケ ー ス が 多
い た め で あ る 。 た だ し 、 2008 年 度 に つ い て は 、 市 町 村 分 の 寄 附 金 合 計 額 の 方 が 道 府 県 民 分 を 上 回 っ て い た た め 、 市 町
村分の数字を寄附金総額の数字として採用した。
7
に 、 ふ る さ と 納 税 制 度 は 、 認 定 NPO 法 人 に 対 す る 寄 附 よ り も か な り 優 遇 さ れ て い る 。 し
かし、現状ではふるさと納税制度の拡充により、ふるさと納税以外の寄附が抑制されてい
るわけではないことがわかる。
出所:総務省『市町村課税状況調べ』各年版より作成。
図 2 ふるさと納税による寄附とそれ以外の寄附の推移
図 3 は 、ふ る さ と 納 税 の 推 移 を 寄 附 金 額 、控 除 額 、控 除 率 に つ い て 描 い た も の で あ る
13)
。
控除額は個人住民税における寄附金税額控除の金額であるので、地方税における税収ロス
を示すことになる。この図の左の縦軸には、寄附金額と控除額、右の縦軸には控除率を採
っている。控除率は、寄附金控除の対象となる金額を分子とし、ふるさと納税に関する寄
附金として確定申告された寄附金額を分母に採ったものである。ふるさと納税をおこなっ
13)ふ る さ と 納 税 の 申 告 額 は 、 総 務 省 「 寄 附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調 ( 都 道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と
納 税 ))」 に お い て 公 表 さ れ て い る 。 た だ し 、 各 年 度 の 数 字 は 、 前 年 の 1 月 か ら 12 月 ま で に さ れ た 寄 附 の う ち 、 申 告
されたものであることに注意が必要だ。
8
ても、必ずしも確定申告されるわけではないため、実際の寄附額はここでの寄附金額より
も多くなる
14)
。
7,000,000
45.0%
40.0%
6,000,000
35.0%
5,000,000
30.0%
4,000,000
千円
25.0%
20.0%
3,000,000
15.0%
2,000,000
10.0%
1,000,000
5.0%
0
0.0%
2008年
2009年
2010年
寄付金額
2011年
控除額
2012年
2013年
控除率
出所:総務省『寄附金税額控除に関する調(都道府県・市区町村に対する寄附金(ふるさ
と 納 税 ))』 各 年 版 よ り 作 成 。
図 3
寄附金額、控除額、控除率の推移
制 度 発 足 当 初 の 2008 年 の 寄 附 金 額 は 、 72 億 5,996 億 円 に 留 ま っ て い る 。 そ の 後 、 2010
年 ま で は ほ ぼ 横 ば い に 推 移 し て い る 。2011 年 に は 、649 億 1,490 万 円 に 急 増 し て い る 。2011
年 の 急 増 は 、 2011 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 に よ る 寄 附 金 急 増 の 影 響 と 思 わ れ る 。 2012 年 に
は 、 震 災 に 対 す る 寄 附 が 一 段 落 し た こ と で 、 大 き く 減 少 し て い る 。 2013 年 に は 、 再 び 増
加 傾 向 が 見 ら れ る 。 控 除 額 に つ い て も 2010 年 ま で は 横 ば い に 推 移 し 、 2011 年 に 急 増 し て
い る 。 2012 年 度 に は 寄 附 金 額 の 減 少 に よ り 控 除 額 も 大 き く 減 少 す る が 、 2013 年 度 に は 再
び 増 加 し て い る 。 控 除 率 は 、 2008 年 の 制 度 導 入 以 降 、 一 貫 し て 増 加 傾 向 が 見 ら れ 、 2012
14)総 務 省 自 治 税 務 局 に よ る 2013 年 9 月 13 日 の 「 ふ る さ と 納 税 に 関 す る 調 査 結 果 」 に よ る と 2011 年 の 寄 附 金 の 申 告
額 が 67 億 円 で あ る の に 対 し て 、 自 治 体 ア ン ケ ー ト の 寄 附 金 の 集 計 額 は 138 億 円 と な っ て い る 。 し か も 、 寄 附 金 を 把 握
し て い る 自 治 体 数 は 1,736 団 体 と な っ て お り 、 一 部 の 市 町 村 で は 寄 附 金 額 を 集 計 し て い な い こ と が わ か っ た 。
9
年 度 時 点 に は 34.8%に 達 し て い る 。 2013 年 度 に は 、 42.7%と な っ て い る 。 な お 、 ふ る さ と
納 税 で は 、 寄 附 金 控 除 の 申 告 に 対 し て 2,000 円 を 超 え る 部 分 が 、 国 税 で あ る 所 得 税 に お い
て、所得控除の対象となる。この所得控除に対してどの程度の税収ロスが発生するかは寄
附者に適用される限界税率に依存することになる。つまり国税部分も考慮に入れると、全
体での税収ロスは、ずっと高くなる。
では、国税部分を含めると税収ロスは、どの程度の数字になるのであろうか。図 1 で示
し た よ う に 、 国 税 分 に つ い て は 2,000 円 を 超 え る 寄 附 が 所 得 控 除 の 対 象 と な る 。 所 得 控 除
の場合には、寄附金控除に対する節税額は所得税の限界税率に依存することになる。この
ため所得税の税収ロスを推計するためには、所得階級別にどの程度の寄附がおこなわれて
い る の か を 知 る 必 要 が あ る 。所 得 階 級 別 に 寄 附 金 控 除 の 金 額 を 示 し た 統 計 デ ー タ と し て は 、
国税庁『税務統計からみた申告所得税の実態』が存在している。この統計では、合計所得
階級別に寄附金控除が適用された人員と金額が入手できる。ただし、この寄附金控除には
ふ る さ と 納 税 だ け で な く 、 認 定 NPO 法 人 等 へ の 寄 附 金 控 除 の 金 額 も 含 ま れ て い る
15)
。
14.0%
12.0%
10.0%
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
0.0%
人員シェア
金額シェア
出 所 : 国 税 庁 『 税 務 統 計 か ら み た 申 告 所 得 税 の 実 態 (2013 年 度 )』 よ り 作 成 。
15)こ の た め 、 本 稿 で の 推 計 は ふ る さ と 納 税 に よ る 所 得 階 級 別 の 分 布 状 況 と そ れ 以 外 の 寄 付 に つ い て の 分 布 状 況 に 差
がないと仮定していることになる。ふるさと納税は 1 万円程度の小口の寄付も多いため、ふるさと納税以外の寄附を
含む所得階級別データを利用した本稿の推計は、税収ロスを過大に推計している可能性がある。
10
図 4
所得階級別寄附金の人員と金額のシェア
図 4 は 、『 税 務 統 計 か ら み た 申 告 所 得 税 の 実 態 (2013 年 度 )』 の デ ー タ を 利 用 し て 、 所 得
階 級 別 に 寄 附 金 の 人 員 と 金 額 の シ ェ ア を 描 い た も の だ 。 こ の 図 か ら は 寄 附 人 員 は 400 万 円
以 下 の 階 層 と 3,000 万 円 以 下 の 階 層 の と こ ろ が 多 い の に 対 し て 、 寄 附 金 額 シ ェ ア は 1 億 円
以 下 の 階 層 が 多 く な っ て い る こ と が わ か る 。つ ま り 、高 所 得 階 層 の 人 員 は 少 な い と し て も 、
一人当たりの寄附が多いため金額のシェアは高所得層に偏った分布になることがわかる。
寄附金控除による減収額の多さは、寄附金額のシェアに依存するため、高所得層による節
税が相対的に多くなるわけだ。
表 3 は 、 2013 年 度 の 『 税 務 統 計 か ら み た 申 告 所 得 税 の 実 態 』、 総 務 省 「 平 成 26 年 度 寄
附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調 ( 都 道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と 納 税 ))」 を 利
用して、所得税の税収ロスを推計したものだ。この表の第 2 列と第 3 列には、それぞれ合
計所得階級別の人員と課税所得金額が掲載されている。そこで課税所得金額を人員で割る
ことで、一人あたりの課税所得金額を求めることができる。この一人あたり課税所得金額
に適用される限界税率を所得税の税率表を参照することで判定したものが第 5 列の限界税
率である
16)
。所得控除方式のもとでは、この限界税率が各所得階級別の節税割合となる。
第 6 列 は 、『 申 告 所 得 税 の 実 態 』 に 掲 載 さ れ て い る 合 計 所 得 階 級 別 の 寄 附 金 額 を シ ェ ア に
直したものである。第 7 列は、合計所得階級別の寄附人員をシェアに直したものだ。第 8
列 は 、 図 3 で 示 し た 2013 年 度 の ふ る さ と 納 税 制 度 に お け る 寄 附 金 総 額 を 第 6 列 の 寄 附 金
の シ ェ ア で 比 例 配 分 し た も の だ 。 第 9 列 は 、 2013 年 度 の ふ る さ と 納 税 の 申 告 人 員 を 第 7
列 の シ ェ ア で 比 例 配 分 し た も の だ 。 第 10 列 は 、 第 8 列 で 推 計 し た 合 計 所 得 階 級 別 の ふ る
さ と 納 税 の 寄 附 金 額 か ら 第 9 列 の 階 級 別 ふ る さ と 納 税 人 員 に 自 己 負 担 額 2,000 円 を 掛 け 合
わ せ た も の を 差 し 引 く こ と で ふ る さ と 納 税 の 寄 附 金 控 除 額 を 推 計 し た も の だ 。 第 10 列 の
寄 附 控 除 額 に 第 5 列 の 限 界 税 率 を 掛 け 合 わ せ る こ と で 、 第 11 列 の 階 級 別 の 所 得 税 の 税 収
ロスが推計できる
17)
。この税収ロスを合計するとふるさと納税による所得税の税収ロスの
合 計 値 は 、 48 億 6,643 万 円 と な る 。 こ の 税 収 ロ ス の 合 計 値 を 寄 附 金 総 額 で 割 る と 、 国 税 部
分 の 税 収 ロ ス の 比 率 は 34.3%と な る 。 2013 年 度 の 地 方 税 に お け る 税 収 ロ ス の 比 率 42.7 %
16)2013 年 税 制 で 適 用 さ れ る 限 界 税 率 は 、 課 税 所 得 195 万 円 以 下 5%、 330 万 円 以 下 10%、 695 万 円 以 下 20%、 900 万 円
以 下 23%、 1800 万 円 以 下 30%、 1800 万 円 超 40%で あ っ た 。
17)本 稿 の 推 計 で は 、 上 限 を 超 え る 寄 附 金 の 存 在 に つ い て は 考 慮 し て い な い 。
11
と 合 わ せ る と 、 ふ る さ と 納 税 に よ る 税 収 ロ ス は 、 寄 附 金 総 額 の 77.0%と な る 。
表3
所 得 税 に お け る 税 収 ロ ス の 推 計 (2013 年 度 )
合計所得階級
人員
人
70万円以下
100万円〃
150万円〃 200万円〃
250万円〃
300万円〃
400万円〃
500万円〃
600万円〃
700万円〃
800万円〃
1,000万円〃
1,200万円〃
1,500万円〃
2,000万円〃
3,000万円〃
5,000万円〃
1億円〃
2億円〃
5億円〃
10億円〃
20億円〃
50億円〃
100億円〃
100億円超
計
183,582
294,152
701,552
774,198
676,694
535,574
746,245
494,307
348,474
257,968
188,853
251,369
164,249
165,904
166,651
136,718
83,064
41,435
11,168
3,698
860
324
174
39
18
6,227,270
一人あた
寄附金額 寄付人員 寄附金総 ふるさと納
所得税の
課 税 所 得 り課税所 限界税率
所得控除
シェア
シェア
額
税人員
税収ロス
得
百万円
万円
万円
人
万円
万円
7,983
4
5%
0.2%
0.8%
2,447
1,085
2,444
122
75,762
26
5%
0.3%
1.5%
3,583
2,063
3,578
179
327,704
47
5%
0.7%
4.1%
10,354
5,469
10,343
517
596,077
77
5%
1.1%
5.7%
15,466
7,594
15,451
773
755,816
112
5%
1.2%
5.8%
16,602
7,723
16,586
829
804,024
150
5%
1.3%
5.4%
18,218
7,210
18,204
910
1,574,843
211
10%
2.2%
8.4%
31,325
11,296
31,302
3,130
1,470,567
298
10%
2.0%
6.8%
29,010
9,044
28,991
2,899
1,345,008
386
20%
2.0%
5.7%
28,398
7,614
28,383
5,677
1,224,348
475
20%
1.8%
4.8%
25,820
6,405
25,807
5,161
1,073,464
568
20%
1.6%
3.9%
22,238
5,267
22,227
4,445
1,772,323
705
23%
2.9%
6.2%
41,810
8,323
41,794
9,613
1,480,704
901
23%
2.8%
4.8%
39,364
6,484
39,351
9,051
1,886,784
1,137
33%
4.2%
6.1%
60,160
8,161
60,144
19,847
2,520,484
1,512
33%
6.2%
7.4%
87,902
9,890
87,883
29,001
3,005,200
2,198
40%
10.5%
9.7%
149,591
12,943
149,566
59,826
2,956,480
3,559
40%
12.1%
7.2%
172,222
9,629
172,203
68,881
2,683,414
6,476
40%
12.6%
4.0%
178,732
5,349
178,721
71,489
1,464,989
13,118
40%
7.3%
1.2%
103,063
1,549
103,059
41,224
1,076,491
29,110
40%
5.8%
0.4%
82,878
575
82,877
33,151
587,492
68,313
40%
6.7%
0.1%
94,368
141
94,368
37,747
442,093 136,448
40%
7.4%
0.0%
105,640
63
105,640
42,256
526,332 302,490
40%
3.7%
0.0%
51,946
37
51,946
20,779
258,922 663,903
40%
1.7%
0.0%
24,379
12
24,378
9,751
503,927 2,799,594
40%
1.7%
0.0%
23,461
5
23,461
9,384
30,421,233
100.0%
100.0% 1,418,935
133,928
1,418,710 486,643
出 所 : 国 税 庁 『 税 務 統 計 か ら み た 申 告 所 得 税 の 実 態 (2013 年 度 )』、 総 務 省 「 平 成 26 年 度 寄 附 金 税 額 控 除
に 関 す る 調 ( 都 道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と 納 税 ))」 よ り 作 成 。
表 1 で み た よ う に 、 ふ る さ と 納 税 制 度 の も と で は 、 給 与 収 入 700 万 円 の 独 身 世 帯 が 3 万
円 寄 附 す る と 2 万 8,000 円 が 寄 附 金 控 除 の 対 象 と な り 、 控 除 率 は 約 93.3 % と な る 。 同 じ く
給 与 収 入 700 万 円 の 独 身 世 帯 が 5 万 円 寄 附 す る と 寄 附 金 控 除 の 対 象 は 4 万 8,000 円 と な り 、
控 除 率 は 96%と な る 。 こ の 数 字 は 本 稿 で の ふ る さ と 納 税 に よ る 税 収 ロ ス の 推 計 値 よ り も か
な り 高 い 。 こ れ は 、 自 己 負 担 が 2,000 円 を 超 え る 場 合 で も 、 ふ る さ と 納 税 が お こ な わ れ て
いることを示唆するものだ。
表 4 は、表 3 と基本的に同じ手法を用いて、実質寄附額と税収ロス比率の推移を推計し
た結果をまとめたものだ
18)
。こ の 表 に よ る と 国 税 と 地 方 税 を 合 計 し た 税 収 ロ ス 比 率 は 2008
18)た だ し 、 2009 年 ま で は 自 己 負 担 が 5,000 円 だ っ た こ と を 考 慮 し て い る 。
12
年 の 60.0%か ら 、 毎 年 上 昇 し て き て お り 、 2013 年 に は 77.0%に 達 し て い る 。 こ れ は 、 ふ る
さと納税制度における返礼品合戦の過熱から節税と返礼品目当ての寄附が増加してきてい
ることを意味している。
表4
実質寄附額、税収ロス比率の推移
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
寄附金額(億円)
72.5996
65.5318
67.0859
649.1490
130.1128
141.8935
実 質 寄 附 (億 円 )
28.8659
25.9306
24.7921
228.6731
40.1830
32.6047
税収ロス金額(億円)
43.7337
39.6012
42.2938
420.4759
89.9298
109.2887
所得税税収ロス比率
34.2%
32.9%
32.6%
32.4%
34.3%
34.3%
住民税税収ロス比率
26.1%
27.6%
30.5%
32.4%
34.8%
