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杏林製薬新研究開発拠点における再生可能エネルギーの複数建物間熱融通実証事業 [H26年度成果概要]
杏林製薬株式会社/鹿島建設株式会社
【目的】 再生可能エネルギー(地中熱エネルギー)を複数
建物間で熱融通することによるエネルギー利用効率の向上
を実証すること。
【内容】 隣接する2つの建物において、地中熱および未利
用エネルギーであるターボ冷凍機排熱等からなる熱源と熱
利用機器(空調機および給湯器)をひとつの熱媒配管ルー
プを介して熱融通することによって、エネルギー利用効率を
向上させる。
実施地域の概要
【実施場所】 栃木県下都賀郡野木1837-1
JR東北本線の野木駅から約2kmの距離に位置する杏林製
薬㈱開発研究所の敷地内に、再生可能エネルギーの高度
熱利用を行う研究開発拠点を整備する。
取り組みの背景
写真等
地図等
これまでの再生可能エネルギー利用
従来の再生可能エネルギー利用は、個別建物での単一熱
源の利用に留まり、熱利用効率の向上に制限があった(地
中熱単独では熱利用量に限界があり、大きな熱利用量を
継続することが難しい。建物単独では熱用途が限られる)。
位置図
現地写真
実施体制
再生可能エネルギー熱利用の高効率化に向けた取り組み
再生可能エネルギーを含む複数の熱源を、複数の建物間
で一つの水ループ(熱媒)を用いて接続し、季節毎にベスト
ミックスし熱融通させることで、熱利用効率の向上が期待で
きる。地中熱の熱利用量には限界があるため、複数熱源で
補い合うことで継続的な利用が期待できる。また、地中熱の
蓄熱体としての機能により、時間差のある冷房・給湯負荷
の熱回収、システムを安定化させるバッファとしての効果が
期待できる。
杏林製薬 …実証設備の保有、運転関管理、データ取得
鹿島建設 …実証設備の計画・設計・施工、運転データ整理・分析、調整
杏林製薬㈱
鹿島建設㈱
環境本部
(統括・連絡窓口)
研究開発本部
(設備の保有管理)
開発研究所
(運転管理・データ取得)
エンジニアリング本部
/建築設計本部
(計画・設計)
関東支店
(施工)
技術研究所
(データ整理・分析)
1
設備の概要
技術の特徴
地中熱交換器(年間を通して利用)
複数建物における再生可能エネルギーの熱融通
 基礎杭利用式地中熱交換器 :
杭1本あたりPE管φ25mm×11.2m×4対
 配管総延長 : 7,168m
 季節や負荷条件に応じて適切に利用する。
 再生可能エネルギー熱源としてだけでなく、蓄熱体として
も活用する。
共有棟
隣接する2つの建物(共
有棟と研究棟)において、
地中熱や未利用エネル
ギーであるターボ冷凍
機排熱等からなる複数
の熱源と複数の熱利用
機器(空調、給湯)を1つの水ループ(熱媒)に接続し、
熱融通することによって熱利用効率を向上させる。
■冬季代表時刻(1月)の運転パターンと熱需要パターン
昼間
0kW
61kW
240kW
162kW
冷却塔
地中熱コイル
ターボ排熱
HEX
ボイラ
HEX
12.2℃
12.6℃
14.0℃
12.2℃
12.2℃
温熱側:暖房(共有棟)
冷熱側:ターボ冷凍機冷熱(新研究棟)
で相殺
温熱側:暖房(共有棟)、給湯(新研究棟)
冷熱側:ターボ冷凍機冷熱(新研究棟)
で相殺
杭に配管を取り付けた状態(杭頭部)
15.0℃
600
給湯HP
0kW
夜間
冷房HP
0kW
暖房HP
-463kW
0kW
65kW
0kW
0kW
冷却塔
地中熱コイル
ターボ排熱
HEX
ボイラ
HEX
8.7℃
13.7℃
13.7℃
188L/min
冷房HP
給湯HP
200
0
-200
-400
13.7℃
13.7℃
8.7℃
400
熱需要 [kW]
2364L/min
0kW
-600
-800
0:00
-65kW
暖房HP
0kW
6:00
冷房(共有棟)
12:00
暖房(共有棟)
給湯(新研究棟)
18:00
