空間 技術 - SAWADA LAB

第 12 回居住環境デザイン 12 章「力の流れと表現」
執筆 修士 1 年 中野良則
校正 修士 2 年 佐藤友香
学部 4 年 飯塚圭佑
空間 技術 -現代の建築設計者に求められる力-
0.はじめに
建築には、建築物の自重によってかか
る重“力”、自然環境によってもたらされ
2.近代
る外“力”、社会的な動向によってもたら
近代を技術的特徴で区分すると、二つ
される圧“力”など様々な“力”がかか
に分けることができる。1 つ目は産業革命
ってくる。そして空間表現では、建築物
から第二次世界大戦後の復興期、2 つ目は
にかかる“力”の流れを適切に読み取り、
日本の高度経済成長期である。そして前
その“力”がどのようにして空間化して
半は製法の時代であり、後半は複合の時
いるかが体感的に伝わることが重要であ
代である。
る。
本論では、建築に関わる技術の発展が
2.1 製法の時代
顕著に見受けられる近世・近代・現代の
近代前半は産業革命と戦争という大き
3つの時代を技術的な側面から取り上げ
な社会動向によって生産技術や精錬技術
て、それぞれの時代の特徴を述べる。空
が発達した製法の時代である。近代前半
間をつくりだす際に取り扱われる“力”
の建築は、社会の変化に呼応した建築表
がどのようなもので、いかにして空間化
現をとることで、建築が社会から受ける
しているかを見ていき、現代の設計者に
“力”を空間化した。(別紙 2 参照)
は、建築設計に対するどのような態度が
求められているのかを考察していく。
2.2 複合の時代
近代後半は、近世・近代前半で培われ
1.近世
た技術を高度に複合化した時代である。
1.1 素材の時代
(別紙 3 参照)社会動向として、戦後の
近世の建築は技術的側面から見たとき、
混乱が落ち着き国土の建て直しが行われ
素材の時代であるといえる。近世の技術
た。その中で、建築には復興を示すよう
者は、素材を産出する際や加工して建築
な象徴性を持つという社会的責任が与え
材料にする際に技術的な限界があった。
られた。これが近代後半の建築にかけら
しかしその中でも、いかに多様な空間を
れた“力”である。この点において当時
生むかという問いは続けられた。そして
の技術を建築に投影する意味を担った製
近世の技術は素材の応用方法を展開して
法の時代の建築とは異なる。
いくことを指向した。(別紙 1 参照)
近世の建築の空間は、素材に加わる力
3.現代
学的な“力”を読み取りながら、単一の
3.1 情報の時代
素材から多様な空間を生み出すことを可
近世、近代では建築物を構築するため
能にした。
の技術が発達していったのに対し、現代
第 12 回居住環境デザイン 12 章「力の流れと表現」
執筆 修士 1 年 中野良則
校正 修士 2 年 佐藤友香
学部 4 年 飯塚圭佑
ではコンピュータなどの情報技術、すな
わち建築を構想するための技術が発達し
た。そこで現代は、情報の時代といえる。
この技術により様々な環境要素は可視化
され、設計者が建築表現に取り扱うこと
を可能にした。
(別紙 4 参照)現代の建築
は目には見えない自然環境を“力”とし
て取り扱い、空間に落としこむようにな
る。
4.結び
近世、近代において取り扱われた“力”
は純粋に力学的な力や社会から受ける圧
力のようなものであった。ゆえに近世で
は、力学的な力の流れを読み取る能力が、
近代では社会の変化と流れを敏感に読み
取る能力が設計者には必要であった。現
代は情報技術の発達で取り扱うべき“力”
は増え、猥雑化した。だからこそ現代の
建築設計者は適切に情報を取り出すため
の読解力と取り出した情報を選別するた
めの強い動機を持たなければならない。
参考文献
CULTIVATE/小嶋一浩+赤松佳珠子/Cat
新しい建築のみかた/斎藤 公男
新建築 2010/12
/新建築社
テキスト建築意匠
/平尾和洋,大窪健之,松本裕,
末包伸吾,藤木庸介,山本直彦
空間 技術 1
−現代の建築設計者に求められる力−
素材の時代 ( 近世 )
fig1. ポン・デュ・ガール
第 13 回居住環境デザイン 12 章「力の流れと表現」
2
製法の時代 ( 近代前半 )
fig5. 水晶宮 (1851)
産業革命によって発達した生産技術や精錬技術は
手工芸品に使われていた鉄、ガラスや植木鉢に使
われていた鉄筋コンクリートを建築スケールにま
で応用可能にした。
3
複合の時代 ( 近代後半 )
情報の時代 ( 現代 )
fig8. 国立代々木競技場第一体育館 (1964)
fig11. ホーチミン市建築大学 (2006)
代々木体育館は橋梁技術における吊り構造を建築
に応用し、施工には造船職人がかかわることで近
代の水平垂直の形態から脱却した大空間を提案し
た。
fig12. 建築配置のための風解析