42.7%
税収税収ロス比率
60.2%
60.4%
63.0%
64.8%
69.1%
77.0%
出 所 : 国 税 庁 『 税 務 統 計 か ら み た 申 告 所 得 税 の 実 態 』、 総 務 省 「 寄 附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調 ( 都 道 府 県
・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と 納 税 ))」 各 年 版 よ り 推 計 。
160
東京
140
120
一人当たり控除額
100
80
奈良
大阪
神奈川
北海道
円
( )
60
40
20
0
0
2,000,000
4,000,000
6,000,000
8,000,000
10,000,000
12,000,000
14,000,000
人口 (人)
出 所 : 総 務 省 統 計 局 『 住 民 基 本 台 帳 に 基 づ く 人 口 、 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 調 査 ( 2013 年 )』、
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html( 閲覧日2015年1月13日 ) よ り 作 成 。
図 5
人口と控除総額の散布図
図 5 は、人口と各都道府県別の寄附金控除の人口一人当たり控除額との関係を散布図で
示したものである。寄附金控除の金額は地方税における税収ロスの大きさを測る指標だと
考えて良い。この図をみると、人口規模が大きい東京、神奈川、大阪で一人当たり控除額
が大きくなっている。ただし、奈良県は人口規模が小さいにもかかわらず、一人当たりの
13
控除額が大阪に次いで高くなっている。
0.12%
0.10%
0.08%
寄附金控除/個人住民税
0.06%
0.04%
0.02%
沖縄県
鹿児島県
宮崎県
大分県
熊本県
長崎県
佐賀県
福岡県
高知県
愛媛県
香川県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取県
和歌山県
奈良県
兵庫県
大阪府
京都府
滋賀県
三重県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
山梨県
福井県
石川県
富山県
新潟県
神奈川県
東京都
千葉県
埼玉県
群馬県
栃木県
茨城県
福島県
山形県
秋田県
宮城県
岩手県
青森県
北海道
0.00%
出 所 : 総 務 省 『 平 成 26 年 度 寄 附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調 ( 都 道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ
と 納 税 ))』、 総 務 省 『 平 成 27 年 度 地 方 税 に 関 す る 参 考 係 数 資 料 』 よ り 作 成 。
図 6
都道府県別にみた寄附金控除/個人住民税税収比率
図 6 は、都道府県別に個人住民税税収に占める寄附金控除の割合を求めたものだ。地方
税 収 に 占 め る 寄 附 金 控 除 の 割 合 が 最 も 高 い の は 東 京 都 の 0.10 % 、 次 に 高 い の が 大 阪 府 の
0.07%と な っ て い る 。 東 京 都 の 税 収 ロ ス が 最 も 高 い わ け だ が 、 個 人 住 民 税 に 占 め る 比 率 が
高 い わ け で は な い 。 2013 年 度 の 個 人 住 民 税 の 税 収 が 11 兆 6,314 億 円 で あ る の に 対 し て 、
地 方 税 の 寄 附 金 控 除 総 額 は 61 億 円 に す ぎ な い こ と か ら も 、 ふ る さ と 納 税 制 度 が 地 域 間 の
税収格差を是正する効果は小さいと言える。ちなみに地域間の税収格差是正効果を確認す
るために、ふるさと納税による減収額が生じなかった場合の都道府県別個人住民税の一人
当たり税収とふるさと納税による減収後の都道府県別個人住民税の一人当たり税収につい
て 、 変 動 係 数 を 測 定 し て み る と 、 前 者 が 0.2164、 後 者 が 0.2162 と な っ た 。 つ ま り 、 ふ る
さと納税により、地域間の税収格差は縮小しているものの、その縮小度合いはきわめて小
さいことがわかった。
14
第3節
ふるさと納税制度と地方団体への寄附
この節では、ふるさと納税制度における各地方団体への寄附がどのような要因でおこな
われているかを分析しよう。この節では、まず寄附の経済効果について検証した先行研究
を紹介し、次にふるさと納税制度のもとで地方団体への寄附がどのような要因でおこなわ
れているかを、各地方団体の寄附の状況とふるさと納税制度における特典等を精査するこ
とで明らかにする。ふるさと納税制度のもとでは、情報公開のために各自治体のホームペ
ージにて寄附件数と寄附金額が掲載されていることが多い。本稿では基本的には各自治体
の ホ ー ム ペ ー ジ で 公 開 さ れ て い る 2013 年 度 の 数 字 を 使 用 す る こ と と し た 。 た だ し 、 こ れ
らの数字は、各自治体によって微妙に集計方法が異なっていることに注意が必要である。
ふるさと納税は、個人だけでなく、企業・団体による寄附も可能な制度となっている。自
治体によっては、企業・団体による寄附も含まれて集計されている。なお、ホームページ
に掲載されていない自治体については、メールと電話による調査もおこなった。
(1)寄附の経済効果
個 人 の 寄 附 が 如 何 な る 要 因 で 決 定 さ れ る か に つ い て は 、 Becker( 1974) が 先 駆 的 な 研 究
と し て 挙 げ ら れ る 。 Becker は 、 経 済 学 の 分 野 で は 、 あ る 人 と そ の あ る 人 と 異 な る 特 性 を 持
つ 人 と の 間 に あ る 相 互 作 用 ( interaction) が 、 ほ と ん ど 無 視 さ れ て い た と 指 摘 し た 。 た と え
ば、子供を学校に行かせる、あるいは贈与するといったことは自分の所得だけでなく、家
族 全 体 の 所 得 に も 影 響 を 与 え る こ と に な る 。 Becker は 、 こ の 家 族 全 体 と い う 概 念 を 社 会 全
体 ( social enviroment) に ま で 拡 大 さ せ る こ と で 、 あ る 個 人 の 社 会 へ の 所 得 移 転 を 寄 附 と し
て 捉 え た の で あ る 。 そ こ で Becker は 寄 附 行 為 に つ い て 「 う わ べ な 寄 附 行 為 で も 他 人 か ら の
蔑視を避けたいからあるいは、社会的な賞賛を得たいということでありうる。しかしなが
ら一般的な寄附は、社会的厚生を改善したいという動機で行われることで無駄とはならな
い 。」 と し た
19)
。 Becker は こ の よ う な 経 済 主 体 の 利 他 的 動 機 を 効 用 関 数 に 取 り 入 れ た 点 で
寄附の経済分析において先駆的であると言えよう。
寄 附 の 効 率 性 の 観 点 か ら の 研 究 で は 、 Feldstein( 1975a,b) お よ び Feldstein( 1980) が 先 駆
19)Becker( 1974) 1083 ペ ー ジ 、 13 行 目 か ら 引 用 。
15
的 で あ る20) 。Feldstein( 1980)は「 寄 附 の 効 率 性 」に つ い て 理 論 的 な 分 析 を お こ な っ て い る 。
Feldstein は 、 社 会 貢 献 活 動 を 1 単 位 増 加 さ せ る た め の 費 用 を 政 府 が 直 接 負 担 す る よ り も 民
間への補助を通じた支出にしたほうが効率的であるとした。この場合、寄附優遇税制はよ
り 効 率 的 な 公 共 財 供 給 を 可 能 に す る 。 Feldstein( 1975a) は 寄 附 の 価 格 弾 力 性 と 所 得 弾 力 性
に注目した。寄附優遇税制によって寄附の価格弾性値が絶対値で 1 を上回るのであれば、
優遇税制の存在による寄附金額が税収減よりも上回るので効率的であるからだ。また所得
弾力性が大きいほど、寄附金控除の上限を撤廃するなど高所得者へ優遇税制が効果を持つ
からである。
Feldstein( 1975a) は ア メ リ カ に お け る 1948 年 か ら 1968 年 の 税 務 デ ー タ を 用 い て 実 証 分 析
を 行 っ た 結 果 、 寄 附 の 価 格 弾 性 値 は 概 ね 絶 対 値 で 1.1 と し た 。 所 得 弾 性 値 は 1968 年 デ ー タ
に よ る と 、 0.822 と し て い る 。 こ れ は 所 得 が 1%上 昇 す る と 、 寄 附 は 0.822%増 加 す る こ と を
表している。寄附金の価格弾力性が絶対値で1を超えているなら、寄附金控除により寄附
価格が低下すると、税収の減少を上回る寄附が期待できることになる。一方、所得弾力性
は 1 を下回るなら、所得が増加しても、それ以上の寄附の増加が見込めないことになる。
これは所得に占める寄附金控除の割合に上限を設定すべき根拠となる。
日 本 で の 先 駆 的 な 研 究 に は 山 内 ( 1997) が 存 在 す る 。 山 内 ( 1997) は 「 寄 附 促 進 税 制 に
よる税収減以上に寄附支出が増加しなければ、寄附優遇税制は効率性の観点からは正当化
されない」と指摘したうえで
21)
、 1990 年 か ら 1994 年 の 国 税 庁 『 申 告 所 得 税 の 実 態 』 に お
ける所得階級別データを用いて寄附の価格弾性値と所得弾性値を計測している。山内
(1997)は 、 推 計 結 果 と し て 寄 附 の 価 格 弾 性 値 は -1.70、 所 得 弾 性 値 は 0.23 と い う 値 を 得 て い
る 。 さ ら に 山 内 ( 2014) は 、 最 近 の 研 究 成 果 で は 寄 付 の 価 格 弾 力 性 が 絶 対 値 で 1 よ り 小 さ
い と い う も の が 多 い と し て い る 。 こ の 理 由 と し て 山 内 ( 2014) は 、 過 去 は 集 計 デ ー タ で 計
測 さ れ て い た も の が 、最 近 で は マ イ ク ロ ・ デ ー タ を 利 用 さ れ る よ う に な っ て き て い る こ と 、
データ分析手法が高度になってきていることが考えられると指摘している。
地 方 団 体 に 対 す る 寄 附 の 要 因 を 調 べ た 研 究 に は 跡 田 ( 2008) が 存 在 し て い る 。 跡 田 の 推
20)Feldstein( 1975a) は 寄 附 の 価 格 弾 力 性 と 所 得 弾 力 性 を 計 測 し て い る 。 Feldstein( 1975b) は 寄 附 を ど こ に す る の か
( 研 究 で は 特 に 宗 教 団 体 と 教 育 機 関 を 取 り 上 げ て い る 。) へ の イ ン セ ン テ ィ ブ に 寄 附 金 控 除 が ど の く ら い 関 係 し て い
るのかについて推計している。
21)山 内 (1997)p.180 引 用 。
16
計モデルは以下のようになっている。
ln( 各 地 域 の 寄 附 金 額 ) = α + β1 ln( 各 地 域 の 雇 用 者 所 得 ) +β2 ln( 各 地 域 の 企 業 所 得 )
+β3 ( ダ ミ ー 変 数 1) +β4 ( ダ ミ ー 変 数 2)
跡 田 ( 2008) で は ダ ミ ー 変 数 1 と し て 電 源 立 地 地 域 、 ダ ミ ー 変 数 2 と し て ユ ニ ー ク 政 策
地 域 を 採 用 し て い る 。 跡 田 ( 2008) は 、 2 つ の 説 明 変 数 の 係 数 が 統 計 的 に 有 意 で は な く 、 2
つ の ダ ミ ー 変 数 の 係 数 が 1%の 有 意 水 準 で 有 意 で あ る と い う 結 果 を 得 て い る 。 こ の 結 果 か
ら各自治体の特殊な要因によって寄附を増大させているとしている
22)
。
(2)道府県別にみたふるさと納税の状況
表 5 は、道府県別のふるさと納税の状況をまとめたものだ。この表は、寄附金額順に道
府県を並べ替えている。寄附金額の数字は、福井県のふるさと納税情報センターが調べた
2013 年 度 の も の で あ る
23)
。寄附金控除の数字は、総務省「寄附金税額控除に関する調」
の 寄 附 金 控 除 の う ち 、 2013 年 度 に お け る 道 府 県 分 の 数 字 で あ る 。 実 質 ロ ス の 数 字 は 、 寄
附 金 税 額 控 除 に 25 % を 掛 け 合 わ せ た 数 字 か ら 寄 附 金 額 を 差 し 引 い た も の で あ り 、 各 団 体
別の損得の目安となっている
表5
24)
。
道府県別のふるさと納税状況
単位:万円
備 考 ( 2015年 1 月 各 道 府 県 の HP調 査 )
鳥取
寄附金 寄 附 実 質 ロ
控除
金額
ス
1万 円 以 上 の 寄 附 に 税 ・ 送 料 込 み 4千 円 相 当 特 産 品 、 2万 円 で 7千 円 相 当 、 3万 円 で 1万 1
千 円 相 当 、 4万 円 で 1万 4千 円 相 当 、 6万 円 で 2万 1千 円 相 当 の 松 葉 ガ ニ 等
岩手
644
33,607
-33,446
982
11,63
-11,3
22)具 体 的 に は 、 福 井 県 と 山 口 県 と い っ た 電 源 立 地 の 存 在 、 天 理 市 の 宗 教 法 人 、 芦 屋 市 の 高 級 住 宅 街 の 存 在 を 指 摘 し
ている。
23) こ の 寄 附 金 額 の 数 字 の 一 部 に は 、 企 業 、 団 体 に よ る 寄 付 が 含 ま れ て い る 。 ふ る さ と 納 税 制 度 は 、 個 人 を 対 象 と す
るものだが、多くの地方団体では「ふるさと応援寄付」として企業団体の寄付も募集している。なお、東京都の数字
は非公表となっている。
24)寄 附 金 控 除 に よ る 税 収 減 は 基 準 財 政 収 入 に 75%が 算 入 さ れ る 。 2013 年 度 に お い て は 、 東 京 以 外 の 道 府 県 は 、 交 付
団 体 で あ る た め 、 寄 附 金 控 除 の 25 % が 税 収 減 と な る 。
17
福島
熊本
鹿児島
宮城
長野
徳島
福井
栃木
佐賀
青森
山梨
和歌山
高知
神奈川
滋賀
静岡
山形
兵庫
福岡
埼玉
京都
北海道
石川
島根
大阪
沖縄
奈良
新潟
茨城
秋田
千葉
長崎
愛媛
岐阜
岡山
山口
香川
宮崎
大分
三重
愛知
富山
群馬
広島
知事名感謝状
1万 円 以 上 で 3000円 相 当 特 産 品 、 10万 円 以 上 で 2品
「夏・冬の特選ギフト」を特別価格で提供、県内施設割引
3万 円 以 上 で 4000円 程 度 の 特 産 品
1万 円 以 上 で 特 産 品 ( 米 10キ ロ 等 ) 、 宿 泊 優 待 5,000円 分 ,5万 円 以 上 米 15キ ロ 等
すだち送付
恐竜博物館年間パスポート、福井城山里口御門「瓦」「壁板」お名前等記載
1万 円 以 上 で 特 産 品
平 成 26年 度 か ら 県 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品
5000円 以 上 で 特 産 品 、 2万 円 以 上 で 2 品
1万 円 以 上 の 寄 附 に メ ロ ン な ど 特 産 品 、 平 成 25年 度 893件 1,553万 9,260円
県 外 居 住 者 に 3万 円 以 上 3000円 カ タ ロ グ ギ フ ト 、 5万 円 以 上 5000円 カ タ ロ グ ギ フ ト 、 10万
円 以 上 1万 円 カ タ ロ グ ギ フ ト 、 期 間 限 定 で 5万 円 以 上 な ら さ ら に 1万 円 相 当 の 返 礼 品
10万 円 以 上 で 特 産 品
1万 円 以 上 で 特 産 品
京都文化体験へ招待
道外居住者は公益社団法人北海道倶楽部によるふるさと納税キャンペーンを利用可能
10万 円 以 上 で 特 産 品
県 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 、 2万 円 以 上 で 米 10キ ロ 等
知事名感謝状
3万 円 以 上 で 2000円 程 度 の 特 産 品
県 外 居 住 者 の 5000円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 、 5 万 寄 附 で 6800円 相 当 の 牛 肉 等
5000円 以 上 の 寄 附 で 米 2 キ ロ
県内施設の優待券送付
県内施設の優待券送付
記念品(クリアファイル等)送付
1万 円 以 上 で 特 産 品
県 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品
県 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 、 1万 円 寄 附 で 2000円 相 当 、 3万 円 寄 附 で 3000円 相 当
県 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 、 3万 円 以 上 で 6000円 相 当 の 米 等
絵はがきセット送付
県 外 居 住 者 の 5000円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品
5000円 以 上 の 寄 附 で ポ ス ト カ ー ド 、 3万 以 上 で 県 内 施 設 利 用 券 等
1万 円 以 上 で 特 産 品 、 5万 円 以 上 で 米 10キ ロ
ゆるキャラグッズ送付
1,170
1,063
987
2,857
2,606
648
582
2,035
474
811
764
879
534
22,594
2,314
4,837
936
7,901
6,032
5,366
4,705
4,381
4,327
4,001
3,379
3,051
2,502
2,073
1,884
1,690
1,633
1,599
1,559
1,485
-7,608
-5,766
-5,120
-3,991
-3,730
-4,165
-3,856
