中国の立法機関が多国間税務行政執行 共助条約を批准

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China Tax and Business Advisory
中国の立法機関が多国間税務行政執行
共助条約を批准
July 2015
Issue 30
概要
2015 年 7 月 1 日、全国人民代表大会常務委員会(以下「全人代常務委員会」)は、グローバルな税収管理にお
ける国際協力を強化することを念頭に策定された多国間税務行政執行共助条約(以下「当条約」)を批准しま
した。これを受けて、中国国内で当条約が間もなく発効する見通しです。当条約では中国と締約国との間の情
報交換(EoI)の範囲が拡大され、所得税以外のその他の税も情報交換ネットワークの対象範囲に含まれます。
ただし、中国は当条約の多数の条項について留保を付しており、当条約で規定される徴収共助、税収保全、送
達共助の形式による行政支援は中国と締約国との間では適用されません。
多国籍企業にとって、税収管理の国際協力が強化されることで、事業を行う国・地域の税務当局によって国境
を超えた取引の情報が利用可能になることを意味します。このため、多国籍企業にとり自社のクロスボーダー
取引における税務コンプライアンスを強化することが増々重要になります。
詳細
当条約の主な内容
租税の範囲
背景
当条約では、締約国間における
全ての租税に対する課税額の査
定と徴収についてあらゆる形式の
行政支援を提供します。これには
具体的に以下の措置が含まれま
す。
一般的に、租税条約では情報交
換条項で規定される租税は所得
税のみに限られています。しかし、
当条約ではより多くの種類の租税
を対象範囲に含めることを締約国
に求めています。全人代常務委
員会により公表された声明(以下
「声明」)では、当条約は現行の中
国税法下で規定されるほぼ全て
の租税に適用されることが明確に
されました。これにより、中国にお
ける対内および対外事業に影響
が出ることになると考えられます。
例えば、中国税務当局が輸入品
に対して付加価値税(VAT)調査
を行う際、中国税務当局は外国
の売り手を所轄する外国税務当
局に対し関連情報(例えば、中国
向けの輸出価格と本国における
販売価格の比較、外国の売り手
が同一条件下で販売する類似商
品の価格等の情報)を要求するこ
とができます。一方で、ある国が
当条約締結に際して同様の種類
の租税(例えば、VAT、固定資産
税等)を自国の対象範囲に含める
限り、中国は相互主義に基づき自
国の保有する関連情報を提供す
る義務を負います。
租税に関する行政支援および情
報交換の最も包括的で多角的な
手段として、当条約は国境を跨ぐ
租税回避や脱税を防止し、公平な
税収環境を維持するために各国
の税務当局間において相互の行
政支援を提供することを目的とし
ています。2013 年 8 月 27 日、中
国は 56 番目の締約国として当条
約に署名しました。2015 年 6 月
30 日現在、87 ヶ国が当条約に署
名しています。



情報交換(要請があった場合
の情報交換、自動情報交換、
自発的情報交換、同時税務
調査、および外国における税
務調査)、
徴収共助(追徴課税および税
収保全)、および
送達共助
既存の租税条約や情報交換協定
と比較して、当条約では租税に関
する行政支援についてより幅広い
対象範囲を規定しています。
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当条約における中国の留保事項
締約国の多様な要求を満たし、より高い
柔軟性を提供するために、当条約は締
約国に対していくつかの条項について留
保を付すことを認めています。中国はそ
の他の締約国と比べて徴収共助、税収
保全および送達共助等を含む比較的多
くの条項に対して留保を付しています。
相互主義の原則下では中国は留保事項
について外国税務当局から情報を要求
することはできないため、中国の国際的
行政支援への参画は限定されます。
しかし、中国が相対的に保守的な態度を
取ることは驚くべきことではありません。
多くの先進国と比較して、中国が署名し
た多くの租税条約や情報交換協定では
支援の形式が情報交換のみに限られて
いるため、中国は行政支援の経験に乏し
いのが現状です。もう一つの重要な点は、
中国税務当局は納税者の口座凍結、財
産の差し押さえ、追徴課税等、徴収共助
や税収保全に関連する多様な措置を国
内法に基づき実施できることです。対照
的に、多くの締約国の税務当局はその様
な権限を有しません。そのため、中国税
務当局が外国税務当局に特定の措置を
要求する場合、より多くの制約に直面す
ることは明白でしょう。
情報交換の拡大
上記の留保事項を除き、当条約で規定さ
れるそのほか全ての形式による相互行
政支援が中国において適用されます。例
えば、当条約において同時税務調査およ
び外国における税務調査は情報交換の
形式として明記されています。これら 2 つ
の形式の情報交換は経済協力開発機構
(OECD)のモデル租税条約の注釈に反
映されていますが、当条約では締約国が
これらの行政支援を提供するための明
確な法的根拠が規定されています。
同時税務調査は、2 つ以上の税務当局
間において共通または関連する利害関
係にある納税者について調査し、収集し
た情報を交換する取り決めを指します。
外国における税務調査は、申請国の税
務当局の担当者が外国において行う個
人への聞き取りまたは納税者の帳簿や
記録の調査を指します。
2
さらに自動情報交換の条項により、締約
国が金融口座に関する自動情報交換に
係る共通報告基準(以下「CRS」)を施行
する法的根拠が明確になりました。これ
までのところ、61 の国・地域が当条約の
第 6 条(自動情報交換)に基づき多国間
監督当局協議(以下「当協議」)に署名し
