クオリティ・インディケーター(QI) 教育について 全国病院管理学会 診療放射線委員会 委員 植松正裕 所属:社会福祉法人 江戸川病院 放射線治療センター 指標 診療放射線技師の扱う学術的領域は、医学と理工学などの学際的領域とし て発展し、専門領域としての体系化がなされてきました。 その教育は学校教育法、診療放射線技師学校養成所指定規則、大学設置基 準といった教育制度によって構築されています。 医師の様に研修期間を持たない診療放射線技師は、各病院での教育に関す る取り組みが重要であると考えます。 クオリティ・インディケーター(QI) として客観的に評価することが可 能である ・在籍している技師の教育歴 ・専門認定資格の人数 ・各学会、研究会等の論文投稿、発表件数、参加率 ・院内外の研修実施率 を指標としました。 ・技師の教育歴 医療の高度化、チーム医療の推進など、医療を取り巻く状況の変化 により、放射線技師に求められる能力・需要が増大している。放射 線技師が役割を果たすために必要な知識・技術は多岐にわたり、そ の基礎となる放射線技師教育のあり方は重要である。 データの指標 放射線技師職員(正職員)における取得学位(博士、修士、学士、短 大卒、専門学校卒)の構成割合 サンプル施設(7病院) 内訳 基幹病院(400床以上)4病院 中規模病院(100~300床) 3病院 合計 取得学位 人数 割合 博士 修士 1 0 .5 % 学士 短大卒 専門校卒 3 81 21 107 1 .4 % 3 8 .0 % 9 .9 % 5 0 .2 % 構成人数 計 (人 数 ) 213 1 0 0 .0 % 取得学位 120 100 博士 80 修士 学士 60 人数 40 短大卒 専門校卒 20 0 博士 修士 学士 短大卒 専門校卒 ・専門、認定資格 業務に関して十分な知識・技能を持ち合わせていることの客観的な指標 となる。これら認定資格は、所持している職員が在籍している医療機関 は高度な医療を提供できる体制があると解釈できる。 *これらの認定資格の一部には、診療放射線技師免許所持者でなくても取得できる資格も 含まれている。具体的には、臨床検査技師と業務内容が重複するMRI(磁気共鳴専門技術 者)や超音波検査(超音波検査士)、日本では主に放射線治療の業務領域に限定されてい る医学物理士や放射線治療品質管理士、さらには医療情報技師、放射線取扱主任者が該当 する。これらの認定資格で医療機関に対して、施設認定等目に見える明確な形で資格の必 要性を示されているものは、放射線技師でなくても評価する。 データの指標 専門、認定資格保有者の人数 学会等の施設認定で必要になる資格 医学物理士 日本医学放射線学会認定 研修施設で登録が必要 放射線治療品質管理士 日本医学放射線学会認定 研修施設で登録が必要 放射線取扱主任者第1種 放射線障害防止法で選任が必要 日本診療放射線技師会の施設認定 日本放射線技師会が認定 日本診療放射線技師会認定 する放射線管理士および で登録が必要 放射線機器管理士 医療被ばく低減施設 複数の学会による認定資格 認定資格名 人数 検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師(マンモグラフィ検診精度管理中央委員会) 名 救急撮影認定技師(日本救急撮影技師認定機構) 名 血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師(日本血管撮影・インターベンション 専門診療放射線技師認定機構 ) 名 血管診療技師(CVT)(血管診療技師認定機構) 名 胃がん検診専門技師(日本消化器がん検診学会 ) 名 X線CT認定技師(日本X線CT専門技師認定機構) 名 肺がんCT検診認定技師(肺がんCT検診認定機構) 名 磁気共鳴専門技術者(日本磁気共鳴専門技術者認定機構) 名 超音波検査士(日本超音波医学会・日本超音波検査学会) 名 核医学専門技師(日本核医学専門技師認定機構) 名 放射線治療専門放射線技師(日本放射線治療専門放射線技師認定機構) 名 医療情報技師(日本医療情報学会) 名 サンプル施設(7病院) 内訳 基幹病院(400床以上)4病院 中規模病院(100~300床) 3病院 資格名 人数 5 2 13 15 医学物理士 放射線治療品質管理士 放 射 線 取 扱 主 任 者 第 1種 日 本 放 射 線 技 師 会 が認 定 す る放 射 線 管 理 士 、放 射 線 機 器 管 理 士 検 診 マ ン モ グラフ ィ 撮 影 認 定 診 療 放 射 線 技 師 ( マ ン モ グラフ ィ 検 診 精 度 管 理 