-2,871
-2,932
-2,299
-1,882
-1,664
-1,557
4,015
-1,021
-350
-1,251
11,798
5,993
11,882
5,232
8,052
1,607
746
21,722
1,168
3,301
2,031
2,640
574
11,971
1,093
1,105
3,225
1,854
921
730
487
728
2,396
14,158
1,172
2,289
3,019
1,415
1,355
1,282
1,237
1,180
1,069
1,031
1,008
894
890
851
832
728
716
677
505
430
405
371
370
343
268
242
198
191
86
76
1,534
143
1,689
71
833
-667
-845
4,422
-602
-65
-343
-172
-585
2,277
-404
-229
377
59
-141
-188
-221
-86
357
3,341
102
486
679
出所:各自治体ホームページ、福井県のふるさと納税情報センターホームページ、総務省
『 平 成 26 年 度 寄 附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調 ( 都 道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ
と 納 税 ))』 よ り 作 成 。
表 に よ る と 、道 府 県 の お い て 突 出 し て 寄 附 金 を 集 め て い る の が 鳥 取 県 で あ る 。鳥 取 県 は 、
2013 年 度 に 24,198 件 、 3 億 3,606 万 7,003 円 も の 寄 附 を 集 め て い る 。 鳥 取 県 の ふ る さ と 納
税が人気を集めている理由は、寄附金額別に牛肉、米、カニなど人気商品を含む多彩な特
産品が用意されていること、クレジットカードによる寄附申し込みとの同時決済が可能な
こ と が 挙 げ ら れ る 。 鳥 取 県 で は 、 2013 年 度 時 点 で は 後 述 す る 各 市 町 村 の 返 礼 品 と 比 較 す
18
ると、寄附金額に対する還元率は、低めに抑制されていた。
表 6 は 、 2013 年 度 時 点 で の 鳥 取 県 に お け る 返 礼 品 の 概 要 を ま と め た も の で あ る 。 市 町
村では、寄附金額に対して5割程度の返礼品を用意していることが多いが、鳥取県ではた
と え ば 寄 附 金 額 1 万 円 に 対 し て は 税 ・ 送 料 込 み 4,000 円 程 度 の 商 品 が 提 供 さ れ て い た 。 し
か も 4,000 円 相 当 の 商 品 に 対 し て 県 の 負 担 額 は 3,000 円 に 抑 制 さ れ て い た
25)
。この県負担
額 を 節 約 す る 仕 組 み が 、「 鳥 取 県 ふ る さ と 納 税 パ ー ト ナ ー 企 業 」 制 度 で あ る 。 鳥 取 県 は 、
ふるさと納税の返礼品を提供する企業を公募している。県の負担額以上の商品代金を企業
は 負 担 す る こ と に な る も の の 、パ ー ト ナ ー 企 業 に は 企 業 名 や 商 品 名 を 県 が PR し て く れ る 、
返 礼 品 送 付 の 際 に パ ン フ レ ッ ト を 同 封 す る こ と で 自 社 商 品 の PR に つ な が る と い う メ リ ッ
トが生じることになる。
表6
鳥取県における返礼品の概要
お礼の品の区分
4 千 円 相 当 の 品 (税 ・ 送 料 込 )
7 千 円 相 当 の 品 (税 ・ 送 料 込 )
1 万 1 千 円 相 当 の 品 (税 ・ 送 料 込 )
1 万 4 千 円 相 当 の 品 (税 ・ 送 料 込 )
2 万 1 千 円 相 当 の 品 (税 ・ 送 料 込 )
プ レ ミ ア ム 品 (一 般 に 入 手 困 難 な 品 )
県負担額
3,000 円
5,000 円
8,000 円
10,000 円
15,000 円
原則実費
提供対象者
寄附額 1 万円以上 2 万円未満の方
寄附額 2 万円以上 3 万円未満の方
寄附額 3 万円以上 4 万円未満の方
寄附額 4 万円以上 6 万円未満の方
寄 附 額 6 万 円 以 上 10 万 円 未 満 の 方
原 則 寄 附 額 10 万 円 以 上 の 方
出 所 : 鳥 取 県 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.pref.tottori.lg.jp/225722.htm( 閲 覧 日 2015 年 2 月 ) 引 用 。
表 5 によると、寄附金額順で第2位となっているのが岩手県である。岩手県ではふるさ
と納税の返礼品を用意していないにもかかわらず、東日本大震災への義援金としてふるさ
と 納 税 制 度 が 利 用 さ れ て い る た め に 、 1 億 1,633 万 円 の 寄 附 を 集 め て い る 。 寄 附 金 額 順 の
順 位 で 第 15 位 の 高 知 県 ま で は 、 ふ る さ と 納 税 制 度 に よ る 税 収 減 を 上 回 る 寄 附 金 を 集 め て
い る 。 寄 附 金 額 の 順 位 が 16 位 以 下 で も 、 山 形 、 島 根 、 秋 田 の 各 県 は 居 住 者 に よ る 寄 附 が
少ないために、税収減を寄附金収入が上回っている。さらに、寄附金控除による税収減が
交付税で補填されるために、ほとんどの道府県で実質ロスは生じていないことがわかる。
ふ る さ と 納 税 制 度 に よ り 実 質 的 な 歳 入 減 が 生 じ て い る の は 、神 奈 川 県 、兵 庫 県 、福 岡 県 、
25)2014 年 度 に お い て は 、 1 万 円 の 寄 付 に 対 し て 7,000 円 相 当 の 返 礼 品 が 提 供 さ れ 、 県 の 負 担 額 も 5,000 円 ま で 引 き 上
げ ら れ て い た 。 2015 年 度 か ら は 、 ふ た た び 1 万 円 に 対 し て 4,000 相 当 の 商 品 、 県 の 負 担 額 3,000 円 ま で 引 き 下 げ ら れ
ている。
19
埼玉県、京都府、北海道、大阪府、千葉県、岐阜県、岡山県、三重県、愛知県、富山県、
群馬県、広島県である。
都道府県でのふるさと納税の取り組みとして、興味深いのが長野県の取り組みである。
ふ る さ と 納 税 制 度 の も と で は 、自 治 体 の 多 く が ふ る さ と 納 税 を 通 じ て 集 め た 寄 附 金 の 件 数 、
金 額 、 使 い 道 な ど を 公 表 し て い る 。 長 野 県 で は こ れ ら の 情 報 公 開 に 加 え て 、 企 業 の CSR
(社会的責任)の一環としての企業寄附の詳細をホームページで紹介している。長野県で
は 提 供 し て い る 返 礼 品 の 協 力 事 業 者 に よ る 収 益 金 の 寄 附 も 、寄 附 の た び に 公 表 さ れ て い る 。
企業ごとに寄附金額や寄附の目的などの詳細を公表することで、社会的貢献を意識する企
業の寄附を促進しているわけだ。
(3)市町村別にみたふるさと納税
本 稿 で は 、 2013 年 度 に お け る 市 町 村 別 の ふ る さ と 納 税 の 状 況 を 調 べ る こ と に し た
26)
。
調査対象としたのは、北海道、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の各市町村である
27)
。
こ れ ら の 道 府 県 は 、 す べ て 人 口 100 万 人 以 上 の 大 都 市 を 抱 え て い る 道 府 県 で あ る 。
[北 海 道 ]
表 7 は 、 北 海 道 下 の 市 町 村 に お け る ふ る さ と 納 税 の 状 況 を 、 寄 附 金 額 の 上 位 20 市 町 村
についてまとめたものだ
表7
地 域名
28)
。
北海道の状況
財 政 力
返礼品
2015年2 月 ホ ー ムペ ー ジ 調 査 ふ る さ と 納 税 特典 概 要 ( 2014年度 )
数
2013
2014
札幌市
0.69
×
×
5万 円 以 上 で感 謝 状
上士幌町
0.20
○
○
町 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 で 肉 300g 等 、 2万 円 以 上 で 肉 500g 等 、 3
指
ふ る さ と 納税
ふ る さ と応 援 寄 附
件数
件数
金額
備考
金額
175
139,173,829
593
306,087,084
13,278
243,503,104
13,278
243,503,104
市外 か ら は45件 、 181万 9,000円
万 円 以 上 で 十 勝 牛 セ ッ ト 等 、 5万 円 以 上 で 十 勝 牛 セ ッ ト 等 、 10万 円 以 上
26)各 市 町 村 が ホ ー ム ペ ー ジ で 公 表 し て い る 件 数 と 金 額 を 調 べ た 。 た だ し 、 件 数 に つ い て は 一 部 の 市 町 村 は 暦 年 の デ
ータになっている。また、件数は寄附メニュー別に集計しているケースが多い。年に複数回寄附した人の重複を除い
た件数を公表している市町村は、あまりない。
27)本 稿 で 把 握 で き た 自 治 体 数 は 、北 海 道 が 144 団 体 、神 奈 川 県 が 28 団 体 、愛 知 が 45 団 体 、大 阪 が 43 団 体 、福 岡 が 52
団体である。
28)ラ ン キ ン グ に 使 用 し た 寄 附 金 額 は 、 ふ る さ と 納 税 制 度 の 対 象 と な る 個 人 の 寄 附 金 額 で な く 、 多 く の 自 治 体 が ふ る
さとを応援するという意味で企業の寄附を募っていることを考慮して、企業分を含むふるさと応援寄附の金額を使用
した。
20
で 十 勝 牛 5㎏ ( 5万 円 相 当 ) 、 20万 円 以 上 で 子 羊 1 頭 、 50万 円 以 上 で 熱 気
球 係 留( 道 内 ) 、 100万 円 以 上で 熱 気 球 係留 ( 道 外 )
佐呂間町
0.21
○
○
町 外 居 住 者 の 寄 附 に 5000円 以 上 で T シ ャ ツ 1枚 等 、 1万 円 以 上 で 珍 味 セ
9
101,382,000
9
101,382,000
8
101,220,000
8
101,220,000
ッ ト 等 、2万 円以 上 で サロ マ 銘 菓 全 店セ ッ ト 等
浦臼町
0.16
×
○
1万 円 以 上 の 寄 附 で 2500円 程 度 の 特 産 品 、 5万 円 で 1万 円 程 度 特 産 品 、1
1億 円 の大 口 個 人 寄 附 を含 む
0万 円 で 2万 円 程度 、 30万 円 で3万 円程 度 特 産 品
帯広市
0.54
×
×
市 外 寄附 者 に 特 典 利 用 券 ( ばん えい 競馬 場が 無 料 等 )
むかわ町
0.20
○
○
町 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 米 10㎏ 等 、 3万 円 以 上 で 米 25㎏ 等 、 10
148
47,459,699
148
47,459,699
3,465
44,947,800
3,472
45,017,800
ばん え い 競馬 振 興 へ の 寄附 116件
紋別市
0.28
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 で 記 念品 ( オ ホ ー ツ ク 流 氷、 毛 ガ ニ 等 )
6,147
40,375,000
6,149
40,385,000
寄附 者 数 3,683名
当麻町
0.20
○
○
町 外 居住 者 の 1万 円 以 上 の 寄附 に 5000円 相 当 特産 品
3,789
39,702,000
3,796
39,772,000
ふるさとチョイス有料プランを利用
遠軽町
0.25
○
○
町 外 居 住 者 の 寄 附 に 5000円 以 上 で ア ス パ ラ 1㎏ 等 、 1万 円 以 上 で ア ス パ
273
27,750,000
274
27,760,000
万 円 以上 で 特 産品 4回 送付
( 年間 48,600円 )
ラ 2.4㎏ 等 、 10万 円 以 上 で 安 彦 良 和 氏 の イ ラ ス ト 入 り タ オ ル と 美 容 セ ッ ト
等
浦幌 町
0.15
○
○
町 外 居住 者 の 5,000円以 上 の 寄 附 で3,000円 相当 特 産 品 ( い く らと 鮭 等 )
4,799
26,679,852
4,800
26,689,852
送 料 町 負 担 、 業 者 に は 1件 に つ き 3
東川 町
0.28
○
○
1万 円 以 上 の 寄 附 で 株 主 証 を 発 行 、 株 主 に は 株 主 優 待 ( 1万 円 で ア ス パ
1,443
21,945,000
1,490
25,564,000
2013年 返 礼 品 決算 額 6,565千円
226
24,611,779
242
24,856,976
う ち 団 体 が16件 2,451,97円
4,390
24,497,440
4,397
24,497,463
1,935
22,273,810
1,935
22,273,810
291
20,650,600
293
20,710,600
30
15,580,000
31
20,580,000
16
1,520,000
32
19,986,788
654
17,994,930
654
17,994,930
000円 支払 い
ラ 500g と し い た け 200g等 ) 、 町 内 施 設 無 料 宿 泊 券 、 市 の 負 担 は 送 料 込み
5,000円 程 度
夕張市
0.18
×
×
平 成 26年 度 よ り 市 外 居 住 者 の 1.5万 円 以 上 の 寄 附 に 夕 張 メ ロ ン 2,000円
程度
栗山町
0.28
○
○
町 外 居 住 者 の 5000円 以 上 の 寄 附 に 米 4㎏ 等 、1万 円 で 米 8㎏ 、 2万 円 で米
15㎏ 、3万 円で 米 25㎏等 ( 2014年 度 か ら複 数 回 可能 な ど 拡 充)
鷹栖町
0.28
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 に 米10㎏ 等 、3万 円 以上 で 2 品
当別町
0.35
○
○
1万 円 に つ き 5000円 相 当特 産 品 1 品 、 10万 円 以上 で 5万 円 相 当 特産 品
上川町
0.16
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 で 特 産品 、 広 報 誌 送付
羅臼町
0.25
×
×
斜里町
0.35
×
×
士幌町
0.24
×
×
上ノ国町
0.13
○
○
5000円以 上 で 森林 再 生 運 動 報 告書 等 送 付
1万 円 以 上 の 寄附 で 5000円 相 当 特 産 品 、3万 円以 上 で 2品
41
16,460,000
49
17,044,537
1,447
16,124,000
1450
16,174,000
団体 の 寄 附 多 数を 含 む 、
出 所 :『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 自 治 体 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 作 成 。
北 海 道 下 の 市 町 村 の う ち 、寄 附 金 を 最 も 多 く 集 め て い る の は 、札 幌 市 で あ る 。札 幌 市 は 、
寄附に対する返礼品は用意していないにもかかわらず、寄附金を多く集めている理由は、
まず、企業による寄附が多いことが挙げられる。次に個人による寄附についても、件数は
少ないものの、市民による大口寄附が多いことが特徴である。個人からの寄附であるふる
さ と 納 税 の 金 額 を 1 件 当 た り に 直 す と 79 万 5,279 円 と な る 。 市 外 か ら の 寄 附 は 、45 件 、181
万 9,000 円 に す ぎ な い 。
北海道の寄附金額の第2位となっているのが上士幌町である。上士幌町は、牛肉を中心
とする返礼品が人気の自治体として、多くの雑誌にも取り上げられている。件数では、
13,278 件 と 北 海 道 下 の 市 町 村 で は 最 も 多 い 。 札 幌 市 と 違 い 、 町 外 か ら の 寄 附 が 多 く 、 1 件
当 た り の 寄 附 金 額 は 1 万 8,339 円 と 低 い こ と が 特 徴 だ 。
寄 附 金 額 で 第 4 位 と な っ て い る 浦 臼 町 は 、 2013 年 度 時 点 で は 返 礼 品 を 用 意 し て い な か
っ た も の の 、 1 億 1,22 万 円 も の 寄 附 を 集 め て い る 。 実 は 、 こ の う ち 1 億 円 は 、 元 町 民 に よ
21
る大口の個人寄附によるものだ。北海道下で寄附金額が 8 位となっている当麻町は、ふる
さ と 納 税 情 報 を 収 集 し た 民 間 の
Web サ イ ト で あ る 「 ふ る さ と チ ョ イ ス
http://www.furusato-tax.jp/」 を 活 用 し て 、 寄 附 を 集 め て い る 。 ふ る さ と チ ョ イ ス で は 、 自 治
体の情報を載せるだけの無料プランと、ふるさとチョイスから寄附申し込みから決済まで
が完結する有料プランが用意されているが、当麻町では有料プランを利用しているとのこ
とだ
29)
。
寄 附 金 額 で 10 位 に な っ て い る 東 川 町 は 、 1 万 円 以 上 の 寄 附 に 対 し て 株 主 証 を 発 行 し 、
株主優待として特産品を送付するというユニークな仕組みを構築した自治体である
30)
。東
川 町 で は 、 1 万 円 以 上 の 寄 附 に 対 し て 送 料 込 み 5,000 円 程 度 の 特 産 品 を 送 付 し て い る が 、
特 産 品 を 希 望 し な い 人 も い る た め 2013 年 度 の 返 礼 品 送 付 の 決 算 額 は 、 656 万 5,000 円 で あ
り 、 還 元 率 は 個 人 の 寄 附 金 額 2,194 万 5,000 円 に 対 す る 比 率 は 、 29.9 % と な っ て い る