ています。2018 年までに G20 各国にお
いて相互に CRS を施行する目標が掲げ
られているため、中国は G20 の一員とし
て当協議の枠組に早急に参加するもの
と見られます。
機密性
当条約では外国において収集した税務
情報は機密扱いとすることが厳格に規定
されていますが、多くの納税者は外国税
務当局を対象に交換される情報に含ま
れる企業秘密が外国税務当局またはそ
の他の納税者に開示される可能性につ
いて懸念を示しています。全人代常務委
員会は、中国税務当局が中国の法人お
よび個人に対しその情報が外国に引き
渡される前に通知する場合があることを
声明にて公表しました。この声明の内容
は国家税務総局の『国際税収情報交換
工作規程』の規定内容と一致します。中
国税務当局には通知の義務はないもの
の、納税者は通知があればそれを厳粛
に受け入れることが求められます。一方
で、納税者が外国に税務情報を引き渡す
ことにより当条約の条項と相容れない状
況(例えば、企業秘密および商業上の機
密の漏洩)が発生すると判断した場合、
納税者は中国税務当局に適時に通知し
なければなりません。
国家税務総局の今後の措置
国家税務総局の王軍局長は当条約批准
の直後にインタビューに応じ、中国が当
条約の枠組に参加したことを積極的に評
価しました。当該インタビューの中で、国
家税務総局が国内の関連工作規程を改
定し、当条約下の義務を履行し、外国税
務当局との協力を強化することも合わせ
て公表されました。これを受けて、国家税
務総局は、2006 年に策定された『国際
税収情報交換工作規程』の改定を含む、
当条約で規定される措置の施行に着手
しているものと考えられます。
香港・マカオは当条約の対象外
全人代常務委員会は当条約が香港およ
びマカオ特別行政区には適用されないこ
とを明確にしました。この決定は、香港お
よびマカオの『基本法』に従い両特別行
政区政府との協議を経て下されたものと
考えられます。ただし 2015 年 6 月 18 日、
香港は欧州委員会により 30 の「非協力
的課税国・地域」の一つに数えられたこと
には留意すべきでしょう。欧州委員会は
同委員会加盟国の税収が損なわれると
して、これらの国・地域における税制の不
透明性を批判しました。同時に欧州委員
会は非協力的課税国・地域に対し対応
措置を策定することを公表しました。香港
は中国大陸とは歩調を異にし当条約に
は参加しませんでしたが、『基本法』によ
ると香港は個別の参加を模索することが
可能です。国際社会からの信頼を取り戻
すために、恐らく香港にとり今が当条約
への署名を考慮する最良の時期ではな
いかと考えられます。
まとめ
当条約の規定によると、中国立法機関に
よる批准後、中国が批准書を OECD に
提出して初めて中国国内で当条約が発
効します。中国は多数の留保事項を付し
ていますが、租税の種類および相互行政
支援の形式の対象範囲を拡大するなど、
将来的に租税に関する国際協力を強化
する姿勢が見られます。
当条約の枠組では、租税情報は全ての
締約国の税務当局間で自由に行き来し、
各国の税務当局は多国籍企業のグロー
バルレベルの事業についてより深い見識
を得ることが可能になります。結果として
多国籍企業の視点から見ると、当条約の
締約国のネットワークが拡大するに従い、
自社のグローバルビジネスにおいてより
厳格な税務コンプライアンスおよびリスク
管理が要求されることになるでしょう。
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China Tax and Business Advisory
China’s legislative body ratifies
the Multilateral Convention on
Tax Matters
July 2015
Issue 30
In brief
On 1 July 2015, the National People’s Congress Standing Committee (the “NPC Standing Committee”)
ratified the Multilateral Convention on Mutual Administrative Assistance in Tax Matters (the
Convention”), which was designed to strengthen international co-operation on tax administration
worldwide. After ratification, it will not take long before the Convention becomes effective in China. The
Convention will extend the scope of exchange of information (EoI) between China and other Contracting
States. Apart from income taxes, other taxes will also be covered in the EoI network. Nevertheless, since
China has reservations on a number of articles, some forms of administrative assistance like assistance
in recovery, measures of conservancy and service of documents stated in the Convention will not apply
between China and other Contracting States.