fig2. パンテオン
組積造では、まぐさ式構造に見られる「積む」という
原始的な技術を、アーチ(fig1)という面的な応用か
らヴォールトやドーム (fig2) という立体的な応用まで
展開した。
4
fig9. 東京カテドラル聖マリア大聖堂 (1965)
fig6. ドミノシステム (1914)
戦争により、復興のための住宅供給が急務となる
ことで、規格部材やプレファブリケーションによ
る生産の効率化を促した。コルビュジエに代表さ
れる「ドミノシステム」はこの背景のもと提案さ
れた。
ホーチミン市建築大学は、風解析を用いながら建築
配置の検討を行うことで熱帯に位置していても冷房
を使わず快適に過ごせる空間を生んでいる。
東京カテドラル聖マリア大聖堂では HP シェルと
いう RC の特徴を活かした構造を使用することで、
構造的に無理なく、3 次元曲面によるダイナミッ
クな空間を作ることを可能にした。
fig13. ホキ美術館 (2010)
fig3. 東大寺南大門 大仏様
fig7. ファンズワース邸 (1951)
fig4. 白川郷 小屋組み
木造では、校倉造りから始まる「組む」という原始的な
技術を、大仏様のような意匠に直結した組み方から小屋
組みやトラスのような広大な空間を生むための架構形式
にまで応用した。
出典 fig1. http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/3d/4a0cf4ec7fe976677fa30fd90496a5ba.jpg
fig2. http://www.circam.jp/files/user/essay/images/02-05.jpg
fig3. http://blog-imgs-17.fc2.com/t/a/k/takashitzr/201103092057305cd.jpg
fig4. http://blog-imgs-64.fc2.com/w/h/a/whatisjapan/20140416104625beb.jpg
鉄、ガラスという新たな建築素材の誕生と規格部
材化などによる製法の発展から、ミースはファン
ズワース邸で「ユニバーサルスペース」を提案し
た。建築が技術を通して社会性を帯びることと
なった顕著な例である。
出典 fig5. http://www.ndl.go.jp/exposition/images/R/001r.jpg
fig6. http://homepage1.nifty.com/iberia/dominosystem.jpg
fig7. http://2.bp.blogspot.com/-B42tFTyD__4/VCzzMbcJEmI/AAAAAAAABIg/w1I4c5tj8gc/s
1600/%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%95.jpg
fig10. ミュンヘンオリンピック競技場 (1972)
ミュンヘンオリンピック競技場はテント構造と呼ばれ
る、遊牧民の住居に多く用いられた構造を更に大きな
スケールに応用したものである。二重に渡されたケー
ブルネットとアルミニウム製クランプにより屋根の変
形を抑えている。膜素材の性能を十全に活かした建築。
出典 fig8. http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/be/Yoyogi-National-First-Gymnasium-01.jpg
fig9. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/91/St._Mary's_Cathedral_Tokyo_2012.JPG
fig10. http://img02.hamazo.tv/usr/puchigardenkana/P1020554.JPG
fig14. 風解析
ホキ美術館は 30mものキャンティレバーを構造解析
によって実現すると共に、3次元オブジェクト CAD
や解析ソフトの利用によって光・風環境を可視化し、
空間化した。
出典
fig11. http://img-cdn.jg.jugem.jp/529/460780/20070422_266803.jpg
fig12. http://archiscape.lixil.co.jp/column/images/ienochi/vol31/img_page2_10.jpg
fig13. http://www.obayashi.co.jp/chronicle/works/images/k/63700/63700_1.jpg
fig14. http://bim-design.com/case/images/img_02nikken_windp2.jpg