31)
。
東川町は、町外の人にも共感できる寄附メニューを提示していることも特徴である。具体
的 に は 、オ リ ン ピ ッ ク 選 手 育 成 事 業 、水 と 環 境 を 守 る 森 づ く り 事 業( 千 円 に つ き 1 本 植 林 )
などが用意されている。
29)当 麻 町 総 務 企 画 課 へ の 問 い 合 わ せ 結 果 に よ る と 利 用 料 金 は 、 年 間 48,600 円 で あ る 。
30)東 川 町 の 事 例 に つ い て は 、 保 田 (2014)が 東 川 町 へ の 寄 付 者 の ア ン ケ ー ト を 利 用 し た 詳 細 な 分 析 を お こ な っ て い る 。
31)返 礼 品 の 決 算 額 、 個 人 の 寄 付 額 は 、 東 川 町 の 回 答 に よ る 。
22
[神 奈 川 ]
表8
神奈川県の状況
返礼品
地域名
財政力
2013
ふ る さ と 納 税 特 典 概 要 (2014年 2月 HP調 査 ) ふ る さ と 納 税
2014
件数
金額
-
-
ふるさと応援寄附
件数
金額
備考
指数
横浜市
0.96 ×
×
厚木市
1.08 ○
○
寒川町
1.00 ×
×
三浦市
0.67 ○
○
671
145,882,237 1 億 円 の 大 口 個 人
寄附あり
3万 円 以 上 の 寄 附 で 日 本 酒 2 本 等 ( 税 込 み
22 62,010,000
48
17 64,130,710
21
67,299,627 不 交 付 団 体
2,000円 程 度 、 送 料 は 市 が 負 担 )
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 3 0 00 円 2,946 58,578,000 2,946
64,531,592
58,578,000 送 料 事 業 者 負 担
相 当 メ ロ ン 2 玉 等 、 3万 円 以 上 で 6000円 相
当 マ グ ロ 刺 身 セ ッ ト 等 、 5万 円 以 上 で 1万 円
相 当 特 選 マ グ ロ セ ッ ト 等 、 10万 円 以 上 で 2
万円相当プレミアマグロセット
川崎市
1.00 ×
×
鎌倉市
1.02 ×
×
10万 円 以 上 の 寄 附 に 感 謝 状 と 記 念 品
25 14,507,590
7
1,205,000
相模原市
0.95 ×
×
59
3,745,021
91
10,485,680
座間市
0.87 ×
×
8
1,615,000
50
10,316,052
愛川町
0.99 ×
×
10
6,875,000
11
6,925,000
大井町
0.87 ×
×
2
3,000,000
5
6,100,000
海老名市
0.99 ×
×
5
2,030,000
28
4,775,430
大和市
0.95 ×
×
20
1,551,497
52
3,983,740
綾瀬市
0.92 ×
×
4
2,131,000
16
2,261,000
箱根町
1.46 ×
×
7
2,210,000
7
平 成 2 6年 度 よ り 町 外 居 住 者 の 1万 円 以 上
25
14,507,590
131
10,642,000
500万 円の 個 人 名 寄 附あ り
2,210,000 不 交 付 団 体
の 寄 附 に 観 光 施 設 優 待 券 、 2万 以 上 の 寄
附 に ペ ア 優 待 券 、 10万 円 以 上 の 寄 附 に 2
万 円 の 宿 泊 補 助 券 (特 産 品 の 送 付 で な い
ため返礼品なしに分類)
中井町
1.03 ×
×
秦野市
0.90 ○
○
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 2 5 00 円
1
20,000
3
2,170,000 不 交 付 団 体
9
1,575,000
9
1,575,000
相 当 、 3万 円 以 上 で 5000円 相 当 、 5万 円 以
上 で 1万 円 相 当 ,10万 円 以 上 で 2万 円 相 当
特産品(カントリーマアム等)
横須賀市
0.80 ×
×
山北町
0.66 ○
○
開成町
0.88 ×
×
松田町
0.64 ○
○
町 外 居 住 者 の 寄 附 に 1万 円 以 上 で 5000円
2
1,500,000
2
1,500,000
104
1,200,000
104
1,200,000
相 当 特 産 品 ( み か ん 等 ) 、 3万 円 以 上 で 2 点
町 外 居 住 者 の 1 万 円 以 上 の 寄 附 で 3,000円
6
600,000
9
1,150,000
4
1,112,000
4
1,112,000 2 0 1 3 年 度 の 返 礼 品
相 当 の 品 、 10万 円 以 上 の 寄 附 で 5,000円 相
還 元 率 は 1% 程 度
当の品を送付
出 所 :『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 自 治 体 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 作 成 。
表 8 は 、 神 奈 川 県 下 の 市 町 村 に お け る ふ る さ と 納 税 の 状 況 を 、 寄 附 金 額 の 上 位 20 市 町
村についてまとめたものだ。神奈川県下の市町村は、財政力指数が高い市町村が多く、寄
附に対して返礼品を用意していないところが多い。また、企業の寄附や大口の個人寄附が
多 く 、 ほ と ん ど の 市 町 村 の 件 数 が 100 件 以 下 と な っ て い る 。 神 奈 川 県 下 の 市 町 村 の う ち 寄
附を最も多く集めているのは、横浜市である。横浜市は、寄附に対する返礼品を用意して
い な い も の の 、 2013 年 度 に 大 口 の 個 人 寄 附 が あ っ た た め に 1 億 4,588 万 2,237 円 も の 寄 附
23
を集めている
32)
。神奈川県下で第2位となっている厚木市は、返礼品は用意しているもの
の、3 万円以上の寄附で日本酒2本等と寄附に対する還元率はかなり低い。厚木市のふる
さ と 納 税 は 、1 件 当 た り 281 万 8,636 円 と な っ て い る 。厚 木 市 の 場 合 は 、財 政 力 指 数 が 1.08
と 高 く 、返 礼 品 目 当 て で は な い 、大 口 の 寄 附 が 多 い た め に 寄 附 を 集 め て い る と 考 え ら れ る 。
第 3 位 の 寒 川 町 も 返 礼 品 を 用 意 し て お ら ず 、 ふ る さ と 納 税 が 1 件 当 た り だ と 377 万 2,395
円となっており、大口の寄附が特徴となっている。神奈川県下の市町村のうち、返礼品を
活 用 し て ふ る さ と 納 税 の 寄 附 を 多 く 集 め て い る の は 、三 浦 市 の み と な っ て い る 。三 浦 市 は 、
ふ る さ と 納 税 の 件 数 が 2,945 件 と 神 奈 川 県 下 で 、 最 も 多 く の 件 数 と な っ て い る 。 ふ る さ と
納 税 の 寄 附 金 総 額 は 、5,857 万 8,000 円 と な っ て お り 、1 件 当 た り で は 1 万 9,884 円 と な り 、
個人による小口の寄附を集めていることがわかる。三浦市では、市外居住者の 1 万円以上
の 寄 附 に 3,000 円 相 当 メ ロ ン 2 玉 等 、 3 万 円 以 上 で 6,000 円 相 当 マ グ ロ 刺 身 セ ッ ト 等 、 5 万
円 以 上 で 1 万 円 相 当 特 選 マ グ ロ セ ッ ト 等 、 10 万 円 以 上 で 2 万 円 相 当 プ レ ミ ア マ グ ロ セ ッ
トを提供している。
[愛 知 ]
愛 知 県 下 の 市 町 村 の ふ る さ と 納 税 上 位 20 団 体 の 状 況 を ま と め た も の が 表 9 で あ る 。 愛
知県下の市町村も神奈川県と同様に、財政力指数が高く、返礼品を用意していない自治体
が 多 い 。 ふ る さ と 納 税 の 件 数 が 1,000 件 を 超 え て い る の は 、 名 古 屋 市 、 小 牧 市 、 岩 倉 市 し
か 存 在 し な い 。愛 知 県 下 の 市 町 村 の う ち 、最 も 寄 附 金 を 集 め て い る の は 、名 古 屋 市 で あ り 、
企 業 団 体 に よ る 寄 附 を 含 め る と 4 億 56,02 万 9,000 円 、 ふ る さ と 納 税 の 対 象 と な る 個 人 分
だ け で も 2 億 8,747 万 3,000 円 も の 寄 附 金 を 集 め て い る 。 名 古 屋 市 は 、 ふ る さ と 納 税 に 対
する返礼品は用意しておらず、特徴的な寄附メニューによって多くの寄附を集めている自
治 体 で あ る 。 企 業 、 団 体 を 含 む 名 古 屋 市 の 寄 附 総 件 数 は 、 15,001 件 で あ る が 、 名 古 屋 城 本
丸 御 殿 寄 附 金 と し て 2,082 件 も の 寄 附 を 集 め て い る 。 愛 知 県 下 の 市 町 村 の う ち 、 返 礼 品 を
活用して寄附を多く集めているのは、小牧市のみであり、ふるさと納税の対象となる個人
の 寄 附 件 数 と し て は 、 名 古 屋 市 よ り 多 く 、 2,068 件 と な っ て い る 。
32)横 浜 市 財 政 局 に よ る と 、 1 億 円 の 個 人 寄 附 が あ っ た と の こ と で あ る 。 な お 、 横 浜 市 で は 企 業 と 個 人 の 区 別 に よ る 集
計をおこなっていないため、ふるさと納税の件数と金額は把握していないとのことであった。
24
表9
愛知県下市町村の状況
財政力
指数
返礼品
2013
ふ る さ と 納 税 特 典 概 要 (2014年 2月 HP調 査 ) ふ る さ と 納 税
2014
件数
名古屋市
0.98
×
×
豊川市
0.88
×
○
平 成 26年 4月 よ り 市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 2000円
小牧市
1.12
○
○
1万 円 に つ き 税 送 料 込み 4000円 相 当 の特 産 品 ( 米 7㎏ 等 )
西尾市
0.95
×
×
岩倉市
0.78
○
○
ふるさと応援寄附
金額
件数
備考
金額
2051
287,473,000
15,001
456,029,000
名 古 屋 城 本 丸 御 殿 寄 附 金 2,082
8
1,483,000
28
53,379,036
企 業 、 団 体 名 多 数 を 含 む 、 100
2,068
22,480,630
2,070
22,980,630
7,162,774
36
20,612,369
15,273,000
1,147
16,572,258
件
相 当 の米 5㎏( 先 着 100セ ッ ト )
万 円 の 大 口 個 人寄 附 あ り
20
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 地 鶏 等 、 5万 円 以 上 で 地
1,142
鶏 1羽 等
東浦町
0.94
×
×
2
550,000
11
14,471,446
常滑市
0.96
×
×
118
11,969,000
118
11,969,000
豊橋市
0.94
×
×
23
9,650,000
24
9,850,000
5,653,670
市 民 の 5000円 以 上 の 寄 附 に 動 物 薗 入 場 券 、 市 外 居 住 者 の
5000円 以 上 の 寄 附 に 手 ぬ ぐ い 2枚 、 3万 円 以 上 で ふ る さ と パ
スポ ー ト ( 市 内 施 設 10回 無 料) 、 返 礼 品な し に 分 類
津島市
0.72
×
×
44
5,653,670
44
刈谷市
1.15
×
×
15
3,368,239
38
5,062,420
稲沢市
0.90
○
○
35
3,968,860
35
3,968,860
9
3,761,925
9
3,761,925
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 ( き し め ん 3 食 分
2013 年 6 月 よ り 返 礼 品を 送 付
等)
田原市
0.96
○
○
市 外 居 住 者 の 2万 円 以 上 の 寄 附 に 野 菜 詰 め 合 わ せ ( 税 込 み
2000円相 当 、 送料 別 市 が 負 担 )
岡崎市
0.98
×
×
4
3,050,000
4
3,050,000
一宮市
0.81
×
×
20
2,053,984
22
2,675,877
蒲郡市
0.84
×
×
11
1,046,255
18
2,399,007
平 成 26年 4月 1日 よ り 6月 30日 ま で に 申 込 を し 、 寄 附 を し て い
企 業 、 団 体名 多 数 を 含 む
た だ い た 方 を 対 象 に 5000円 以 上 で 花 火 祭 り 入 場 券 1枚 等 、 1
万 円 以上 で 入 場券 2枚 等
豊田市
1.06
×
×
北名古屋
0.96
○
○
市
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 2000ポ イ ン ト 、 5万 円 以 上
9
1,425,000
10
1,775,000
33
1,745,000
33
1,745,000
8
754,870
16
1,589,397
で 7000ポ イ ン ト 、 10万 円 で 12000ポ イ ン ト 、 1 0 0 0 ポ イ ン ト で
買 い 物 券 1000円分 等 、 送料 は 市 が 負 担
愛西市
0.66
×
○
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 農 産 物 セ ッ ト ( 5000円 程
個 人 8件、 最 高 額 個 人の 50万 円
度 、送 料 は 市 が負 担 )
幸田町
1.05
×
×
2
1,300,000
2
1,300,000
南知多 町
0.53
×
×
49
1,281,000
49
1,281,000
出 所 :『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 自 治 体 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 作 成 。
[大 阪 ]
表 10 は 大 阪 府 下 の 市 町 村 の う ち 寄 附 金 額 上 位 20 団 体 の 状 況 に つ い て ま と め た も の で あ
る。大阪府下の市町村で一番寄附を集めているのは大阪市である。大阪市は、特産品は用
意しておらず、返礼品として記念メダルなどが用意されているだけである。大阪市が寄附
を集めている理由は、特徴的な寄附メニューが提示されているからだ。大阪市への寄附件
数 2,773 件 の う ち 2,493 件 が 大 阪 城 の 魅 力 向 上 と い う 目 的 で 寄 附 を し て い る 。 大 阪 城 の 魅
力向上に寄附を行うことで、石垣公開施設に記念芳名板に名前が記載されることも寄附を
集めている原因と考えられる。
25
表 10
地域名
大阪市
大阪府下市町村の状況
財政
0.90
返礼品
2013
2014
×
×
ふるさと納税特典概要
1万 円 以 上 の 寄附 で 記 念メ ダ ル 、博 物 館 等 招 待 券 、石 垣 公 開施 設 に 記
ふるさと納税
ふ る さと 応 援 寄 附
件数
件数
金額
備考
金額
2,773
187,930,000
2,773
187,930,000
大 阪 城 魅 力 向 上 へ の 寄 附 が 2,4
182
59,147,981
188
89,311,719
医療保健センターによる医療へ
429
17,584,765
507
71,884,761
116
50,910,911
119
51,280,597
念 芳 名板 を 設 置 、先 行 内 覧 会 に 特 別招 待 。 市 長感 謝 状 の 送 付。
93件 73,469,398円
箕面市
0.95
○
○
1万 円 以 上 の 寄 附 に 箕 面 特 選 ふ る さ と セ ッ ト ( も み じ の 天 ぷ ら 、 地 ビ ー ル
堺市
0.84
,○
○
和泉市
0.68
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 に 特産 品 ( ネ ック レ ス等 )
池田市
0.85
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 で 5000円 相 当 特 産 品 (日 本酒 等 ) 、 送料 は 業 者 負 担
3313
43,318,102
3,739
47,470,084
泉佐野
0.92
○
○
寄附金額の半額相当の特産品送付。5000円以上でタオルセット等、1万 円以 上で
1,974
43,119,000
1,989
46,049,000
等)
の 3,000万 円 の寄 附 を 含 む
1万 円 以 上 の 寄 附 で 粗 品 ( 手 ぬ ぐ い 、 鋏 等 ) 、 10万 円 以 上 で 和 菓 子 セ ッ
ト 、 包 丁等 、 100万 円 以 上の 市 外 居 住 者 の 寄附 に は カ タ ロ グ ギ フト
個人の高額寄附あり(美術館名誉
館長による美術館指定の寄附)
市
限解除、品揃え拡大、グレード
牛タン1㎏等、5万円以上でピーチポイント25000円相当等、10万円以上
でピーチ
アップ、寄附金カテゴリー拡大)
ポイント50000相当等、20万円、30万円、50万円、100万円で半額相当ダ イアペン
に よ り 急 増 、 平 成 26年 度 は 1月
ダント等。送料も市が負担。(平成25年
度は1万円以上のご寄附に対して3,000円
末 に 4億 円 突 破 。 返 礼 品 送 付 経
相当、3万円以上のご寄附に 対 し て 7,000円 相 当 )
河内長
0.63
○
○
野市
2014年 7月 リ ニ ュ ー ア ル ( 回 数 制
米10㎏、ピーチポイント5000円相当等、2万円以上で牛タン700g等、3万 円以上で
費 の H25決 算 額 6,362,000円 ,
1万 円 以 上 の 寄 附 に 寄 附 金 額 の 半 額 相 当 の 特 産 品 送 付 。 250 0円 相 当
1,925
40,665,475
1,929
42,845,475
35
36,035,717
13,850,962
209
