スーパー総合周産期センター

2010年7月10日
日本周産期新生児医学会
周産期専門医制度暫定指導医
A講習会
周産期専門医に必要な医療連携
北里大学病院周産母子センター長
海野信也
Website: 「周産期医療の広場」:http://shusanki.org/
周産期専門医に必要な医療連携
テーマの変遷
• 母体搬送に関するトリアージ
– 搬送先決定方法 超緊急時にどうするか
• 「たらいまわし」報道への対応
– 母体搬送先照会方法
• 周産期救急情報センター機能
• 搬送コーディネータ
• 母体救命救急対応システムの整備
• 搬送受入の促進策
• 広域搬送のあり方
• NICUの受入能力増強策
施設間連携
母体搬送受入先の決定方法
• 緊急の程度によるトリアージ(産科が行う)
– トリアージ:「緊急度や重症度」を判定して「治療や搬
送の優先順位を決める」
– 母体搬送か新生児搬送か
• 最緊急:即時に受け入れを決める
– 新生児科には事後連絡
• 緊急:地域内では必ず受け入れる
– 新生児科と協議する
• 準緊急:受入先を広範囲にさがす
– 時間的余裕がある症例は、現場の当直医がさがす必
要があるのだろうか?
すべてを周産期センターで
さがすべきなのだろうか?
周産期専門医に必要な医療連携
テーマの変遷
• 母体搬送に関するトリアージ
– 搬送先決定方法 超緊急時にどうするか
• 「たらいまわし」報道への対応
– 母体搬送先照会方法
• 周産期救急情報センター機能
• 搬送コーディネータ
• 母体救命救急対応システムの整備
• 搬送受入の促進策
• 広域搬送のあり方
• NICUの受入能力増強策
母体搬送受入先の決定方法
県内施
設への
照会の
担当
(都道府)
県内で
決まらな
い場合
搬送元施設
基幹病院
両者で同時
並行
救急医療情
報センター
15
28
4
1
県内施設
が必ず受
け入れる
県外施設
を探す
25
22
県外施設照会担当
搬送元
搬送元以外
同時
並行
3
17
2
全国周産期医療(MFICU)連絡協議会 2007年調査
母体搬送先照会方法をめぐる諸問題
• 母体搬送受入先の決定方法
– 地域内の搬送先の決定方法
•
•
•
•
•
神奈川
大阪
千葉
札幌市
東京都
県救急医療中央情報センター
医師による搬送コーディネータ
事務職員による搬送コーディネータ
助産師による搬送コーディネータ
助産師による搬送コーディネータ
– 都道府県の境界をこえた広域搬送への対応
• 搬送先の決定方法
– 近畿ブロック周産期医療広域連携
• 戻り搬送の問題
• 母体救命救急症例への対応
神奈川県救急医療情報センターの
母体搬送 斡旋先紹介事業
• 神奈川県救急医療中央情報センター
– 神奈川県医師会が運営主体
– 全県域を対象として、地域情報センター、医療機関及び消防本
部からの問い合わせ照会に対し、入院、手術等を要するいわゆ
る二次救急以上の患者の収容先医療機関の検索案内を実施(
25年間の運営実績)
– 年間2000件以上の依頼に対応している
• 基幹病院で受入できない周産期救急患者の県内医療機
関を対象とした受入可能性に関する情報収集および紹
介業務を行う
聖マリアンナ医科大学病院
日本医科大学武蔵小杉病院
川崎市立川崎病院
北里大学病院
社会保険相模野病院
大和市立病院
小田原市立病院
県立足柄上病院
東海大学医学部附属病院
茅ヶ崎市立病院
平塚市民病院
秦野赤十字病院
平塚共済病院
総合病院横須賀共済病院
横須賀市立市民病院
横浜市立うわまち病院
M Yamanaka
県立こども医療センター
聖マリ医大横浜市西部病院
横浜市大市民総合医療センター
済生会横浜市東部病院
昭和大学藤が丘病院
昭和大学横浜市北部病院
藤沢市民病院
横浜市立市民病院
横浜市立大学医学部附属病院
横浜労災病院
けいゆう病院
国際親善病院
国立病院横浜医療センター
済生会横浜市南部病院
みなと赤十字病院
横浜南共済病院
利点と欠点
「基幹病院」
自院収容不可
「基幹病院」の医師が
収容先の検索・紹介を行う
○ 発生元医療機関は,検索に手を取られず
目の前の患者さんの治療に専念できる.