0:00
ターボ冷凍機冷熱(新研究棟)
■夏季代表時刻(8月)の運転パターンと熱需要パターン
-196kW
-122kW
0kW
0kW
冷却塔
地中熱コイル
ターボ排熱
HEX
ボイラ
HEX
27.3℃
26.7℃
26.7℃
28.7℃
28.3℃
26.7℃
2765L/min
昼夜で
蓄熱効果あり
夜間
0kW
給湯HP
-64kW
61kW
18.0℃
冷房HP
381kW
暖房HP
0kW
0kW
地中熱コイル
冷却塔
0kW
ターボ排熱
HEX
23.0℃
ボイラ
HEX
23.0℃
23.0℃
18.0℃
※中間期~夏期は温
熱需要が小さいため、
新研究棟のターボ排熱
は利用しない。
温熱側:給湯(新研究棟)
冷熱側:冷房(共有棟)
で相殺
500
※冷房側、給湯側それぞれで
64kWずつ削減されるため2を掛け
ている。
400
熱回収効果
64kW×2=128kW
熱需要 [kW]
昼間
200
100
0
-100
23.0℃
給湯HP
-61kW
冷房HP
0kW
0:00
6:00
冷房(共有棟)
暖房HP
0kW
ターボ冷凍機排熱(冬期~中間期に利用)
 従来捨てている熱を給湯と暖房の熱源として活用する。
 地中熱の負担を減らすことで、地中熱の継続的な利用を
可能とする。
冷却塔(中間期~夏期に利用)
 中間期冷房運転の高効率化(地中熱より有利な場合)
 夏期のサブ放熱源
300
-200
173L/min
基礎杭と地中熱配管の敷設状況
12:00
暖房(共有棟)
18:00
0:00
その他
 冷房排熱と暖房・給湯排熱の熱回収効果
 ボイラによる冬期集熱源のバックアップ
給湯(新研究棟)
2
工夫点
複数熱源の利用による省エネルギー(21.7%)
複数の熱源を利用し、熱の利用状況に応じた最適な熱源を選択するこ
とでエネルギー利用効率を高める。
地中熱利用による省エネルギー(8.5%)
地中熱の蓄熱効果を利用することでエネルギー利用効率を高める。例え
ば、日中の冷房排熱を地中に蓄熱し、夜間給湯の熱源として利用する。
■申請システム改②(給湯HPが空気熱源)
地中熱コイル
■申請システム
地中熱コイル
冷却塔
冷房HP
ターボ排熱
HEX
暖房HP
給湯HP
冷却塔
ボイラ
ターボ排熱
HEX
ポンプ
ボイラ
HEX
Case2 317 589
610
給湯HP
ボイラ
HEX
冷房HP
冷房HP
Case0
23
Case0Case3 312
610 589 409 259
87
1679GJ
529
8.5%減
1,190
冷房HP
空気熱源
冷却塔
1
暖房HP
Case3
暖房HP
給湯HP
冷却塔
ボイラ
ポンプ
1824GJ
529
21.7%減
65
529 250 1,190
73
1
23
0
500 1000 1500 2000 2500
589
409 [GJ] 87 259
1次エネルギー消費量
312
給湯HP
暖房HP
0
■申請システム改①(地中熱がない場合) 312
Case3
冷却塔
ターボ排熱
HEX
■オール空気熱源システム
23
500 1000 1500 2000 2500
589
409 [GJ] 87 259
1次エネルギー消費量
冷房HP
ボイラ
500
1500
24 1000
HEX 0
[GJ]
Case4 341 590 4061次エネルギー消費量
260
216
2000
暖房HP
0
給湯HP
500
Case0
610
1000
1500
2000
2500
2331GJ
1次エネルギー消費量
[GJ]
1,190
529 1
2500
1836GJ
すべて空気熱源ヒートポンプ
0
500 1000 1500 2000 2500
1次エネルギー消費量 [GJ]
取り組みの効果
冷房HP
0
給湯HP
暖房HP
500 1000 1500 2000 2500
1次エネルギー消費量 [GJ]
システム全体としての省エネルギー(28.0%)
複数建物間での熱融通による省エネルギー(7.9%)
