第 18 回高分子分析討論会(2013 年 9 月 19・20 日)講演要旨集からの再録である。 Ⅰ - 19 混 合 物 系 の ATR-IR ス ペ ク ト ル と ス ペ ク ト ル 歪 み 緩 和 群馬産技セ ○宮下 喜好 緒言 A T R ( A t te n u a t ed T ot a l R e f le c t a n ce ) - I R ス ペ ク ト ル は 、 全 反 射 条 件 を 満 た す 内 部 反 射 光 学 配 置 に お い て 、試 料 側 反 射 媒 質 の 吸 収 係 数( k)に 依 存 し て 全 反 射 光 が 減 衰 す る 場 合 に 得 ら れ る I R 反 射 ス ペ ク ト ル で あ り 、k の 大 き さ に 応 じ て ス ペ ク ト ル 形 が 変 化 す ることを特徴とする。kが十分に小さいときには良好な吸収型スペクトルであるが、 kが大きくなるにつれてスペクトル歪みが増していく。このスペクトル歪みは適切な スペクトル解析を困難にする場合があるので、最近では、このスペクトル歪みを解消 し 、 ATR-IR ス ペ ク ト ル を 透 過 吸 収 型 ス ペ ク ト ル に 変 換 す る 手 法 1) が開発されている。 A T R - I R ス ペ ク ト ル の ス ペ ク ト ル 歪 み の 原 因 は 、試 料 の k が 大 き く 、ス ペ ク ト ル 吸 光 係 数 が 大 き い こ と に 由 来 す る の で 、 k の 大 き い 試 料 を k の 小 さ い ( も し く は k = 0) 試 料で希釈することによってスペクトル歪みを緩和することができると考えられる。 本 研 究 で は 、 IR ス ペ ク ト ル 主 要 吸 光 帯 の k が 大 き く ス ペ ク ト ル 歪 み が 顕 著 な P TF E ( ポ リ テ ト ラ フ ル オ ロ エ チ レ ン )に お い て 、そ の 微 粒 子 に 対 し て 、PTFE 主 要 吸 光 帯 領 域 に 吸 収 の な い 炭 化 水 素 化 合 物 で 混 合 希 釈 し 、そ の 混 合 比 率 お よ び P T F E 微 粒 子 の 粒 子 径とスペクトル歪み緩和との関係を調べた。 実験 ( 1 ) 平 均 粒 径 約 0.3 µ m の P T F E 微 粒 子 と P T F E 主 要 吸 光 帯 に 吸 光 帯 を 有 し な い 炭 化 水 素 化 合 物 と し て の パ ラ フ ィ ン を 所 定 割 合 で 混 合 調 製 し 、 内 部 反 射 入 射 光 媒 質 ( IRE) と し て ゲ ル マ ニ ウ ム ( Ge) を 用 い 、 赤 外 光 入 射 角 度 を 30±5°に 設 定 し 、 波 数 分 解 能 2cm-1 で ATR-IR ス ペ ク ト ル を 求 め た 。 ま た 、 混 合 調 製 し た 試 料 を 臭 化 カ リ ウ ム 錠 剤 上 に 塗 布 し 同 じ 波 数 分 解 能 で 透 過 IR ス ペ ク ト ル を 求 め た 。 ( 2 )平 均 粒 径 約 0. 3μ m お よ び 約 6 μ m の P T F E 微 粒 子 と 炭 化 水 素 化 合 物 系 グ リ ー ス を 所 定 割 合 で 混 合 し 、IR E と し て ダ イ ヤ モ ン ド( D i a )を 用 い 、赤 外 光 入 射 角 度 を 4 5± 5° に 設 定 し 、 波 数 分 解 能 2cm-1 で ATR-IR ス ペ ク ト ル を 求 め た 。 結果 ( 1 ) 平 均 粒 子 径 約 0.3μ m の PTFE 微 粒 子 と パ ラ フ ィ ン を 所 定 割 合 で 混 合 し た 試 料 の ATR ス ペ ク ト ル お よ び 透 過 ス ペ ク ト ル を 図 1 に 示 す 。 図 1 か ら 解 る よ う に 、 透 過 ス ペ ク ト ル で は 、P T F E と パ ラ フ ィ ン の 混 合 割 合 を 変 え て も ス ペ ク ト ル 形 お よ び ス ペ ク ト ル 群馬産業技術センター 〒 3 7 3 -0 0 1 9 (東毛産業技術センター) 群 馬 県 太 田 市 吉 沢 1 05 8 -5 Tel: 0 2 7 6 -4 0 -5 0 9 0 Fa x : 0 2 7 6 -4 0 -5 0 9 1 e -ma il: mi ya -k i@ p ref. g u n ma. lg . jp 第 18 回高分子分析討論会(2013 年 9 月 19・20 日)講演要旨集からの再録である。 ピ ー ク 位 置 に 大 き な 変 化 は 認 め ら れ な か っ た が 、 AT R ス ペ ク ト ル で は 明 瞭 な 変 化 が 認 め ら れ た 。 