×「基幹病院」の医師は,長時間にわたって
検索のための電話対応に拘束される.
周産期情勢の悪化とともに,「基幹病院」医師の
本来業務への影響,疲労が著明になってきた.
改善後のしくみ(07年4月試行,11月本格稼働)
産科救急
症例発生
「基幹病院」
自院収容不可
緊急度:高
緊急度:低
胎盤早期剥離,母体救急など
切迫早産など
「基幹病院」医師が
収容先を独自検索し
紹介を行う.
(県内・県外とも)
神奈川県救急医療中央情報センター(32施
設を対象)検索・紹介を依頼(県内のみ)
県内満床で検索失敗
「基幹病院」医師が県外を検索・紹介
神奈川県の母体搬送
依頼数の推移
1125件
999件
569件
神奈川県の母体搬送
県外搬送率の年次推移
12%
救急医療中央情報センター
による斡旋開始
10.20%
10%
8.48%
8%
8.01%
7.60%
5.96%
6%
4%
2.64%
2%
0%
2004
2005
2006
2007
2008
2009上半期
改善されたこと
• 情報が一元化されたことで,より新しい病床
状況の把握が可能となった。
– 県内の状況が早くにわかるため
• 県外施設の検索に即刻取り掛かれる。
• 多少の無理をしても収容するかどうかの判断が早くに
できる。
• 事務的に処理を行うため,先入観なく受け入
れ施設を検索して貰える。
• 周産期救急に関わるデータの蓄積がリアルタ
イムにかつ正確にできる。
周産期専門医に必要な医療連携
テーマの変遷
• 母体搬送に関するトリアージ
– 搬送先決定方法 超緊急時にどうするか
• 「たらいまわし」報道への対応
– 母体搬送先照会方法
• 周産期救急情報センター機能
• 搬送コーディネータ
• 母体救命救急対応システムの整備
• 搬送受入の促進策
• 広域搬送のあり方
• NICUの受入能力増強策
東京都母体救命搬送システム
• 緊急に母体救命処置が必要な妊産褥婦(対象患者)
について、救急医療と周産期医療が連携して、迅速
に受入先を確保
• 対象患者が、近くの救急医療機関で受け入れられな
かった場合に必ず受け入れる「母体救命対応総合周
産期母子医療センター」を3か所確保
• 総合周産期センターと救命救急センターの緊密な連
携のもとに対象患者を必ず受け入れ、診断・処置等
を行う。
搬送先選定に要する時間を極力短縮し、
迅速に母体の救命処置を行う体制を整備
東京都母体救命搬送システムのイメージ
母体救命
と判断
直近の
救急医療機関
救急
部門
連携
周産期
部門
産科施設
①要請
搬送途上も
あたりながら
②119番
④救急車搬送
東京消防庁指令室等
直近で受けられない場合
必ず受入れる
③要請
スーパー総合周産期センター
救命救急センター
総合周産期センター
連携
東京都母体救命搬送システムのイメージ
母体救命
傷病妊婦
①119番
搬送途
上もあた
りながら
②要請
救急隊
救急
部門
各消防本部指令室
④救急車搬送
直近の救急医療機関
連携
③要請
スーパー総合周産期センター
救命救急センター
連携
総合周産期センター
周産期
部門
母体救命搬送システム対象症例表
• 以下の疾患等の妊産褥婦で、緊急に母体救命処置が必要
なもの
1.妊産褥婦の救急疾患合併
①脳血管障害 ②急性心疾患 ③呼吸不全 ④重症感染
症,敗血症性ショック ⑤重症外傷,熱傷 ⑥多臓器機
能障害・不全
2.産科救急疾患(重症)
①羊水塞栓症 ②子癇,妊娠高血圧症候群重症型
③HELLP症候群,急性妊娠脂肪肝 ④出血性ショック
⑤産科DIC
3.重篤な症状(診断未確定)
①意識障害 ②痙攣発作 ③激しい頭痛 ④激しい胸痛
⑤激しい腹痛 ⑥原因不明のバイタルサイン異常
以上を呈し重篤な疾患が疑われる症例
4.その他1~3に準ずるもので緊急に母体救命処置必要
なもの
東京都母体救命搬送システム
2009年3月25日~2010年2月28日 46件
東京都母体救命搬送システム
2009年3月25日~2010年2月28日 46件
