英文教室連載コラム 2015 年 2 月号 柴田耕太郎 ホームページの「英文解釈教室モデル授業」で私は pleasant を「プリーザント」と読ん でいる。読者から「プレザント」だろうとご指摘いただいた。その通り。何を隠そう私は 英語が一言も話せないのだ。おまけに若い頃フランス語をやったものだから、単語を読む ときごっちゃになってしまう。pleasant はフランス語経由、plaisir (プレジール:喜び)の 形容詞 plaisant(プレザン)の英語化。-ant は「…化する」の意味の接尾辞。普通なら英語 読みにして「プリーザント」となってよいはずだ。例えば chef「シェフ」(仏)→「チーフ」 (英)、theatre「テアトル」(仏)→「シアター」(英)、interessant「アンテレッサン」(仏)→ interesting「インタレスティング」(英)。なぜ plaisant は綴りは英語式に pleasant となっ ても仏語訛りのまま「プレザント」と読むのだろう。どなたかご教示ください。 今回はプロでも間違える語法、そのほんの一部を。 1 現在分詞形の形容詞 原則: 他動詞の現在分詞形の形容詞は「人を…する・させる」 自動詞の現在分詞形の形容詞は「…する・している」 例文: an interesting person 他人を面白がらせる人物→「面白い人」 a sleeping beauty 眠っている美人→「眠れる美女」 誤訳例: I found her a bit intimidating. ×「何かおどおどしてる感じだった」 〇「ちょっといかめしい感じだった」 2 「…を」と訳せない他動詞 原則: 助詞も一緒に覚えないと方向が逆になる accompany「…に付き従う」 、outlive「…より長生きする」など 例文: Mr. Jones outlived his wife by ten years. 「ジョーンズ氏は妻より十年長生きした」 誤訳例: Would you mind my accompanying him? ×「彼を連れて行って構いませんか」 〇「彼に付いて行ってよろしいですか」 3 可算名詞と不可算名詞 原則: 不可算名詞の可算名詞化は「…な人・事・物・状態」 抽象的なものが具象化される many ignorances, blue skies など 例文: Wisdom can be got by combining many ignorances. 「無知な人間を寄せ集めれば叡智が得られる」 誤訳例: government of the people, by the people, for the people ×「人民の人民による人民のための政府」 〇「人民の人民による人民のための政治」 4 結果を含意する to 不定詞 原則: 結果を含意する to 不定詞は少ない。その場その場で覚えてゆくとよい persuade 人 to do, entice 人 to do, force 人 to do など 例文: The teacher forced his pupils to be quiet. 「先生は生徒を静かにさせた」 誤訳例: We persuaded her to go to law school. ×「我々は法科大学院に行くよう彼女を説得した」 〇「我々は彼女を説得して法科大学院に進ませた」 5 every と any 原則: every は水平、any は垂直 「例外なく誰も皆」と「程度の差はあれ誰も」 例文: He believed every word of mine. 「彼は私の言葉をことごとく信じた」 誤訳例: Any child could do that. ×「全ての子供はそれをすることができた」 〇「どんな子だってそれぐらいできる」 6 同義語反復 原則: リズムを出すのに似た意味を重ねている 陰々滅滅、安穏などに同じ consultations and committee work, run by and is gone など 例文: many days or months will go by without my using the books. 「私が本を読まないまま多くの月日が過ぎてゆく」 誤訳例: Omar and Saleh stood bowing and scraping. ×「オマルとサレフは頭をさげ、体をぽりぽり搔きながら聞いていた」 〇「オマールとサレフはぺこぺこしていた」 7 be to do の意味 原則: 可能、義務、運命、命令、予定、目的、意図 可能は受身形・否定形で、義務・命令は権威を含意、運命は過去形で、予定は公的を含意、 意図は if 節内で、との特徴(絶対ではない)がある 例文: The ring was not to be found anywhere. 「指輪はどこにも見つからなかった」 誤訳例: If you are to succeed in your new job, you must work hard now. ×「君が今度の仕事に成功しなければならないなら、今懸命に働かねばならない」 〇「今度の新しい仕事で成功するつもりなら、君は今懸命に働かねばならない」 8 in fact の多義 原則: 前後の文脈により相反する意味になることがあるので注意 「実に」 「実は」 「それどころか」「もっというと」 「いや」 indeed, actually も同じ 例文: I didn’t mind at all. Indeed, I was pleased. 「私は全然気にしなかった。それどころか大いに喜んだ」 誤訳例: I didn’t like him much―in fact I hated him. ×「私は彼があまり好きでなかった―実に彼を嫌っていたのだ」 〇「私は彼があまり好きでなかった。それどころかむしろ憎んでさえいた」 9 副詞の only 原則: 場所も掛かり方も訳語も変幻自在。文脈で読むしかない。 「こそ」 「ただ」 「まさに」 「…してはじめて」 「…なだけ」 基本的には強調。exactly, justly, rightly なども同じ 例文: We are only saying this for your own sake. 「君のためを思えばこそこう言っているのです」 誤訳例: You only live once. ×「貴方は一度生きるに過ぎません」 〇「所詮人生一度だけ」 10 that と this と it 原則: that は直前のこと、this は直前・直後のこと、it は文中で問題になっている事柄 例文: That did it! 「それで決まりだ」 誤訳例: I think that’s about it for now. ×「今のところそれはそれについてのことだと思う」 〇「今のところこれでよしとしよう」
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