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創健フォーラム
「口呼吸を考える」臨床実践編
第4回
日 時
場 所
2011年 11月23日(祭)
9:15 ~ 16:45
日本歯科大学九段ホール (地下1階 定員200名)
【第一部】
10:00 〜
講 師
元開富士雄
横浜市青葉区開業 保育歯科医師
「呼吸と口腔機能の接点を考える」
―鼻呼吸のスイッチはどこにあるのか?―
11:10 ~
講 師
愛知県日進市開業 歯科医師 恒志会理事
福岡 雅
「口呼吸、不正咬合の予防と早期治療」
―簡便な既製装置(The Trainer System)による方法―
【昼 食】
12:10 ~
13:00 ~
講 師
口腔生体医学研究所 歯科医師
荒井 正明
「呼吸と咀嚼が正しく行われているならば
百歳までいきられる」
—100 歳の人生を見据えた歯・口と脳づくりのための手入れ—(中国最古の医学書 黄帝内径より)
13:00 ~ 14:00
講 師
仙台市開業 腎臓内科医 IgA 腎症根治治療ネットワーク代表
「口呼吸と病巣感染(炎症)
【第二部:グループ懇話会・相談会】
堀田 修
15:50 ~
懇談・相談担当者/元開富士雄(保育歯科医) 福岡 雅(歯科医) 荒井正明(歯科医)
堀田 治(腎臓内科医)
日 時:平成23年11月23日(水・祭)9:15 〜 16:45
会 場:日本歯科大学内九段ホール(地下一階)
千代田区富士見1-9-20 TEL 03-3261-8311
会 費:一般3000円 歯科医師・医師5000円
定 員:200名
申 込 先:FAX 06-6852-0446 メール [email protected](HP http://koushikai-jp.org)
振 込 先:三井住友銀行 豊中支店(普)6856827 口座名 特定非営利活動法人恒志会 理事 土居元良
お問い合わせ:TEL 045-973-6626 FAX 045-978-1333(沖) TEL・FAX 06-6852-0446(事務局)
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特 集
『
口
呼
荒井 正明
吸
を
考
え
る
』
臨
床
実
践
編
Masaaki Arai
口腔生体医学研究所
100歳の人生を見据えた歯・口と
脳づくりのための手入れ
「呼吸と咀嚼が正しく行われるならば百歳まで生きられる」黄帝内経より(現存する中国最古の医学書)
はじめに
「医者の考える人間像はすべて病人から導き出し
酸素とグルコースは、血管によって運ばれ情報
は血管を介さず細胞にたどり着きます。
ている」 …アレクシス・カレル…
細胞をたどる情報というのは、ネットワークすな
医療は病気を扱うこと、医師が健康な人を扱わ
わち線維です。(株)脳の学校代表 加藤俊徳先
ないことの不思議さそして“いつまでも自分の歯
生(医師・医学博士)によると「酸素が結合した
で食べたい”という患者さんの願いと二律背反の
赤血球が血管の中を運ばれそして毛細血管で赤血
様相の歯科医療、歯科医術の進歩、2007年に超高
球が酸素を離して脳細胞に飲み込まれていくので
齢社会を迎えこれまで経験したことのない長い老
酸素が脳細胞の栄養になる」ということです。
後を出来るだけ健康に過ごしたいと切望する方に
また、グルコースは血漿(プラズマ)の中に溶
対する対応法…等々
けて運ばれ脳細胞に取り込まれます。
現在の歯科医療が抱える「限界」についてその意
外界から脳が受ける情報は、色々な感覚受容器の
味を汲み取り、ベクトルを変えることで21世紀に
細胞が情報を得て、線維連絡によって皮質の神経
見合う歯科医師としての生き方、歯科医療の提供
細胞側に伝えられると言われています。情報がや
が出来ないものか、そして口腔及び口腔周囲に限
り取りされると、エネルギーが使われ、酸素やグ
定した範囲だけではなく患者さん本来の健康にア