12
重篤(死亡)
重篤
重症
中等症
10
8
6
4
救急疾患合併症
産科救急疾患
重篤な症状
切迫早産・流産
激しい痛み
痙攣発作
意識障害
産科DIC
出血性ショック
子癇
多臓器障害
呼吸不全
急性心疾患
0
脳血管障害
2
東京都母体救命搬送システム
2009年3月25日~2010年2月28日 46件
病院選定時間
東京都母体救命搬送システム
2009年3月25日~2010年2月28日 46件
入院まで(覚知~病着)
平成20年11月18日
地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築
に関する提言
日本産科婦人科学会・日本救急医学会
• 本提言は、国、都道府県、地方自治体、医療機関、現場
の医療スタッフ、一般の住民が、それぞれの立場でこの
問題を考えていただくための材料を提供するもの
• 過酷な勤務の現状を放置したままで、確実な救急対応の
みを求めれば、医療スタッフはさらに疲弊し、現場からの
急速な離脱が進行することになる。現状が既に到底持続
可能な状態にないことを十分に認識した上で、施策が検
討される必要がある。
• 母体救命救急医療は周産期医療と救急医療の境界に位
置している。縦割りの弊害は行政・学会・病院の各段階
でこの問題に影響を与えている。その弊害を各段階で取
り除き、効率のよい合理的なシステムの構築を行っていく
必要がある。
平成20年11月18日
地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築
に関する提言 検討すべき課題
• 国及び都道府県における母体救急担当部署と責任体制
の明確化
• 救急医療体制整備の検討
• 地域完結の原則と広域対応:
• 都道府県における周産期医療関係者と救急医療関係者
の交流の促進
• 地域における周産期医療施設と救命救急センターの配
置、連携に関する基礎調査
• 周産期医療関係者と救急医療関係者の症例検討の実施
• 施設内連携を深める方策についての検討
• 救急医療の基盤を強化するための施策の遂行
• 都道府県における母体救急連携システムの立案→構築
周産期専門医に必要な医療連携
テーマの変遷
• 母体搬送に関するトリアージ
– 搬送先決定方法 超緊急時にどうするか
• 「たらいまわし」報道への対応
– 母体搬送先照会方法
• 周産期救急情報センター機能
• 搬送コーディネータ
• 母体救命救急対応システムの整備
• 搬送受入の促進策
• 広域搬送のあり方
• NICUの受入能力増強策
NICU 受入困難の問題
総合周産期母子医療センターで
搬送受入ができなかった理由
頻度
新生児搬送が受け入れられ
なかった症例がある
母体搬送が受け入れられなかった症
例がある
25/41 = 61%
31/42 = 74%
理由
(複数
回答)
NICU満
床
診察可
能医師
不在
その他
セン
ター数
18
2
4
22
割合
(%)
90
10
20
88
診察可
能医師
不在
その他
12
4
11
48
16
44
NICU満 MFICU
床
満床
厚生労働省母子保健課 周産期医療ネットワーク及び
NICUの後方支援に関する実態調査(2007年1月)
母体搬送の受入促進策
• 入口の問題
– 周産期医療システムの問題
• 地域内の検索方法・受入ルール
• 広域搬送の問題
– 周産期救急情報システムの問題
• 出口の問題
– 新生児側の問題
• NICU絶対数不足
• 後方病床の整備
1000出生当たり2床から3床へ
母体搬送受入の県内完結の有無
県内施設が
受け入れる
限られた地域のみ
県外搬送を行う
県外搬送を検討
全国周産期医療(MFICU)連絡協議会 2007年調査
周産期センター間の連携
県境をどうまたぐか 提案
• 広域搬送症例を分娩不可避の症例のみ、最小限に絞る
– 県の周産期医療協議会等で決めておく
– 原則は県内受入・広域搬送は緊急避難
– 最緊急・緊急のせっぱ詰まった搬送依頼は他県には行わない
