平成26年度 被災地企業のシーズ支援プログラム(福島再生可能エネルギー研究開発拠点機能強化事業) 細線精密制御による極超薄シリコン基板の作製技術 の開発評価 幸田敬太郎1・白木太一郎1 ・笹澤純人1 ・本名秀美2 ・近藤道雄2 1 2 日特エンジニアリング株式会社 独立行政法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 産総研による技術シーズの評価方法 日特エンジニアリング(株)が保有する技術シーズ 芯線径80µm以下のダイアモンドワイヤーで切 世界シェアNo.1のコイル巻線機では、独自のテンショ 断した厚さ80μ m以下のシリコンウエーハの品 ンコントロール技術で細線の断線を抑止した高度な 質を、産総研の有するレーザー顕微鏡やライフ 安定動作が可能であり、これを極細のワイヤーソー タイム測定装置を用いて評価する。 に応用して、極薄の太陽電池用シリコンウエーハを スライス加工する。 スライス条件と表面粗さやダメージ層との関係 共同研究 を明らかにする。 技術シーズ 高度のテンション制御技術で、極細のワイヤーソーを用いた シリコン基板のスライスが可能に。 → カーフロス(切りしろ)、ダメージ層とシリコン基板厚の低 減で太陽電池材料コストの大幅な削減が期待される! 技術的支援 細線精密制御によるシリコンウエーハのスライス技術 • • • • 極細のダイヤモンドワイヤーを用いて、シリコン結晶を薄く切り出すことで、太陽電池の材料コストを1/2以下に削減。 しかし、ワイヤーが細くウエーハが薄いとワイヤー走行の不安定性から断線や破損が生じやすく、加工歩留りが低下するおそれがある。 日特エンジニアリングが有するテンション値自動フィードバック方式による細線精密制御技術で、極細のワイヤーでも安定走行が可能に。 スライス条件の最適化で、スループットを維持しつつ、ワイヤーの長寿命化およびダメージ層厚の低減を実現へ。 シリコン インゴット インゴット送り速度0.01mm/s(左)と0.005mm/s(右) でスライスした80μm厚ウエーハの表面レーザー顕微鏡写真 結論 1.2 企業のシーズと産総研の評価結果: 5µm 細線精密制御による極薄型シリコンウエーハのスライス加工。 厚さ80μmに切り出したウエーハの表面粗さ、ダメージ層厚を評価。 5µm 研究成果(何が分かったか): ワイヤー走行速度最大2000m/分、テンション精度0.3gのワイヤーソーを試作。 芯線径80μmのダイヤモンドワイヤーで、厚さ80μmのウエーハ切出しに成功。 ワーク送り速度を0.01mm/sから0.005mm/sに下げることで、ウエーハ表面のスク ラッチ痕が減少し、ライフタイムで評価したダメージ層の推定厚は10μm以上から約 送り速度0.01mm/s(上)と 0.005mm/s(下)でスライ スしたウエーハの表面粗さ分 布(ハイパス処理後) キ ャ リ 1 ア 寿 0.8 命 ( 0.6 最 大 0.4 値 で 正 0.2 規 化 0 ) 送り速度(両面0.01mm/s) 送り速度(片面0.005mm/s) 0 2 4 6 8 10 12 片面エッチング深さ (μm) スライス後にウエーハ表面を化学エッチング した際のキャリア寿命の変化(相対値) 5μmに低減した。 ワイヤーソーの細線精密制御技術で極薄型のシリコンウエーハをスライス加工でき、 加工条件によってダメージ層低減の可能性が示された。 今後の展開(予想含む): 芯線径50μmのワイヤーを用いた厚さ50μm以下のシリコンウエーハ切出し。 スループット、材料コストを考慮したスライス加工条件の最適化。 加工事例の蓄積と装置改良によるワイヤーソーマシンの商品化。 マルチワイヤーソー、156mm角太陽電池用ウエーハへの技術展開。 備考 本研究は、独立行政法人産業技術総合研究所の平成26年度 被災地企業のシーズ支援プ ログラム事業にて、 課題名「細線精密制御による極超薄シリコン基板の作製技術の開発評 価」として採択されたもので、産業技術総合研究所より技術的協力・支援を受けたものです。
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