For Multinational corporations (MNCs), strengthened international co-operation on tax administration
means that their cross-border transaction information will be available to tax authorities in the
jurisdictions that their businesses are involved. As such, it becomes increasingly important for MNCs to
improve tax compliance in their cross-border transactions.
In detail
Background
Being the most comprehensive
and multilateral instrument for
tax administrative assistance
and EoI, the Convention aims
to provide mutual assistance
among tax authorities around
the world in order to combat
cross-border tax avoidance and
evasion, and to maintain a fair
tax environment. On 27 August
2013, China signed the
Convention as the 56th
contracting party. As of 30 June
2015, the number of
Contracting States to the
Convention has reached 87.
Features of the Convention
The Convention provides all
possible forms of
administrative assistance
between the states in the
assessment and collection of all
categories of taxes, which
include:



EoI (including EoI on
request, automatic EoI,
spontaneous EoI,
simultaneous tax
examination, and tax
examination abroad);
Assistance in recovery
(including recovery of tax
claim and measures of
conservancy); and
Service of documents.
Compared with most of the
existing bilateral double
taxation agreements (DTAs)
and tax information exchange
agreements (TIEAs), the
Convention provides a wider
scope of tax administrative
assistance.
Scope of taxes
Under most circumstances, the
taxes covered in the EoI article
are limited to income taxes
only. However, the Convention
encourages Contracting States
to include more categories of
taxes. According to the
Statement released by the NPC
Standing Committee
(hereinafter referred to as the
“Statement”), the Convention
will apply to almost all
categories of taxes under
China’s prevailing tax laws and
regulations. The expansion of
the scope will have impacts on
both inbound and outbound
businesses. For example, where
the Chinese tax authorities
conduct VAT examination on
the imported goods, they can
send the request to the tax
authorities of the foreign seller
to obtain relevant information
they would need (including
whether the price of the goods
exported to China is the same
as the price reported in the
home country, the price of
similar products sold by this
foreign enterprise under the
same condition, etc.). On the
other hand, as long as that
foreign country has included
the corresponding taxes (e.g.,
VAT, real estate taxes, etc.) in
its scope of taxes in joining the
Convention, China also has the
obligation to provide the
information it possesses
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under the principle of reciprocity.
Reservations
To satisfy the diversified requirements
of the Contracting States and to
provide more flexibility, the
Convention allows Contracting States
to make reservations on some articles.
Compared with other Contracting
States, China has reservations on a
relatively large number of articles,
including recovery of taxes, measures
of conservancy and service of
documents, etc. This limits China’s
participation in international
assistance because according to the
principle of reciprocity, China will not
be able to request the tax authorities
in the other states to provide
information concerning the reserved
matters.
However, it is not surprising that
China takes a relatively conservative
attitude. As compared with most of the
developed countries, China does not
have much experiences on
administrative assistance as most
existing DTAs and TIEAs signed by
China limit the forms of assistance to
EoI only. Another important
consideration is that the Chinese tax
authorities are empowered to exercise
a wide range of measure in relation to
recovery of claim and conservancies
under the Chinese domestic law, such
as freezing the taxpayers’ account,
seizure of property and recovering tax
claims from taxpayers’ account, etc. By
contrast, the tax authority of most
Contracting States does not have such
power. Obviously, the Chinese tax
authorities will face more restrictions
when requesting its counterparts to
take actions upon its request.
Expansion of EoI
Except for the reservations listed
above, all the other forms of mutual
administrative assistance provided by
the Convention will apply to China.