PTFE 割 合 100% の 試 料 で は 、 そ の ATR ス ペ ク ト ル は 透 過 ス ペ ク ト ル に 比 べ ス ペ ク ト ル 形 は 大 き く 歪 ん で お り 、ス ペ ク ト ル ピ ー ク 位 置 も 透 過 ス ペ ク ト ル に 比 べ 10 cm - 1 程度低波数側にシフトしている。しかしながら、パラフィンの割合が増すにつれて、 ス ペ ク ト ル 歪 み は 緩 和 し 、ピ ー ク 位 置 も 高 波 数 側 に シ フ ト し 透 過 ス ペ ク ト ル に 近 づ き 、 PTFE 割 合 25% 混 合 物 の ATR ス ペ ク ト ル で は 、 そ の ス ペ ク ト ル 系 お よ び ピ ー ク 位 置 は 、 透過スペクトルのそれらとほぼ同等となっている。 *PTFE100-atr-2cm-1 1155.0 1212.1 0.2 0.1 1154.6 1208.6 0.4 0.2 Abs Abs 1472.9 1463.3 *PTFE50+CH 50-Tras-2cm-1 1154.5 1212.0 1472.9 1463.2 0.2 1377.3 *PTFE25+CH 75-atr-2cm-1 1154.8 1210.2 0.4 1473.3 1462.3 *PTFE25+CH 75-Tras-2cm-1 1472.7 0.3 Abs Abs *PTFE75+CH 25-Tras-2cm-1 0.3 1473.5 1462.1 *PTFE50+CH 50-atr-2cm-1 1473.4 1462.1 0.5 0.4 1152.9 1205.8 Abs Abs Abs *PTFE75+CH 25-atr-2cm-1 0.2 0.10 1154.9 1211.2 1200.5 0.2 0.4 Abs *PTFE100-Tras-2cm-1 1152.1 0.4 0.05 1210.7 1463.1 1153.4 0.2 1377.7 0.1 CH 100-atr-2cm-1 1473.5 1462.0 1500 1400 1300 Wavenumbers (cm-1) 1200 1100 Abs 0.10 0.05 1377.6 1500 図1 1400 1300 Wavenumbers (cm-1) 1200 1100 P T F E 微 粒 子 ( 平 均 粒 子 径 約 0 . 3 μ m ) と ハ ゚ ラ フ ィ ン 混 合 試 料 の A T R ス ヘ ゚ ク ト ル( 左 図 ) と 透 過 ス ヘ ゚ ク ト ル ( 右 図 )。 混 合 割 合 は 、 図 上 か ら 順 に 、 ハ ゚ ラ フ ィ ン = 1 0 0 : 0 、 約 7 5 : 2 5 、 約 5 0 : 5 0 、 約 25:75、 0:100(W%)。 ( 2 ) 平 均 粒 子 径 約 0.3μ m お よ び 約 6μ m 1220 の PTFE 微 粒 子 と グ リ ー ス を 所 定 割 合 で 混 合 1218 し た 試 料 の ATR ス ペ ク ト ル よ り 得 ら れ た CF2 逆対称伸縮振動ピーク位置とグリース混合 割 合 ( A b s (C H 2 ) / A b s( CF 2 ) ) の 関 係 を 図 2 に 示 す。両微粒子ともに、グリース添加量が増 1216 1214 1212 1210 1206 1204 していた。また、ピーク位置シフト量は微 1202 1200 1198 0 どグリース添加による高波数側へのシフト 量が増していた。 ■ : PTFE 粒 子 径 約 6µm 1208 すとともにピーク位置は高波数側にシフト 粒子の粒子径に依存し、粒子径が小さいほ ◆ : PTFE 粒 子 径 約 0.3µm 図2 10 20 30 40 50 PTFE 微 粒 子 と グリース混 合 試 料 ATR スペクトルの CF2 逆 対 称 伸 縮 振 動 ピーク位 置 (縦 軸 : cm-1)と グリース混 合 割 合 (横 軸 : Abs(CH2)/Abs(CF2))の 粒 子 径 依 存 性 文献 1) K o i c h i N i s h i k i d a a n d K e n n e t h D . K e m p f e r t , A dv a n ce d A T R C o rr e c t i on A l go r i th m f or I n f r a re d Sp e c tr o s co py i n “ A b s t r a c t ( 7 4 0 0 - 7 0 0 P ) o f P i t t s b u r g C o n f e r e n c e 2 0 0 4 ” .
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