• 都道府県間で、広域搬送の基本的ルールを定める
– 原則として総合周産期母子医療センター間でのみ行う
– 搬送もと施設は個別交渉しない
– 搬送と(生まれない場合の母体、生まれた場合の新生児の)戻り搬送を、送った県
の責任で実施することを明記する
– 送った県は、受け入れ可能になり次第、戻り搬送を行う(県が経費負担する)
• 他県からの受入状況・他県への送出状況を各県で集計し、システムの再調整
を行う
• 現実に相互搬送の多い都道府県による広域周産期医療システムを整備する
– 広域搬送のための空床情報提供システム
– 広域搬送を可能にするシステム
• 救急隊の県外搬送への対応
• ヘリコプター搬送体制の整備
周産期搬送ルール化
都と3県 新年度検討 病院選定など連携
東京新聞2010年1月11日 朝刊
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妊婦や新生児ら周産期医療の救急搬送などをよりスムーズにするため、東
京都は新年度、隣接する神奈川、千葉、埼玉県に呼び掛け、都県境を越えた
相互搬送のルールづくりの検討を始める。搬送先の病院を選ぶ時間の短縮など
が狙いで、今夏までに一定の方向を取りまとめたい考えだ。
現在、かかりつけ医からの転院や、一般通報の患者搬送は各都県域内で行うことが
基本。都県境を越えた周産期搬送は、医療機関が個別に受け入れ先を探している。
ルール化では、たとえば搬送の依頼は各都県のコーディネーターが一元的に
受け付け、病状の軽重なども考慮した上で運び先を選ぶことを想定。受け入れ
医療機関が特定の病院に偏ることを解消したり、搬送時間を短縮したりすることを目指
す。
ただ新生児集中治療室(NICU)などの医療態勢は、都内が他県よりも進んでいるこ
とから、相互搬送といっても都内への搬送が過度に増える可能性もあるため、当面は、
やむを得ない場合だけ、広域搬送する仕組みについて検討する方向だ。
都はこの検討に合わせ、都内の周産期母子医療センターなど約四十医療機関を対
象に、都外からの受け入れや都外への搬送実態を調査する。
搬送受入促進策
• 緊急症例対応のルール化
– 地域における母体救命救急症例に対する、救命救急セ
ンター等と一体となった体制の整備
– 東京都 「スーパー」周産期センター
• 広域搬送のシステム化・効率化
• 新生児受入能力増強
– NICUの増床
– 超重症児に対応できる小児病床の整備(小児HCU等)
• 看護配置・加算
• レスパイト
– 重症心身障害児施設の整備
周産期医療体制整備指針の改定
• 2009年3月:「周産期医療と救急医療の確
保と連携に関する懇談会」報告書
• 2009年8月:厚労省「周産期医療体制整備
指針」改定案を都道府県に対して発出
• 2010年1月:厚労省「周産期医療体制整備
指針改定」通知を都道府県に対して発出
• 2010年度中に、都道府県で、中長期的な
視点から『周産期医療体制整備計画』を策
定する
整備計画に盛り込むべき事項
•
周産期母子医療センター等の機能
–
–
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総合、地域、その他の周産期医療関連施設の診療機
能、病床数、確保すべき医療従事者
特に、母体救命症例への対応
NICU病床の整備:1000出生あたり3床
周産期搬送体制:県域を越えた搬送体制の検討
周産期医療情報センターの機能及び体制
搬送コーディネーターの機能及び体制
周産期関連施設等の関係者に対する研修体制
その他体制整備に必要な事項
–
NICU長期入院児に対する退院支援
周産期医療体制整備における
医療連携上の課題
•
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周産期救急医療情報センターの整備
搬送コーディネーターの設置
広域搬送システムの整備
母体救命救急症例への体制整備