ルコースが必要になります。
プローチする方法はないかと考えました。
呼吸と脳
100歳の人生を見据えた
呼吸で空気中の酸素を取り入れます。脳にとって
歯・口と脳づくりのための手入れ
酸素は脳神経細胞、そして何より脳神経線維に大
健康脳づくりをするために必要なものは何か、
きな影響を与えます。線維とはつまり、脳のネッ
歯・口の手入れを脳の栄養と呼吸、咀嚼との関連
トワークのです。
性を見ながら検討していきます。
このことに脳を育てるヒントがあります。「頭は
脳の栄養
使えば使うほどよくなる」と言われていますが言
① 酸素
葉を変えると、「酸素を使えば使うほど頭が良く
② グルコース(糖)
なる」という事になります。酸素を使うとなぜ脳
③ 情報(経験)
が育つか、育てて行くかというと、筋肉(特に加
この3つが大切になります。
圧トレーニング)と同じで多少の低酸素状態(毛
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細血管からの酸素の取り込み)の時、脳の働きが
いわゆる“活性化”した状態になります。
われるのです。
「口や歯に良い刺激を与えれば、口腔内の環境を
この毛細血管から酸素の取り込んだ状態になると
整えれば、脳の広い範囲に良い環境を構築できる」
脳のネットワークが構築されるので「頭が良くな
この様に理解できると思います。
る」のです。
(脳の酸素の働きを計る技術として、脳機能イ
正しい咀嚼(正しい噛み方、噛み合わせ)
メージング法COEがあります)
「咀嚼とは、摂取した食物を歯で咬み、粉砕す
では、正しい呼吸そして情報(環境)づくりを
ること、噛むなどと表現される」とあるが、よく「一
考えて行くとやはり口呼吸より鼻呼吸そしてその
口30回噛みましょう」と言われています。しかし
環境づくりの1つの方法が口の体操「あいうべ」
これは良く噛むということの量的な要素に過ぎな
(今井一彰先生考案)となるのではないかと思い
いのではないでしょうか?
ます。実際に口の体操「あいうべ」を脳機能イメー
よく噛む(正しい噛み方)ということを質的な
ジング法COEで計測したところ、呼吸に関係す
要素から考えてみると、
る脳部位に対して、脳のマッサージ(脳血流の上
① 感謝(徳育)の気持ちを持って噛む
昇と低下、酸素消費)をするような効果が認めら
② よい歯で噛む
れました。(資料3)
③ 正しい噛み合せで噛む
④ 正しい姿勢で噛む
咀嚼と脳
⑤ 左右で平等あるいは交互に噛む
食事をしてグルコース(糖)を口から取り入れ
⑥ 味わって楽しく噛む
ます。グルコースは脳神経細胞にとって大切です。
⑦ 自然に食道に流れ込むまで噛む
もし低血糖になった場合、一言でいうとこの神経
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(「食と教育」船越正也 著 より)
細胞を壊してしまうからです。これは非常に怖い
以上の7カ条が大切であり、また船越先生は「こ
ことです。
の正しい噛み方を実践できるように口腔周囲及び
ここで脳と体の各部の関連をペンフィールドの
全身の環境を整備及び指導することが歯科医師の
脳地図(参考資料1・2)から見ていくと、口と
役目であろう」と述べています。
手の領域が大きく特に口の領域の咀嚼、唾液分泌、
以上の事から、30回噛む前に前準備として正し
嚥下などは内部に広がり、なおかつ、長さも脳の
い噛み合せ(咀嚼)、バランスのとれた体、正し
表面のラインの3分の1を占めるほど長いことが
い姿勢ということが大切ではないかと思います。
分かります。そして、咀嚼、唾液分泌、嚥下など
また、最近では「咀嚼」の乱れから、体のバラ
の部分が脳の内部にあり外部から障害を受けづら
ンスを損ない、その影響により全身の健康に問題
い所に位置することは口が生命維持に大切な部分
を起し、ひいては寿命を縮めるという様なことも
であるためではないかと推察されます。
