乳がんの皮膚潰瘍について

乳がんの皮膚潰瘍
平成27年1月19日
緩和ケア病棟看護師
乳がんは・・・
・女性におけるがん罹患率で第1位
・特に近年、若年者の増加が顕著
・早期発見と適切な治療を受けることが重要
・社会的役割などから、受診が遅れることがある
症
例
77歳 女性
【病 名】
左局所進行乳がん、多発肺転移、
骨、肝転移、左乳房皮膚潰瘍
【現病歴】
・X年 左乳腺腫を自覚も放置
・X+2年 A病院にて診断されるが、
検査、治療を拒否
・X+3年~当院緩和ケア外来にてfollow
・1か月後 労作時呼吸困難、不安増強で
入院
悪性疾患による皮膚潰瘍とは
何カ月、何年も無治療で乳がんを放置すれば
しこりは大きくなり、外から見ても異常が判る
位になる
乳がんの細胞が皮膚を破って外に露出し、浸
出液が生じ、悪臭や出血を伴う状態
悪性疾患の皮膚病変の変化
皮
膚
の
発
赤
び
ら
ん
・
し
こ
り
潰
瘍
浸
出
液
・
出
血
・
痛
み
感
染
・
悪
臭
患
部
の
拡
大
・
陥
没
皮膚潰瘍
皮膚潰瘍による創傷は、治癒の目標は困難な為
症状緩和が第一
1、 疼痛緩和
2、 悪臭・浸出液・出血へのケア
3、 感染予防を目指したスキンケア
がん性悪臭の原因
がん病巣が体表部に露出してがん性潰瘍を
形成し、自壊した潰瘍の壊死過程において
脂肪酸類が腐敗し、嫌気性菌による感染と
創部からの浸出液により悪臭が発生する。
悪臭に対するケア
1、換気
2、竹炭よる脱臭
3、スーパーノンチ
4、メトロニダゾール
5、アルト入りメトロニタゾール
メトロニタゾール軟膏
・液体成分を吸湿する性質がある
・悪臭、痛みなどに効果的な軟膏
・ガーゼに万遍なく刷り込ませ患部に直接貼用
・出血を伴う場合はアルト入りのものを使用
・浸出液が多く、臭気の管理が不十分であれば
軟膏の量を増やすし、処置の回数を増やす
アルギン酸ナトリウム(アルト)
・コンブ、ワカメに代表される褐藻、海藻などに
含まれる(天然の植物繊維)
【作用】
・出血部位の被覆作用
・フィブリン形成促進作用
止血効果
・赤血球凝集作用
・血小板機能促進作用
メトロニダゾール軟膏塗布
出血・浸出液に対して
【処置方法】
1、カルトスタット
2、アルト入りメトロニタゾール
3、ホルマリン療法
4、モーズ療法
カルトスタット
浸出液を吸収しゲルを形成、創傷治癒を促進
し止血促進作用がある。
(アルギン酸ドレッシング)
アルギン酸は自重の15~20倍の
水分を吸収する。
強力な止血作用をもつ。
ホルマリン療法
・ 強いタンパク凝固作用を有する
・ 自壊腫瘍に塗布すれば、壊死組織や微小な
血管が凝固され腫瘍からの浸出液や出血に
対して有効
*人体への影響もある為、ホルマリンの性質と
危険性を十分に理解する
ホルマリン処置の実際
モーズ療法
腫瘍(潰瘍部分)にモーズペーストを塗布し腐食、
固定し、浸出液や悪臭の除去、出血予防を図る。
ホルマリン療法とモーズ療法の違いは?
・ホルマリン療法:表面だけを固定していく
・モーズ療法:固定の深さがあるので、固定した
部分を切除し、再度モーズペースト
で固定を行いサイズダウンできる。
モーズ療法の実際
出血部位を確認
モーズ軟膏塗布中
症例の実際のケア
・不安: 傍に寄り添い傾聴、抗不安薬の使用
・疼痛の緩和: 麻薬の持続皮下注射を開始
・悪臭: 換気、竹炭による脱臭、
メトロニダゾール軟膏への変更
・出血: カルトスタット、ホルマリン療法
・浸出液: アルト入りメトロニダゾールで
こまめなガーゼの交換
ま と め
皮膚潰瘍のある患者のケアの目標は、
治癒を目標とするのではなく・・・
・QOLの向上
・症状コントロール が第一
・精神的なサポートを含めた日常生活への
援助
以上を踏まえたきめ細かな支援が重要である