中 央委員会) 救 急 撮 影 認 定 技 師 (日 本 救 急 撮 影 技 師 認 定 機 構 ) 血 管 撮 影 ・ イ ン タ ー ベ ン シ ョン 専 門 診 療 放 射 線 技 師 (日 本 血 管 撮 影 ・ イ ン タ ー ベ ン シ ョン 専 門 診 療 放 射 線 技 師 認 定 機 構 ) 血 管 診 療 技 師 ( CV T) (血 管 診 療 技 師 認 定 機 構 ) X 線 CT認 定 技 師 ( 日 本 X 線 CT専 門 技 師 認 定 機 構 ) 肺 が ん CT検 診 認 定 技 師 ( 肺 が ん CT検 診 認 定 機 構 ) 磁 気 共 鳴 専 門 技 術 者 (日 本 磁 気 共 鳴 専 門 技 術 者 認 定 機 構 ) 超 音 波 検 査 士 (日 本 超 音 波 医 学 会 ・日 本 超 音 波 検 査 学 会 ) 核 医 学 専 門 技 師 (日 本 核 医学 専 門 技 師 認 定 機 構 ) 放 射 線 治 療 専 門 放 射 線 技 師 (日 本 放 射線 治 療 専 門 放 射 線 技 師 認 定 機 構 ) 合計 技師数 技師数(重複分を除く) 213 95 46.95% 44.60% 25 11 1 0 8 9 3 0 4 4 100 ・各学会、研究会等の論文投稿、発表件数、参加率 学会で研究発表し, 技術学会雑誌等に論文を投稿することが技師のスキル アップに繋がる。 データの指標 ●主な学会の参加率 年間参加人数/総技師人数 ●主な学会以外の参加率 年間参加人数/総技師人数 ●学会発表数・率 年間発表演題数/総技師人数 ●論文数・率(依頼原稿、依頼論文、投稿論文等を含む) 年間発表論文数/総技師人数 ●勉強会、セミナー等参加率 年間参加人数/総技師人数 ●主な学会の参加率 年間参加人数/総技師人数 主要な学会(国内) •日本放射線技術学会 •日本医学放射線学会 •日本医学物理学会 •日本放射線腫瘍学会 •日本核医学会 •日本診療放射線技師学術大会 主要な学会(国外) •RSNA •ASTRO •その他、放射線分野で世界的に認められた学会 ●主な学会以外の参加率 年間参加人数/総技師人数 国内外の各分野の医学学会に加え、放射線に関する環境、影響等の学 会も含む。 ●学会発表数・率 年間発表演題数/総技師人数 学術大会として開催され、応募期間がきめられており、演題審査がある ものに限る。 ●論文数・率(依頼原稿、依頼論文、投稿論文等を含む) 年間発表論文数/総技師人数 正式な研究論文については、大学、研究機関でないと難しいため、医 学雑誌等から依頼された原稿、論文なども含める。 ●勉強会、セミナー等平均参加回数 年間参加回数/総技師人数 自施設の職員のみで行なっている場合は含まないが、他施設も含めた 勉強会、セミナー等は自施設で行なった場合でも含める。 サンプル施設(7病院) 内訳 基幹病院(400床以上)4病院 中規模病院(100~300床) 3病院 70.00% 主な学会の参加率 60.00% 学会発表数・率 50.00% 論文投稿率 40.00% 30.00% 20.00% 10.00% 0.00% A B C D E F G ・各研修の実施 院内外の研修を行なうことは、在籍技師のスキルレベルの維持向上のた めに必要であると共に、病院全体として職員の質の向上の取り組み姿勢 の評価にもつながる。 データの指標 各研修の有無と年間頻度 ●院外研修 実施の有無 ●院内研修 実施の有無 ●新人研修 実施の有無 ●役職者研修 実施の有無 サンプル施設(7病院) 内訳 基幹病院(400床以上)4病院 A 中規模病院(100~300床) 3病院 院外研修 院内研修 新人研修 役職者研修 5 20 1 1 B 92 23 18 6 C 1 5 1 1 D 5 11 1 1 E 1 5 1 1 F 0 1 2 0 G 3 4 1 1 まとめ 診療放射線技師が所属する部署から、技師の教育に関する情報を公開する ことで、患者側からは各検査や治療を担当する放射線技師の教育背景を知 ることにより信頼性や安心感が増す。 また、どの分野に力を注いでいるかも分かり病院選択の一助にもなる。 技師側からは、他施設と比べどのような点が優れているか、またどの点で 劣っているかを客観的に知ることができる。 学歴等で技師のレベルを知ることは到底できないが、更に高度化していく 放射線分野の技術に対し教育の面からの底上げは必要であり、将来にわた り診療放射線技師の地位の向上と確保に重要である。
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