33,612,580
35
23,940,000
35
23,940,000
3
20,055,000
3
20,055,000
72
2,828,260
121
16,596,715
( 米 2.5㎏ 等 ) 、 5000円相 当 商 品 ( 米 5㎏ 等 ) を組 み 合 わ せ て選 択 。
2 0 1 5年 よ り 回 数 制 限 廃 止 、 メ ニ
ュー拡大。
高槻市
0.77
×
×
-
-
豊中市
0.89
×
×
163
富田林
0.63
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 で 米 6㎏ 等
0.64
×
○
平 成 26年 度 よ り 1万 円 以 上 の 寄 附 に 特 産 品 ( 送 料 、 税 込 み 2000円 、5000
個人分は不明
市
柏原市
円 、 1万 円 相 当 )送 付 。 1万 円 以 上 で ワ イ ン 1本 等 、 2万 円 以 上 で 肉 600g 、3
万 円 以上 で 肉 1㎏
寝屋川
0.66
×
×
松原市
0.58
○
○
1万 円 以 上 の 寄附 に 特産 品 ( お 菓 子 セ ッ ト 等 )
27
15,424,404
33
15,495,700
八尾市
0.73
×
×
5000円以 上 の 寄 附 に 記 念 品( 歯 ブ ラ シ セ ット 等)
103
8,047,010
119
8,520,130
門真市
0.68
○
○
1万 円 以 上 の 寄 附 で 2000円 相 当 特 産 品 ( れ ん こ ん 、 姉 妹 都 市 の 肉 300g
115
7,159,000
123
7,704,495
豊能町
0.54
○
○
7,242,000
427
7,242,000
市
企 業 、 団 体 名多 数 を 含 む
等 ) 、5万 円 以上 2 点
1万 円 以 上 で 肉 400g 等 (町 負 担 3000円 +送 料 ) 、 3万 円 以 上 で 肉 400g と 野
427
菜 セ ッ ト 等 ( 町 負 担 6000円 +送 料 ) 、 5万 円 以 上 で 肉 1.1㎏ 等 、 10万 円 で 5
肉は京都市産(地元産野菜とセ
ット)
万円コース2品
茨木市
0.93
×
×
114
6,086,642
114
吹田市
0.97
×
×
24
4,094,077
24
4,094,077
平 成 26年 度 1件 の み
泉南市
0.74
○
○
114
2,519,000
117
3,592,162
ほ と ん ど が 個 人 名 , 2 01 4 年 1 1 月
1万 円 で 2000円 相 当 、 3万 円 で 5000円 相 当 、 5万 円 で 8000相 当 特 産 品 ( 水
6,086,642
な す 等)
よりインターネット収納開始、送
料 も 市 が 負担
藤井寺
市
0.59
×
○
平 成 26年 よ り 1万 円 以 上 の 寄 附 に 3000円 相 当 、 2 万 円 以 上 で 6000円 相
57
1,932,000
当 、3万 円 以上 9000円 相当 、 4万 円 以 上 12000円 相 当 特産 品 ( 肉 等 )
69
3,402,543
送料は市が負担、特産品送付
は業者が代行、代行手数料を一
定 割 合 で 市が 負 担
出 所 :『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 自 治 体 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 作 成 。
大阪府下の市町村で、返礼品を提供することで寄附を集めているのは箕面市、堺市、和
泉市、池田市、泉佐野市である。この中で全国的にも返礼品を活用していることで知られ
ているのが泉佐野市である。泉佐野市に寄附をすると寄附の半額相当のピーチポイントが
26
提供される
33)
。 泉 佐 野 市 は 、 2013 年 度 の ふ る さ と 納 税 の 寄 附 金 総 額 は 、 4,311 万 9,000 円
と な っ て い る 。 2013 年 度 の 返 礼 品 送 付 の 直 接 経 費 は 、 636 万 2,000 円 で あ り 、 返 礼 品 送 付
の 実 質 還 元 率 は 、 14.8%だ っ た こ と に な る
34)
。 な お 、 泉 佐 野 市 は 、 返 礼 品 メ ニ ュ ー を 2014
年 7 月にリニューアル(回数制限解除、品揃え拡大、グレードアップ、寄附金カテゴリー
拡 大 ) し て お り 、 2014 年 度 に は 約 4 億 7 千 万 円 の ふ る さ と 応 援 寄 附 を 集 め て い る 。
[福 岡 ]
表 11 は 、 福 岡 県 下 の 市 町 村 の う ち 、 企 業 団 体 分 を 含 む 寄 附 金 上 位 20 団 体 の 状 況 を ま と
め た も の だ 。 福 岡 県 下 の 市 町 村 は 、 財 政 力 指 数 が 0.5 前 後 の 低 い 市 町 村 が 多 く 、 ほ と ん ど
の 市 町 村 で 返 礼 品 と し て 特 産 品 を 提 供 し て い る の が 特 徴 で あ る 。福 岡 県 下 の 市 町 村 の 中 で 、
最 も 多 く の 寄 附 を 集 め て い る が 福 岡 市 で あ り 、 2013 年 度 の ふ る さ と 納 税 は 3,196 万 355 円
と な っ て お り 、 企 業 分 を 含 め る と 1 億 2,648 万 9,499 円 に も 達 し て い る 。 福 岡 市 の 返 礼 品
は 、 1 万 円 以 上 の 寄 附 で 紅 茶 等 、 2 万 5,000 円 以 上 で 米 3 ㎏ 等 と な っ て お り 、 そ れ ほ ど 寄
附に対する還元率が高いわけではない。還元率が低いにもかかわらず、数多くの個人と企
業の寄附を集めている理由としては、寄附の使い道がホームページでわかりやすく説明さ
れ て い る と こ ろ に あ る と 考 え ら れ る 。 2013 年 度 の 寄 附 先 ご と の 事 業 実 績 を み る と 患 児 家
族 滞 在 施 設 ( ふ く お か ハ ウ ス ) の 建 設 」 に 1 億 576 万 2,560 円 の 寄 附 が 集 ま っ て い る 。 さ
らにこの施設へ寄附した企業の一覧も公表されている。個人分についても公表に同意して
いる人について寄附先と金額の一覧が公表されている。福岡県下の市町村で企業分を含め
た数字で第 3 位となっているのが宗像市である。宗像市は、返礼品を用意しておらず、寄
附 の ほ と ん ど が 知 的 障 害 者 ス ポ ー ツ 競 技 会 ス ペ シ ャ ル オ リ ン ピ ク ス 2014 へ の 寄 附 で あ っ
た。福岡県下の市町村のなかで、企業分を含めた順位だと第4位となるが、ふるさと納税
の対象となる個人分のみ金額では福岡市についで第2位となるのは、北九州市である。北
九州市は、ほとんどすべての寄附が個人による寄附であることが特徴だ。北九州市では、
33)ピ ー チ ポ イ ン ト は 、 ピ ー チ 航 空 の 料 金 支 払 い 等 に 使 用 で き る 。
34)泉 佐 野 市 政 策 推 進 課 に よ る と 、 寄 附 金 額 の 半 額 相 当 の 返 礼 品 を 送 付 す る よ う に な っ た の は 、 2014 年 7 月 1 日 か ら
で あ り 、 2013 年 度 は 1 万 円 以 上 の 寄 附 に 対 し て 3,000 円 相 当 、 3 万 円 以 上 の ご 寄 附 に 対 し て 7,000 円 相 当 の 特 産 品 を 提
供 し 、 そ の 特 産 品 を 6 ~ 7 割 で 購 入 し て い た と の こ と だ 。 な お 、 2014 年 度 実 質 還 元 率 は 、 ほ ぼ 50 % と な っ て い る と
のことである。
27
2013 年 度 に ふ る さ と 納 税 と し て 845 件 、 1,800 万 6,736 円 の 寄 附 を 集 め て い る 。 寄 附 に 対
す る 返 礼 品 と し て は 、 1 万 円 以 上 の 寄 附 で 明 太 子 330 g 等 、 3 万 円 以 上 の 寄 附 で 肉 500 g
等 の 特 産 品 を 提 供 し て い た 。 2013 年 度 に お け る 返 礼 品 の 直 接 経 費 と し て は 、 410 万 6,445
円 で あ り 、 実 質 還 元 率 は 、 22.8 % だ っ た こ と に な る
表 11
地域名
35)
。
福岡県下市町村の状況
財政力
返礼品
ふ る さ と 納税
ふ る さ と応 援 寄 附
件数
件数
金額
備考
指数
2013
2014
ふ る さと 納税 特 典 概 要
金額
福岡市
0.85
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 で 紅 茶 等、 2.5万 円以 上 で 米3㎏ 等
958
31,960,355
1,277
126,489,499
飯塚市
0.49
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 に メ ロ ン 等
701
26,480,000
705
26,520,000
宗像市
0.58
×
×
99
15,926,043
100
25,926,043
知的障害者スポーツ競技会スペシャ ル オ
北九州市
0.70
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 で 明 太 子330g 等 、3万 円以 上 の 寄 附で 肉 500g 等
845
18,006,736
846
18,506,736
2014年 度 の 市 の 負担 額 4,106,445円
柳川市
0.44
○
○
市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に う な ぎ 蒲 焼 き セ ッ ト 等 、 3万 円 以 上
759
14,017,500
762
14,067,500
795
9343000
818
10,648,000
2013年 8月 よ り コ ン ビ ニ 納 付開 始
リ ン ピ クス 2014へ の 寄 附 が 大多 数
で 4品 、5万 円以 上 で 7 品
久留米市
0.62
○
○
1万 円 以 上 の 寄 附 に 純 米 酒 3本 等 、 3万 円 以 上 で 日 本 酒 6本 等 、 10万円
以 上 で農 産 物 年 4 回 送 付
企 業 は 3件 の み 。 ク レ ジ ッ ト カ ー ド が 5
64名 、 市 内 は14名 、 1万 円 が 760名
大川市
0.50
○
○
最 低 送料 、 税 込 み2000円 相 当 商 品( 先 着 100名 天 然 う な ぎ 、い ち ご 等 )
823
8,903,000
824
8,913,000
八女市
0.37
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 に 八 女 茶 300g 等
150
4,872,600
151
4,877,600
宮若市
0.55
○
○
5000円以上携帯ストラップ、1万円以上の寄附に米5㎏等、3万円以 上 2品
209
4,160,000
211
4,200,000
糸島市
0.51
×
×
2000円以 上 の 寄 附 に 粗 品 ( エ コ バ ッ グ な い し タ オ ル )
48
1,473,600
68
3,962,860
企 業 団 体 を 含む
芦屋町
0.37
○
○
5000円以 上 で 和 菓子 、 5万 円 以 上 で工 芸 品
38
2,415,000
44
3,297,044
花 火 大 会 へ の 企 業・ 団 体 寄 附 多 数
築上町
0.33
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 で 米 5㎏ 等
269
3,092,000
269
3,092,000
嘉麻市
0.26
○
○
1万円以上の寄附に特産品(米、ハム、漬け物等)、市負担送料込み5,000円
41
2,723,900
41
2,723,900
筑前町
0.46
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 で 米 6㎏ 等
208
2,490,000
208
2,490,000
大木町
0.49
○
○
町外居住者の1万円以上の寄附に米5㎏等、5万円以上で特産品6回 送 付
201
2,405,100
201
2,405,100
大牟田市
0.47
×
○
2014年11月から市外居住者の1万円以上の寄附に米5㎏等、3万円以 上 2 品 、
33
2,187,000
33
2,187,000
2014年 6月 か ら 返 礼品 を リ ニ ュ ー ア ル
5万円以上3品、以前はTシャツのみだったため返礼品なしに分類
福智町
0.26
○
○
5000円以 上 の 寄 附 で4000円 相 当 特 産品
筑後市
0.58
○
○
1万 円 以 上 の寄 附 に 焼 酎 2本等
13
1,935,000
13
1,935,000
175
1,887,000
177
1,902,000
宇美町
0.54
×
×
5000円以 上 の 寄 附 に 粗 品 ( 図書 券 500円 分 )
32
1,855,000
34
1,876,417
田川市
0.38
○
○
寄 附 者 全 員 に 博 物 館 無 料 券 、 市 外 居 住 者 の 1万 円 以 上 の 寄 附 に 肉 50
34
1,820,000
34
1,820,000
2014年 度 か ら特 典 拡 大
0g 等 、 2万 円 以 上 2 品 、 3万 円 以 上 3 品
出 所 :『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 自 治 体 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 作 成 。
(4)ふるさと納税の分析
表 12 は 、 ふ る さ と 納 税 に よ る 居 住 者 の 寄 附 金 額 の 上 位 10 市 町 村 の ふ る さ と 納 税 額 ( 流
出 ) と ふ る さ と 納 税 に よ っ て 各 自 治 体 が 受 け 取 っ た ふ る さ と 納 税 額 ( 流 入 額 )、 企 業 ・ 団
体による寄附を含むふるさと応援寄附(流入額)の状況をまとめたものである
36)
。ふるさ
35)個 人 分 の 寄 附 件 数 、 寄 附 金 額 、 返 礼 品 の 経 費 額 は 、 北 九 州 市 財 政 局 税 制 課 へ の 問 い 合 わ せ 結 果 に よ る 。
36)な お 、 横 浜 市 、 世 田 谷 区 は 、 本 来 の ふ る さ と 納 税 額 で あ る 個 人 分 の 寄 附 額 を 把 握 し て お ら ず 、 企 業 分 を 含 め た ふ
るさと応援寄附の金額しかわからないとのことだ。
28
と 納 税 の 人 数 、寄 附 金 額 、控 除 額 は 、総 務 省『 平 成 2 6 年 度 寄 附 金 税 額 控 除 に 関 す る 調( 都
道 府 県 ・ 市 区 町 村 に 対 す る 寄 附 金 ( ふ る さ と 納 税 )』 に よ る も の で あ る
表 12
37)
。
ふ る さ と 納 税 寄 附 額 上 位 10 市 町 村 の 状 況 ( 2013 年 度 )
ふるさと納税(流出)
自治体 財 政 力
指数
横浜市
港区
世 田谷 区
大阪市
名 古屋 市
新宿区
福岡市
渋谷区
広島市
杉並区
0.96
1.26
0.54
0.9
0.98
0.63
0.85
0.95
0.81
0.61
人 数 寄附金額
(人)
( 千 円)
6,719 593,630
1,057 532,755
2,624 398,574
3,650 325,907
3,485 323,173
1,104 253,559
1,595 248,994
823 237,992
1,257 217,886
1,221 191,626
控除額
(千円)
173,011
187,143
112,149
94,596
94,145
65,741
45,629
76,475
26,383
36,595
ふるさと納 ふるさと応援
税(流入)
寄附
控 除 額 / 個 金 額(千 円)
金額(千円) 実 質 ロ ス
人 住民 税
(千円)
0.05%
145,882 -102,629
0.34%
100
100 187,043
0.11%
46,029 -17,991
0.04%
187,930
187,930 -164,281
0.04%
287,473
456,029 -432,493
0.19%
30,818
39,369 -22,934
0.04%
34,000
31,960 -20,553
0.20%
1,385
17,734
0.03%
15,624
36,362 -29,766
0.07%
19,563
51,092 -41,943
出所:ふるさと納税(流出)は平成26年度寄附金税額控除に関する調(都道府県・市区町村に対する寄附金
( ふ る さ と 納 税 ) 、 ふ る さ と 納 税 ( 流 出 ) 、 ふ る さ と 応 援 寄 附 は 自 治 体 HP お よ び 電 話 調 査 に よ る 。
この表によると、全国の市町村のうち最も寄附が多いのは横浜市であり、港区、世田谷
区がそれに続いている。また東京都下の特別区が約半数を占めている。税収ロスを意味す
る控除額の数字は、寄附金額第2位に位置づけられる港区が最も多くなっている。横浜市
は寄附金が多いにもかかわらず、寄附金控除の上限を超えた大口寄付が存在するため港区
よりも控除額が低くなっていると考えられる
38)
。この税収ロスが各自治体の個人住民税に
占 め る 比 率 を 求 め る と 、 港 区 の 0.34 % 、 新 宿 区 の 0.22 % が 高 く な っ て い る 。 寄 附 金 控 除
の 上 限 は 、 個 人 住 民 税 の 所 得 割 の 1 割 (2013 年 度 ) だ が 、 す べ て の 人 が ふ る さ と 納 税 を お
こ な う わ け で は な い た め 、こ の 時 点 で は 市 町 村 財 政 に お よ ぼ す 影 響 は そ れ ほ ど 大 き く な い 。
さらに、多くの自治体はふるさと納税制度を利用して寄附金も集めている。そのうえ、上
位 10 市 町 村 の ほ と ん ど が 地 方 交 付 税 の 交 付 団 体 で あ り 、 税 収 ロ ス の う ち 75 % は 交 付 税 で