認識されつつあります。
また、口の領域においては運動野のほうが体性
このことについては、体を支えているのは、頸
感覚野よりはるかに大きいことも注目されること
部から腰部の体幹ですが、バランスを保つ上で重
です。ここで体性感覚野のほうが小さく運動野が
要なのは下顎です。
大きいことから考えると、きちんとした訓練をし
下顎は体に対して振り子のような役割を果たし
学習を続けて行かないと、この部分の機能は衰え
ているので、体のバランスが乱れると影響を受け、
る可能性が予測されます。つまり咀嚼は学習に
これを補正する方向に動きます。このことにより、
よって学ぶものそして良い情報(経験)を反復す
下顎周囲の筋肉や顎関節、そして口や歯など他の
ることが大切になります。
期間も影響も受けてしまいます。<参考資料4>
「歯・口は生命維持のために重要な臓器」であり、
このような状況になってしまうと、いわゆる「咀
歯・口が感じる刺激は「脳を鍛え育てる」ことに
嚼」を正しく行うことが難しくなってしまいます。
つながるという、新しい視点が示されたように思
このように顎と咀嚼は切っても切れない関係にあ
恒志会会報 2011 Vol.6
り、前述のペンフィールドの脳地図から推察され
るように体の各部分(特に口、手、足)を使い訓
(「君たち、なぜ歯科医になったの?」
加藤元彦 著 ヒョーロン 刊)
練し学習し続けることが「正しい咀嚼(正しい噛
み合せ)」そして「脳づくり(脳の手入れ)」にな
ると考えます。
❖参考資料
1 ペンフィールドの脳地図
ではどうしたら良いのでしょうか?
ここでは特別な器具や方法そして術者(他者)
からのアプローチなどが必要なく自分自身(自力)
による方法、特に歯・口、手、足を利用した事柄
を取り上げたいと思います。
① 腹式呼吸
② 口の体操「あいうべ」
③ 足握手
④ 手首振り
⑤ 足首回し
2 ホムンクルス
⑥ 舌回し
⑦ ガム咀嚼トレーニング
⑧ ブラッシング
⑨ 食事の仕方 <参考資料5>
これらいづれのエクササイズも脳機能イメージ
ング法COEで計測したところ脳に対しての作用
が認められています。
3「あいうべ」COE画像
まとめ
これまで述べさせていただいた内容は主に私自
身が開業医として臨床を通し疑問に感じていた諸
問題を方向性(ベクトル)を変えることで解決で
きないかと考えたことを(株)脳の学校代表 加
藤俊徳先生(医師・医学博士)の御協力・御指導
を頂いて研究した内容です。
なにぶん私一個人の研究ですのでデータとして
は数が僅かで課題も残されておりますが、咀嚼と
呼吸の機能向上そして脳を含めた全身へのアプ
ローチが歯科からできる可能性があるのではない
かと感じております。
最後に、私がこの様な歯科治療の役割を模索して
いくキッカケになった言葉(本の一節)を紹介さ
せて頂きます。
「歯科の治療は、2本の脚起立して社会的・経
済的・精神的に生活しているヒトの頭蓋―下顎―
頸・肩(腕)の生理的・機能的な維持を図ること
を目的としているのではないか」
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4 バランスの崩れた身体と下顎位
バランスの取れた身体と下顎位
5 歯の部位と食べる割合の表
歯の部位
切歯
犬歯
臼歯
本 数
8本
4本
16 ~ 20本
役 割
切る
引きちぎる
すり潰す
食 品
野菜・果物
肉・魚
穀類・パン
食べる割合
2
1
4
P r o f i l e
荒井 正明 ❖
あらい まさあき
略歴
1984年 明海大学歯学部 卒業
1984年 明海大学歯科補綴学第一講座 専攻生
1985年 ロイヤル歯科医院勤務 1990年 同院継承
1993年 (医)社団 博明会 理事長
2008年 ロイヤル歯科医院 顧問
同 年 トータルヘルスアドバイザーズ(株)顧問 口腔生体医学研究所
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