再生可能エネルギーである地中熱を含む複数熱源から最適熱源を選
択し、かつ複数建物間で複合的に熱融通(熱回収)することでさらなる
高効率化を図った水ループシステムを実現する。
複数建物間で熱融通することでエネルギー利用効率を高める。例えば、
共有棟の冷房と研究棟の給湯の間で熱回収する。
■申請システム
地中熱コイル
冷却塔
冷房HP
ターボ排熱
HEX
冷房HP
暖房HP
給湯HP
冷却塔
ボイラ
■オール空気熱源システム
ポンプ
ボイラ
HEX
冷房HP
23
Case0Case3 312
610 589 409 259
87
1679GJ
529
7.9%減
1,190
0
■申請システム改②(給湯HPが空気熱源)
Case3
地中熱コイル
ターボ排熱
HEX
ボイラ
HEX
312
500 1000 1500 2000 2500
Case2 317 589
給湯HP
冷房HP
冷却塔
暖房HP
空気熱源
1500
2000
610
610
0
■申請システム
589
409 [GJ] 87 259
1次エネルギー消費量
651000
給湯HP
冷却塔
ボイラ
ポンプ
1,190
529
1,1901
2331GJ529
1
すべて空気熱源ヒートポンプ
23
500
暖房HP
給湯HP
1
冷却塔
0
暖房HP
Case0Case0
給湯HP
暖房HP
冷房HP
地中熱コイル
2500
Case3
ターボ排熱
HEX
1824GJ
[GJ]
5291次エネルギー消費量
250
73
312
23
500 1000 1500 2000 2500
589
409 [GJ] 87 259
1次エネルギー消費量
ボイラ
500
1500
23 1000
HEX 0
[GJ]
Case3 312 589 409 1次エネルギー消費量
259
87
2000
1679GJ
28.0%減
2500
冷房HP
0
500 1000 1500 2000 2500
1次エネルギー消費量 [GJ]
0
給湯HP
暖房HP
500 1000 1500 2000 2500
1次エネルギー消費量 [GJ]
3
課 題
想定と実際の熱負荷のギャップ
複数の熱源と複数の熱利用機器を1つの水ループで繋い
だ高度なシステムである一方、負荷や地中熱などの再生可
能エネルギーの熱量が想定と実際で異なった場合、計画し
ていた省エネ面での最適制御が必ずしも最適とならない可
能性も考えられる。
今後の展開等
世界的な課題である地球温暖化防止対策として有効な本
システムの普及拡大に努める。
ユーザーとしての取り組み(杏林製薬)
負荷や熱源容量の実測データを元に、季節・時間帯別の運
転効率を分析し、運転制御方法の最適化に向けたチュー
ニングを行う。
杏林グループや日本製薬工業協会の広報媒体で本システ
ムを積極的に紹介するとともに、関係団体や地域からの外
来者・見学者に積極的に開放し、高効率水ループシステム
の効果を見える化することで本システムの普及拡大に努め
る。
地中熱の採熱に伴う周辺地盤の温度変動
技術提供者としての取り組み(鹿島建設)
地中熱利用にあたって、過度に採熱したり、集熱と放熱を
アンバランスに利用することで、地盤温度が変動し地中環
境に影響を及ぼす可能性がある。
 本システムの普及に向けた技術向上およびコスト削減
の検討を行っていく。
 複数熱源、複数建物間熱融通による高効率水ループシ
ステムの適用範囲の拡大を模索する。
 高効率水ループシステム普及拡大のための簡易ソフト
の検討を進める。
地中熱配管の表面近傍温度と周辺地盤温度を測定し、比
較検証する。
イニシャルコストが大きい
現在の機器およびそれらの施工コストでは、補助金がない
場合の投入コストが大きい。
工法や制御など、コストダウンに向けた技術検討に取り組
んでいく。
4
本年度実施した実証内容[H26年度]
実証項目
無
実証方法
―
実証結果
無
本年度の成果[H26年度]
補助対象部分の工事完了
(来年度から実証事業を開始予定)
5