37)市 町 村 別 デ ー タ の 入 手 に つ い て は 、 総 務 省 自 治 税 務 局 市 町 村 税 課 課 長 補 佐 山 本 倫 彦 氏 に ご 協 力 頂 い た 。 な お 、 ふ
る さ と 納 税 額 控 除 額 に つ い て は NPO 法 人 等 へ も 同 時 に 寄 附 を し た 居 住 者 分 に つ い て ふ る さ と 納 税 に よ る 控 除 額 部 分 が
分離できないために、推計値となっている。
38)横 浜 市 は 、「 横 浜 サ ポ ー タ ー ズ 寄 附 金 」 と し て 横 浜 市 を 応 援 す る 寄 附 金 を 積 極 的 に 集 め て い る 。
29
補填されることになる。ただし、東京都特別区については、地方交付税の対象外であり、
都区財政調整制度において補填される。この表の実質ロスは、各自治体から流出したふる
さ と 納 税 に よ る 控 除 額 の う ち 交 付 税 等 で 補 填 さ れ な い 部 分 ( 控 除 額 の 25%分 ) と 各 自 治 体
が受け取った寄附金を差し引いて求めたものだ
に つ い て は 、企 業 分 を 含 め た 数 字 を 使 用 し た
40)
39)
。ここでは各自治体の受け取った寄附金
。表 か ら は 、横 浜 市 な ど 多 く の 自 治 体 で は 、
多額の寄附金を受け取っているために、ふるさと納税による実質ロスは生じていないこと
が読み取れる。ふるさと納税制度による実質ロスが生じているのは、港区と渋谷区だけで
ある。
2.5
相関係数:0.061
2
1.5
財政力指数
神奈川県・厚木市
神奈川県・寒川町
愛知県・名古屋市
1
大阪府・大阪市
北海道・札幌市
0.5
北海道・上士幌町
0
0
50,000,000
100,000,000
150,000,000
200,000,000
250,000,000
300,000,000
350,000,000
ふるさと納税(円)
出 所 : 財 政 力 指 数 は『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』ふ る さ と 納 税 額 は 、自 治 体 HP と メ ー ル ・ 電 話 調 査 よ り 作 成 。
図 7
ふるさと納税による寄附額(流入)と財政力指数の散布図
図 7 は、北海道、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県下の市町村のふるさと納税による
39)た だ し 、 港 区 は 財 政 力 指 数 が 1 を 超 え て お り 、 都 区 財 政 調 整 制 度 に よ る 補 填 は な い 。 な お 、 実 際 に は 交 付 税 等 に
よる補填は、次年度の交付税等でおこなわれることになる。
40)渋 谷 区 に つ い て は 、 企 業 分 を 含 め た 数 字 に つ い て 回 答 が 得 ら れ な か っ た た め 、 個 人 分 の 数 字 を 使 用 し て い る 。
30
寄 附 額 ( 個 人 分 ) と 財 政 力 指 数 の 散 布 図 を 描 い た も の だ 。 相 関 係 数 は 、 0.061 で あ り 、 財
政力指数と寄附金額の間にはほとんど相関関係がみられないことがわかる。財政力指数が
0.5 を 下 回 る 財 政 力 の 弱 い 、 ふ る さ と 納 税 制 度 に よ る 応 援 を よ り 必 要 と し て い る と 考 え ら
れる自治体の多くがほとんど寄附金を集められていないこともわかる。一方で、財政力指
数が 1 を超えている神奈川県厚木市のように裕福な自治体でも多くの寄附金を集めている
事例もある。
3,000,000
大阪府・大阪市
相関係数:0.606
2,500,000
愛知県・名古屋市
北海道・札幌市
2,000,000
人口(
神奈川県・川崎市
福岡県・福岡市
人
1,500,000
)
福岡県・北九州市
1,000,000
大阪府・堺市
神奈川県・
相模原市
500,000
神奈川県・厚木市
大阪府・和泉市
北海道・上士幌町
北海道・浦臼町
0
0
50,000,000
100,000,000
150,000,000
200,000,000
250,000,000
300,000,000
350,000,000
ふるさと納税(円)
出 所 : 人 口 は 『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』 ふ る さ と 納 税 額 は 、 自 治 体 HP と メ ー ル ・ 電 話 調 査 よ り 作 成 。
図 8
人口とふるさと納税の散布図
図 8 は 、 人 口 と ふ る さ と 納 税 に つ い て の 散 布 図 を 描 い た も の だ 。 相 関 係 数 は 0.606 と な
り、人口とふるさと納税の寄附額の間には正の相関関係が見られることがわかる。名古屋
市、札幌市は、返礼品を提供していないし、大阪市も記念メダルなどを送付しているだけ
であり、特産品目当ての寄附が集まっているわけではない。北海道上士幌町は、後述する
よ う に 特 産 品 が 人 気 で 寄 附 を 集 め て い る 自 治 体 だ 。 北 海 道 浦 臼 町 は 、 2013 年 度 に 1 億 円
もの個人による大口寄付があった市町村である。
31
表 13
大都市におけるふるさと納税状況
自治体
大阪府 大阪市
愛知県 名古屋市
北海道 札幌市
福岡県 福岡市
財政力指数
0.90
0.98
0.69
0.85
返礼品
×
×
×
○
人口(人)
2,667,830
2,254,891
1,930,496
1,474,326
ふるさと納税(円)
187,930,000
287,473,000
139,173,829
31,960,355
出 所 : 財 政 力 指 数 、 人 口 は 『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 ふ る さ と 納 税 額 は 電 話 ・ メ ー ル 調 査 に
より作成。
上記の散布図からは、人口が多い大都市では多くのふるさと納税による寄附を集めてい
る こ と が 示 唆 さ れ る 。 そ こ で 、 表 13 は 、 大 都 市 に お け る ふ る さ と 納 税 の 状 況 を 抜 き 出 し
たものだ。この表では、福岡市を除く自治体ではふるさと納税に対して特産品を返礼品と
して提供していないにもかかわらず多額の寄付を集めていることがわかる。
表 14
人 口 5 万 人 以 下 、 返 礼 品 を 活 用 し 、 ふ る さ と 納 税 額 上 位 の 自 治 体 (2013 年 度 )
自治体
北海道 上士幌町
北海道 浦幌町
北海道 佐呂間町
北海道 当麻町
北海道 栗山町
北海道 遠軽町
北海道 紋別市
神奈川県 三浦市
財政力指数 人口(人) ふるさと納税(円)
0.20
5,046
243,503,104
0.15
5,337
26,679,852
0.21
5,744
101,382,000
0.20
7,005
39,702,000
0.28
12,930
24,497,440
0.25
21,747
27,750,000
0.28
24,039
40,375,000
0.67
47,245
58,578,000
出 所 : 財 政 力 指 数 、 人 口 は 『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 ふ る さ と 納 税 額 は 自 治 体 HP お よ び 電
話・メール調査により作成。
表 14 は 、 人 口 5 万 人 以 下 で 、 返 礼 品 を 活 用 し 、 ふ る さ と 納 税 額 25 位 ま で に ラ ン キ ン グ
されている自治体を抽出したものだ。この表からは、ふるさと納税制度を活用できている
のは、北海道下の市町村が大部分を占めていることがわかる。
表 15 は 、 ふ る さ と 納 税 額 が ゼ ロ の 自 治 体 を 抜 き 出 し た も の で あ る 。 こ の 表 の な か で 財
政力指数が1を超えている泊村、清川村などは、ふるさと納税による寄附を集める必要が
ない富裕な団体である。一方、添田町、鹿追町、知内町などは、財政力指数がきわめて低
い団体であるにもかかわらず、ふるさと納税制度を活用できていない自治体である。
32
表 15
ふ る さ と 納 税 額 ゼ ロ の 自 治 体 ( 2013 年 度 )
自治体
北海道 泊村
神奈川県 清川村
愛知県 大口町
愛知県 豊山町
神奈川県 葉山町
愛知県 大治町
神奈川県 二宮町
大阪府 太子町
福岡県 桂川町
北海道 知内町
北海道 鹿追町
福岡県 添田町
財政力指数 人口(人) ふるさと納税(円)
2.01
1,825
0
1.06
3,138
0
1.05
22,913
0
1.04
15,139
0
0.90
33,635
0
0.83
30,942
0
0.76
29,707
0
0.52
14,162
0
0.36
14,087
0
0.24
4,880
0
0.23
5,654
0
0.19
10,898
0
出 所 : 財 政 力 指 数 、 人 口 は 『 市 町 村 決 算 カ ー ド 』、 ふ る さ と 納 税 額 は 自 治 体 HP お よ び メ
ール調査により作成。
表 16
ふるさと納税上位自治体による累積シェア
北海道
神奈川県
愛知県
大阪府
福岡県
上位5
50%
88%
88%
67%
60%
上 位 10
62%
95%
94%
87%
79%
表 16 は 、 本 稿 で 調 査 対 象 と し た 各 道 府 県 下 の 市 町 村 に つ い て 、 ふ る さ と 納 税 上 位 自 治
体の寄附金額の累積シェアを計算したものだ。神奈川県、愛知県では、上位 5 市町村の累
積 シ ェ ア で も 9 割 近 く な る 。大 阪 府 、福 岡 県 で は 、上 位 5 市 町 村 で は 6 割 か ら 7 割 、上 位 10
市町村では 8 割から 9 割の累積シェアとなる。北海道については、多くの自治体でふるさ
と 納 税 の 活 用 が 進 ん で い る た め 、 上 位 5 市 町 村 で 5 割 、 上 位 10 市 町 村 で 6 割 程 度 の シ ェ
アとなっている。
第4節
個別市町村のヒヤリング結果について
本稿では、ふるさと納税制度を積極的に活用している市町村の中から2つの市町村の事
例について取り上げることにした。ひとつは、大阪府池田市であり、いまひとつは北海道
33
の増毛町である
41)
。 池 田 市 は 、 大 阪 府 下 の 市 町 村 の な か で は 2013 年 度 に お い て 件 数 で は
最 も 多 く の 寄 附 を 集 め た 自 治 体 で あ り 、 増 毛 町 は 、 2014 年 度 に 寄 附 額 が 急 増 し た 自 治 体
である。
(1)大阪府池田市の事例
池 田 市 は 、 2013 年 時 点 の 人 口 が 102,964 人 、 財 政 力 指 数 が 0.85 の 自 治 体 で あ る 。 1998
年 度 決 算 時 は 、 経 常 収 支 比 率 が 112.0%で 全 国 ワ ー ス ト 2 位 だ っ た が 、 1995 年 か ら 2011 年
の 倉 田 元 市 長 時 代 に 財 政 健 全 化 を 実 行 し 、 平 成 2 5 年 度 現 在 経 常 収 支 比 率 は 97.6%ま で 改
善している。市内には、主な企業としてダイハツ工業が存在する。
池田市のふるさと納税の推移を描いたものが図 9 である。この図では、企業の寄附と
個人の寄附の件数と金額がわかる。企業の寄附は、年によって差があるのに対して、個人
分 の 寄 附 は 、 当 初 横 ば い で あ っ た も の が 、 2012 年 以 降 、 毎 年 確 実 に 増 加 し て い る こ と が
読み取れる。個人の寄附と企業の寄附を比較すると、件数については毎年個人の寄附の方
が 圧 倒 的 に 多 い が 、 寄 附 金 額 で み る と 2010 年 か ら 2012 年 に か け て は 、 寄 附 金 額 は 企 業 の
方が多かったことがわかる。
図 10 は 、 個 人 の 寄 附 だ け を 取 り 出 し て 、 市 内 と 市 外 の 件 数 の 内 訳 の 推 移 を 示 し た も の
だ。この図によると、市内からの件数は低位で安定していることがわかる。ふるさと納税
が 急 増 す る 2012 年 以 降 は 、 ふ る さ と 納 税 の 件 数 の ほ と ん ど が 市 外 か ら の 寄 附 と な っ て い
ることが読み取れる。
41)池 田 市 の ヒ ヤ リ ン グ 調 査 は 2015 年 6 月 10 日 に 実 施 し 、 増 毛 町 に つ い て は 2015 年 8 月 5 日 に 実 施 し た 。 池 田 市 の
調査に際しては、池田市総合政策部政策推進課課長斎藤芳朗氏、高島知里氏、増毛町の調査に際しては、増毛町役場
企画財政課課長坂口功氏、主事高橋一将氏に協力頂いた。
34
120,000,000
7000
6000
100,000,000
5000
80,000,000
金額 円:
4000
60,000,000
3000
40,000,000
2000
20,000,000
1000
0
0
2008年
2009年
2010年
企業寄附件数
2011年
個人寄附件数
2012年
企業寄附金額
2013年
2014年
個人寄附金額
出所:池田市提供資料より作成。
図 9
池田市のふるさと納税の推移
90,000,000
7000
80,000,000
6000
70,000,000
5000
60,000,000
4000
50,000,000
40,000,000
3000
30,000,000
2000
20,000,000
1000
10,000,000
0
0
2008年
2009年
2010年
市内件数
2011年
市外件数
2012年
金額(円)
出所:池田市提供資料より作成。
図 10
市内件数、市外件数、個人寄附総額の推移
35
2013年
2014年
表 17 は 、 2013 年 度 に お け る 寄 附 金 額 別 の 寄 附 状 況 を 示 し た も の で あ る 。 こ の 表 に よ る
と 、 ほ と ん ど が 1 万 円 の 寄 附 と な っ て い る こ と が わ か る 。 た だ し 、 100 万 円 を 超 え る 寄 附
もわずかだが存在することもわかる。池田市は、1 万円以上の寄附に対して、返礼品を用
意しているだけなので、高額の寄附は、返礼品目当てではない、本当の意味で池田市を応
援 す る 寄 附 も あ る わ け だ 。 1 万 円 を 寄 附 し た 3,104 件 に つ い て は 、 返 礼 品 を 期 待 し て 、 ふ
るさと納税をおこなったものと考えられる。
表 17
2013 年 度 金額 別 寄附 状況
金 額( 円)
~9,999
10,000
件数
83
3,104
10,001~50,000
176
50,001~ 100,000
33
100,001~ 200,000
6
250,000
1
400,000
1
450,000
1
1,000,000
2
1,500,000
1
出所:池田市提供資料。
池 田 市 の 寄 附 が 多 い 最 大 の 理 由 は 、魅 力 的 な 返 礼 品 が 用 意 さ れ て い る こ と で あ る 。表 18
は、池田市が提供している返礼品ごとの申し込み件数を示したものだ。この表によると最
も人気の高い返礼品が日清食品インスタントラーメン詰め合わせである。これは、池田市
に あ る 日 清 食 品 の イ ン ス タ ン ト ラ ー メ ン 発 明 記 念 館 が 提 供 し て い る 返 礼 品 だ 。 2013 年 、
2014 年 と も 、 約 8 割 は イ ン ス タ ン ト ラ ー メ ン 詰 め 合 わ せ が 選 ば れ て い る 。 次 に 多 い の が 、
青 谷 町 産 20 世 紀 な し と な っ て い る 。 こ れ は 池 田 市 の 特 産 品 で な く 、 鳥 取 市 青 谷 町 の 特 産
品だ。池田市の施設が青谷町にあり、池田市の小中学生が夏休みに利用するなど、姉妹都
市として交流しているために、青谷町に特産品を提供していただいているとのことだ。
36
表 18
品目 別 件数
寄附 謝礼品
H26
申込件 数
1
清酒 「春團 治」
2
H25
%
申 込件数
%
81
1.2
95
2.8
ビリ ケンさ んグ ッズセ ット
4
0.1
7
0.2
3
「ふ くまる 」く んグッ ズ詰め 合わせ
3
0.1
1
0.0
4
池田 の梅酒 「水 月」3 本セッ ト
12
0.2
―
―
5
池田 の梅酒 「水 月」6 本セッ ト
26
0.4
―
―
6
ダイ ハツク ッキ ー&煎 餅、カ レー、 ミニカ ーセ ット
43
0.7
37
1.1
7
池田
60
0.9
38
1.1
8
赤ち ゃん足 型彫 刻フォ トフレ ームお 仕立て 券
20
0.3
12
0.4
9
日清 食品イ ンス タント ラーメ ン詰め 合わせ
5,300
81
2,682
78.7
10
不死 王閣
昼食 +入 浴セッ ト( ソフト ドリン ク付)
115
1.8
38
1.1
11
不死 王閣
ギフ ト券( 5000円 分)
49
0.7
46
1.3
12
不死 王閣
なに わの女 将の牛 すじカ レー
70
1.1
―
―
13
不死 王閣
温泉 みすと &なに わの女 将の牛 すじ カレー
5
0.1
―
―
14
とよ す㈱
創作 あられ 八撰袋 「お八 つ」
75
1.1
93
2.7
15
とよ す㈱
お八 つ、ほ うろく 、豆し おセッ ト
76
1.2
―
―
16
片山 造園㈱
ア レンジ メント (A) 横幅タ イプ
17
0.3
2
0.1
17
片山 造園㈱
ア レンジ メント (B) 高さタ イプ
5
0.1
10
0.3
18
片山 造園㈱
鉢 植え
57
0.9
46
1.3
19
喫茶 「パー ラー 池田」 ふれあ いチケ ット
24
0.4
28
0.8
20
青谷 ようこ そ館
16
0.2
11
0.3
21
青谷 町産
20世紀な し
184
2.8
55
1.6
22
青谷 町産
贈答 用章姫 イチゴ
92
1.4
69
2.0
23
青谷 町産
びわ Aセッ ト
43
0.7
―
―
24
青谷 町産
びわ Bセッ ト
48
0.7
―
―
*
炭せ っけん
―
―
3
0.1
*
ご結 婚記念 ガラ スフレ ーム
―
―
3
0.1
辞退
8
0.1
8
0.2
108
1.7
124
3.6
6,541
100
3,408
100
おた なKAIWAI
コーヒー&焼き 菓子セット