For example, simultaneous tax
examinations and tax examination
abroad are both listed as forms of EoI
in the Convention. Although these two
forms of EoI have been reflected in the
Commentary to the Model Tax
Convention of the Organisation for
Economic Co-operation and
Development (OECD), the Convention
provides a clear legal basis for states to
provide these kinds of assistance.
A simultaneous tax examination refers
to an arrangement between two or
more tax authorities to examine
taxpayers whom they have a common
or related interest simultaneously, and
5
to exchange the information collected.
Tax examination abroad refers to the
situation where tax officials of an
applicant state are present in the other
state to interview individuals or
examine taxpayers’ books and records.
In addition, the automatic EoI
provision will provide legal basis for
the Contracting States to implement
the Common Reporting Standard for
the automatic exchange of information
in the financial account (CRS). So far,
a total of 61 jurisdictions have signed
the Multilateral Competent Authority
Agreement (the Agreement) on the
basis of Article 6 (Automatic EoI) of
the Convention. It is believed that
China, as a member of G20, will join
the network of the Agreement very
soon, since it is crucial for the G20
members to implement CRS among all
the member states as a goal in 2018.
Secrecy
Although the Convention strictly
stipulates that tax information
collected from other states shall be
kept in secrecy, many taxpayers still
have concerns about information
exchanged to tax authorities abroad
because they are worried that business
secrets contained in these information
may be disclosed to the foreign tax
authorities or other taxpayers. The
NPC Standing Committee declared
that the Chinese tax authorities may
inform the Chinese companies and
individuals before their information is
transmitted to the other states. This
declaration is consistent with the
provisions in the SAT’s Guidance for
International Exchange of Tax
Information (the “Guidance”).
Although the tax authorities are not
obliged to do so, taxpayers should take
it seriously if they are informed by the
tax authorities. Meanwhile, if
taxpayers consider that transmitting
such information to other states may
result in practices that are not in line
with the provisions of the Convention
(for example, if it may lead to the
leakage of business and commercial
secrets), the taxpayer should report it
to the Chinese tax authorities in time.
SAT’s action plans
SAT’s Commissioner Wang Jun was
interviewed immediately after the
Convention was ratified and he
provided very positive comments on
the progress. It was also disclosed in
the news report that the SAT will
revise relevant domestic guidelines,
fulfil its obligation under the
Convention, and enhance global
cooperation with tax authorities from
other states. It is believed that the SAT
has started preparing the
implementation measure of the
Convention, including revising the
Guidance formulated in 2006.
Applicability to Hong Kong and
Macao
The NPC Standing Committee has
made it clear that the Convention shall
not apply to the Hong Kong and
Macao SARs. We believe this decision
is made after consultation with the
governments of the two jurisdictions
respectively according to the Basic
Law of Hong Kong and Basic Law of
Macao. However, it is important to
note that recently Hong Kong has been
named as one of 30 “non-cooperative
tax jurisdictions” by the European
Commission (EC) on 18 June 2015.
The EC criticised these jurisdictions
for the lack of transparency in their tax
regimes, which would impair the tax
benefits of its member states.
Meanwhile, EC claimed that it would
coordinate possible counter-measures
towards the non-cooperative tax
jurisdictions on the list. Although
Hong Kong has not joined the
Convention together with mainland
China, it could consider joining it
separately according to its Basic Law.
Perhaps, it is an appropriate timing for
Hong Kong to consider signing the
Convention to regain its reputation in
the international community.
The takeaway
According to the Convention, after the
ratification made by the China’s
legislative body, the Convention shall
take effect after China has deposited
the instrument of ratification to the
OECD Secretaries. Although China has
quite a number of reservations, it has
taken a step forward to extend the
scope of taxes and forms of mutual
assistance. It demonstrates that China
will put in more efforts in improving
the international co-operation on tax
matters in the future.
Under the framework of the
Convention, tax information can flow
free among tax authorities of all
Contracting States, which enables tax
authorities at each state to have an indepth understanding of the global
business activities of MNCs. As a
result, from the MNC’s perspective,
further expansion of the Convention
network will demand a higher
requirement for tax compliance and
risk control capacity on their global
businesses.
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The information contained in this publication is for general guidance on matters of interest only and is not meant to be comprehensive. The
application and impact of laws can vary widely based on the specific facts involved. Before taking any action, please ensure that you obtain advice
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assembled on 03 July 2015 and were based on the law enforceable and information available at that time.
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