ギフ トセッ ト
対象 外
合計
*
H25年 度 で 終 了 し た 謝 礼 品
出所:池田市提供資料
池田市は、それほど返礼品にコストを掛けているわけではない。市内市外からの寄附を
問わず、1 万円に対して返礼品を送付している。高額寄附に対する返礼品は存在しない。
寄附金額が 1 万円に集中していたのは、そのためだ。返礼品の送付は、年 1 回のみとなっ
ている。
池 田 市 は 、 情 報 発 信 の た め に 、「 ふ る さ と チ ョ イ ス 」 も 利 用 し て い る 。 ふ る さ と チ ョ イ
37
スには、自治体が情報をのせる場合、有料プランと無料プランが存在するが、池田市の場
合は無料プランを利用しているとのことだ。ふるさと納税の申し込みは、池田市のホーム
ペ ー ジ 上 に 入 力 フ ォ ー ム が あ り 、イ ン タ ー ネ ッ ト で の 申 し 込 み が で き る よ う に な っ て い る 。
返礼品を送付する企業については、池田市は公募方式を採用している。ただし、初年度
については企業に訪問して、返礼品を提供を呼びかけたとのことだ。池田市は、返礼品を
送 付 し た 企 業 に 対 し て 、 1 件 に つ き 5,000 円 だ け 負 担 し て い る 。 送 料 に つ い て は 、 事 業 者
が負担する仕組みとなっている。
池 田 市 の 返 礼 品 送 付 の 直 接 経 費 と し て は 、 返 礼 品 の 送 付 に 掛 か る 決 算 額 が 、 2013 年 度
で 1,506 万 5,000 円 と な っ て い る 。 個 人 の 寄 附 金 総 額 に 対 す る 還 元 率 を 計 算 す る と 、 寄 附
金 額 に 対 し て 31.7 % と な る 。 返 礼 品 は 、 1 万 円 以 上 の 寄 附 に 対 し て 5,000 円 程 度 の 商 品 が
提 供 さ れ る た め 、 還 元 率 は 50 % 程 度 と な る も の の 、 1 万 円 を 超 え る 寄 附 を 行 う 人 や 、 返
礼 品 を 辞 退 す る 人 も い る た め に 、 実 質 還 元 率 は 、 50 % を 大 き く 下 回 る こ と に な る 。
池田市のふるさと納税の件数が多い理由として 1 つ考えられるのは、かなり前から公益
活動促進に関して取り組んでいた関係でふるさと納税制度を整備するのも早かったことが
挙 げ ら れ る 。 池 田 市 は 、 平 成 13 年 に 、 公 益 活 動 促 進 に 関 す る 条 例 を 作 っ て い る
42)
。これ
は、マッチングギフト方式で市民からの寄附を募るものであり、市民から 1 万円寄附があ
れば市が 1 万円出し、福祉や教育に使うという条例を作ったとのことだ。ふるさと納税が
開始されたため、寄附先メニューについてはその時に作成したものをそのまま使用するこ
とができたとのことだ。
表 19 は 、 寄 附 の 使 途 別 の 寄 附 件 数 を ま と め た も の で あ る 。 寄 附 の 使 途 に は 、 子 育 て 支
援や、市民安全の充実など、基本的には市民向けのメニューが提示されている。これらの
市民向けのメニューは、市外の人にはほとんど関心を寄せられないために、使途別の件数
で 最 大 の 項 目 と な っ て い る の は 、「 寄 附 金 に 係 る 事 業 を 指 定 し な い 」 と い う も の で あ り 、
約 40 % で 推 移 し て い る こ と が わ か る 。
42)池 田 市 公 益 活 動 促 進 に 関 す る 条 例 施 行 規 則 (平 成 13 年 4 月 27 日 規 則 第 29 号 )の 第 13 条 に よ る と 、「 条 例 第 34 条 第
2 項 の 規 定 に よ る 予 算 に 定 め る 額 は 、 市 民 か ら 、 市 及 び 市 長 が 指 定 す る 登 録 団 体 ( 以 下 「 指 定 団 体 等 」 と い う 。) に 対
し て 、 前 年 の 1 月 1 日 か ら 12 月 31 日 ま で に 公 益 活 動 の 促 進 の た め に 贈 ら れ た 寄 附 金 ( 以 下 「 前 年 の 寄 附 金 」 と い
う ) の 合 計 額 と す る 。」 と さ れ て い る
38
表 19
寄 附の 使 途別
指 定事業
H26年度
件数
%
H25年度
金額
件数
%
(千円)
① 市民安 全の充 実
441
6.7
4,711
② 消防の 充実
115
1.7
③ 地域コ ミュニ ティの 推進
67
④ 公益活 動の促 進
H24年度
金額
件数
%
( 千円)
金額
(千円)
213
5.7
3,058
100
6.4
31,906
11,371
53
1.4
598
28
1.8
383
1.0
690
38
1.0
389
15
1.0
188
38
0.6
420
21
0.6
788
6
0.4
55
⑤ 商工、 農林及 び園芸 の振 興
152
2.3
1,600
62
1.7
547
20
1.3
243
⑥ 観光の 振興
323
4.9
3,293
187
5.0
1,773
102
6.5
800
⑦ 文化の 振興
172
2.6
2,287
106
2.8
1,510
67
4.3
1,290
⑧ 環境の 保全及 び改善 (環 境関係 )
245
3.7
3,005
167
4.5
1,527
72
4.6
61
0.9
3,326
1.6
2,594
328
5.0
6,294
183
4.9
3,992
131
8.3
1,752
14,231
573
15.3
5,683
222
14.1
4,140
環境の 保全及 び改善 (緑 化関係 )
⑨ 保健福 祉の充 実
⑩ 子育て 支援の 充実
⑪ 公共施 設の充 実
1,356
20.5
59
53
3.4
828
2,706
64
1.0
871
26
0.7
357
16
1.0
405
⑫ 教育の 充実
297
4.5
3,704
190
5.1
2,329
64
4.1
1,582
⑬ スポー ツの振 興
107
1.6
1,114
61
1.6
654
18
1.1
297
⑭ 1市内小 中学校 の耐震 化
101
1.5
1,043
96
2.6
838
15
1.0
238
2五 月 山 動 物 園 の 整 備 お よ び イ ベ ン ト 等
162
2.5
1,722
73
2.0
815
13
0.8
288
3ヤ エザク ラ並木 の整 備
183
2.8
2,285
61
1.6
519
31
2.0
324
2,389
36.2
27,005
1,570
42.0
19,499
601
38.2
9,707
6,601
100
88,972
3,739
100
47,470
1,574
100
57,132
⑮ 寄附金 に係る 事業を 指定 しない
合計
出所:池田市提供資料
(2)北海道増毛町の事例
北 海 道 増 毛 町 は 、 2015 年 7 月 末 の 人 口 が 4,718 人 の 町 で あ り 、 札 幌 市 内 よ り JR で 約 3
時 間 ほ ど か か る 。 2013 年 度 の 財 政 力 指 数 は 、 0.13 で 、 個 人 住 民 税 は 1 億 4,428 万 円 ( 2014
年 予 算 ) と な っ て い る 。 2014 年 の ふ る さ と 納 税 に よ る 寄 附 金 総 額 は 、 1 億 1,851 万 2,200
円と個人住民税に匹敵する規模となっている
43)
。主な産業は、農業、漁業、水産加工業、
酒造業であり、主な特産品は、サクランボ、リンゴ、甘えび、タコ、ウニ、アワビ、スモ
ークサーモン、数の子などである。
43)企 業 分 を 含 め る と 、 1 億 1,871 万 2,200 円 と な る 。
39
140,000,000
100000
120,000,000
10000
100,000,000
件数
寄附金額( 円 )
1000
80,000,000
60,000,000
100
40,000,000
10
20,000,000
0
1
2010年
2011年
2012年
個人寄附
2013年
2014年
個人分件数
出所:増毛町提供資料より作成。
図 11
増毛町のふるさと納税の推移
増 毛 町 の ふ る さ と 納 税 の 推 移 を 描 い た も の が 図 11 で あ る 。こ の 図 で わ か る よ う に 、2014
年 度 に ふ る さ と 納 税 の 件 数 と 金 額 が 急 増 し て い る こ と が 特 徴 だ 。 前 年 度 の 寄 附 金 額 は 244
万 5,000 円 、件 数 は 76 件 に す ぎ な か っ た 。2014 年 度 に は 、個 人 の 寄 附 は 1 億 1,851 万 2,200
円 、 件 数 は 1 万 1,016 に も 達 し て い る 。 な お 、 増 毛 町 で は 寄 附 の ほ と ん ど が 個 人 に よ る も
の で あ る 。2013 年 度 に お け る 企 業 の 寄 附 は 1 件 1 万 円 、2014 年 度 に お け る 企 業 の 寄 附 は 11
件 20 万 円 に す ぎ な い 。
表 20 は 、 ふ る さ と 納 税 の 寄 附 金 金 額 別 の 状 況 を ま と め た も の だ 。 寄 附 の ほ と ん ど が 1
万 円 に 集 中 し て お り 、 91.9%を 占 め て い る 。 1 万 円 に 続 い て 多 い 寄 附 金 額 は 、 3 万 円 、 2 万
円 、 5 万 円 で あ り 、 そ れ ぞ れ 2.8%、 2.3%、 2.0%と な っ て い る 。 2014 年 度 の お け る 増 毛 町
の 返 礼 品 の 区 分 は 、 1 万 円 、 3 万 円 、 5 万 円 、 10 万 円 、 100 万 円 と な っ て い る が 、 こ の 寄
附 区 分 の 影 響 が 100 万 円 以 外 の と こ ろ に 多 少 見 ら れ る こ と に な る
44)
。
44)2 万 円 の 寄 附 が 多 い 理 由 は 、 一 日 に 1 万 円 を 2 回 に 分 け て 寄 附 し た 人 は 、 2 万 円 の 寄 附 と し て カ ウ ン ト さ れ て い る
ためである。
40
表 20
ふるさと納税寄附金額別の状況
金 額 (円 ) 人 数
構成比
5,000
5
0.1%
10,000
8,862
91.9%
10,100
2
0.0%
12,000
3
0.0%
15,000
12
0.1%
16,000
1
0.0%
20,000
219
2.3%
30,000
267
2.8%
40,000
13
0.1%
45,000
1
0.0%
50,000
195
2.0%
60,000
5
0.1%
70,000
1
0.0%
80,000
1
0.0%
90,000
1
0.0%
100,000
56
0.6%
130,000
1
0.0%
150,000
1
0.0%
190,000
1
0.0%
300,000
1
0.0%
合計
9,648
1
出所:増毛町提供資料より作成。
表 21
返 礼 品 別 の 寄 附 件 数 (2014 年 度 )
返礼品
いくら
たらこ・明太子
甘えび・ボタンえび
数の子
さくらんぼ
新巻鮭姿切り身
りんご
ホタテセット
珍味セット
柔らか煮セット
国 稀
ぶどう
燻製セット
シードル
米(ななつぼし)
ラーメン
洋梨
果樹詰合せ
ニシン製品
いくら・数の子セット
ジュース
プルーン
ハチミツ
たこ・いくら・塩辛
その他海産物
件数
2,249
1,818
1,247
945
602
467
377
317
297
288
232
213
200
177
171
148
125
120
113
77
77
67
53
49
32
構成比
21.50%
17.40%
11.90%
9.00%
5.80%
4.50%
3.60%
3.00%
2.80%
2.80%
2.20%
2.00%
1.90%
1.70%
1.60%
1.40%
1.20%
1.10%
1.10%
0.70%
0.70%
0.60%
0.50%
0.50%
0.30%
出所:増毛町提供資料より作成。
41
表 21 は 、 返 礼 品 別 の 寄 附 件 数 と そ の シ ェ ア を ま と め た も の だ 。 こ の 表 に よ る と 返 礼 品
の な か で 最 も 人 気 を 集 め た も の が 「 い く ら 」 で あ り 、 21.5%を 占 め て い る 。 そ れ に 続 く の
が 「 た ら こ ・ 明 太 子 」 の 17.4%、「 甘 え び ・ ボ タ ン え び 」 の 11.9%で あ り 、 数 の 子 の 9 % で
あ る 。 こ れ ら 海 産 物 の 特 産 品 で 59.8%と な る 。 増 毛 町 で は こ れ ら 海 産 物 だ け で な く 、「 さ
く ら ん ぼ 」「 り ん ご 」「 ぶ ど う 」 な ど 果 物 や 、「 新 巻 鮭 姿 切 り 身 」「 ホ タ テ セ ッ ト 」 な ど 水
産加工品などの人気も高い。
表
①
②
③
④
⑤
22 増 毛 町 の 寄 附 金 別 負 担 額 (2014 年 度 )
1万円以上3万円未満の寄附
3,000円(送料込)
3万円以上5万円未満の寄附
5,000円(送料込)
5万円以上10万円未満の寄附 7,000円(送料込)
10万円以上100万円未満
10,000円(送料込)
100万円以上
20,000円(送料込)
出所:増毛町提供資料より作成。
表 22 は 、 2014 年 度 に お け る 増 毛 町 の 寄 附 金 別 の 町 の 負 担 額 を 示 し た も の だ 。 2014 年 度
時点での返礼品は、1万円に対しては 3 割程度の特産品が提供されていたが、寄附金額が
多 く な る に し た が っ て 還 元 割 合 が 低 く な る よ う に 設 定 さ れ て お り 、 10 万 円 に 対 し て は 1
割 、 100 万 円 に 対 し て は 2%の 還 元 率 に 設 定 さ れ て い た
45)
。 表 20 に お い て 1 万 円 の 寄 附 に
集 中 し て い た の は 、 こ の よ う な 還 元 率 の 設 定 に よ る も の だ と 考 え ら れ る 。 2014 年 度 に お
け る 返 礼 品 送 付 の 直 接 経 費 は 3,523 万 2,147 円 で あ り 、 実 質 還 元 率 は 29.7 % だ っ た こ と に
なる。
表 23
寄 附 の 使 途 別 件 数 ( 2014 年 度 )
事業名
地場資源を活用した観光振興と歴史・文化継承に関する事業
件数
金額
693
5,712,000
1,933
17,586,000
医療、保険、福祉、介護に関する事業
951
7,905,000
地場産業の振興に関する事業
806
6,840,000
環境保全に関する事業
743
6,601,000
5,901
74,068,200
11,027
118,712,200
次世代を担う子どもたちの育成に関する事業
指定事業なし
計
出所:増毛町提供資料。
45)2015 年 度 か ら は 、 寄 附 金 額 に か か わ ら ず 3 割 程 度 に 固 定 さ れ て い る と の こ と だ 。
42
表 23 は 、 寄 附 の 使 途 別 の 件 数 を 示 し た も の で あ る 。 使 途 別 で 最 も 件 数 の 多 い 項 目 は 、
指 定 事 業 無 し の 5,901 件 で あ り 、 全 体 の 53.5 % を 占 め て い る 。 こ れ は 、 増 毛 町 へ の 寄 附 の
ほとんどが町外からの寄附であることによるものと考えられる。次に件数の多い項目は、
次 世 代 を 担 う 子 供 た ち の 育 成 に 関 す る 事 業 の 1,933 件 で あ り 、全 体 の 17.5%を 占 め て い る 。
前 述 し た よ う に 、 増 毛 町 の ふ る さ と 納 税 は 、 2014 年 度 に 急 増 し て い る 。 以 下 で は 、 そ
の 原 因 に つ い て 見 て い こ う 。 2014 年 度 か ら ふ る さ と 納 税 が 急 増 し た 理 由 と し て は 、 第 1
に 、 情 報 発 信 の 強 化 が 挙 げ ら れ る 。 2013 年 度 ま で は 、 ふ る さ と 納 税 に よ る 返 礼 品 に つ い
て は 、 町 の 公 式 ホ ー ム ペ ー ジ 上 に 、「 特 典 を お 贈 り し ま す 」 と い う 文 章 の み を 表 示 し 、 特
典 内 容 に つ い て は 電 話 等 で の 問 い 合 わ せ の み で 告 知 し て い た の に 対 し て 、 2014 年 度 か ら
は、町の公式ホームページを全面的にリニューアルし、特典内容についても写真付きで詳
しく紹介されるようになった
46)
。公式ホームページの更新にあわせて、無料で各自治体の
紹介をおこなっている民間の検索サイト、①ふるさとチョイス(無料プラン)
ふるさと納税
②わが街
③ふるさと納税 特産品 情報局に、町の情報についての掲載を依頼した。
第 2 に 、 2014 年 9 月 か ら は 、 ふ る さ と チ ョ イ ス を 有 料 プ ラ ン に 切 り 替 え 、 ふ る さ と チ ョ
イス上での申し込みフォームやクレジット決済を導入した。なお、ふるさとチョイスの有
料 プ ラ ン と し て は 、 月 額 3,750 円 ( 税 別 ) /年 45,000 円 の 「 Yahoo!公 金 支 払 い 連 携 お 申 込 フ
ォ ー ム 」 を ク レ ジ ッ ト 掲 載 に つ い て は 、 基 本 料 金 月 額 1,500 円 ( 税 別 ) /年 18,000 円 ) プ
ラ ス 決 済 さ れ た 寄 附 金 額 の 1%と な る 「 Yahoo!公 金 支 払 い 」 を 利 用 し て い る 。 第 3 に 、 ふ
る さ と チ ョ イ ス の 有 料 プ ラ ン へ の 切 り 替 え に 伴 い 、新 着 ペ ー ジ に 増 毛 町 の 情 報 が 表 示 さ れ 、
その情報を見たマスコミからの取材依頼が増加したことが挙げられる。これまで増毛町に
は 、 雑 誌 17 社 、 TV5 番 組 の 取 材 が あ っ た と の こ と だ 。 第 4 に 、 2014 年 度 か ら 寄 附 に 対 し
て返礼品を送付する回数を年1回から、無制限に変更することでリピーターを獲得したこ
とが挙げられる
47)
。
増毛町は、このように広報活動を強化することで、返礼品の還元率を比較的低く抑えな
がらふるさと納税の増加に成功したわけだ。海産物、水産加工品、果物、地酒など多彩な
46)2013 年 度 ま で は 、 返 礼 品 の 種 類 は 、 海 産 物 ・水 産 加 工 品 、 果 樹 、 地 酒 ( 国 稀 ・ワ イ ン )、 そ の 他 の 4 種 類 で あ り 、 寄
附者に特典の希望や好き嫌いを聞き取り、ないし町が独自に特典を選択し、業者に発送を依頼していたとのことだ。
47)増 毛 町 役 場 企 画 財 政 課 に よ る と 、 2014 年 度 の リ ピ ー タ は 、 450 名 で あ り 、 最 も 年 間 寄 附 回 数 が 多 か っ た 人 で 10 回
だったとのことだ。
43
特 産 品 を 持 つ 強 み を 2013 年 度 ま で は 広 告 宣 伝 活 動 の 不 足 に よ り 十 分 発 揮 で き な か っ た も
のを、広報活動の強化により改善できたと考えられよう。
ふるさと納税が急増したことによる地域活性化の効果としては、ふるさと納税で特産品
を入手した個人が、同封されたパンフレットで直接注文するケースや、入札によるえびの
価格上昇が漁業者による所得向上につながったことなどが挙げられるとのことだ。
第5節
ふるさと納税制度の課題
この節では、ふるさと納税制度の課題について検証する。現在のふるさと納税制度の設
計 に お い て 大 き な 役 割 を 果 た し た 総 務 省『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』( 平 成 19 年 10 月 )
での議論を紹介し、ふるさと納税制度の問題点を整理しよう。
(1)ふるさと納税研究会報告書
ふるさと納税研究会報告書では、ふるさと納税制度には3つの大きな意義があるとされ
ている。第 1 は、自分の意思で、納税先を選択できることである。納税先を選択すること
で「自分の意思で納税先を選択するとき、納税者はあらためて、税というものの意味と意
義に思いをいたすであろうし、それこそは、国民にとって税を自分のこととして考え、納
税 の 大 切 さ を 自 覚 す る 貴 重 な 機 会 と な る 。」 と 述 べ ら れ て い る
48)
。第2に、ふるさとに貢
献したいという気持ちが実現できることである。第 3 に、情報提供の自治体間競争が刺激
されることである。
報 告 書 で は 、「 ふ る さ と 」 の 概 念 に つ い て は 、「 納 税 者 が ど こ を 「 ふ る さ と 」 と 考 え る
か、その意思を尊重することが「ふるさと納税」の思想上、より重要との見地に立ち、納
税 者 が 選 択 す る と こ ろ を「 ふ る さ と 」と 認 め る 広 い 観 点 を と る こ と と し た 。」と し て い る
49)
。
つまり、ふるさと納税制度では、納税者が応援したい自治体であればどこでもふるさとと
考えることで、寄附先の自治体には制限が設定されないことになったわけだ。
寄 附 金 控 除 割 合 の 設 定 に つ い て は 、「「 ふ る さ と 」 に 対 す る 寄 附 を 行 う こ と に よ っ て 、
納税者の「税」と「寄附」を合わせた負担は原則として増加させるべきではない」という
考え方が強調されている
50)
。通常の寄附金税制であれば、寄附金控除は寄附を促進するた
48)『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』 p.2 引 用 。
49)『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』 p.4 引 用 。
50)『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』 p.16 引 用 。
44
め の 補 助 金 政 策 と 考 え ら れ る た め 、控 除 割 合 は 多 く て も 50%程 度 に 設 定 さ れ る こ と に な る 。
一方、ふるさと納税制度の本来の出発点は、納税者が自分の意思で納税先を選択する制度
であったため、どの地域に納税しても納税額が変わらないように設定すべきだという理屈
が優先されたことになる。
ふるさと納税制度のもとでは、寄附を受け取った地方団体の収入が増加し、寄附をおこ
なった個人が居住する団体の収入が減少する。このような変化は、各地方団体の財政状況
に影響を与えるわけだが、地方団体間の財政調整をおこなっている地方交付税においても
ふ る さ と 納 税 制 度 に よ る 影 響 を 考 え る 必 要 が 出 て く る 。ふ る さ と 納 税 研 究 会 の 報 告 書 で は 、
地方交付税の扱いについては、従来の地方交付税制度のもとでも寄附金は基準財政収入に
は算入されないということを考慮して、ふるさと納税による寄附金も基準財政収入には算
入する必要はないとしている。さらに、従来の寄附金と同様に、寄附金による税収減少額
の 75 % が 基 準 財 政 収 入 に 反 映 さ れ る べ き と し て い る 。 結 局 、 ふ る さ と 納 税 制 度 で は 、 個
人住民税の税収をはるかに上回るほどの寄附を集めた団体であっても、交付税が削られる
ことはなくなったわけだ。ふるさと納税による税収流出については、地方交付税の交付団
体については税収減少額の25%が自治体の負担となり、不交付団体については税収流出
の補填がおこなわれないことになった。
ふるさと納税研究会は、現在問題となっている返礼品合戦の過熱については、報告書の
中 で 警 鐘 を 鳴 ら し て い る 。 具 体 的 に は 、 返 礼 品 の 送 付 に つ い て は 、「 各 地 方 団 体 の 良 識 に
よ っ て 自 制 さ れ る べ き 」 と し 、「 各 地 方 団 体 の 良 識 あ る 行 動 を 強 く 期 待 す る 」 と 指 摘 し て
いる
51)
。
このふるさと納税研究会の報告書は、当初の問題意識にあった自分が生まれ育った地元
の市町村に納税する仕組みがあってもよいという点に関してはある程度理解できるもの
の、ふるさとの定義を「心のふるさと」でもよいとしたことで、当初の理念と現実の制度
の間で齟齬が生じたのではないだろうか
52)
。現行制度のもとでは、ふるさと納税の寄附先
には制限はなく、高額納税者であれば何百カ所でも寄附が可能だ。その納税先も応援した
い自治体とは関係なく、返礼品の魅力で選んでもかまわない。どの自治体が各納税者の地
51)『 ふ る さ と 納 税 研 究 会 報 告 書 』 p.23 引 用 。
52)地 方 税 が 持 つ 固 有 の 租 税 原 則 と し て の 応 益 性 の 観 点 か ら は 、 ふ る さ と 納 税 の 考 え 方 に 懐 疑 的 な 意 見 も 多 い 。 応 益
性 に 関 す る 議 論 は 、 中 里 (2007)よ る 整 理 も 参 考 と な る 。
45
元であったのかを特定することは、転勤族などのケースも考えると事務的には不可能だっ
たとしても、寄附先を制限しなかったことで、納税者による納税地域の選択という側面を
弱 め 、返 礼 品 の 内 容 に よ る「 寄 附 先 」の 選 択 と い う 側 面 を 強 め る こ と と な っ た と 言 え よ う 。
(2)ふるさと納税制度の問題点
ふるさと納税制度は、当初想定されていたような納税地域を分割する制度ではなく、寄
附という形で地方を応援する制度であると考えられる
53)
。しかし、寄附金税制として評価
した場合には、以下のような問題点が指摘できる。
第1に、寄附税制の効率性が満たされていない可能性があることが指摘できる。表 4 で
示 し た よ う に 、 2012 年 か ら 2013 年 に か け て の ふ る さ と 納 税 額 の 増 加 は 、 返 礼 品 を 送 付 す
る自治体の増加に伴うものであり、実質寄附の増加にはつながっていない。
第 2 に 、 ふ る さ と 納 税 制 度 の も と で 、 自 己 負 担 が 2,000 円 の ま ま で 寄 附 で き る 上 限 は 、
高額所得者ほど高くなり、高額所得者に対して有利な節税策を提供するものとなっている
ことが挙げられる。これは典型的なタックス・エクスペンディチャーと呼ばれる事実上の
補助金政策であり、その利用可能性が高額所得者ほど有利となっているわけだ。
第3に、寄附を受け取った自治体による情報公開が不十分であることが指摘できる。福
岡市のように、受け取った寄附の具体的な使途、公開に同意した寄附者の情報などを公式
ホームページで発信しているような先進的な自治体も多いが、ふるさと納税の実績など基
本的情報や受け取った寄附金の活用実績も公開していない自治体も存在する。ふるさと納
税制度は個人を対象とする制度にもかかわらず、個人分の寄附と企業分の寄附を分けて把
握していない自治体もある。
第 4 に 、安 倍 政 権 下 で 地 域 活 性 化 の 有 力 な 手 段 と し て 期 待 さ れ て い る 制 度 で あ り な が ら 、
小規模団体ではマンパワーの不足から十分に活用できていない事例も散見される。公式ホ
ームページを見ても、ほとんどふるさと納税に関する情報が得られない自治体も多い。こ
れらの問題点を解消するためには、以下のような改善策が必要だ。
第 1 に 、 ふ る さ と 納 税 制 度 を 明 確 に 寄 附 金 税 制 に 位 置 づ け 、 認 定 NPO 法 人 等 へ の 取 り
扱いに準じる形に改正すべきだ。具体的には、地方税について設定されている特例部分の
53)中 里 (2007)も 、「「 ふ る さ と 納 税 」 は 、 地 域 活 性 化 の ツ ー ル ( 手 段 ) と し て は 、 意 義 を 見 い だ し う る 。 先 進 的 自 治
体 を 応 援 し 、 自 治 体 間 の 競 争 を 促 す 効 果 が 期 待 で き る 。」 と 述 べ て い る 。
46
段階的廃止を検討すべきである。特例部分の段階的廃止は、税収ロスを除く実質的な寄附
部分がどのように推移するかを見ながら決定すべきだろう。特例部分を段階的に廃止すれ
ば、高額の寄附には一定割合の自己負担を伴うようになり、高額所得者の有利さを軽減す
ることにもつながる。
第2に、ふるさと納税についての情報公開の最低限の基準を統一し、ふるさと納税の実
態を把握できるようにすべきだ。具体的には、個人分についての寄附件数、寄附金額、返
礼品の直接経費、受け入れた寄附金の支出先の詳細等が挙げられる
54)
。これは、ふるさと
納税制度が寄附金税制の効率性を満たしているかを判定するために必要不可欠な措置だ。
受け取った寄附をどのように活用しているかを発信することは、本来の意味でのふるさと
応援する寄附を促進する効果も持つだろう。
第3に、総務省のふるさと納税ポータルの一層の充実が必要だ。総務省のふるさと納税
のポータルサイトでは、北海道の東川町などのふるさと納税への先進的な取り組みが紹介
されている。ただし、取り上げられている事例は、それほど多くない
55)
。このような事例
紹介を増やすことは、小規模な地方団体がふるさと納税制度を活用する際に参考となろう
だろう。
第6節
むすび
最後に、本稿で得られた結果をまとめることでむすびとしよう。
第1に、ふるさと納税が導入されて以降、寄附金額に占める税収ロスの比率は毎年上昇
し 、2013 年 度 に は 77%に も 達 し て い る 。2012 年 度 か ら 2013 年 度 に か け て の 寄 附 金 増 加 も 、
控 除 率 の 上 昇 に よ る も の で あ り 、 実 質 的 な 寄 附 の 増 加 に つ な が っ て い な い 。 2013 年 度 の
増加は、ふるさと納税に対する返礼品合戦の過熱が指摘されるようになった時期のもので
あり、返礼品目当てでの寄附が増えていることを示唆する結果となっている。
第2に、ふるさと納税による減収額が生じなかった場合の都道府県別個人住民税の一人
当たり税収とふるさと納税による減収後の都道府県別個人住民税の一人当たり税収につい
て、変動係数を測定することで地域間の税収格差縮小効果をみたところ、その改善度合い
54)ふ る さ と 応 援 寄 附 と し て の 企 業 寄 附 の 件 数 、 金 額 、 企 業 名 な ど も 候 補 に 挙 げ ら れ る 。 暦 年 ベ ー ス か 年 度 ベ ー ス か 、
件数をカウントする条件なども統一が望ましい。
55)2015 年 8 月 24 日 時 点 の 取 材 記 事 は 、 6 事 例 と な っ て い る 。
47
はきわめて小さいことがわかった。
第 3 に 、 2013 年 度 に お け る 各 市 町 村 の ふ る さ と 納 税 の 状 況 か ら は 、 寄 附 金 額 が 多 い 市
町村の特徴として、歴史的建造物の保存への寄附など明確な寄附先を提示できた自治体で
は返礼品を提供しなくても、寄附を集めることに成功していることがわかった。また、札
幌市のように、大都市では、大口の個人寄附を受け取っているケースが多く、一人当たり
の寄附額がおおきくなっていることもわかった。牛肉や海産物など特徴ある特産品を多く
もつ北海道下の市町村では、返礼品を送付することで多くの寄附を集めていることがわか
っ た 。池 田 市 の よ う に 、特 徴 的 な 返 礼 品 の 魅 力 で 個 人 の 寄 附 を 集 め て い る ケ ー ス も あ っ た 。
第4に、北海道増毛町のヒヤリング調査からは、魅力的な特産品があっても、広報活動
が不足していた時期は、ふるさと納税の寄附金額が低迷していたが、広報活動を強化して
からは、寄附額が急増している事例があることがわかった。これは、ふるさと納税制度の
活用には、公式ホームページの充実と民間のポータルサイトの連携が、返礼品の還元率に
頼ることなく、寄附を増加させることにつながることを示すものだ。
第5に、ふるさと納税による寄附額は、ふるさと納税に力を入れている一部の自治体に
集中していることがわかった。
第6に、ふるさと納税の問題点としては、寄附税制の効率性が満たされていない可能性
があること、高額所得者に有利な節税手段を提供するものとなっていること、ふるさと納
税に関する情報公開が不十分であること、小規模団体ではふるさと納税制度を十分に活用
できていないことがわかった。
これらの点を踏まえて、本稿ではふるさと納税の改善策として、地方税について設定さ
れている特例部分を段階的に廃止すること、ふるさと納税についての情報公開の最低限の
基準を統一し、ふるさと納税の実態を把握できるようにすること、ふるさと納税への先進
的な取り組み事例を紹介することで、小規模な地方団体でのふるさと納税制度の活用促進
することを提案したい。
[参 考 文 献 ]
・ 跡 田 直 澄 (2008)「 地 方 自 治 体 へ の 寄 附 と 政 策 」『 三 田 商 学 』 第 50 巻 第 6 号 ,pp.33-43.
・ 跡 田 直 澄 ・ 前 川 聡 子 ・ 末 村 祐 子 ・ 大 野 謙 一 (2002)「 非 営 利 セ ク タ ー と 寄 附 税 制 」『 フ ィ ナ
ン シ ャ ル レ ビ ュ ー 』 第 65 号 ,pp.74-92.
・ 小 池 拓 自 (2007)『 地 方 税 財 政 改 革 と 税 収 の 地 域 間 格 差 ― ふ る さ と 納 税 を 巡 る 議 論 を 超 え
48
て ― 』 国 立 国 会 図 書 館 ISSUE BRIEF NUMBER 593.
・ 加 藤 慶 一 ( 2010)「 ふ る さ と 納 税 の 現 状 と 課 題 - 九 州 に お け る 現 地 調 査 を 踏 ま え て 」『 レ
フ ァ レ ン ス 』 平 成 22 年 2 月 号 ,pp.119-130.
・ 中 里 透 (2007)「 ふ る さ と 納 税 導 入 の 是 非 ( 下 )」 日 本 経 済 新 聞 、 経 済 教 室 、 2007 年 5 月 30
日付け朝刊記事.
・ 橋 本 恭 之 (2015)「 ふ る さ と 納 税 の 検 証 - 大 阪 府 下 の 市 町 村 を 中 心 に 」『 租 税 研 究 』近 刊 .
・ 山 内 直 人( 1997)
『ノンプロフィットエコノミー
NPOとフィランソロピーの経済学 』
日本評論社.
・ 山 内 直 人 ( 2014)「 NPO に 関 す る 研 究 ・ 教 育 の 系 譜 と 展 望 」『 東 京 経 大 学 会 誌 』
第 281 号 ,pp.71-91.
・ 保 田 隆 明 (2014)「 地 方 自 治 体 の ふ る さ と 納 税 を 通 じ た ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ の 成 功 要
因 - 北 海 道 東 川 町 の ケ ー ス 分 析 -」『 小 樽 商 科 大 学 商 学 討 究 』 , 第 64 巻 第 4 号 ,pp. 257-272.
・ Becker, G. S.(1974), A Theory of Social Interactions, Jounal of Political Economy, Vol.6,pp.1063-1093.
・ Feldstein, M.(1975a), The income tax and charitable contributions: Part 1- Aggregate and Distributional
effcts, National Tax Journal, Vol.28, pp.81-100.
・ Feldstein, M.(1975b), The income tax and charitable contributions: Part 2- The Impact on Religious,
Educational and other organizations, National Tax Journal, Vol.28, pp.209-226.
・ Feldstein, M. (1980), A Contribution to the Theory of Tax Expenditures: The Case of Charitable Giving, in :
H.J. Aaron and M.J. Boskin, eds., The Economics of Taxation (Brookings,Washington, DC) pp. 99-122.
・ Feldstein, M. and Amy Taylor, (1976) The Income Tax and Charitable Contributions,
Vol. 44, No. 6, pp. 1201-1222.
49
Econometrica,